米空軍は2026会計年度予算案の中でF-22Aに対する「新たなアップグレード」を発表し、さらに有人プラットフォーム統合プログラムの中で「F-22AでCCA制御を可能にするための改修を行う」と明かし、F-22AはCCAと協調する最初の戦闘機になる予定だ。
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遅くとも2020年代末までには有人機と無人機の協調能力が実戦配備されるだろう
米空軍が保有するF-22AはBlock20とBlock30/35で構成され、Block20の能力は時代遅れのため訓練用途にしか使用されておらず、Block30/35も143機しか戦闘準備が整っておらず、後者については2023会計年度予算で「2024年~2028年の間に90.6億ドルを投資してアップグレードを行う」と説明し、レーダーやステルス性能の向上、電子戦システムの強化、赤外線防御システム、赤外線センサー、ステルスタイプの増槽といった要素が開発中だが、2026会計年度予算案の中で新たなアップグレード(要求額は9,034万ドル)が発表された。

出典:Gen Mark Kelly
このアップグレードは低観測性、シグネチャ管理、パイロット・ビークル・インターフェース、対抗措置、ヘルメット、暗号化通信のアップグレード、合成開口レーダー、サイバーセキュリティ、赤外線防御システム、発射されたミサイルの検出能力向上、進化する電子戦の脅威に対抗できる電子戦システムの強化といった要素で構成され、米空軍は「F-22Aに追加の情報認識力と任務効果を向上させる技術が組み込まれ、統合作戦における能力を強化する」と説明している。
War Zoneは「2026会計年度予算案の中で明かされたアップグレードは発表済みのものとは別ものだ」と述べているものの、新たなアップグレードの構成要素は具体的な内容が提供されていないため想像の範疇を超えることはないが、2026会計年度予算案の別項目=Crewed Platform Integration programでは「既存の航空機に対するCCA関連の改修資金」を要求しており、このプログラムは「F-22AでCCA制御を可能にするための機器調達、統合、試験、認証、通信統合、ソフトウェア更新、訓練などが含まれる」と説明。

出典:U.S. Air Force
計上された1,500万ドルの内、1,220万ドルが142台のタブレットと関連ケーブルの調達に充当され、War Zoneも「F-22AはCCAと協調する最初の戦闘機になる」と指摘しており、遅くとも2020年代末までには有人機と無人機の協調能力が実戦配備されるだろう。
因みに有人戦闘機に随伴可能な無人戦闘機=ウイングマンは有人戦闘機の役割を奪うものでもなく、有人戦闘機に随伴して飛行することで「有人戦闘機が行使できる能力を拡張する存在」「有人戦闘機のペイロードを直接拡張するのではなく無人戦闘機を随伴させることで追加のペイロードを利用できる」「無人機闘機を100km先行させることで追加の状況認識力をもたらす」「囮として有人戦闘機の生存性を向上させる」ものだ。
AI技術による無人戦闘機の自律性も、パイロットが操縦する有人戦闘機のように無人戦闘機を操ることではなく「随伴飛行の制御を容易にするもの」「事前に設定されたミッションセットの範囲内で自律的な飛行を可能にするもの」でしかないので、高度なAIが搭載された無人戦闘機が有人戦闘機の代わりに敵戦闘機と自律的に交戦したり、激しいドッグファイトを演じるというのは想像力の中にしか存在しない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force
>高度なAIが搭載された無人戦闘機が有人戦闘機の代わりに敵戦闘機と自律的に交戦したり、激しいドッグファイトを演じるというのは想像力の中にしか存在しない。
ゴーストX9のことかー!!
