国防総省はミサイルランチャーを搭載した無人艦「USVレンジャー」の様子を公開、海軍が進める戦力分散化の概念が技術的に整いつつあることを示した。
参考:This “Ghost Fleet” Ship Firing An SM-6 Missile From A Modular Launcher Is A Glimpse Of The Future
ゴーストフリート(幽霊艦隊)のプロトタイプによるSM-6発射を実演、戦力の分散化実現に1歩近づく
中国やロシアが実戦配備を進めている極超音速巡航ミサイルや対艦弾道ミサイルなどの脅威に対抗するため国防総省の戦略能力局(SCO)と米海軍は共同で「ゴースト・フリート・オーバーロード/Ghost Fleet Overlord」と呼ばれる極秘プログラムを2017年に立ち上げた。

出典:米海軍 ゴースト・フリート・オーバーロードに用いられたUSVレンジャー
このプログラムの主な目的は有人艦艇と連携して作動する無人艦艇を開発するとこで、洋上の石油リグや風力発電施設周辺で作業を行うため使用されていた商用作業船を改造したUSVレンジャーとUSVノーマッドを建造して実証試験に取り組んでいたが、無人運用に不可欠な基盤技術(A地点からB地点に自律的に移動するだけではなく海上交通のルールに従い他の船を避けながら航行するための技術)がほぼ出来上がり、国防総省は新たに建造中の無人艦2隻と試験に使用してきたUSVレンジャーとUSVノーマッドを海軍に移管(2022年1月)すると発表。
今後は海軍主導で実際の演習に無人艦を投入「有人艦艇との連携や無人艦の有用性を実証する作業をすすめる」とSCOは明かしており、海軍が主張する戦力の分散化=ゴーストフリート(幽霊艦隊)実現にまた1歩近づいたと言えるのだが、先週の土曜日にSCOはミサイルランチャーを搭載したUSVレンジャーからSM-6を試射した様子を公開したため大きな注目を集めている。
See the game-changing, cross-domain, cross-service concepts the Strategic Capabilities Office and @USNavy are rapidly developing: an SM-6 launched from a modular launcher off of USV Ranger. Such innovation drives the future of joint capabilities. #DoDInnovates pic.twitter.com/yCG57lFcNW
— Department of Defense 🇺🇸 (@DeptofDefense) September 3, 2021
商用作業船を改造したUSVレンジャーの船体は中央部から後部にかけて貨物を搭載する大きなスペースが確保されており、ここに陸軍が開発を進めている車両搭載用のミサイルランチャー(Mk.41VLSを転用したものでMid-Range Capability/MRCと呼ばれている)を設置したUSVレンジャーの姿をSCOは公開したのだが、このランチャーは巡航ミサイル「トマホーク」と対艦ミサイル「SM-6」に対応していると言われており、海軍はトマホークとSM-6を搭載した低コストの無人艦を大量に用意して戦力の分散化を図ることを狙っているのだろう。
この無人艦はトマホークとSM-6を打ち上げることが出来るだけなのでネットーワークを通じた有人艦による制御が必須だが、極超音速巡航ミサイルや対艦弾道ミサイルが届く海域にゴーストフリートを突っ込ませれば高価値で多数の乗組員が乗船する有人艦は比較的安全な海域に留まることが出来るという寸法だ。

出典:米海軍の無人艦開発計画
因みに米海軍の無人艦開発計画は4つのクラスに分かれておりゴーストフリートに用いられるのがUSVレンジャーのような大型USV、マルチプラットフォーム(ISR、ASW、EW、電子戦、機雷敷設、対潜戦、対機雷戦、カウンタースウォームなど)として使用するシーハンターのような中型USV、限定的なマルチプラットフォーム(ISR、対潜戦、対機雷戦、対小型艇や海賊対策、戦術通信の中継など)として使用する小型UAV、ISRや戦術通信の中継など非常に限定的な用途に用いられるのが超小型USVで全てのクラスでプロトタイプのテストが行われている。
一応2,000トンクラスのMk.41VLSを装備した超大型USVの開発構想もあるのだが、これについては無人艦の有用性も無人化技術も実証されていないので「時期尚早」だと議会が難色を示している。しかしゴーストフリートに用いられる艦艇を含む4つクラスについては2020年代後半に実用化してくる可能性が非常に高く海上戦闘の概念が大きく書き換えられるかもしれない。
関連記事:米陸軍、トマホークとSM-6を流用してロングレンジウェポン開発に着手
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※アイキャッチ画像の出典:国防総省
これは2000年代初頭にとん挫したアーセナルシップの生まれ変わりなのでは…?
