米陸軍はレイセオンとジャベリン供給契約を締結、この契約は2023年度~2026年度をカバーする複数年契約で毎年の調達数は未確定だが、今後3年間に米軍および国際的な顧客向けに最大72億ドル分=約1兆円分のジャベリンを購入する予定らしい。
参考:Army announces contract award for Javelin Missile System
参考:Pentagon to spend up to $7.2 billion on combat-proven Javelin anti-tank missiles
参考:ABD’den rekor tutarda Javelin Füzesi siparişi
6,000発まで引き上げ可能な生産量を3,960発に抑えたのは「長期的に年間6,000発の需要が続く」という保証がなかったため?
米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は「ウクライナ侵攻以前に米軍は2万発~2.5万発のジャベリンを備蓄していたが、約1/3に相当する7,000発をウクライナに提供(昨年4月段階の推定値)した」と指摘しており、ジャベリンを生産するレイセオンは「年間生産量を現行の1,000発から6,000発に引き上げ可能」と主張していたが、生産量を6,000発に引き上げるのに1年以上の準備期間が必要で、発注から納品までに32ヶ月かかる時間を考慮すると「7,000発のギャップを埋め戻すのに3年~4年はかかる」と見積もっていた。
米陸軍が4日にレイセオンと締結した契約には「初年度分10.2億ドル」の資金供給が含まれており、この資金には「2026年末までに生産量を3,960発に増やすための資金が含まれている」と報じられているため、7,000発のギャップを埋め戻すのに「3年~4年」ではなく「4年以上」かかる見通しだ。
一般的にジャベリンの調達コストは1発20万ドル(2023会計年度は1発40万ドルに調達コストが高騰している)と言われており、単純に1発20万ドルで72億ドル分のジャベリンを2026年までに発注(3.6万発分)すれば、全てのジャベリンを納品するまで10年以上もかかる計算で、つまり契約の上限額に設定された72億ドル分のジャベリンを発注しても直ぐ手元に届く訳では無い。
6,000発まで引き上げ可能な生産量を3,960発に抑えたのは「長期的に年間6,000発の需要が続く」という保証がなく、生産整備の拡張や増員する労働力の人件費に大金を投資するだけの確証が得られなかったのだろう。
因みに本契約は名目上2023年度~2026年度をカバーする複数年契約だが、2023年会計年度は既に発注(582発)が終わっているため、72億ドルの契約下で発注が行われるのは2024年度からの話になる。
関連記事:ウクライナ支援で減少した米軍備蓄、ジャベリン7,000発の補充に最低でも3年
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Jennessa Davey
1年くらい前に「増産できても1年後」って聞いたときは「遅すぎ!!」って思ったけど1年くらいすぐ経ったし戦線も膠着して消耗が落ち着きましたね
6,000発まで引き上げ可能なジャベリンの生産量を3,960発に抑えたと言う事は「長期的に年間6,000発の需要が続くという保証が無い=そう遠くない内にウクライナ対ロシアの戦争は終わる」と米側が判断したかも知れないので、非常に注目すべき動きです
実際、太平洋戦争末期の1945年2月に米海軍が建造予定だった軍艦の契約を次々とキャンセルし始めた事を知った日本海軍軍令部は戦争は最終段階と判断して全生産能力を特攻兵器に振り向けた史実が有ります
つまり、これから始まる見通しのウクライナ軍の反攻で戦争は終わる可能性、それもウクライナ軍が事実上勝利すると米側が見積もっているのでは?
(ロシア軍の消耗状況を考えると例えバフムート以外の地域が陣地化出来ていても、その陣地の防御力と配置される部隊の戦力は不充分で有る可能性が高い)
ジャベリンの現在の使用頻度は開戦初期と比較してどうなのでしょう?
現在使う機会が多くないのであれば戦争がまだ継続するという判断と
生産力を最大まで引き上げないことは矛盾しないと思います。
ウクライナはUCAV等、他の対地/対戦車攻撃手段も入手し、最近の戦況的にもジャベリンの消費量は当初より減少してしていた可能性が高いです。
昨年10月時点で、歩兵携行型対戦車兵器はジャベリンだけで8,000発以上が提供されてますが、状況的に在庫が心もとなくなり早急な追加提供が必要とは考え難い。反攻戦に必要とされる見積り数量は現在確保済みじゃないでしょうか。
>6,000発まで引き上げ可能なジャベリンの生産量を3,960発に抑えたと言う事は
こーゆー時「MAXの見積もりプラン」は滅多に採用されないよ。
一言で「引き上げ可能」といっても増産規模によって機材の追加と多少の残業対応で済むのか、建屋の新設と退職者の再雇用や延長が必要なのか、要地の買収や大幅な新規雇用が必要なのか、とかで掛かるコストは全然変わって来る。おそらく+5000発の増産に掛かる費用は+3000発の1.7倍どころか2倍やそこらでは済まない。
何より新規に土地や人を増やしてしまうと5年後10年後「増産体勢」が終わった時、減産するのが難しくなる。資本主義の先進国において、「必要以上の拡大拡張」ってのは相当なリスクだからね。
需要(標的となるロシアの装甲車両)が減ったから、そこまで供給を増やさなくてもって感じなのかも知れませんね。
ソフトスキンに使うには、値段的にも重量的にもちょっと使い辛いでしょうし。
今主力のT-62とか今後出てくる予定のT-55ならジャベリンじゃなくても事足りるからな
いんや、1,2GEN MBT あたりでもジャベリンだから必ず抜ける訳じゃないし、ヒットしても沈黙するかどうかはまた別モンですね。歩兵携行の縛りは大きい。
同威力で射程も柔軟性も高いスイッチブレード600もあるから、開発が20年以上前のジャベリンの調達にあまり熱心じゃないんでしょうね。
アメリカって軍事費を4%増やして100兆円!(8130億ドル)にしてるけど本当は軍縮傾向じゃね?
