米空軍は機体の老朽化や能力不足を理由にE-3をE-7Aで更新する予定だが、ヘグセス国防長官は下院歳出委員会で「現代の戦場でE-7は生存不可能」「宇宙ベースのAMTI能力に移行する」と言及、さらに上院歳出委員会でも「E-7A調達ではなくE-2Dの活用」に言及した。
参考:E-2 Hawkeye Replaces USAF E-3 Sentry, E-7 Cancelled In New Budget
どうやらヘグセス国防長官率いる国防総省は宇宙ベースの能力獲得までE-2Dでカバーすることを検討しているらしい
米空軍やNATOの航空戦術はE-3が提供する「空中を移動する目標の認識能力=AMTI」と「戦闘管理指揮統制能力=BMC2」を前提としており、同機は2014年に開始されたアップグレードによって「2030年代まで運用することが出来る」と言われていたが、米太平洋空軍司令官のウィルズバック大将は2021年「707ベースのE-3は機体が古すぎて2030年代まで飛行可能な状態を維持するのは挑戦に等しい」と、米空軍航空戦闘軍団のケリー大将も「民間での運用が終了した707のサプライチェーンは撤退するか737などの他機に転身を図ったため全く残っていない」「707ベースのプラットホームは危機的状況にある」と訴えた。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
Breaking Defenseも「スペアパーツの入手性が悪化しているためE-3の稼働率は40%台という悲惨な状況に陥っている」と指摘し、E-3更新に否定的だったブラウン参謀総長も考えを改め「空軍内部で検討を行っているE-7はE-3よりも新しく韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍で運用実績がある優れたプラットフォームだ」と、ケンドール空軍長官も「E-7は米空軍に必要な航空機かもしれない」と言い出し、2022年4月「E-3を更新するためE-7を26機取得する」と発表。
議会も2023会計年度の国防権限法で「飛行可能な状態を維持するのが困難なE-3の退役」を承認し、既に13機がサービスから外れて砂漠送り=デビスモンサン空軍基地に送られ、現役機の数は18機まで減少してAMTI任務とBMC2任務に深刻なギャップが生じているのだが、Aviation Weekは5月「米空軍のE-7調達は中止の危機に直面している」「国防総省はE-7調達をキャンセルし、リソースをAMTI能力を備えた衛星に集中させることを検討している」「この案はBMC2能力が問題になるため空軍が抵抗している」と報じ、ヘグセス国防長官も「現代の戦場でE-7は生存不可能」「宇宙ベースのAMTI能力移行」を言及。

出典:Air Force photo by Richard Gonzales
ヘグセス国防長官は下院歳出委員会の公聴会で「我々はウクライナで得られた教訓や中国軍近代化のテンポを踏まえて投資を再考している」「投資するシステムが現代戦に耐えられないか十分な優位性をもたらさないと判断されれば厳しい決断を下さなければならない」「こうした新システムへの資金供給と判断を下すのが我々の仕事でE-7はその一例だ」「将来的にISR能力の大半が宇宙ベースになる」「E-7のようなシステムも検討を続けるが、我々の見解では既存システムへの投資と、これを上回る宇宙配備型ISRへの大規模投資を組み合わせることで将来の優位性が獲得できると考えている」と証言。
下院歳出委員会のコール議員は「指摘は正しいが、新しい技術ではなく豪州や英国も使用しているプラットホームがある。この機能するプラットホームは我々が持っているものより遥かに優れている。宇宙ベースの能力は素晴らしいものの未知の領域で完成していない能力だ。そのため決断を下す際は十分な検討をしてほしい」と述べ、米国の主要なディフェンスメディアも「ヘグセス国防長官は宇宙ベースの能力に投資したと考えている」「E-7調達は中止されるかもしれない」と報じていたが、どうやらヘグセス国防長官率いる国防総省は宇宙ベースの能力獲得までE-2Dでカバーすることを検討しているらしい。

出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
