米国関連

極超音速兵器開発で先行する露中への回答、米国、極超音速兵器「AGM-183A」のイメージを初公開

米国のロッキード・マーティンは最近、極超音速兵器開発プログラム「AGM-183A Air Launched Rapid Response Weapon(空中発射高速応答兵器:ARRW)」の公式なCGイメージを公開したと報じられている。

参考:Lockheed Martin releases image of its super fast weapon

極超音速兵器AGM-183A ARRWの鮮明な公式CGイメージが公開される

米空軍とロッキード・マーティンが開発を進めている極超音速兵器開発プログラム「AGM-183A ARRW」は、昨年の6月に爆撃機B-52の主翼パイロンに取り付けられ飛行テストを行った際、その姿を初めて公に晒すことになったがブースター本体が非常に小さく映っていただけなので詳細についてはよく分からなかった。

特に「AGM-183A ARRW」はブースター本体の弾頭部分に極超音速で滑空する「飛翔体」を隠しているため、一体どの様な形状をしているのか謎であった部分だ。

ただロッキード・マーティンが今回公開したCGイメージには、この疑問を完全に解決した仕上がりで、爆撃機B-52から空中発射されたAGM-183A ARRWは大気圏を突破し宇宙空間に侵入したあと、ブースター本体の先端に取り付けられたペイロードフェアリングを分離し「飛翔体」を露出させる様子を表現している。

宇宙空間で分離された飛翔体本体は最大で「マッハ20」まで加速するらしいが、射程距離などについては一切明かされていない。

本来、米空軍は「AGM-183A ARRW」とは別に空中発射型の極超音速巡航ミサイル「Hypersonic Conventional Strike Weapon(HCSW)」も開発していたが、2021会計年度予算からHCSWの開発予算が削除されており、米空軍は「HCSW」の開発を中止して極超音速兵器の開発を「AGM-183A ARRW」1本に絞った格好だ。

極超音速巡航ミサイル「HCSW」の開発中止は技術的なトラブルではなく、単純に予算上の問題(要するに金が無い)で中止されたと言われている。

このまま開発が順調に進めば2022年までに「AGM-183A ARRW」は初期運用能力を獲得する予定で、米国や米軍にとって初の実用型極超音速兵器となるはずだ。そしてロシアや中国に先行されギャップが生じていた極超音速兵器分野における反撃の第一歩になるはずだ。

最近、米空軍は「B-1Bランサー」や「A-10サンダーボルトII」など計7機種の退役を発表したり、偵察機「U-2ドラゴンレディ」を2025年までに退役させるのではないかと噂されるなど暗い話題が続いていただけに、久々に明るいニュースに触れた気がする。

関連記事:米空軍、正式に「B-1Bランサー」や「A-10サンダーボルトII」など7機種の退役計画を発表

関連記事:航空戦力の整理を始めた米空軍、2025年に高高度偵察機「U-2」を退役させる?

※アイキャッチ画像の出典:ロッキード・マーティン 極超音速兵器開発プログラム AGM-183A Air Launched Rapid Response Weapon(空中発射高速応答兵器:ARRW)

ライトニングキャリアの申し子、アメリカ級強襲揚陸艦「トリポリ」が米海軍へ引き渡される前のページ

韓国では新型コロナウイルスとの戦いは「戦時」扱い、軍の兵士をマスク製造に投入次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    弾が真っ直ぐ飛ばない? 米国、F-35A搭載機銃の攻撃精度は容認できないレベル

