米国関連

必要ないと米海軍が訴えていたF/A-18E/F新規調達、継続決定でボーイング大勝利

2022年度の国防権限法成立に向け上院と下院の協議が大詰めを迎えている中、米海軍が要求していた追加の建造資金が認められ2022年度に発注される艦艇の数は8隻→13隻に大きく増加した。

参考:New Defense Bill Saves 2 Cruisers, Approves 13 Battle Force Ships; Adds 12 Super Hornets

両者に共通するのはボーイングという企業で何を意味するのか説明しなくても予想がついてしまう

海軍はバージニア級原潜×2隻、アーレイ・バーク級駆逐艦×1隻、コンステレーション級フリゲート×1隻、ジョン・ルイス級給油艦×1隻、曳航船×2隻、海洋監視艦×1隻の計8隻を発注するため2022年度の艦艇建造予算として海軍は226億ドル/約2.4兆円(前年度比3%減/建造契約が締結済みで資金供給が複数年に分割されているフォード級空母やコロンビア級原潜などへの資金供給を含む)、さらにタイコンデロガ級巡洋艦×7隻を含む20隻以上の艦艇廃止にかかる資金として7,400万ドルを要求していた。

出典:public domain アーレイ・バーク級駆逐艦 デルバートD.ブラック

しかし議会は海軍が追加で要請していた艦艇建造資金を承認したためバージニア級原潜×2隻、アーレイ・バーク級駆逐艦×3隻、コンステレーション級フリゲート×1隻、スピアヘッド級遠征高速輸送艦×2隻、ジョン・ルイス級給油艦×2隻、曳航船×2隻、海洋監視艦×1隻の計13隻分の資金を手に入れることに成功したものの、タイコンデロガ級巡洋艦の退役は5隻までしか認められなかったため2隻の運用を続けなければならない。

さらに海軍が「もう必要ない=既存のF/A-18E/F BlockIIをBlockIIIにアップグレードするだけで十分」とあれだけ訴えていたBlockIII×12機の新規調達を国防権限法は義務付けているため、BlockIIIの新規調達を打ち切って次期艦上戦闘機F/A-XXに資金を回すという海軍の目論見は完全に外れしまった。

出典:AFResearchLab

米空軍もA-10の早期退役をブロックされているのだが、両者に共通するのはボーイングという企業で何を意味するのか説明しなくても予想がついてしまう。

関連記事:国防予算から見た米海軍の方針、装備調達を削減して艦艇の整備に1.5兆円を投資
関連記事:米海軍のギルディ作戦部長が防衛産業界を批判、ロビー活動で必要ない航空機を売りつけるな
関連記事:米海軍、タイコンデロガ級巡洋艦の退役が議会に拒否されると数十億ドルの予算不足に陥る

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class Kaysee Lohmann

米議会がF-15C/DやRQ-4/Block30など160機以上の早期退役に同意、但しA-10の退役はダメ前のページ

F-21を売り込むロッキード・マーティン、同機の主翼をインドで製造してアピール次のページ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    映画公開に合わせたか

    10
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    国としてはボーイングが経営危機に陥って国の管理下に入るより、軍隊に余計な金を出させた方がいいと言う判断なんですかね?

    7
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      そんな真面目な話ですらなくて、議員の再選だったりもしかしたらダイレクトに金のために海軍が割を食ってるってことかと

      35
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      そういう話だと、人事や組織にも手をつけることになるんで、今回は違うのでは?

      2
    • wyuki
    • 2021年 12月 08日

    >両者に共通するのはボーイングという企業
    ~これぞケネディ効果?

    2
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    あれこれ言う人はいるだろうけど、議員の仕事として自身の支援者のために動くことはおかしいことでは無いけどね。
    それに最近のボーイングがクソというのは否定出来んけど、次世代機が何年遅れるかわからない状態で新規調達は不要と言っても、とは思うが。
    だったら追加でF35Cを買わせてくれって、説明したほうがまだ良かった気もする。

    24
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      本当はおかしいんだよ。
      代表民主主義で自分の利益基準で代表選ぶのがまずおかしい。

      11
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        でもお国のために言うことを聞け、利益を主張するな、っていうのは全体主義だぜ。
        それに他の議員も賛成してなきゃ可決されんのだから、結局海軍が説得に失敗した、海軍の計画自体が信用されてない、ということ。
        それが代議制民主主義ってやつだ。

        15
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        まぁ、アメリカは「合衆」国であって、国体に基づく国ではないんで。
        日本とは統治のダイナミズムがだいぶ違うんですよ。
        日本は「金のかからない選挙」なんて言ってるけど、アメリカはもろ金を一番集められる人がリーダー。
        力と力のぶつかり合いに、均衡を求める国なんですよ。
        なので、全体のためなんてことは議員は考えてない。自分の地域にいくら金を持ってこれるか。
        全体を考えるのは、大統領などの連邦政府のお仕事。

