アメリカ国防安全保障協力局は、米国製防衛装備品の価格競争力を取り戻すためFMS(対外有償軍事援助)の改革に乗り出した。
参考:3 ways the Pentagon wants to make buying American weapons easier
対外有償軍事援助の改革で日本のF-35導入費用が安くなる?
米国の防衛産業が製造する装備品を海外の国が調達しようとした場合、もっとも代表的な方法は米国防総省が行っている「Foreign Military Sales(FMS:対外有償軍事援助)」だ。
日本もFMSを通じて、これまで多くの米国製防衛装備品(F-35Aやイージスシステムなど)を調達してきたが、FMSの実質的な管理組織である「アメリカ国防安全保障協力局(DSCA)」は現在FMSの改革に取り組んでいると言う。
FMSとは海外の国が米国の防衛産業が製造する装備品を調達する際、企業と直接取り引きを行うのではなく米国政府が窓口になるという仕組みでFMSを通じて輸出される兵器の管理や保証を米国政府が行うという意味だが、逆を言えばFMSを通じて装備品を調達すれば装備代金以外に手数料を請求されることになる。

出典:public domain F-35A
米軍向けのF-35Aの価格と日本(米国以外の国)が導入するF-35Aの価格に差が生じるのはこのためだ。
DSCAは米国製防衛装備品に一律的に課していた3.5%の手数料を2019年6月以降、3.2%に引き下げ輸送費に関してもコストを削減(具体的な数値は不明)した。
補足:FMSを通じて調達される米国製防衛装備品は、製造企業が一旦、米軍に納品しチェックを受け、米軍の手で購入国まで輸送され引渡されるまでは米軍所有の扱いになる。最近、日本に引渡しを行うため飛来したE-2Dに米国の国籍マークが描かれていたのはそのためだ。輸送費はこのような部分に掛かるコストのことを指している。
米国は2017年、FMSを通じて419億ドル(約4兆5,550億円)もの防衛装備品を輸出し、約14億6,000万ドル(約1,580億円)もの手数料(3.5%)を手に入れたが、これを3.2%に減らすと約13億4,000万ドル(約1,450億円)になる。
さらにDSCAは、FMSで締結された契約の管理という名目で1.2%の手数料を課していたが、これも1.0%に引き下げることを予定している。
特にFMSの手数料の部分については謎が多いため正直良くわからない部分が多いが、DSCA局長のチャールズ・フーパー中将によれば「このような取り組みでコストは削減され「約15%」ほど防衛装備の導入費用が削減できる可能性がある」と言っている。
では、なぜ米国はこのような取組みを始めたのか?
FMSを通じた調達方式が米国製防衛装備品の価格競争力を損ない潜在的な米国製防衛装備品の顧客(国)をロシアや中国に奪われているという現状と、防衛機器市場が「売り手市場」から「買い手市場」へと変化していることに対応するための措置だという見方が強い。
上記のような改革に加えDSCAは米国製防衛装備品のカスタム=調達国のニーズに合わせて仕様変更にも対応し、調達国からの技術移転要求や再投資(オフセット契約)にも迅速に対応(関連機関との協議や調整・承認手続きの迅速化・簡略化)していくと話しており、これまでに殿様商売が完全に通用しなくなっていることを示していると言える。
果たして米国のFMS改革は本当に実行されるのか?
米国製防衛装備品を調達する国が恩恵を受けることが出来るのか?
日本も影響を受ける部分なので非常に注目される部分だ。
※アイキャッチ画像の出典:航空自衛隊
調達国からの技術移転要求(オフセット契約)にも迅速に対応とあるが、技術転移では無く、ミサイルとかの互換性の為の規制緩和なのだろう
現行であれば米国機でなければ米国製ミサイル等は装備出来ない。
でも各国が国産機体を自主開発する時代でそれはでは利益が失われてしまうから。
でもどこまで緩和するかは疑問。