米国関連

ウクライナ問題でロシアとの協議に望む米国、ミサイル配備と軍事演習で交渉に応じる

米政府高官は8日、米メディアに対して「月曜日にジュネーブで始まるロシアとの協議で2つの問題について交渉に応じる用意がある」と明かした。

参考:U.S. to discuss missiles in Ukraine and military exercises with Russians, officials say
参考:Missile deployments, military exercises on table for Russia talks

ウクライナ危機を話し合いで解決する気が本当にあるのか判断するのは時期尚早、建設的な道筋があるのかどうかはロシア次第

ロシアが提示した安全保障条約について今月10日に交渉(米国とNATOは別々にロシアと交渉)が開始される予定だが、米政府高官はウクライナへのミサイル配備とロシア国境に近い場所での軍事演習について交渉に応じる用意があると明かした。

出典:President of Russia

プーチン大統領が名指しで懸念を表明したウクライナへのミサイル(極超音速兵器や弾道ミサイルなど)配備について米政府高官は「我々とロシアの間で合意に達する数少ない分野の一つで米国はウクライナにミサイルを配備するつもりはない」と明かし、ロシアが批判を強めているバルト三国での軍事演習規模(ロシア国境に近い同地域の演習テンポは加速しており、米陸軍の装甲車輌部隊や非加盟国のスウェーデンやフィンランドが演習に参加することにロシアは不満で米露は核兵器搭載可能な戦略爆撃機の飛行回数を増加させて互いに相手を牽制)についても「相互制限について交渉する余地がある」と語っているらしい。

さらに米政府高官は米メディアのPOLITICOに対し「我々は多くの問題についてロシアと議論するがウクライナ危機をロシアが話し合いで解決する気が本当にあるのか判断するのは時期尚早で、NATOと個別で行われるジュネーブでの協議後に具体的な合意が得られる可能性はほとんど期待していない」と述べ、今回の交渉に建設的な道筋があるのかどうかはロシア側の出方にかかっていると言っているのが興味深い点だ。

出典:Joe Biden

つまりロシアが突きつけた要求リストを受け入れない限りウクライナ周辺の緊張状態緩和に応じないという態度で交渉に望むなら「(リストの大半はNATOや米国が容認できないものばかりなので)話し合いで問題を解決する気がない」と解釈するという意味で、密室で始まる10日からの交渉でロシアがどれだけ現実的な歩み寄りを見せるかで米国も対応(どこまで譲歩するか)を変えると言いたいのだろう。

米メディアがウクライナ問題のワイルドカードになるかもしれないと期待していたカザフスタンの暴動はロシア軍を中心としたCSTO派遣部隊によって鎮圧され安定を取り戻しつつあり、欧米とも一定の関係を築いていたカザフスタンは迅速に部隊派遣に応じたロシア、トカエフ大統領支持を表明した中国やトルコなどに謝意を示し「自由なメディアや外部の活動家が法秩序違反を助長し扇動する役割を果たした」と主張して如何に民主主義や過度な人権尊重がカザフスタンの統治にとって危ういものかを特に強調、今回の暴動を乗り越えた現政権が欧米と距離をとり露中に傾倒すればプーチン大統領にとって後顧の憂いが解消するとも言える。

出典:Jens Stoltenberg

英メディアのThe Daily Telegraphはジュネーブで始まるロシアと協議について「NATOはロシアがウクライナ周辺の緊張緩和に応じるならロシア国境に近い東欧から兵力や装備を引き離すことで合意する可能性がある」と報じており、果たしてどうなることやら、、、

関連記事:英メディア、ロシアが引くならNATOは東欧加盟国からの戦力引き上げに応じる
関連記事:米メディア、カザフスタン問題はウクライナ問題におけるワイルドカードになる可能性も

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Staff Sgt. Keith Anderson

アジア主要国は積極的にUAVを導入、中国軍、豪軍、フィリピン軍の保有数は1,000機超え前のページ

300機以上の新規受注を獲得した戦闘機市場、2021年に最も売れた戦闘機は?次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    KC-135後継機入札からロッキードが撤退、エアバスは単独で応じる構え