上院歳出委員会の公聴会でアラスカ州出身のマーカウスキー議員は「エルメンドルフ空軍基地にE-7が来ることを期待していた」「広大な北極圏上空をカバーしなければならないアラスカ方面の状況は苦戦を強いられている」「現在の予算案ではE-7調達の中止が提案されている」「繰り返しになるがE-3の大半は飛ぶことができない状況だ」「宇宙ベースの能力移行に関する意図は理解できるものの、私が懸念しているのはシステム導入までのギャップをダクトテープによる補修ではカバーしきれない点にある」と指摘。
この質問に対してヘグセス国防長官の特別補佐官を務めるマクドネル氏は「2026会計年度予算案にはE-2Dを5機装備する統合部隊向けに1.5億ドルの資金が含まれている」「短期的な不足をカバーするためE-2Dの追加調達費用として14億ドルも含まれている」と指摘し、マーカウスキー議員は「これはアラスカ方面で目にしている状況に影響を及ぼすのか」と質問、これにヘグセス国防長官は「そうだ」「E-7は計画が遅れているだけでなく非常に高価だ」「このギャップをE-2Dでカバーしながら宇宙ベースの能力に移行することが最善だと考えている」と回答。

出典:U.S. Air Force photo by 2nd Lt. Mark Goss
米空軍は当初「英空軍向けと類似した構成のE-7調達」を想定していたが、E-7とAMTI能力を備えた衛星の組み合わせで戦場空域の認識力と戦闘管理指揮統制=BMC2を行うことを希望したため、E-7の設計を修正しなければならなくなり、プロトタイプとしての性格が強い1号機と2号機の取得コストは26億ドル(当初見積もりよりも33%増)となり、さらに米空軍は量産型=3番機以降にはE-7採用のMESAではなく新型レーダーの搭載を要求しているためAMTI能力が大きく向上すると予測されている。
War Zoneは「E-7調達を中止して海軍のE-2Dでギャップを埋めるという動きは多くの疑問を投げがけている」「E-7とE-2DではAMTI能力、航続距離、拡張性のなさ、長時間の任務に適していない機内環境など違いが大きすぎる」「その一方で空軍と海軍で共通のAEW&Cを運用することはコスト削減に繋がる」「計画への資金流入も増えることでE-2Dの将来性についてもポジティブな影響を与えるだろう」「サイズが小さく頑丈な降着装置を備えたE-2Dの特性は分散戦術や滑走路が限られた作戦地域での運用に役立つかもしれない」「これはE-7では決して実現できない」と指摘。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson
米空軍のE-7調達中止は驚くべき動きで、幾つかの分野で能力不足を引き起こす可能性があるものの、War Zoneは「同時にE-2Dの活用と宇宙配備型ISRへの大規模投資は新たな能力の獲得を加速させる」「国防総省が進めている宇宙ベースのセンサー計画は入手できる情報が限られてるためリスク評価が難しい」「どちらにしてもヘグセス国防長官が計画を進めるためには議会の承認が必要だ」と述べており、どこに着地するかは秋になってみないと分からないだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson
米国「E-7は時代遅れ。この先生き残れない!」
韓国空軍、オーストラリア空軍、トルコ空軍「ヲイヲイ…。」
トルコとはS400取得により制裁問題も
MESAレーダーも今となってはだいぶ古くなった
見かけと異なり透過図では前後が空いた言わば餡の詰まってないクリームパン状態とも
何かと機密の多い兵器ゆえに本当の所は不明だが
あとMESAレーダーが開発されたのって、Windows98とか2000とかXPとかの頃
さすがにもう古くないか
米軍に採用されて将来安泰と思ったら一気にピンチに陥るのは高い金かかってる分きついですね
A50が撃墜・撃破されてるのも影響してるんだろうけど、大丈夫なのか?この方針。
まあ将来的に問題がでてもその頃にはトランプ政権の任期も終了しているので、その後の事なんて考える必要無いという事かもしれませんね。
どれだけ痛い目に遭っても冒険主義を変えられないのが、現代アメリカという国の気風なんやろな…🙄
宇宙空間がいつまでも聖域であり続けるとは思えないんだが俺の考えはおかしいんだろうか
それな
攻撃方法が確立されたら、一気に瓦解しそうな雰囲気ある
衛星を守る為の衛星とか、相手がレーザーで攻撃してきた時の防御とか考えてるんだろうか?
