米国関連

米海軍、出火原因が不明のままワスプ級強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」の解体作業を開始

米海軍は火災が原因で廃艦が決定したワスプ級強襲揚陸艦6番艦「ボノム・リシャール」の解体作業を開始したが、未だに出火の原因については調査中で意図的な放火が原因なのか、工事の不手際による引火が原因なのか分かっていない。

参考:Salvage Company Begins Removing Island on USS Bonhomme Richard Ahead of Towing, Dismantling

強襲揚陸艦を失うことになった原因が不明のまま解体作業を開始した米海軍

米海軍のワスプ級強襲揚陸艦6番艦「ボノム・リシャール(LHD-6)」は昨年7月、サンディエゴ海軍基地での近代改修工事中にダンボール入り資材などの可燃性の改修資材が集積されていた海兵隊上陸用車輌保管エリアから出火、またたく間に炎は艦全体に広がり出火から5日間燃え続けた。

出典:U.S. Navy photo by Lt. John J. Mike/Released 火災が発生した当初のワスプ級強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」

この火災でボノム・リシャールは船体の60%が損傷したと判定され強襲揚陸艦として復元(30億ドル:約3,200億円)するか、別目的の艦艇として再建(10億ドル以上:約1,060億円以上)するか、スクラップ処分(3,000万ドル:約32億円)にするかの選択肢を慎重に検討した結果、米海軍のマイク・ギルディ作戦部長とケネス・ブレイスウェイト海軍長官はボノム・リシャールをスクラップ処分にすることを決定して昨年11月に議会へ通知。

この決定によって米海軍はF-35Bの運用が可能だった強襲揚陸艦を失うことになるのだが、30億ドルも大金を投じてボノム・リシャールを復元するぐらいならアメリカ級強襲揚陸艦(約34億ドル)を新しく調達したほうが賢明だと言えるので賢明な判断だっと言えるだろう。

現在ボノム・リシャールは4月から始まる本格的な解体作業に向けて飛行甲板上に設置された艦橋の撤去を進めているが、未だに出火の原因については調査中で海軍犯罪捜査局(NCIS)がボノム・リシャールの火災は意図的に仕組まれた放火であると判断して容疑者の乗組員を取調べ中だと報じられていたが、これも続報が全くないので米海軍が強襲揚陸艦をなぜ失うことになったのかは不明のままだ。

ただ本格的な解体作業を許可したということはボノム・リシャールでの調査は終了したと言う意味なので、そろそろ調査に関する中間報告書が出てくる頃だろう。

因みにボノム・リシャールの解体スケジュール発表と合わせて米海軍は沿海域戦闘艦インディペンデンスとフリーダムのモスボール化(就役状態を解除して保管状態への移行)や導入して日が浅いMk.V特殊任務艇の退役など計8隻を処分(廃艦・保管・売却)すると発表している。

関連記事:米海軍、火災を起こしたワスプ級強襲揚陸艦をスクラップ処分に

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy Photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Austin Haist/Released

E-3やF-35問題で迷走する米空軍、参謀総長が問題沈静化のため火消しに奔走前のページ

敵対勢力によるサウジアラビアとシリアへの首都攻撃、飛び交うミサイルと無人航空機次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    新型コロナの影響を受けたF-35、2020年の供給量は前年度割れでフィニッシュ

    ロッキード・マーティンは28日、今年製造した123機目となるF-35を…

  2. 米国関連

    米国防総省、極超音速滑空体を使用して開発中の艦対空ミサイル「SM-6 BlockIB」をテスト

    日本が今後導入するかもしれない開発中の新型艦対空ミサイル「SM-6 B…

  3. 米国関連

    米下院はKC-46Aの追加調達を禁止、空軍にKC-46AとLMXTの入札実施を強制

    米議会は2024会計年度の国防支出を決める国防権限法(NDAA)を可決…

  4. 米国関連

    米陸軍の装備調達コストは?M1A2Cは11.5億円、AH–64Eは16.3億円、AMPVは4.2億円…

    中々、知る機会の少ない米国製防衛装備品の単価が最近公開された国防権限法…

  5. 米国関連

    アップグレード完了でF-22Aは2060年まで飛行可能、但しラプターの将来は未知数

    米空軍は27日、第5世代戦闘機F-22Aに対する機体構造のアップグレー…

  6. 米国関連

    余裕のない米造船業界、海軍はメンテ作業遅延で約7.5隻分相当する原潜を失う

    米潜水艦部隊の司令官は「メンテナンス作業の遅れによって昨年約7.5隻分…

コメント

    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    不明で終わらせるわけがない、問題はどこまで公表するかだよ、
    基本は水面下の争いだもんな

