米国関連

米海兵隊、イスラエル製の徘徊型弾薬を搭載した無人艇LRUSVを公開

米海兵隊はイスラエル製の徘徊型弾薬「Hero-120」を統合した長距離無人水上艦の取得を予告していたが、Hero-120ランチャーを搭載するメタルシャーク製のLRUSVを公開して注目を集めており、両者の組み合わせは理に叶ったものだ。

参考:Long Range Unmanned Surface Vessel Capabilities

徘徊型弾薬は位置が判明した目標に使用する対地/対艦ミサイルとは運用思想が異なる

イスラエル企業のUvisionは2021年「米海兵隊からカミカゼドローンと呼ばれるHero-120の供給契約を獲得した」と発表、この契約にはLAV-M、JLTV、LRUSVへのHero-120統合作業も含まれており、米メタルシャークが開発を進めているLRUSV=長距離無人水上艦へのHero-120統合が当時注目を集めていたが、米海兵隊はHero-120を8発装填できるランチャーを搭載するLRUSVを公開した。

出典:U.S. Marine Corps photo by Sgt. Kealii De Los Santos

Uvisionが開発したHeroシリーズは幾つか種類(歩兵携帯型、車輌発射、艦艇発射、空中発射型)があるものの、米海兵隊が採用を決めたHero-120は4.5kgの弾頭を搭載して約60分間飛行(飛行距離にすると約40km)することができる電動推進タイプの徘徊型弾薬で、米海兵隊はLRUSVについて「海上もしくは陸上の目標を正確に破壊可能な徘徊型弾薬を運搬できる長距離航行が可能な半自律タイプの艦艇で、主にISR任務のプラットホームとして機能する」と述べている。

徘徊型弾薬は特定空域を長時間徘徊することで味方の戦場認識力を拡張し、その過程で発見した目標に自爆攻撃を仕掛けることも出来るため、根本的に位置が判明した目標に使用する対地/対艦ミサイルとは運用思想が異なり、ISR任務向けの無人プラットホームとHero-120の組み合わせは理にかなったものだろう。

トルコ海軍もMeteksan Defenseが開発を進めていた無人水上艇「ULAQ」の対水上戦タイプと対潜戦タイプの導入を決め、捜索救難タイプのULAQもLIMA2023で公開され注目を集めているが、徘徊型弾薬を搭載するULAQが登場するも時間の問題で、この手のプラットホームに関心を示す国は確実に増えるはずだ。

小型の無人艦艇も有人の大型艦艇と競合する関係ではなく、互いに不足する部分を補う関係なので「弱者の兵器」と見なすのは間違っていると思う。

関連記事:米海兵隊、水陸両用戦闘車や無人水上艇にイスラエル製のカミカゼドローンを統合

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Marine Corps photo by Sgt. Kealii De Los Santos

戦いが激減したバフムート周辺、前線に大きな変化がない状態が続く前のページ

マレーシア海軍の大型OPV、イタリア、UAE、トルコ、韓国が設計案を披露次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ゼレンスキー大統領はワシントンに向かい、米国はパトリオットシステム提供を準備中

    米CNNは「ゼレンスキー大統領がバイデン大統領と会談するためワシントン…

  2. 米国関連

    迎撃コストの逆ザヤ解消を狙う米陸軍、1600万円以下の新型ミサイル試射に成功

    米陸軍戦闘能力開発司令部(CCDC)は10日、1キル15万ドル以下を実…

  3. 米国関連

    中国牽制目的?米国、条約失効に伴い「日本へ中距離ミサイル事前配備」検討

    1987年に米国とソ連の間で締結され、30年以上維持されてきた中距離核…

  4. 米国関連

    抑止力の欠如、中国がハワイやグアムを攻撃してもNATO第5条の適用外

    CNNは30日「もし敵国がハワイ諸島のパールハーバー海軍基地、ヒッカム…

  5. 米国関連

    米軍、複数の空対空ミサイルを運搬可能な空中発射型UAV「LongShot」開発を発表

    米国防総省内部の部局で軍事利用可能な最先端技術の開発を行っている国防高…

  6. 米国関連

    米国、積極的に同盟国の次世代戦闘機開発に協力して相互運用性を確保すべき

    米国の安全保障問題を専門に取り扱うシンクタンク「新アメリカ安全保障セン…

コメント

    • おわふ
    • 2023年 5月 25日

    もがみの改良型にも徘徊型弾薬を装備してくれんかな。

    15
    • ブルーピーコック
    • 2023年 5月 25日

    駆逐艦による海峡や沿岸での任務の際に、周囲を警戒させるのに良さそう。テロリストがコールの時よりも高度な手段を用いてきたら防げないかもしれないが。

    3
    • 通りすがりの動物号
    • 2023年 5月 25日

    徘徊型兵器の自動帰還はどうなっているのだろう。燃料切れで敵に鹵獲されたら困るから何がしらの対策をしているだろうが。

    4
    • ミリオタの猫
    • 2023年 5月 25日

    これ、海上自衛隊だけでなく海上保安庁も導入した方が良いかも知れませんね
    特に尖閣諸島方面等の海上哨戒用として、巡視船に搭載出来る小型艇に徘徊型弾薬を搭載すれば海上哨戒能力が飛躍的にアップするし、ミサイルと違って攻撃する必要が無くても使える(海保的にはここが重要)為、停船命令を無視したり巡視船や海上保安官に対して攻撃して来る船にだけ応戦すると言う柔軟な運用法が出来るから、海上での警察力行使にも徘徊型弾薬は向いているかも知れません