先日のロシア空軍みたく地上で安いドローンで爆散よりはマシなんでは
比較論でマシな方を選ぶべき
E-7が生存不可能、という点は全く同意です。
中国がE-767様の目標が配置された滑走路を標的に訓練をしているという
衛星画像が昔出回ってましたが、実戦でも容易に破壊されるでしょう。
機体が大きすぎて隠しようがないし、入れる掩体なんてないので
地上なら「この格納庫にいる」と確実に推測できてしまう。
こんなものは絶対に生存できません。
最低限でも滑走路を転々とするACE構想を実現できる機体だけは残して
将来の為に滑走路に依存しないプラットフォームに投資するべきです。
E-767は要らないのでは?と言う意見には同意です。
仮に掩体壕の整備まで完了し、ドローンから隠すことが出来たとしても、開戦劈頭に弾道ミサイルで掩体ごと抜かれるのがオチでしょう。
ただ、地球規模で兵力を展開するアメリカが、仰っているような発想で装備を整える必要があるかというと、疑問符がつきますね。
日本では出来ない守り方を、アメリカは出来るはずですし。
>滑走路に依存しないプラットフォーム
つまりドラグナー3型ですね。
RVF-25でもSTOL可能か。
確か米海軍仕様のE-2Dはトイレ、ギャレーなしですよね。
空軍が米海軍仕様のE-2Dを導入するとトイレ、ギャレーなしのAEW&C機で長時間任務になるので任務の質も悪くなりそうです
日本向けのE-2Dを空軍に配備するのでは?
そりゃぁJ-36の様なステルス深部侵攻機が射程300kmだの400kmだのの対空ミサイルをもって突っ込んでくるような時代なんですから鈍重な早期警戒機なんて生き残れるハズ無いですよね。
これからはドローンを使っての分散型か、完全に宇宙に飛ばしてしまうかの二択しか無いんでしょうね。
ただ、他の方もおっしゃってますが宇宙空間も攻撃されるのはは目に見えていますし、破壊されたあとのリカバリーが難しい宇宙空間は現状厳しいかな、と。
となると航空機の分散化だと思いますが、完全無人化まではE-3が持ちそうに無いですね…
間をとって有人機のE-2Dは現実的な落とし所かもしれませんけど、居住性が低いのが何ともです。
現行のシステムをもう少し大きな輸送機に移し替えるのも、米軍ならまた余計な要求載せて炎上しそうですね
理想は複数の中小型AEW機の情報を、更に後方の艦隊なり地上基地なりから管制することになるんだろうけど、数揃えなきゃいけないから、資源がない側には厳しい時代になりそうだなぁ
ウクライナ戦争の戦訓を考えれば、ウクライナ軍がA50を見事に、撃墜してしまいました。
地上配備中・滑走路駐機中にも、攻撃に成功させて戦果をあげたわけですから、分散配備重視も合理性はあるなと。
ほんと戦訓を取り入れるだけでも大変であり、いろいろな兼ね合いもあるなかで、予算配分を考えるのは大変でしょうね。
RCOH別にしても米空母の稼働率からしたら、載る空母のない余剰飛行隊ありそうだから、EA-18Gみたいな運用を空海でするんじゃないのかな?
