米国関連

米海軍、潜航中の攻撃型原潜からUAVを発射して敵艦を見つける

無人航空機を活用した戦場環境の認識力拡張は潜水艦の戦い方にまで変革をもたらそうとしている。

参考:The US Navy wants to find ships to kill using aerial drones launched from submarines

米海軍の攻撃原潜は潜望鏡で視認できる範囲を超えた戦場環境を潜航したまま認識することが可能になる

米海軍は攻撃原潜の主要兵器である魚雷、対艦ミサイル、巡航ミサイルの射程が飛躍的に拡張された結果、潜水艦が備えている伝統的な戦場環境の認識力(ソナーや水上捜索用レーダー)とギャップが生じており、これを埋めるため小型無人航空機(UAV)を活用し始めている。

米海軍は現在、潜航中の潜水艦から発射する小型無人航空機(UAV)を発射する潜水艦発射型無人航空機システム(Submarine Launched Unmanned Aerial System:SLUAS)の開発に取り組んでおり、小型UAVを音響誘導魚雷による攻撃やソノブイによる探知を撹乱するため使用するデコイ発射装置から発射して水上艦艇の捜索や陸上の標的確認等に使用する予定で、SLUASの初期バージョンが5隻の攻撃型原潜に配備(今年9月)されたばかりだ。

ただ完成したSLUASの初期バージョンに米海軍は満足しておらず、電動式で自律的に1時間の偵察・監視飛行が可能でEOセンサーの能力強化と暗号強度が向上した小型UAVの開発について産業界からのアイデアや助言を募集中で、SLUASが完全に実用化されれば米海軍の攻撃原潜は潜望鏡で視認できる範囲を超えた戦場環境を潜航したまま認識することが出来るようになり、射程が飛躍的に拡張された魚雷、対艦ミサイル、巡航ミサイルの能力を最大限活用した戦い方(小型で飛行時間が短いため巡航ミサイルの射程を最大限生かせるほどの認識力改善は今のところ不可能)が出来るようになる。

※動画に登場する水中発射型のUAVはSLUASとは無関係

この様な潜航中の潜水艦から発射する小型無人航空機(UAV)の開発は米国だけでなく少なくともフランスが開発中で、ロッキード・マーティンやAeroVironmentなどの防衛産業企業が既に対応製品を発表しており、密かに採用している国があるかもしれない。

話は変わるが日本も地対艦誘導弾の射程を延長するため計上していた27億円の予算を330億円超へ増額するなど精密誘導兵器の射程延長を急いでいるが、敵を捕捉するための戦場環境の認識力拡張についてはなおざりだ。

現状のままでも地上配備のセンサーや航空機搭載(戦闘機や早期警戒機など)のセンサーで東シナ海の戦場環境の認識力は十分だと言う意見もあるが、地上配備のセンサーは破壊されやすく、価値の高い早期警戒機などを狙う長射程の空対空ミサイルを中国は実用化済みで、撃墜されてもリスクの少ない低コストの無人機航空機を活用した戦場環境の認識力改善を日本も積極的に取り入れて行くべきではないだろうか?

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Ashley Hedrick/Released

ロシア、企業主導でシングルエンジンの第5世代戦闘機を開発前のページ

爆速で完成する米空軍の無人戦闘機、プロトタイプ引き渡しは5ヶ月以内次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    改善を見せた米空軍機の稼働率が再び後退、爆撃機の稼働率悪化は顕著

    米ディフェンス・メディアのDefenseNewsは14日、空軍の作戦機…

  2. 米国関連

    低空から接近してくる極超音速巡航ミサイルの検出ギャップ、米議会が国防総省に対策を要求

    下院軍事委員会は国防総省に対して極超音速巡航ミサイルの検出ギャップを埋…

  3. 米国関連

    米国のブリンケン国務長官、ウクライナが数週間以内に反攻作戦を開始する

    米国のブリンケン国務長官は「ウクライナが数週間以内に反攻作戦を計画して…

  4. 米国関連

    また約束を破ったボーイング、KC-46Aの不具合解消は19ヶ月遅れる

    米空軍は7日、KC-46Aの空中給油能力を制限している不具合の解決が「…

  5. 米国関連

    米海軍の次期戦闘機「F/A-XX」は有人機、ただ将来の空母航空団は40%以上が無人機に

    米海軍の関係者が久々にF/A-18E/Fの後継機=つまり次期戦闘機につ…

  6. 米国関連

    ジェネラル・アトミックス、空対空ミサイルを運搬可能なLongShot UAVのイメージを公開

    ジェネラル・アトミックスは27日、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    日本に関してですと、広大な作戦海域をカバーできる「低コストの」無人機というのがイマイチ想像しづらいんですが……
    いくら安くても、役に立たないものを買ったり開発したりする余裕と合理性がないだけかと

    4
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      相応の性能には相応の値段があるものなあ…

      5
        • 匿名
        • 2020年 12月 09日

        安い機体を大量に飛ばして、網を張る。
        群れで対抗して生き残る。

        1
          • 匿名
          • 2020年 12月 10日

          そうすっと費用総額は結構なものになるんじゃあないか?
          最初に戻ると。

          5
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    なんにせよ潜水空母にはロマンを感じる

    25
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    これ通信はどうするんだろ?
    通信せずに自律飛行して対象を発見した場合のみ送信するんだろうか?
    いずれにせよアンテナを水上に出す必要があるね

