米国関連

2050年まで飛行可能に! 米空軍、爆撃機「B-52H」エンジン換装プログラム始動

米空軍は23日、爆撃機B-52H ストラトフォートレスのエンジン換装に関する提案依頼書の草案を発表した。

参考:US Air Force issues draft request for proposal to replace B-52 engines

爆撃機B-52H ストラトフォートレスのエンジン換装プログラムがようやく動き出した

今回発表された内容によれば、米空軍は76機の爆撃機B-52H ストラトフォートレスに搭載されたエンジン「TF33」を換装するため計608基(76機✕1機あたり8)の新しいエンジンを調達する計画で、契約は2021年5月までに締結する予定だ。ただ新型エンジンの納期や換装作業がいつ始まるのかについては明らかにされていないが調達期間は約17年間だと記されている。

これまで米空軍が発言してきた換装用エンジンに求める条件をまとめると以下の通りになる。

  • 改修作業を最小限に留めたいのでTF33と同サイズ、同出力、同重量程度であること
  • 新規開発したものではなく既存の商用エンジンをベースにカスタムを施したもの
  • 燃費効率の良い高バイパス比のターボファンエンジンであること
  • エンジンコントロールがデジタル制御に対応していること

そして今回のB-52Hエンジン換装プログラム「B-52H Re-Engine Programme」に参加を表明しているのはGE、P&W、RRの3社だ。

出典:Gleb Osokin / CC BY-SA 3.0  CRJ-200に搭載されたCF-34

ゼネラル・エレクトリック(GE)はボンバルディアのリージョナルジェットに採用されている「CF34-10」とビジネスジェットのグローバル7500に採用されている「GEパスポート20」を提案する予定で、プラット&ホイットニー(P&W)はガルフストリームのビジネスジェットのG500等に採用されている「PW800」を、ロールス・ロイス(RR)はビジネスジェットに広く採用されている「BR700」をベースに開発した軍事向けの「F130」を提案すると言われている。

TF33を搭載した現在のB-52Hは無給油で約1万4,000km飛行する能力を備えているが、新しいエンジンへ換装されたB-52Hは無給油で約1万6,800km~約1万9,600km程度飛行できるようになるので長距離ミンションを行う際の空中給油回数を減らすことが可能になり、逼迫している空中給油機の状況を改善することが期待されているのだが懸念すべき問題点もある。

現在運用されているB-52Hは、どれも1960年代に製造されたものなので機体自体にどのような問題が隠れているのか全く把握できておらず、個々の機体よって蓄積したダメージも差があるためエンジン換装を含む改修作業のコスト予想が難しいのだ。

出典:Pedro Aragão – Gallery page / CC BY-SA 3.0 輸送機C-5

実際、米空軍は輸送機C-5のエンジン換装の際に同じ問題に直面した経験を持っている。

C-5のエンジンを換装する際、機体の一部を分解すると予想もしていなかった機体構造の腐食や配線の劣化等が見つかり追加コストが発生したため全てのC-5を改修するのが不可能になり、米空軍は初期型の一部を退役させなければならなかった。

このように老朽化した機体の改修コストは蓋を開けてみないと何とも言えないためB-52Hの改修作業も同じ問題に直面する可能性が高く、もし追加予算が必要になったとき米空軍に追加負担するだけの余裕があるのかは誰にも分からない。

因みに、エンジン換装を受けたB-52Hは少なくとも2050年まで運用される予定だ。

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Staff Sgt. Trevor T. McBride

費用と手間を大幅削減、サーブが戦闘機「グリペンC/D」向けに交換用AESAを発表前のページ

国防予算5億ドル未満の国に? 戦闘機F-16Vの購入国にアンゴラとエチオピアが浮上次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    国防予算から見た米陸軍の方針、研究・開発や装備調達の削減に手を付けざるをえない台所事情

    バイデン大統領は2022会計年度の予算教書(連邦政府予算案)を正式に発…

  2. 米国関連

    米海軍、出火原因が不明のままワスプ級強襲揚陸艦「ボノム・リシャール」の解体作業を開始

    米海軍は火災が原因で廃艦が決定したワスプ級強襲揚陸艦6番艦「ボノム・リ…

  3. 米国関連

    米露首脳による電話会談、失敗すれば直ぐにウクライナ侵攻が始まる可能性も

    12日に行われるバイデン大統領とプーチン大統領の電話会談がウクライナ侵…

  4. 米国関連

    米空軍は極超音速兵器の早期実用化を断念か、失敗続きのAGM-183Aを見放す可能性

    米空軍が実用化を急ぐ極超音速兵器「AGM-183A ARRW」が再び試…

  5. 米国関連

    国防総省、旧ソ連の技術で開発されたウクライナ製レーダーを購入

    ウクライナの防衛産業企業「イスクラ」は6日、米国防総省と移動式レーダー…

  6. 米国関連

    米当局、ロシアが北朝鮮から数百万個の砲弾やロケット弾を購入している

    NYT紙は5日、新たに機密が解除された米当局の情報に基づき「ロシアが北…

コメント

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    アメリカもB-52を1個体半世紀以上使うとは全く思っていなかっただろうね。

    大型軍艦より長く運用するって単純に凄すぎる。

    2
      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      新造時の部品はどのくらい残ってるんでしょうね。もしかしてガワだけ?