        日本には馴染みにくい仕組みだけど。。。私は、ダイナミックなパワーのあるアメリカ式が、今の日本には必要だと思ってる。

        4
          • 匿名
          • 2021年 12月 09日

          えーと鈴木宗男さんとかのやり口しか思いつきませんが
          日本で手っ取り早くお金集めるのは売国だと思っちゃうのはいけませんかねえ

          2
        • 匿名
        • 2021年 12月 09日

        おかしくないよ、政治と言うのは利権の調整が主な仕事
        それが殺し合いに発展しないための仕組みが選挙による民主主義

        3
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    ボーイング大勝利というか、首の皮一枚つながったというか

    ボーイングに第5世代機がない以上、今回はこれでも次はどうするつもりなんだ…
    20年後もF-15やF/A-18Eを調達してんの?

    23
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      生産を請け負うしかないのでは?

      1
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      まだT-7Aと737ベースの軍用機あるから(震え声)
      第七章行っちゃってる気もするけど

      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      Bにはすでに赤信号が点灯。行く末は分社化か、身売り・切売りか。
      737MAXのMCASトラブルがケチのつけ始めだったが、
      Bが転落したのは単純に経営の失敗に負うところが大きい。

      11
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        実のところ787開発遅延、納入遅延祭りのころから片鱗が。
        あの頃は金があったから詫び767の進呈で誤魔化せてたけど

        13
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        インテルといい、アメリカの大企業がずっこけるのが目立つ

        2
          • 匿名
          • 2021年 12月 09日

          インテル言う程コケてるか?未だトップシェアだし12世代投入で性能も巻き返した感があるが。

          7
          • 匿名
          • 2021年 12月 12日

          むしろコケたのはAMDの方な
          TSMCのラインが逼迫してるから売るべき商品が全く出せない
          次期商品からサムスンに生産委託するらしいが新プロセスの実力は未知数
          またボロ負けターンに突入中だわ

      • 匿名
      • 2021年 12月 09日

      大勝利という言い回しは管理人の皮肉でしょう

      4
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    要らない物を調達っても産業基盤や雇用面での意味もあるから日本よりマシ。
    日本の場合、要らない物買っても産業基盤も雇用も創出されてないこと多過ぎる。

    25
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      それ、ここで言うことじゃないだろ。

      5
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    ボーイングは永遠なり!

    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    これからぶつかる可能性の高いのは中国だけど
    J-20 がどれほどのものかよくわからんがF/A-18で大丈夫なの?
    まだF-35Cの方がまだマシなのでは?
    まぁそれだとボーイングの支援にならないけど

    4
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      J-20とやり合うならF-35だけじゃなくてF-22かFA-XXも飛ばさないと勝てないだろうな

      12
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      相手のテリトリー内の台湾周辺でステルス機とやり合うのならF-35でも損失が大きくなるだろうな

      4
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    F/A-18E/F BlockⅢのCFTは結局どーなったんだっけ?

    7
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    タイコンデロガ級7隻というと、ベースライン2をまとめて退役って予定だったのかな。今更言っても始まらないけど、後継決まってないのに艦隊の火力要員が消えてっちゃうと中国正面での水上戦力差がまた縮まるな。VLSの容量だけで戦力価値が決まる訳ではないけど、中国が055系列みたいな重火力の駆逐艦を投入する中で日米の主力がフリゲートに移行して持続火力が減っていくてのも何か釈然としないな。

    13
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      タイコンデロガ級は無理繰りな設計だから、仕方ないのかな?
      ウェラ・ガルフと言えば、沈黙の艦隊を思い出す。
      当時最新鋭の切り札だったのに、なあ。

      2
      • 匿名
      • 2021年 12月 09日

      仮に艦隊決戦あるにしても水上艦だけでケリ付けると思っているのか。潜水艦や航空機とか様々な物を組み合わせての戦闘。

      それに米軍のフリゲートはローエンドのLCSの代わりであって駆逐や巡洋艦を代替するものではない。アーレイバークなんて計画だけでも80隻後半作る予定なんで数の上での主力は依然としてイージス駆逐艦でしかない。

      日本の主力に関してはもがみ型にVLS搭載してESSM搭載するつもりがあるなら古いDDよりはミサイル積める余地があるので最低でも等価交換には出来ると思う、新型DDを作らないって話どっかにある?DD建造には間隔あくから原状新型艦の話が出てないのは何ら不思議なことはないし、新型イージスとか新型空母もどき作るつもりなら5000トンクラスDDはお預け食らっても不思議じゃないが。