差し当たりは、オトリ兼ミサイルランチャー、という理解で良いのでしょうね。
機体の大きさから航続力が不足するだろうから、事前配備なのでしょうね。
なんとなく、それだけで相手方に意図を読まれそうな気もしますが。
ミサイルランチャーということは、数を持たないと、ですね。
事前配備の場所でミサイルの整備はあまり期待できないだろうから、
予めミサイルをコンテナに封印しておくのかな。
ひょっとすると、無人機そのものもコンテナ封印なのかな?。
発進のためにそれなりの滑走路が必要でしょうから施設部隊も大変ですね、きっと。
色々と大変そうな気がします。
それなりにペイロードが有って、随伴+先行の航続距離とエンジン性能が有って…。
電子兵装もそこそこ積んだら有人機よりましでもお安くなる未来は見えないような。
動かない又は低速で2次元運動しかしない地上目標を攻撃するのと違って高速3次元機動する対戦闘機戦では必要となる性能の最低値が高くてとてもじゃないけど損耗可能なお値段に納まるとは思えないよね。
特に第6世代機に共通する長大な航続力を生かすためには同等かそれ以上の航続力と速力が無いとそもそも随伴出来ないから使い物にならない。
低性能な無人機に合わせて有人機の機能性能が制限されるなんて本末転倒。
勿論戦域環境や使用目的にもよるんだろうけど、同等の技術LVの敵主力と交戦する状況を考えるとチープキルはあまり期待できず技術LVや性能の高さがモノを言う状況になるんじゃないかな、と。
センサー機とキャリア機とジャマー兼デコイ機はそれぞれ別でしょう。
(もちろん有人機が危険に晒されればセンサー機とだろうとキャリア機だろうとデコイにして有人機を守る局面はあるだろうけどそれはまた別の話)
F-22はこのまま放置で全機退役かと思ってたので意外
LMが株主向けに公表した、政府に対するF-22とF-35へのNGAD用技術の適用提案を採用する方針なんですかね。
トランプ大統領がサウジアラビアで公言しましたが大いに乗り気の様子だったわけで、現米政権おいて彼の意向に逆らえる閣僚スタッフはいないのでは。
さすがにF-35への適用は更なる混乱の元になりそうで現実的とは思いませんが、既存機のアップデートになるF-22では有り得る話なのかとも思います。
機体規模があり、飛行性能も高く敵対環境下でも(全く安全にではなくても)活動可能。やっぱりこんな機体が必要になったので白羽の矢が立ったというか頼れたのがF-22だけだったような気はします。
個人的に数年前にはミサイルキャリア随伴機の時代が来てF-22の機体規模はむしろ持て余さないかとか思ってましたが、F-35のあれこれを見ていると兵装以外の点で機体規模が必要になりつつあるのでしょう。
正直結構驚いてる
F-22自体はかなりポテンシャルがある機体(空対空ならF-35含めても世界最強だと思う)けど、ソフトウェアがAdaでアップデートし難い上に、ステルス塗料がF-35みたい吹き付けて終わり!じゃ済まないから、このままF-47にバトンタッチするかと思ってたわ
ステルス塗装はF-22が塗装でF-35はシート化して扱いやすくなったと思っていたのですが違ってましたか
>1,220万ドルが142台のタブレットと関連ケーブルの調達に充当
なにげにパワーワードだな。
無人戦闘機が常に操縦が必要なラジコンならともかく
こっちについて来い、このミサイルを撃て、みたいに指示するだけなら極端な話スマホでもいいからな(基地局みたいな機能は機体に内蔵しないとならんだろうが)
アナログ計器とタブレットが共存するコクピットは、中々カオスな状態になりそう
さすがにF-22は最初からグラスコクピットですけどね。
HUDは、生き残ってるけど。
だったらどこかのディスプレイに無人機操作モードを付ければというとそのソフトウェア追加がもう人月的に無理でポン付けになるんでしょうな。
大雑把に1機あたり1300万円ですね
民間用ではない産業用の信頼性が極端に求められる物(例えばGetacのF110)だと、日本円で380万円もするので、軍用向けのカスタマイズ、キッティングや保証まで含めるとまあこんなもんではないかと
私も仕事で産業用の128GBのSDカードを買ったことがありましたが、50万円もした代わりに寿命が100倍、どれだけ残り容量が少なくても転送容量が大きくても一切転送速度が変わらんかったので値段相応ではあります