だってジャベリンは20万ドル→40万ドル(5400万円)で2倍になってるもん。
武器購入価格の暴騰が軍事費増額分を食いつぶして余りあるっしょ。
>6,000発まで引き上げ可能な生産量を3,960発に抑えたのは「長期的に年間6,000発の需要が続く」という保証がなく
これに関しては現状開発中で25年に初期運用能力獲得予定のG型次第だと思う。一応、目玉は非冷却式のシーカー導入がある。それにコスト低減含めジャベリンの性能を上げるミサイルだから旧式のミサイルが性能に劣り互換性のない部分でのコストの無駄とか考えると制限掛けたくなるだろう。モデルチェンジが近い製品のユーザー側の買い控えやメーカーの受注制限とか有る話だと思う。
去年辺りG型の射撃失敗して原因追及中だけど、中国とかの情勢とか含め様々な要因が絡んで軽量で性能に優れるG型を早々に採用したいって思惑は有ると思うしメーカー側だって結構なドル箱になりそうな商品開発をライバルが増える前に頑張ってすると思うんだよね。
いんや、1,2GEN MBT あたりでもジャベリンだから必ず抜ける訳じゃないし、ヒットしても沈黙するかどうかはまた別モンですね。歩兵携行の縛りは大きい。
ロシア製兵器の様な代物を相手にする場合、完全沈黙させる必要はないとも言います。
部隊間連携や部隊支援、回収修理体制、足回りや細部の安定性に問題がある勢力を相手にする場合、こうしたものがヒットすれば兵士が慌てて逃げ出して車体を放置してしまう可能性が結構出るのだそうで…まあ、戦車兵としても被弾の後にどんなトラブルが続発するか分からないですからね。なので思っていたよりも戦果が大きい(誘爆や機能不全化に加えて、まだまだ使える車両すらもうち捨てられてたり)とも言われている様です。
相手の不手際という不確定要素を戦力に反映させるのはかなり悪手というか、基本的には博打以外では最大限の戦力で計算するのが常識なので…
米軍はジャベリンを2050年まで使える程に有用(耐用期限まで大量に蓄積する価値がある)と見ているが、流石にそれだけに任せるという訳でもなく色々と模索もしている様です。
また、ジャベリン自体もLWCLUの改良改善が進んでおり、これらは2025年以降に本格量産化するとも見られています。
ジャベリンは有用ですが、割と高い装備でもあります。非装甲や軽装甲ターゲットならばドローンやより安い手段を活用する事も考えられます。そうした歩兵携行装備の価格帯階層化が進んでいくのかも知れませんね。
歩兵携帯武器としてのジャベリンだけでなく、米軍は、装甲車両や戦車に装備して、対空や攻撃オプションとして、ジャベリン使用していますから、歩兵携帯よりも車両装備としてつかわれていきそうです。
ロシア軍の戦車専用装備のほうが、能力と費用は安くつくれるでしょうが専用弾だと、使われる場面がないと無駄になるために、アメリカ軍はジャベリンで、歩兵にも装甲車両にも、戦車にもジャベリン装備できるようにしてジャベリンを戦場にもっていっても、無駄なく活用できるようにしていますね。
これまでみたく全部がジャベリンである必要もなく対戦車UAVに比べ費用対効果も悪い。LOAL化と射程延伸化も頓挫で機能拡張で見切られてる感も強い。個人携行の重量制約は如何としがたい。
米陸海兵の場合は車載のヘルファイアのUAV連接のほうが向いてるだろう。ジャベリンは最終手段で確実性は高いが、UAVで戦場可視化の進む将来は短射程すぎるはず。APS突破の機能付与もサイズ制限で実現が難しい。
それでウクライナ供与も費用対効果に劣り照準装置の整備問題も相まって対戦車UAV化がどんどん進むはず。運用現場としてもロット毎に現場意見が反映されてく対戦車UAVのほうが好まれるだろう。
あとレーザー誘導がやっぱり使えるの判明して安価で小型で量産性も高く瞬間交戦できる87式ATMみたいのが戦間期には向いてる。ジャベリンは平時備蓄向けだね。
生産量が抑えられたのは「もうロシアの装甲車両そんなに無くね?」となったからかもな
砲迫や自爆ドローンへの対抗策に力を入れるのでは?
ぜひレイセオン日本工場を作って欲しいなぁ。
ジャベリンの後継モデルの開発状況を横目に観た結果なんだろうな