    ロイターは「KC-135後継機調達の入札からロッキード・マーティンは撤…

  2. 米国関連

    米空軍、ボトルネックだったF-22とF-35の戦術情報共有に成功

    米空軍は14日、F-22とF-35が初めて戦術情報の共有を直接行うこと…

  3. 米国関連

    米空軍大将、英国に派遣されたウクライナ人は飛行経験が殆どない若者

    ロイターは18日「米国がF-16をウクライナに引き渡すことを承認した」…

  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は19.3億ドル

    米海軍が調達する装備・弾薬の取得コストは国防権限法(NDAA)の中で公…

  5. 米国関連

    米海軍、退役済みの空母キティホークと空母ジョン・F・ケネディを約2円で売却

    米海軍は退役済みの空母キティホークと空母ジョン・F・ケネディをスクラッ…

コメント

    • hiroさん
    • 2022年 1月 09日

    部分的でも米国やNATOの妥協を引き出せれば、プーチンにとってはしてやったりなのでしょうね。
    展開した部隊の多くを下げても、ウクライナ国内での親ロ勢力と連携した分断工作は継続するでしょうし。
    早々に軍事オプションを否定したブルガリア以外のNATO加盟東欧諸国がどう反応するか、NATO内の疑心暗鬼が加速しないと良いのですが。

    20
    • 無無
    • 2022年 1月 09日

    交渉でとりあえずの戦争が回避できればいいのかというと、
    戦争は、外交のためでなく内政失策のごまかしのために引き起こされるという言葉に従えば、ロシアが国民を押さえ込む強権的な政治体制を続ける限り不安定要素は無くならないと悲観する

    9
    • 市民の声
    • 2022年 1月 09日

    今回のロシアの異議申し立てでアメリカも少しは反省することを期待したいものです。
    アメリカなどの西側国家は自らの軍事政策が社会主義国家にどのように映っているかを今まで真剣に考えたことが無いのでしょう。アメリカから敵視される諸国はアメリカの脅威に常にさらされてきました。核は言うに及ばず通常兵器でも圧倒的な数で暴力的かつ日常的に脅されているのです。アジア太平洋地域でも頻繁に軍事演習を実施して中国などの社会主義諸国を脅迫していますね。
    だからこそ「反米国家」のレッテルを張られた国はアメリカから自国を守るために自衛しなければなりません。反米国家の軍事力は常に自衛的なのです。ですから。落ち着いて考えてもらいたいのですが、北朝鮮の核だって逆説的には自衛用の核です。アメリカの侵略的な核とはハッキリと違います。
    アメリカが自らを正義と称し気に食わない国に「反米」だの「悪の枢軸」等のレトリックを使用してイメージ戦略をとっても無駄です。軍事費や兵器数等の現実の数字を見ればアメリカこそが他国の脅威であることは一目瞭然です。

    1
      • 無無
      • 2022年 1月 09日

      基本的なツッコミしとく
      ロシアはとうに社会主義ではない、単なる強権的独裁政治
      中国人はここを勘違いしやすいんだね
      まあ中国も単なる全体主義で中身は少しも社会主義でないけど

      煽りもたいがいにな

      19
      • hiroさん
      • 2022年 1月 09日

      中ロ艦隊が日本を周海した示威行動や、尖閣諸島に対する脅迫行動等々が自衛行為ですか?
      “日本では”思想信条の自由は保証されているので、他人を貶めない限りは好きな事を書いても良いのですが、貴方のコメントへの賛同者の少なさも考えてください。

      7
    • ダヴー
    • 2022年 1月 09日

    これまでのロシアの強気な姿勢に比して米政権の対応が「弱腰」という印象だったんだけど、実のところ米政権は弱腰ですらなく「無関心」なのだと思うようになってきな。
    バイデンの基本姿勢は「労働者のための外交」でそのための対中強硬姿勢であり、ウクライナはその路線上からは外れているからそもそも関心が無い。
    ロシアからすると、これだけ強硬姿勢を見せているのに殆ど無視されているような状況というのは実は想定外で、内心は「大国として扱われていない」と憤慨しているのかもしれない。

    4
    • バクー油田
    • 2022年 1月 11日

    その線に加えて、
    そもそもウクライナに侵攻した時点でロシアはもっと大きなものを失う筋しかないから
    ウクライナに侵攻なんかプーチンにまともな判断があれば出来るわけがない。
    つまり、ウクライナに侵攻した場合、ロシアが一方的に損する展開になる以上、
    西側からしたらこの件について交渉を纏める必要性が無いから
    こういう風にそっけない態度になってる可能性もあるね

      • 無無
      • 2022年 1月 11日

      大きなリスクを冒してまでクリミア半島を獲ってる時点で、ロシア、いやプーチンには領土交渉で日本に妥協する余地など無いと安倍氏は悟るべきだった。
      日本からの技術と資金に期待して島を返すような人物が、西側の総スカンを覚悟してまで軍事侵攻やらかすはずがない
      期待した日本国民がお花畑なんだよ

  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  4. 米国関連

    米海軍の2023年調達コスト、MQ-25Aは1.7億ドル、アーレイ・バーク級は1…
  5. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
PAGE TOP