私も真っ先のそれが浮かんだ。しかしアーセナルシップはVLS100セル以上の巨大ミサイル運搬艦だったのに対し、こちらは2000tの比較的小型艦を多数整備する、その運用が昨今のネットワーク技術の進展で可能になってきた、ということだろうと思うが、転ぶか、主流になるかを見極めるのは時間がかかりそう。
2000トンクラスはまだプロトタイプ製造すら許されてない状態で、現在数を揃えようと開発してるのはそれよりも小さな複数のクラスですね。揚げ足取るみたいで申し訳ない。
西太平洋海域に展開するならどの道一定程度の大型化は必須じゃないかと。
そこでも無人で乗員に対応した事を考慮しなくて良いのが生きそう
揺れが酷くても無人なら影響少ないし、
乗員の補給物資はいらないから、その分を他の用途に使える
むしろ武装が問題ないなら小型のほうが良いまである
ネットワーク戦闘を前提にしてる点は共通点かなと
アーセナルシップに比べて1隻あたりの喪失のリスクを多数分散配置という形で克服できてるのが大きな違いだけども
技術の進歩で多数の無人船を制御・管制させられるようになってきたのはすごいよね
ちなみに俺はパッと見て戦闘機+随伴無人機という将来航空戦のコンセプト的なの奴の海上版ってイメージだった(アーセナルシップって聞くとそれ自体もガッツリ守ってやらないといけない目標ってイメージの方がどうしてもよぎっちゃうから。逆にこいつは1隻2隻沈んでもさほど問題ないともいえるので)
大規模海上戦闘用のドローンみたいな感じだな
戦術的な判断の自動化範囲も、どんどん広がっていくのだろうな
その時は法整備が問題に成りますね
日本の無人潜水艇?の開発計画あったと思うんだけど
今どうなっているのだろう
関連する事項かなって思うけど、つい昨日の記事で面白いのがあったよ
防衛省に水中無人機試験施設
岸氏「戦闘一変へ研究」、山口
リンク
ありがとうございます!
無人間とは言っても人が乗るようなところもあるんだね。
万が一敵にハッキングで乗っ取られた場合に備えて手動操作出来る様にする為じゃないですかね?
まだ試験段階だからっていうのが一番大きいと思う
ただまぁミサイル搭載できる規模の船なら人が乗って操船できるスペースがあった方が母港でちょっと動かしたいとかいう時に便利だと思う
戦闘中にクラックされたら奪還するよりさっさと撃沈処理するんじゃない?移乗奪還はリスクでか過ぎる
操縦系統とは別に自爆装置とキルスイッチはあるだろうね
敵の近くでクラックされたら自爆させるだろうし、味方の近くでクラックされたらキルスイッチ使って回収すればソフトの脆弱部分を解析できるし
有人の民間作業船を改造した実験艦なんだから、わざわざ艦橋を潰すという面倒な手間を取らない限り艦橋は残るだろう。
有人化のために限られた空間・重量に気密や脱出装置その他アレコレ余分に積み込まなきゃいけなくなる航空機と違って無人艦を「人が乗れる様にする為のコスト」は相対的には微々たる物だからね。
今回のは商用作業船ベースで人が乗るスペースも使える電源もあるだろうから当然だけど、
新造の無人艦でも数人が数日乗り組めるくらいの設備は用意するんじゃないかな。
商用船改造の自律航行技術実証試験船でもあるし、安全のため操船や保守・試験要員が乗ってるんでしょ。
ミサイルだけじゃなく、例えばSPY1(6?)を積んだ無人レーダー艦とかの登場もありえるのか?
