米防衛企業の経営者らはAir Space & Cyber Conference 2026で直面している問題点について赤裸々に語り、ある防衛企業の経営者は「紛争初日における備蓄量は重要な要素の一つに過ぎず、本当に重要なのは備蓄が紛争の推移についていく能力だ。我々の調達ペースに合わせてくれる敵など一度も見たことがない」と指摘した。
参考:US military must focus on ‘right mix’ of weapons amid stockpile concerns: Official
本当の意味での戦争準備は「正面装備の充実」ではなく「産業基盤全体が継続的に武器や弾薬を生み出せる能力の充実」を指している
FIRE POINTのデニス・シュティレルマン氏は戦術弾道ミサイル=FP-7がATACMSの約半分=50万ドル~75万ドルで実現できる理由について「兵器の価格が高価になる大半の理由は官僚的な手続きのせいだ」「これはFIRE POINTだけではなく世界の防衛企業に共通する負担だ」「ボーイング747は構想から最初の商業飛行まで6年、エアバスA380の場合は25年もかかった」「これは全て官僚的な手続きのせいで誰にも必要とされていない書類を作るため無数のエンジニア、弁護士、マネージャーが必要になる」「さらに手続きに必要なテストにも何年もかかり、この全てのコストが最終価格に加算されるのだ」と指摘したことがある。
ウクライナ当局は2022年9月「兵器の実用化や導入にかかる1年半〜2年の承認手続きを数週間~数ヶ月に短縮する」と、2023年3月「数ヶ月間を要する書類審査からドローン製造企業を免除する」「ドローン製造企業に対して25%の利益率を保証する」と、2023年10月「国防省は開発された製品テストを完了後『最大10日間』で部隊配備を承認する」と発表し、これらの措置についてシュティレルマン氏は以下のように述べた。
“政府が長距離攻撃兵器に『官僚的な手続きが極限まで簡略化されたドローン審査の枠組み』を適用したのは正しい判断だった。FIRE POINTは全ての製品をドローンとして登録している。FP-5もFP-7も書類上は全てドローン扱いだ。今の我々に古い開発手法の手続きを行っている時間的余裕はない。もし軍の官僚主義が作り出した規則に従っていたら、我々は未だにFP-1のテストを行っているだろう”

出典:Air Space & Cyber Conference
米防衛企業の経営者らは14日に開幕したAir Space & Cyber Conference 2026で軍や防衛産業が直面している問題点について赤裸々に語り、空軍勤務時代にターゲティング・アナリスト(司令官が最適な攻撃意思決定を行えるよう、収集された情報を基に標的の選定から効果の評価までを分析・構築する役割)として劣悪なソフトウェアが任務の失敗や人命に直結する実態を目の当たりにし、政府・国防分野向けのカスタムソフトウェア開発企業=Rise8(ライズ・エイト)を創業したブライアン・クローガー氏は「我々の防衛産業はソフトウェアに関しハードウェアよりも不得手だ」と指摘した。
“ウクライナ紛争では戦場での適応が数ヶ月や数年単位ではなく数時間もしくは数分単位で求められている。我々は歴史的に見てもソフトウェアに関して非常に不得手だった。場合によってはハードウェアよりもソフトウェアの構築に時間がかかっていることさえある。これは本当に異常な事態だ。長距離飛行を行う航空機に空中給油能力を組み込まないなんてあり得ないが、エンタープライズITの世界では航空機の空中給油能力に匹敵する初歩的な問題、すなわち前線にソフトウェアを継続的に供給していく能力をどのように構築するか真剣に考えてこなかった。この問題について十分な注意が払われておらず、我々は今すぐこれに着手する必要がある”

出典:U.S. Army photo by Spc. Jonathan Reyes
“ソフトウェアの開発サイクルはハードウェアの開発サイクルから完全に切り離さなければならない。前線からの要求に応じて即座のアップデートを提供できるよう、我々は1日に複数回のデプロイ(展開)を行えるようにする必要があるのだ。必要になったその瞬間にアップデートを提供するためにだ”
今年6月に長距離・長滞空無人機のULTRAやULTRA Turboを開発しているDZYNE Technologiesを買収し、Ondas Sentinel(オンダス・センチネル)を設立したライアン・ハートマン氏もクローガー氏の指摘に同意し「紛争初日における備蓄量は重要な要素の一つに過ぎず、本当に重要なのは備蓄が紛争の推移についていく能力だ。この業界に27年間身を置いているが、我々の調達ペースに合わせてくれるような敵対勢力など一度も見たことがない。そのため我々は自らの調達ペースを紛争の推移に合わせていくこと、その中で有効性を維持するために必要な適応力をもたらすものにしなければならない」と指摘した。