      個人的には言う程、火力低下する?って感じだし、予算は無限じゃないのも考える必要はある。

      3
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    ホーネット~怒りの翼~
     業を煮やした主人公はボーイング本社への爆撃を決意する

    13
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      イントルーダー噴いた

      3
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    F/A-XXって、F-35Cじゃあかんの???
    まだ配備も進んでないのに。

      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      まぁ海軍の好みではないんでしょう。エンジン単発、消火設備貧弱、ステルスモードでミサイル6発まで、瞬発力無しならF-18でいい、そもそも空軍主導etcetc…
      艦載機がallF-18の今、その更新じゃなくて大型迎撃機が欲しいんじゃないですかね(あら偶然、極東某国といっしょだわ)

      10
        • 匿名
        • 2021年 12月 09日

        けど中東での活動量を大幅に減らした今となってはアメリカが想定する敵国(敵機)の4.5世代機か5世代機に割合が増えるわけで、陸上に空軍基地持っている(機体数が多い)相手に限られた数しか載せられない空母の主力機体が4.5世代機というのは大きな不利になるのでは?

        7
          • 匿名
          • 2021年 12月 09日

          目先の対中国を考えればF-35Cの調達を優先するべきだが、10年先20年先の環境を考えると、無人機指揮などの任務に複座設定が欲しくなったり、全長が寸詰まりのF-35だと機材の追加が難しくなったりするから、FA-18EFは既存のアップグレードで十分で、新しい戦闘機を開発するべきだから新品のFA-18EFはいらないってことでしょ

          3
            • 匿名
            • 2021年 12月 10日

            普通に考えて10年先20年先の環境を考えるより差し迫った目先の対処のほうが優先度高いのでは・・・

            4
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      一応既存機の発展型案も放棄してないのでF-35Cやスパホの更なる発展型が採用される可能性も残ってるかと。

      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      全く新しい戦闘機を一から開発する予算も技術もないと以前から言われているから、F-35C block XがそのままF/A-XXにスライドしてくるのでは。

    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    議会「調達!調達!さっさと調達!」
    海軍「うるせー!」

    スパホ「ドゴゴゴゴゴゴ」
    住民「家が揺れるぅぅ」
    海軍「物理的にもうるせー!」

    3
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      職業軍人「この音は騒音ではない、サウンドオブフリーダムだ、決して騒音では無い・・これこそがアメリカのパワーだ!!」
      普通の人「ミリオタでもこの音には耐えられまい・・」

      1
    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    ボーイングはベースだけでもステルス機体を自社開発するしかないよ。

    3
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      F-32…。

      5
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        中国が第五世代機を大量配備し続けている今なら第一列島線防衛のため純粋な空戦能力特化のステルス機の需要が復活しつつあるし、F-32をペースにF-22より製造・維持のコスパの良い空戦能力特化の5世代ステルス機を作ることができたらワンチャンあるだろうか

        1
        • 匿名
        • 2021年 12月 08日

        技術的冒険が少ない機体だったとはいえ、一目見た瞬間に「ないわー」と思うくらいダサかったなあ

        8
          • 匿名
          • 2021年 12月 09日

          インテークからと、あのデブさを取り払ったシルエットはそう悪くなさそう
          ただし保守的ゆえのダサさはやはり避けられない感じではあるけど
          「チェックメイト」がコレ系と評されているけどどうなんだろ

            • 匿名
            • 2021年 12月 09日

            ロー向けにステルス簡易化して再利用ありかもなあ。米軍ですら持て余す運用コストのF35では

            1
        • 匿名
        • 2021年 12月 09日

        単発機ならF-35Aでいいのでは?

        3
      • 匿名
      • 2021年 12月 08日

      冷戦期とは違って、もうどこの企業も独自に開発する資金力もなければ、勝手にやれば怒られるで済めばいい方となってしまうだろう。特にステルス技術関連は重要な軍事機密であり、どこかの企業から持ち出す事も出来ないし、国も発注もしていない戦闘機に技術開示をするだろうか?
      空軍の新しい戦闘機がどこの開発か不明だが、ボーイングは米国議会にコンペを開いてくださいと懇願するしか将来の道はないだろう

    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    スピアヘッド級ってUAEに貸し出ししてイエメン沖で沈んだんじゃねえの?
    もう不用品だからあんな扱いしてるかと思ったらまた作るんか

    • 匿名
    • 2021年 12月 08日

    俺には三八式歩兵銃しかない、だからこれが最高なんだ、だれが何と言おうとも。

    5
    • 匿名
    • 2021年 12月 09日

     米海軍が拒絶したら海自に押し付けられるのかも。

      • 匿名
      • 2021年 12月 12日

      運用しようにも船も場所も人も無い訳だが
      カナダやドイツ辺が買うんじゃない?

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