見通し距離的に40~50kmぐらいしか前方展開できないだろうけど
見通し距離が数十㎞増えるだけでもリアクションタイム的には相当安全になるだろうし可能性はあるんじゃないかな
ただ、多数を前方展開する方向性になっていくと思われるからそうなると敵の攻撃による喪失の機会も増えるし、落とされてもいいようにもうちょっと安価なレーダーやセンサーの方が好まれるかもしれないね
流石にレーダーが高すぎて無人でもリスク冒せなさそう
蘇るピケット艦的な?どうなんだろうな、センサーが高価すぎて難しそう
目的がセンサー範囲の延長ならこれまで通りE-2を艦隊上空に上げるか無人化E-2もどきを前進展開させてセンサー情報を艦隊で処理した方が良いんじゃないか?
となると前方展開するセンサー役はUAV、シューターとして実際にミサイルを発射するのがUSV、有人戦闘艦はその管制と制御って形が理想的なのかな
個人的には悪天候時にも対応可能なように全部とは言わないけどもUSV側にも何かしらのセンサー役を兼ねられるのが欲しいかもとか思ったけども優先順位的にはそこまでではないか・・・
E-2も高価だからなぁ
それもこれも対空・対水上レーダーが高価なのがあるけど
安価な対空・対水上レーダーが現状無いから、ピケットにしてもUAVにしても当分無理なんかな
ステルス型ブラックホークといい、無駄遣いを貶されても何だかんだでアメリカ軍は裏で色々やってるんだなぁ。
日本でも富士山の麓で大型ロボット開発してましたとかのニュース出てこないかな
実は、東京のお台場や横浜の山下ふ頭に置いてあるでガンダムは、実戦配備中の機体なのだよ。
さらに、神戸市の新長田駅前には、鉄人28号がいる。
こうやってみると、日本にはすでに3機もの大型ロボットが配備されている。
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「圧倒的じゃないか、我が軍は」って、言ってみたい。
ブログ主の政治コメントや外部リンクはよそでやれは草w
夏休みが終わってもいつでも書き込む奴が居るからなwww
ブログや話の趣旨を読めずの自分がしたい話を延々とする事を議論だと思い込んでいる人は沢山いるからね
まぁそれはさておき、米中の核戦争を描いた小説「2034」だと緒戦で中国が電子戦を用いて米軍を機能不全に陥らせるみたいな描写があるけど、このまま戦場を無人ユニットが占めてみんなネットワークに繋がってて当然みたいな様相を呈してくると、総戦力では負けててもサイバー戦でワンチャン取れるみたいな状況も出てくるかもしれないと思う
ますます電子戦、サイバー戦の重要性が高まることは容易にに予想できるけど、IT労働者やIT技術を軽視してきた我が国には果たしてそれを担える人材の厚みがあるのかと一抹の不安を感じざるを得ない
中抜きばかりに熱心にならず、大事な分野には惜しみなく投資をぶっ込んでほしいと思う
トラス(構造)ミー
すみません
動画の0:05秒~の左下水面に現れる影の正体が気になってしょうがない(笑)
魚?イルカ? UMA?
イルカっぽいですね
いや、きっとイルカ型の誘導(以下略
ちょっと頭の出ちゃった甲標的。
>海軍はトマホークとSM-6を搭載した低コストの無人艦を大量に
トマホークはともかく現在のところSM-6ってくっそ高いんですが
これから量産効果でるのかそれとも米帝恐るべし なのか・・・
SM-6が4,4億円か…
艦隊防空としては安いと見るべきか。
用途違いだけどSM-3block2Aに比べればまぁ。
戦いは数だよ兄貴
ゴーストという単語が書類上のみの存在と皮肉られない事を祈ります
米海軍のこれまでの実績を考えると
中国相手には通用しないだろう、アメリカがこの方針をとれば、中国は該当海域の艦船すべてを探知し破壊するだけ
お得意の人海戦術の戦法だよ
むしろ民間船を偽装してミサイルを積んでおけば、最初の第一次打撃にだけは有効だろう。いわば現代版の通商破壊船戦法
コンセプトとしては日本のイージスアショアの水上艦には合うだろうな。
レーダー以上に日本においては防空ミサイルの数が重要だし、一か所に集めないで分散すれば防衛能力も高まると思うけどな。
問題はリンクシステムの構築と正確性あたりかな?