出典:Ondas Sentinel
クローガー氏とハートマン氏は「政府と産業界がどのように協力して備蓄のボトルネックに対処すべきか」という難問に(実現性は置いておくにしても)極めてシンプルな解決策を提示しており、クローガー氏はRise8が直面している最大のボトルネックは「運用承認権限をもつ担当役人のカレンダー」だという。
Rise8のソフトウェア開発にかかる時間の約80%はAuthorization to Operate=政府や軍のネットワーク環境下でソフトウェアを稼働させるための運用承認(ATO)を待つことに費やされており、これはATOのために必要なテストや審査にかかる時間ではなく、ATO権限をもつ担当役人のカレンダーの空きにスケジュールを入れてもらうための待機時間のことで、仮にATO担当役人のカレンダーの空きを押さえるのに6ヶ月間かかるならソフトウェアの稼働に6ヶ月間足止めを食らうことなる。

出典:U.S. Army photo by 1st Lt. Marcelo Marta
そしてATOのテストや審査の段階で修正点が見つかれば、再審査のためATO担当役人のカレンダーの空きを押さえるのに6ヶ月間待たなければならず、クローガー氏は「これがATO取得に12〜18ヶ月ものサイクルがかかる原因だ」と述べ、つまりソフトウェアの開発能力とATO担当部門のテスト・審査能力が釣り合っていないため構造的なボトルネックが生じてATO取得サイクルに時間がかかりすぎるという意味だ。
ハートマン氏にとって米防衛産業におけるボトルネックはよりシンプルで「第一にサプライチェーン、第二にサプライチェーン、第三にサプライチェーン、そして第四にテストだ」といい、今後数年間でより有利な態勢を構築するのに政府と産業界が取るべき最も重要な行動について「紛争が始まる前に生産能力を確実に確保しておくことだ」と述べた。

出典:Anduril
政府が成果主導型の結果を求めるようになったことで防衛産業界は既得権益をもつものだけのものでなくなり、ソリューションベースで拡張可能な製品を提供する企業に契約が与えられるように変わりつつあるが、自国が敵の攻撃に晒される戦時下ではないためウクライナのような劇的な変化からは程遠く、ハートマン氏が指摘する「紛争が始まる前に生産能力を確実に確保する」というのは理想的でも現実的には困難な注文だが、それでも現状を変えようと試みる存在には希望を感じるし、本当の意味での戦争準備は「正面装備の充実」ではなく「産業基盤全体が継続的に武器や弾薬を生み出せる能力の充実」を指している。
もうウクライナ侵攻以前の世界と現在では安全を担保するための物差しが決定的に異なっており、セント・アンドリュース大学のフィリップス・オブライエン教授も「戦争が始まった当初『ロシア軍はウクライナ軍に比べて優れている』『ウクライナは敗北確定だ』と誰もが思っていたが、それは『ロシア軍がウクライナ軍よりも規模が大きい』という以外に根拠がなく、現在もロシアはウクライナとの戦争を続けている。開戦から4年以上が経過して100万人から130万人の兵士を失ったにも関わらず戦場での前進はほとんどない。時間の経過に伴い広範な角度から戦争を見つめ直せば何が重要だったかがよく分かる」と指摘している。

出典:Сливочный каприз
“特に重要でなかったものの1つは個別の戦闘の結果だ。ある地域で一時的に政治的・軍事的な勝利を収めても、それが戦争の帰趨を決めるわけではなかった。戦争の帰趨を左右しているのは戦力の回復や兵站といったシステムの問題だ。ロシアも米国も戦争を始めた大前提は『自分達が敵よりも強い』という単純なハードパワーに関する根拠のみで、戦争を仕掛ける国の複数要素を総合的に見て『その国家がどれほど強力か』を判断していたわけではない”
“ある程度の期間戦争を続けるには盤石な経済的・技術的強国である必要があり、リーダーシップ、政治体制、社会的一体性、同盟関係を考慮しなければならない。誰が味方なのか?誰が一緒に戦ってくれるのか?これらのさまざまな要素を横断的に理解して初めて『国家の強さ』についてより良い理解が得られる。さらに言えば『戦争開始時の軍事力の規模』を当てにするのは止めたほうが良い。戦争開始時の軍事力の規模は通常『戦争の結果』にあまり関係ない。たまに重要な指標になることも無くはないが、大抵の場合はこれらの戦力は絶えず回復して変化していくため、これに囚われ過ぎるのは無意味だ”