    18
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    ロシアのアドミラル・クズネツォフ、中国の075型揚陸艦でも火災があったし、スパイが破壊工作合戦でもしてるんですかね?

    8
      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      民間船舶でもドッグでの火災は珍しくないから、実のところ判んないんだよね。
      ロシア海軍なんかは万事ユルいからふつうに事故だろ(笑)

      13
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    これがもし本当に工作だったとしたらゾッとします。
    どうせ技術者や作業者はアウトソースでしょう。
    産業の空洞化は国家の根幹が脅かされる可能性が高く、絶対にやってはいけないですね。

    15
      • 匿名
      • 2021年 3月 02日

      経営陣:国内は人件費高過ぎるからアウトソーシングしないと儲けにならないんだよネー 嫌なら政治家に献金して途上国並みの賃金にさせないと!

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    泣き寝入りかな?
    天下の米海軍さまもそんな時代になったんですかねえ。

      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      対中国では余り必要では無い艦種みたいですのでね、これから色々と変化が有ると思います。アメリカ海兵隊は戦車全廃(陸軍に丸投げ)にして替わりにミサイルに置き換えたり、空母と揚陸艦の統合による軽空母化(7万トン級)とか‥十年後までは色々とニュースがやって来ます。

      4
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    ロシアのアドミラル・クズネツォフ、中国の075型揚陸艦でも火災があったんだよなぁ
    工作活動なのか稼働率上げるために現場が追い詰められて火災対策もできてないのか…

    4
      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      仕事を余計にしたくて誰かに放火させている疑惑が出ても可笑しく無いレベルで発生してますよね、そこでそのまま使える部品取り外した後で(同型の交換用部品化)解体工事という事にして終了。その後火事減ればそれですから‥中国以外のどこ国の防衛産業も追い込まれている様な気がします。

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    インガルス造船所は元々のアメリカ級の量産で忙しいだろうし、もう何か所か大型軍艦建造できる造船所を用意したいですね。

    2
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    どうでもいいけどボノム・リシャールって名前、米海軍というより仏海軍ぽいですよね
    ・・・と思ったら仏語だった。

    2
      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      昔は「ボンノム・リチャード」と表記しました。

    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    戦う前から一隻撃沈されたようなものだから正直痛いよな。

    4
      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      撃沈なのか自沈なのか、わからんし

      1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    場所がサンディエゴ、というよりカリフォルニア州だから、誰しもキナ臭い”事件”とは
    感じているだろう。それも、海軍基地内で発生したところに、この問題の深刻さがある。
    海軍は何かを掴んでいたり、処理していても、公表しないのだろうね。

    5
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    >賢明だと言えるので賢明な判断だっと言えるだろう。
    もちつけ

    5
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    ちょうど海兵隊も組織変革中だから渡りに船だったりして

    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    江戸時代を見習って放火犯は全てタヒ刑にしようぜ。

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    犯人が誰かはわからないけど、解体しチャイナとか言ってそう

    1
    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    転用を選択していたらどの用途の船に改修する予定だったのか気になる所

      • 匿名
      • 2021年 3月 01日

      火災の熱で船体の強度が下がってるだろうから、補強せずに復帰させるのなら戦闘任務につかない大型艦か…
      輸送艦か補給艦、練習空母もあり得たかも

    • 匿名
    • 2021年 3月 01日

    無念と惜しまれつつも解体されるボノム・リシャールと対照的に、特に惜しまれてもなさそうなインデペンデンスとフリーダム
    ナショジオの特番でもトラブルばかりだったな

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
PAGE TOP