      2
      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      まぁちょいちょい新しいパーツと交換していって、大部分は置き換わってるって話だよね
      初期生産分の部品は何%くらいだろ

      1
    • ハヤタ
    • 2020年 4月 30日

    SLだって動いてるから大丈夫だろう

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    B-52程度の機体なら、最新の旅客機の部品を流用して新造した方が、安くて良い物が出来ないだろうか?

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    なんであれ、丹精込めて作られたものは長持ちします。
    F-24のように、フレームこそ古いけど中身は最新、という、羊の皮をかむったオオカミ、というのがカッコいいんじゃないですか。
    リンク

    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    1960年7月初飛行のB-52Hが、少なくとも2050年まで運用って、すごい長寿だなぁ。
    どうせならもう少し踏ん張って、100年超えを目指して欲しい感じ。

    2
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    B52、C5の寿命延長の話題見る度に思うけど、超大型機の新造ってそんなに大変なもんなのかな…
    ステルスみたいに最先端の技術を使うわけでもなし、新しいことせず手堅く作らせる分にはそこまで苦労しなそうな気もするんだが

    2
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    てっきり4発にするのかと思ってました。
    GE9Xなら推力的には単発でも良さそうですが。

    2
      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      当初案では4発化だったけど、思わぬ影響がありそう・操縦系の更新に金がかかるってことで単純置き換え(8発ママ)になったとさ

      3
      • 二式大型七面鳥
      • 2020年 5月 01日

      個人的に、四発化魔改造は見てみたかったですね。
      8発より制御は楽になるでしょうけれど、改造範囲が大きいのでしょうね。
      「デカイ単発より小さい双発」というジェットエンジンの法則もあった気がします。
      とにかく、改造機の初飛行が楽しみではあります。

      3
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    昔はCADなんてなかったから、ベテランの設計者がこの部分は強度が気になるから少し丈夫にしておこう・・・・なんて設計をしてたんだろうな。
    だから余裕のある設計で長持ちしてる。
    それにしてもアメリカはB-52,ロシアはTu95、どちらも半世紀以上使われるとは思わなかったろうな。

    2
      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      XC-2では、CADを過信して強度不足になったくらいだからね。
      C-2だと、そこら辺は対処済みだけど、
      B-52のような余裕があるかと言われると、厳しいでしょうね。

      1
      • 匿名
      • 2020年 4月 30日

      ベアなんて1980年頃既に時代遅れの旧式機扱いされていたけどその頃から未だに使われているのは凄い事だ。

      バジャーも中国では現役だし。

      2
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    今更ですが、分類が「米国関連」とか地域別に変わってたのですね。

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    メイドインUSA最盛期の頃の製品は凄いな
    いまのアメリカ製造業はちょっと

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    GEはF108(CFM56)ベースで入札すると思ったんですが、
    エンジンポッドの大型化を懸念したのかな
    (TF33と同程度の大きさ・重量・推力にすることという条件に反すると判断したのか?)

    3
  1. 貴ブログにもありますが、モスボールからの復帰で3000万ドルかかるみたいですから、エンジン近代化改修には構造物の改修も含めるとモスボールと同等以上の費用がかかるかもしれません。
    エンジン代抜いても3000万ドルx70機=21億ドルですから、エンジン込みでB-2を2機作るくらいで済めばラッキーでしょうか。

    1
    • 匿名
    • 2020年 4月 30日

    4発化してエンジン共通にすればメンテ費用とか抑えられるんだろうけど
    下手に弄ると737MAXの悪夢再びってな事になりそうだしなぁ…
    ぶっちゃけ機体全部新規開発したほうが安上がりだと思うんだけど人件費上がりすぎてダメそうな予感が…
     
    B-52の設計図を川重に渡して現代風アップデートした新機体よろしくって丸投げしてくれたら
    ポンとリーズナブルなやつ作ってしまいそうな気がする

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 01日

      >川重に渡して現代風アップデートした新機体よろしくって丸投げしてくれたら・・・
      もしかしたら実際水面下で動いていたりして・・・。
      夢が広がりますね。

      1
    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    まだ飛ぶ気かよ。博士の異常な愛情をリメイクするなら今だな

    2
    • 匿名
    • 2020年 5月 01日

    原型初飛行1952年…。
    老兵は死なず。

    1
      • 匿名
      • 2020年 5月 02日

      もうすぐ古希のお祝いですね。
      さすがにその時の機体は引退しているのでしょうね。

      1
    • 匿名
    • 2020年 5月 02日

    ○交換するのは燃費効率の良い高バイパス比のターボファンエンジン

    旅客機用の高バイパスターボファンのB52を見てみたい。
    今の時代に合って結構イケルかもしれない

    1
    • 匿名
    • 2020年 7月 26日

    高バイパス比でしかも従来と同じサイズにしろって無茶では?
    MCAS使う?

  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  5. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
PAGE TOP