記事を読む限り数十機のE-2Dを買うみたいな内容にはなってないし。
E-3の問題は性能もあるけど
どうせ飛んでくるのがSu-35が上限と考えるとE-3でシステム上は困らんし。
E-3の機材を移植して動かせるようにするだけでも改善する感じはあるよね。
0が1になるだけで
そうなるとエルビットやサーブが作っているビジネスジェット機ベースの機体ですと、小柄な機体で機動性もそこそことという事で
能力はE-7に劣るのでしょうが、E-2Dよりは居住性を含めてよさげな気がします.
ですが米軍が採用する期待はバイアメリカですから無理ですね…
そもそも既存の余っている機体の流用だろうしねぇー
C-130に移植とか考えたけど
そもそもその予算すらつくのやら
ここでC2にE3のアビオニクスを移植すれば………いや何でも無いです
機材転用ならC-17にE-3のやついれるだけでは?
退役機の現役麩付きで割とできそうだし
米軍がE-3Aを引退させる時点で同じ中身の空自のE-767のシステムアップデートも終了なわけで
アビオニクスを移植もいいアイデアですがいつまで性能を維持できるのか少々心配に
>ここでC2にE3のアビオニクスを移植すれば
確かノースロップ・グラマンだったように記憶していますが、川崎P-1にE-7のレーダーを搭載する提案をしています。
国産機ベースならそちらの方が可能性が高いかと…
当時の航空ファンにP-1にE-2Dのお皿を移植する案は提案されてたと記載がありました。
どう考えても高くなるのとE-2Dが想定以上に格安提案されて無くなりましたが。
E-2DのシステムをC-130Jに移植するというウルトラCになりそうな感
(E-2Cを移植したC-130は既にある)
米軍向けE-7は初期で1機あたりイージス艦なみの価格とは驚きです。そりゃ高すぎるという問題になるでしょうね。
あとウクライナでA-50が2回も撃ち落されたのと基地にいてもドローンや弾道ミサイルに脆弱なら費用対効果は?になったんだと思います。
E-2Dなら戦闘機用の掩体壕にも隠せそうだし、地方空港にも退避容易だし、パイロットに資格あれば空母にも降りれるから融通はききそう。
先日の印パ紛争でのラファール喪失のことを考えると。
双方がAEW/Cを運用した場合、率いている戦闘機が同等(第4世代でも第5世代でも)
であった場合、AMTI(特に探知距離)の優れた側が空戦の勝者になるのかな。
その意味で、E-2Dは有利かな。WIKIによると。
”米海軍はD型ホークアイを巡航ミサイルや中国人民解放軍のJ-31、J-20など
第5世代ジェット戦闘機(ステルス機)に対抗し得る秘密兵器と形容している”ようだし。
そう考えると、E-2Dのレーダーを移植すれば良いのでは?。P-1など丘がでしょうか?(笑)。
また、別に考えると、MQ-9B シーガーディアンを採用して、
腹に下げたLynxレーダーのグレードアップを考えてみては?。電源が大変でしょうけれど。
MRJ・・・
それやるなら、US-2飛行艇ベースにして、E-7かE-2Dのシステム搭載で海上待機出来る様にした方が、日本的には良いのでは?空母型護衛艦が無い状況でも艦隊の目として運用出来ますし。ドローン等の迎撃装置(機関砲)とかも比較的簡単に付けれそうですし。
面白いアイデアだと思いますが、塩害対策が大変そうですね。
我が国がE-7の配備を急いで、米帝様が「E-7もっと欲しい!配備しときゃよかった!」となったときに備えておくのがいいのかも?
マジレスするとそれいれるぐらいならイスラエルかスウェーデンからAEW&Cのシステム買う。
E-7が高価なのも、この問題の原因の一つなんでしょうね!
B-21こそE-3にとって代わるものだと思ってましたが、そういう話は出てないんですね
E-2Dのほうがコストがやすいのはそうかもしれないけれども、重量、大きさ、スピード、航続距離、機内の容積が全く異なるのでは…
宇宙宇宙って言うけれども、そのために中国は衛星攻撃兵器の実験を繰り返してるんじゃないんですかね…?