    国防総省が発表した年次報告書によれば、依然としてF-35は設計通りに機…

  2. 米国関連

    センサーとシューターの分離が進む米陸軍、自走砲で巡航ミサイル迎撃に成功

    米陸軍は自走砲「M109A6」から発射した砲弾で巡航ミサイルを撃ち落と…

  3. 米国関連

    50万人に近づく死傷者数、ウクライナ軍が約19万人でロシア軍が約30万人

    ワシントンポスト紙は「年内にウクライナ軍がメリトポリに到達するのは困難…

  4. 米国関連

    米政治学者のフクヤマ氏、ウクライナの戦いはロシア完敗と予想

    著名な米政治学者のフランシス・フクヤマ氏(スタンフォード大学上級研究員…

  5. 米国関連

    米メディア、ウクライナへの砲弾提供はイスラエルと韓国のものでカバー

    ニューヨーク・タイムズ紙は「ウクライナに提供する155mm砲弾100万…

  6. 米国関連

    バイデン大統領、支援には限りがあるのでウクライナに反撃を急ぐよう要請

    米POLITICOは「欧米の武器支援も防衛産業の供給能力にも限界がある…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 3月 01日

    飛翔体部分小さ
    それともブースター部分がデカイ?

    • 匿名
    • 2020年 3月 01日

    本体がトマホークぐらいの割に弾頭部分?が小さすぎて使い勝手が悪そう。中露の極超音速兵器も実用性は未知数ですけど通常戦力では米軍に対抗できない分、力を入れているだろうし中東やアフリカで実戦投入されないかなあ…

      • 匿名
      • 2020年 3月 01日

      いや、記事中でAGM-183Aの飛翔体は最大マッハ20まで加速すると言うから、それが本当だとすれば着弾時の衝撃波で目標を吹っ飛ばせるので、“飛翔体(弾頭部)に炸薬は必要ない”のかも知れない。

      30年以上前、日本SF小説の最高峰の一作「戦闘妖精雪風」(神林 長平/著)を読んだ時に、主人公の敵が超高速ミサイルで前線基地を吹き飛ばす描写があって、その中に「あれだけのスピードなら炸薬など必要ないな。衝撃波でみんな吹き飛ばされた」と言う主人公の台詞があったけれど、それが遂に現実になるのかな……

        • 匿名
        • 2020年 3月 02日

        >「あれだけのスピードなら炸薬など必要ないな。衝撃波でみんな吹き飛ばされた」

        うわぁ懐かしい。よく練られた小説でしたよね。続編も面白かった。

          • 匿名
          • 2020年 3月 03日

          SFマガジンで続編が連載中なので、そちらも是非

    • 匿名
    • 2020年 3月 01日

    元々は中露の対抗というよりトマホーク遅すぎ、敵が逃亡問題だった気がするが、今はinfも脱退したし、早く良いミサイルが出来ると良いですね。
    移動目標も打撃でき戦争を短期間で終わらせるのが理想

    • 匿名
    • 2020年 3月 01日

    対戦車弾は割りと早めにHEATやHESHみたいなCEPからAPDS系のKEPへ移行してるけど、今後は飛行機や艦船、地上目標に対してもより純粋なKEPがしようされるのかな
    飛行機やらは破片効果で墜ちるから弾体そのものの直撃は狙わないはずだけど……それとも飛翔体が爆発すんのかね

      • 匿名
      • 2020年 3月 01日

      日本では、シーバスター弾頭の研究が行われています。

      リンク

      • 匿名
      • 2020年 3月 02日

      LOAST復活しないかな。
      直射じゃなくて、前線歩兵のマーキングで後背からミサイルをデリバリーしたらだめか、なんて夢想したものです。

    • 匿名
    • 2020年 3月 01日

    てっきりキンジャールの様な短距離弾道弾の流用かと思いきやしっかり滑空弾頭なんですね。

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    大昔に大コケした、GAM-87 Skyboltの焼き直しだろ?

    • 匿名
    • 2020年 3月 02日

    で?
    この手の物の最終誘導はどうなっているのですかね。
    いよいよアメリカさんも他国にお付き合いよく中二病か。

    • 匿名
    • 2020年 3月 03日

    役に立つ兵器の増えたことを明るいニュースと呼ぶことに、人類としては暗い課題が減らないと言う現実をも忘れないで欲しい
    パワーバランス理論そのものが不要な状態こそ、本来の望ましい未来なんだから

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP