米空軍は、ミッション達成率(Mission Capable)の改善に努力したにも関わらず、空軍機全体のミッション達成率は6年連続で下がり続け、遂に70%を切ってしまった。
参考:Aircraft mission-capable rates hit new low in Air Force, despite efforts to improve
空軍機のミッション達成率が下がり続けるのは航空機の老朽化が原因?
Air Force Timesによれば、米空軍のミッション達成率(Mission Capable)は改善の努力にも関わらず、2012年(77.90%)以来6年連続で下がり続け、2018年には遂に70%を切って66.97%を記録したと報じている。
注:2018年の集計期間は2018年1月1日~12月31日まではなく、2017年10月1日から2018年9月30日までの数値。
ミッション達成率(Mission Capable)とは、対空任務や対地任務など複数の任務をこなす航空機が、どれか一つでも任務をこなせる状態にあることを指し示した指標で、フルミッション達成率(Full Mission Capable)は、複数の任務にすべて対応可能な状態にあることを指し示した指標だ。
昨年の2018年に記録された66.97%という数値は、米空軍が保有している5,413機の平均ミッション達成率で、フルミッション達成率の平均は明らかになってはいないが、平均ミッション達成率よりも低い数字なのは確実だ。
米空軍は、Air Force Timesの報道に対し、ミッション達成率は空軍機の稼働率を表した指数ではなく、現地部隊レベルで評価する指数の一つに過ぎず、その部隊が脅威に対しどれだけ準備できているかを判断するための指数だと反論したが、ミッション達成率低下の直接的な原因には「航空機の老朽化」を挙げた。
30年前、米空軍機の平均年齢は10年前後だったが、2018年の米空軍機平均年齢27年に達し、保有する航空機の老朽化が進み保守管理に要求される「時間」と「費用」は増え続けていると米空軍は指摘した。
特に製造から時間の経過した機種は、開発企業自体が消滅している場合もあり、保守パーツの入手は困難を極め、究極的には別の企業に保守パーツを「特別」に製造してもらうしかなく、これが老朽化した航空機のミッション達成率を妨げる原因だと言う。
主な機種の2018年ミッション達成率(Mission Capable)は以下の通りだ。
機種 | 保有数 | ミッション達成率 |
B-1B | 62機 | 51.75% |
B-2A | 20機 | 60.70% |
B-52H | 75機 | 69.30% |
CV-22B | 50機 | 59.41% |
F-15C | 212機 | 71.47% |
F-15E | 218機 | 71.16% |
F-16C | 725機 | 70.03% |
F-22A | 186機 | 51.74% |
F-35A | 147機 | 49.55% |
C-5M | 50機 | 62.77% |
C-17A | 222機 | 82.57% |
C-130H | 177機 | 68.30% |
C-130J | 123機 | 76.68% |
MQ-1B | 93機 | 92.20% |
MQ-9A | 247機 | 90.24% |
RQ-4B | 34機 | 73.65% |
U-2 | 27機 | 76.90% |
T-1A | 178機 | 58.90% |
T-6A | 444機 | 66.00% |
数字を見る限り、米空軍の平均ミッション達成率を下げている主犯は、2017年ミッション達成率76.90%を記録していたにも関わらず、低酸素症の症状を訴えるパイロットが続出し「飛行停止」に追い込まれ、ミッション達成率を10%も下げてしまった訓練機のT-6Aだ。
しかも、T-6Aは444機と数が多く、平均ミッション達成率に影響を及ぼしたのは確実だ。
ただし、2012年以来、ミッション達成率が6年連続で下がり続けいるのは、米空軍が言うように、老朽化した航空機が少しづつ平均を下げているのだろう。
手っ取り早い解決方法は、新しい機体と交換することだが、予算の都合上・・・
これ以上は何も言うまい。
F-16、F-22、F-35のミッション達成率を80%にまで引き上げられるか?