出典:Fire Point
本物の総力戦はコスパや合理性だけでは計算できない部分があり、抵抗のため損害や不自由を甘んじて受け入れる国民の支持がある国に軍事力で政治的意思を押し付けるのは本当に困難だ。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Cpl. Joshua Barker





















なんか数ヶ月前にも書いた記憶があるけど、そういう「必要とされていない書類」を軽視した結果がロシアに攻め込まれるような隙を作った汚職大国ウクライナなんで中々に難しいところである
米国のテスト地獄だって元々はメーカー側が適当やってたせいだし
定期的に制度の棚卸しが必要ってことなんかね
戦争は兵器で戦うのではなく、システムで戦うのです
兵器を使うのは人で、それをよりよく使ってシステムを構築するためには軍が兵器の出来ることと出来ないことを把握しておく必要があり、そのための官僚的な書類審査と性能評価があるわけです
迎撃ドローンの登場でゲラン2は容易に撃墜されるようになりましたが、迎撃システムを解析すればそれを回避する攻撃システムも構築出来るため、未だにザポロジエやハリコフに対してはゲラン2は十分な驚異です、そしてそれで対応出来ない部分のためにゲラン5が開発されたわけです
このようにシステムの分析と適応は軍の仕事であり、そのためには兵器の限界をよく知る必要があります、そして資本主義とIT産業ではるかに遅れたロシアですらこのような中央集権的なやり方で達成しているわけです
記事の話は正直なところ政商が新型商品を売り込む殺し文句のように感じます
防衛関連だけじゃないんですよね。
どの産業でも同じで、すごい当たり前の話しなわけです。
必要無い手続きと必要な手続き選別が出来ないからKC-46の惨事じゃないの?
発言で一番言いたい事は25%の利益率を保証する。ってところなのでは…
その747が墜落した時の血で作られた規則もあるんだけどな
「というわけで諦めるなよ、台湾君!」とでも言いそう。
・・本当に言ってることが、こないだ映画館で観た映画の
「開戦前夜」
の中で若い俳優たちが言ってるセリフと瓜二つで・・・。あの映画観た人はここのこの記事読めば数倍理解度が深まるでしょう。80年前の日本の話と、現代のアメリカの話がほとんど同じ、何も進歩していない、むしろ退化してる気さえする。生成AIを駆使して作戦立てた結果がこれ・・・。要するにこういう根本的な話は生成AIを駆使して解決できる話ではないということですね。それ以前の問題なので・・・。
無駄な会議と無駄な書類と山のようなハンコ、あちこちで要請で仕様変更
「顧客の求めるもの」にはならないのが仕事ってものです・・・
とりあえず。へたっているF-15Jの退役加速させてF-35Bの追加調達60機ぐらいして必要なら米海兵隊に売れる契約かな
F-35Bのラインが閉まるから予備機の追加調達しておいた方が良いのもあるしねー
F-15Jの代替にF-35B?
元々Pre-MSIPの更新はF-35Aの予定だからライン閉まる前の念のための追加予備機ふやすだけですね。
3飛行隊ふやせるぐらいだけど>予備機(建前)
日本で使わない場合アメリカ軍に売るのも念のための余剰って側面が大きいです。
そこら辺の予備機とかふやしても問題は比較的出ないしね。
「1日に数回デプロイ」はIT屋でもCI/CD環境を用意しないと実現が難しいですから、現代のソフトウェア開発のノウハウをドローン用ソフトウェアに採用するのは妥当だと思います。
もちろんソフトウェア不具合による文鎮化を防ぐ手段とセットでなければ難しいのですが。
一方、B-21は高額兵器システムの将来の手本となる状況で進んでいますが、初期作戦能力獲得(ICO)または完全作戦能力(FOC)が実現したときに可能な範囲で開発プロセスを開示してもらいたいですね。
(1) 空軍の迅速能力局 (Rapid Capabilities Office: RCO)がプログラムを統括していて通常の国防省調達と承認スピード異なること
(2) ビジネスジェットをテストベッドにしてハードウェア、ソフトウェアの十分なテストを実施
(3) デジタルツインベースで承認を実施
(4) 上記の仕組み作りで量産仕様を生産してテスト