    21
      • TA
      • 2023年 5月 25日

      巡視船を無人艇の母艦みたいに運用出来れば一隻で相当なエリアをカバーできそうですよね
      巡視船→無人艇→徘徊型弾薬

      10
        • ミリオタの猫
        • 2023年 5月 25日

        その通りです
        後、固定翼機やヘリコプターに徘徊型弾薬を搭載して監視範囲を拡大する(この場合、回収は海上の巡視船艇とする)と言う手も有ります

        4
      • ブルーピーコック
      • 2023年 5月 25日

      自爆攻撃しなくても、スクリューを破壊するなり動作不能に陥らせれば海上だとゲームセットですからね。そこまでする相手はそうそう居ないでしょうけども。

      5
        • ミリオタの猫
        • 2023年 5月 25日

        徘徊型弾薬ならピンポイントで相手を狙える為、応用範囲は更に広がるかも知れません
        例えば炸薬量を少なめにした状態で相手船の舳先を狙ったり船体に穴を空ける程度の「容疑者を殺さない程度に制御された攻撃」が可能になります
        これは巡視船の機関砲では出来ない芸当なので、意外に有効かも知れませんよ

        6
      • ガリバタ
      • 2023年 5月 26日

      徘徊型弾薬を海保に装備するのは、さすがにまずいのでないでしょうか。海保は相手に対して法執行する機関なので、なにが法に抵触したかを説明する前に、いきなり攻撃ばできないです。
      臨検中に徘徊型爆弾を放つ?警察官が尋問中に尋問相手に対して徘徊型爆弾を放つみたいになってしまうので、非現実的かと思います。

      5
        • ido
        • 2023年 5月 26日

        海保はこれからも尖閣のパトロールや、北朝鮮の工作船(最近は聞かない)と前線で取り締まらないといけなのである程度の武装は必須です。工作船からRPGが飛んでくる時代ですからね。貴方が危惧している「いきなり攻撃」というのはしないでしょう。もしもの場合等に工作船に対する装備、として使います。あと相手は船ですので後半の例えは不適切かと。警察官が尋問中に人に対して徘徊型弾薬を当てるのと海保が臨検しようとして止まらないからスクリュー等を破損させるために使うのでは全く違います。後半は例え方の方が非現実的だと思いますね。人と船の違いはつけてください。

        6
    • 58式素人
    • 2023年 5月 25日

    LRUSVの最大速度と最大速度での航続距離はわからないけれど、
    Hero-120の60分間、40kmはなんとなく過小なような気がします。 
    遠隔操作(随行)にせよ、自立操作にせよ、ISR任務に用いるなら、
    母艇も徘徊弾薬もスピードと航続距離が必要では、と思います。
    母艇も最大速度も航続距離も大きい方が良いのでは。昔の魚雷艇くらいに。
    例として、Sボートは最高40kt,34ktで900海里ありました。
    Sボートは英仏海峡のパトロールに使われています。
    港湾入り口のパトロールなら、徘徊弾薬の能力が大きければ、母艇は不要でしょうし。

      • VRTG
      • 2023年 5月 25日

      母機のアンテナ高度2m、ドローンの飛行高度100mと仮定すると水平線上に見える限界距離が約40km。
      高度300mでメーカーサイトの Range: 60+ kmくらいになります。

      シリーズ機のHero-30について、Janesに”通信機とLOSに制限され5~40kmの射程(max 185km/h)”という記事があるので、Hero-120も電波の到達距離でしょう

      9
        • 58式素人
        • 2023年 5月 26日

        見通しのことですね。おっしゃる通りと思います。
        到達距離を伸ばそうとしたら、一時的に遠隔操作を離れて、
        プログラムで飛行をしても良いのではと思います。
        帰還のためと、データ転送のために見通し線内に戻る必要はありますが。
        母艇側は、ドローンの予定位置を承知しておけばどうかと。

        1
    • 鼻毛
    • 2023年 5月 25日

    21世紀の魚雷艇になるんですかね

    • うー
    • 2023年 5月 26日

    なんかそろそろ頭が技術の進歩に追い付かないぞ?

    1
    • 素人
    • 2023年 5月 26日

    何か戦闘のルールが変わりそうな気がします。
    今回の宇露戦争で、継続的に使用可能な武器こそ最強ってことが証明されたように感じます。
    安くて簡単に作れて効果的な武器こそがゲームチェンジャーになるんじゃないかと。
    オーストラリア製段ボールドローンに手榴弾信管つけたペットボトルナパーム(無ければガソリンでも可)を大量に使用すれば、ヘルソン、サボリージャ両州で露が必死に作っている塹壕防衛ラインを容易に突破できるんじゃないかと思えてしまいます。
    ドローン自体が鹵獲されも、後方にある制御システムこそが肝要で直接的に機密は漏れない。受動装置鹵獲でもヒントにはなるので制御不能時の自爆機能は付けていて欲しいのですが。

    3
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  2. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  3. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
PAGE TOP