前国防長官のジェームズ・マティス氏は2018年、空軍と海軍に対しF-16、F/A-18、F-22、F-35のミッション達成率を2019年9月末までに、80%にまで引き上げるよう命じたが、2019年7月、次期国防長官(当時)に指名されたマイク・エスパー氏は、2019年9月末までにF-35のミッション達成率を80%まで引き上げるという目標について、F-35を構成する部品供給問題が原因で「期待できない」と語った。
2018年の数値を見る限り、F-16は70%台のミッション達成率を維持しているので、2019年にこれを80%台に引き上げるのは、さほど難しい話ではないだろう。
やはり問題になるのは、F-22A(2018年:51.74%)とF-35A(2018年:49.55%)のミッション達成率だ。
F-22は量産機の数が少なく「規模の経済」によるコスト削減が通用せず、スペアパーツの入手、定期的なオーバーホール、手間の掛かるステルス素材で構成された機体の維持、7~8年ほどの耐久性を持つステルス塗料の寿命が切れかかっているため再塗装が必要など、他の機種に比べてコストがかかるため、潤沢な予算措置でも行わない限り、ミッション達成率が向上するのは難しい。
さらに2018年10月に発生したハリケーン・マイケルが、F-22が配備されたティンダル空軍基地を直撃し、多くのF-22が損傷(4機大破、10機以上が小破)したことで、ミッション達成率を大きく下げる要因になっている。因みに、ハリケーン・マイケルの直撃が予想されていたにも関わらず、他の基地へ避難できなかったのは、ティンダル空軍基地に残留することになったF-22は、共食い整備の結果、飛行不可能だったためと言われている。
F-35については、F-35のキャノピー(天蓋:コックピットを覆う透明なカバー)の供給不足がミッション達成率の向上を妨げている。
コックピット内部へのレーダー波進入を防ぎ、ステルス性を維持するために、F-35のキャノピーには「特別なコーティング」が施されているが、この「特別なコーティング」処理工程が安定せず、必要な量のキャノピー供給が困難なためだ。
このキャノピーを製造しているロッキード・マーティンによれば、コーティング処理の失敗率は予想を超える多さで、同社だけの製造では、キャノピーの供給量を満たすのは難しいと明らかにし、米国会計検査院(GAO)はキャノピー製造企業を新たに増やすか、キャノピーの設計変更を検討しけなければならないと指摘している。
他にも、F-35のミッション達成率引き上げを妨げる要因に、スペアパーツの供給不足問題がある。
米国会計検査院(GAO)が4月にまとめた報告書によれば、F-35のスペアパーツ供給不足の問題は、壊れたパーツを修理する能力が限られいることが原因で、目標では60~90日程度で壊れたパーツの修理を行い、再びスペアパーツの在庫に戻すことになっているが、実際にその倍以上、平均180日程度の時間がかかっており、その結果、スペアパーツの供給不足という事態を招いている。
ただし、悪い話ばかりではない。
フロリダ州エグリン空軍基地に駐屯する第33戦闘航空団所属のF-35は、2019年4月から5月まで80%台のミッション達成率を維持(6月に76.8%に低下)し、これは2016年8月に空軍がF-35Aの初期作戦能力(IOC)獲得を宣言して以来、最高の数値だ。
確かにF-35は、まだまだ問題が多いかもしれないが、フロリダ州の例は、ミッション達成率を引き上げることは不可能ではないことを示している。
あと1ヶ月(9月30日)ほどで2019年の集計期間が終了し、空軍の努力がどのような結果を見せるのか興味深い。
F-22AとF-35Aのミッション達成率引き上げは、恐らく80%に達成することはないだろうが、2018年の51.74%(F-22A)と49.55%(F-35A)を、どこまで引き上げられたのか非常に気になる。
今年中には、米議会に対して空軍が報告書を提出するので、また続報があれば取り上げて行きたい。
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アメリカって今まで軍事関係の「あれ開発すっぞ」とか言って「やっぱ駄目だわ」とか「使い物にならんからやめるわ」とか言うのがすごく多いような気がするけど、よく納税者から不満が出ないものだといつも思ってしまう。
技術進歩への貢献を含めれば丸切り無駄ってわけじゃないだろうけど。
それでも今までにそのような失敗に使ってきた金額を合計すればマジで天文学的な金額になるんじゃないかという位に失敗を重ねてきていると思うので。
まぁ、トップランナーで有り続けるのはそれだけ難しいという部分は理解できますが。
そこで映画「トップガン」の様な映画ですやん
前作のときはバイロットの応募がすごかったとか
開発費も集まるのでは?
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