    28
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      その瞬間がいちばん危ういよね、敵がUAVを泳がせておいて潜水艦を逆探知する恐れもある

      4
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      言われてみたら確かにそうだよね
      あくまで潜水艦は発射プラットフォームとして運用するだけで、得た情報は衛星とか僚機とリレーさせて指揮所で処理するのだろうか…

      13
        • 匿名
        • 2020年 12月 10日

        衛生経由で本土にデータ送り、手近な水上艦船や陸上の発射機、届かなければ航空機を派遣でいいんではないだろうか。
        つまり潜水艦=ピケット艦的な。

      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      リンクを見ると、全潜水艦にある3inchi ソノブイ発射管から発射して、長距離魚雷、巡航ミサイルで撃破します。
      映像では、潜水艦、航空機、戦闘車から発射できます。

      通信可能な水面下ギリギリで待機して、発見と同時に攻撃、潜水パターンと、
      水深深いとこから、哨戒機の代わりに設置して哨戒機に任せるパターンがありそう。

      1
      • 匿名
      • 2020年 12月 10日

      潜望鏡の機能強化版だからこれでいいんじゃね?

      1
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    UAVと潜航した潜水艦のやりとりはどうなってるの、大量のデータとか送れるのか

    8
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    一度射出したら戻せないのかな?

    3
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    日本「予算無いねん…」
    実際索敵の方はどうするんだろ
    単体で手が回らないところはNIFCAでできるだけ補ってあとは米軍任せなんかな

    7
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    水上艦のレーダー相手だと分が悪そうな気がするな。潜望鏡の影すら見つけられるらしいし。母艦の安全を期して後続距離を伸ばせば大きくなってより見つかりやすくなる。やりたいことはわかるけど潜水艦の隠密性を犠牲にしてまですることかなとは思う。

    11
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    うろ覚えだけど宇宙空母ブルーノアで万能潜水艦シイラから索敵用の無人機を出して偵察するシーンが有った様な無かった様な…

    1
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    飛行時間の短いUAVであるならば、敵にそのUAVが発見された場合
    UAVの運用可能範囲に潜水艦がいると、教えてるようなものなので
    潜水艦の最大の魅力である秘匿性をさらしてまで運用する意味あるんでしょうか

    7
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    水中は一番早く無人化が進みそうな気がする

    6
    • にわかミリオタ
    • 2020年 12月 09日

    いずれ、潜水艦自体も無人化されるんだろうなぁ

    8
      • 匿名
      • 2020年 12月 09日

      潜水艦の無人はメリットだらけでデメリットがない。海と空は無人化が進むと思う。

      9
        • にわかミリオタ
        • 2020年 12月 09日

        デメリット無しか。
        逆に陸はどんなデメリットがあるんだろうか。

        3
        • 匿名
        • 2020年 12月 09日

        陸軍は、毎日帰宅できるし、それまでの常識が通じるんで、募集すると人が来るし、訓練も1年、2年で終わるんでドローンよりコスト安なんでは。
        つまり、陸軍のドローンは偵察みたいにやたら死傷率が高いとこ以外はコスト高では。
        米国になると歩兵でも一年中死傷するけど。

        4
        • 匿名
        • 2020年 12月 10日

        潜水中の艦と問題なく通信ができるような技術的なブレイクスルーが起これば無人化も可能だと思うけどね。当面は無理だろう。
        探知不能な場所に高火力の敵がいるということにこそ価値があるんだから。

        2
    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    打ち上げたら潜望鏡より簡単に発見されて自艦の位置暴露するじゃんと思って動画見てみてたら
    スイムアウトで海面に浮かせた上で時間差で発射できるとか
    さすがに素人がパッと思いつく程度の対策は考えられてた

    13
      • 匿名
      • 2020年 12月 11日

      自立型ではない最近のホーミング魚雷は光ファイバーの有線(かなり長くとれる様です)で繋がっているタイプもあるので、UAVが取り込む海上の情報はランチャーになるUAVの射出ブイを中継機として(海中のサウンドチャネルを跨いで距離を取った深海部に潜んでいる本艦と)光ファイバーの有線経由で情報を取り込む様な気がします。これだと潜望鏡レーダーに感知されるのは自艦と離れた海上に漂っているUAVの射出ブイだけなので、ある程度は自艦の安全が図れるような気がします。どうでしょうか?

    • 匿名
    • 2020年 12月 09日

    潜水艦から航空機を発射とか大日本帝国みを感じる

    6
    • 野嘗
    • 2020年 12月 09日

    そもそもこれって意味あるの?

    2
    • 匿名
    • 2020年 12月 10日

    米海軍の次期攻撃型原潜は戦略原潜の艦体を流用して対地ミサイルを大量に積むという話もあるし、そこに水中射出UAV
    シンファクシだこれ!

    6
    • 匿名
    • 2020年 12月 10日

    >ただ完成したSLUASの初期バージョンに米海軍は満足しておらず、電動式で自律的に1時間の偵察・監視飛行が可能でEOセンサーの能力強化と暗号強度が向上した小型UAVの開発について産業界からのアイデアや助言を募集中で

    同じような小型UAVへのアイディア募集を日本でやったら面白いものが出て来そうですね。(小型化が得意なメーカー多数、実用化が近い全固体電池、先進のAESAや光学センサー等の応用を期待)

    久しぶりに見てコメント欄が良くなったので安心しました。

    2
    • A
    • 2020年 12月 10日

    タケコプターみたい

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  5. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
PAGE TOP