米国関連

米メディア、何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?

フォーブスやフォーリン・ポリシーに安全保障分野の記事を寄稿しているマイケル・ペック氏は5日、何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?という自問に対してM109A7を上回る連続発射と持続発射が可能な点を挙げている。

参考:South Korea’s K9 Howitzer: The Big ‘Gun’ Militaries All Over The World Want

海外市場で入手できる自走榴弾砲の中でK9は最も性能と導入条件のバランスが優れているのだろう

韓国のハンファディフェンスが開発した155mm自走榴弾砲「K9」はトルコ、インド、ポーランド、ノルウェー、フィンランド、エストニアが導入済みで、昨年末にオーストラリアまで韓国と導入契約を締結してK9運用国の一員に加わり「何故これほど多くの国が韓国のK9を購入するのか?」とフォーブスやフォーリン・ポリシーに安全保障分野の記事を寄稿しているマイケル・ペック氏が自問してK9とM109A7を比較した結果、特に連続発射と持続発射の能力がM109A7よりも優れているためだと結論づけているのが興味深い。

出典:Public Domain M109A7 パラディン

K9は米国とロシアが伝統的に独占してきた自走砲市場で競合する存在で、155mm砲弾の弾片や14.5mm徹甲弾の直撃に耐える装甲、地雷の爆発や化学兵器から兵士を守るための保護能力を備えてM109A7パラディン(約38.1トン)より9トンも重いが、強力な搭載エンジンのおかげで最高速度はパラディン(61km/h)よりも速い。

さらにK9とM109Aは自動装填装置とデジタル火器管制システムを採用して短時間の射撃と移動を繰り返すシュート・アンド・スクートに対応しているが、K9は1分間に最大6~8発の連続発射(停車後15秒以内に連続発射した3発の砲弾を同着させることも可能)と1分間に2発~3発の長時間発射を1時間も維持できるため、1分間に最大4発の連続発射と1分間に1発の長時間発射しかできないパラディンよりも支援火力が大きく、現在開発を進めているアップグレードバージョン「K9A2」になると1分間に最大9~10発の連続発射が可能になる。

出典:Hanwha Defense

つまり多くの国が韓国のK9を選択しているのはパラディンよりも連続発射と持続発射の能力が優れているにも関わらず調達コストも安価(約4.8億円)で、M109A7の後継バージョンとして開発を進めている58口径155mm榴弾砲搭載のM1299と同等の最大9~10発の連続発射が可能なK9A2の存在、最大40km先の目標を攻撃することができる国産の射程延長弾「K307 HEBB(ベースブリード榴弾)」やロケット推進とベースブリードを組み合わせて射程を54kmまで延長した「K315弾」の実用化にも成功しているのもK9の魅力を高めている要素だ。

さらに付け加えればK9は採用国の要望に合わせて火器管制システムや搭載アビオニクスを変更することが可能で、現地製造にも積極的に応じているため導入国の防衛産業基盤を維持することにも役立っている側面があり、海外市場で入手できる自走榴弾砲の中で最も性能と導入条件のバランスが優れているのだろう。

関連記事:韓国、最大54km先を攻撃可能な155mm射程延長弾「K315」の開発が完了
関連記事:オーストラリアが訪豪中の文大統領と間もなくK9導入契約を締結、契約額は10億豪ドル規模

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army Photo By Pfc. Dasol Choi K-9サンダー

1,700輌の需要を巡る戦い、インド陸軍の次期主力戦車調達プログラムに露仏が挑戦前のページ

先延ばしにし続けたドイツのトーネード後継機問題、米国にも梯子を外され八方塞がり次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    ベストセラー戦闘機「F-16」を超える?F-35の潜在的需要は4,600機を超えるという主張

    ロッキード・マーティンは5月24日、F-35に関する最新の需要予測を発…

  2. 米国関連

    春攻勢の準備を急ぐ米国、ウクライナに時間を無駄する余裕はない

    米軍は晩春までに始まると予想されるウクライナ軍の春攻勢に向け「急ピッチ…

  3. 米国関連

    今後価格は確実に下がる!日本が導入するF-35B、1機あたり約139億円の内訳

    8月16日、防衛省は空母に改造した「いずも型護衛艦」で運用するための短…

  4. 米国関連

    米海軍関係者が外国政府に売り渡そうしていた機密はバージニア級原潜の設計情報

    米海軍関係者が外国政府に原子力潜水艦の機密情報を売り渡そうとして起訴さ…

  5. 米国関連

    ウクライナでShahed-238の残骸が見つかり、新型のShahed-107も完成間近

    Shahed-136のジェットエンジン搭載バージョン「Shahed-2…

  6. 米国関連

    米国によるパトリオットシステムのウクライナ提供、効果は非常に限定的

    米CNNは「バイデン政権が今週中にもパトリオットシステムのウクライナ提…

コメント

    • neouieomma
    • 2022年 1月 05日

    延坪島反撃に失敗したことに嘲笑が絶えなかったが、今どうやってあざ笑うのか?

    4
      • pja
      • 2022年 1月 05日

      嘲笑していたのは情報不足が大きかったですね。
      射撃訓練直後で即応弾が無かった、北朝鮮の電波妨害で対砲兵レーダーが正常に作動しなかった…等々。
      北朝鮮はBM-21や坑道に隠してある海岸砲を使用したので、韓国軍が反撃を開始した頃にはすでに隠れていた。
      それでも韓国軍の反撃によって北朝鮮は大きな被害を受けていることが判明している。
      目隠しをされた状態でK9自走砲は射撃をしていたので、K9自走砲を嘲笑するのは間違いですね。

      40
      • G
      • 2022年 1月 05日

      もともとあの事件で韓国軍を嘲笑していたのはyoutubeで無条件愛国動画を見て喜んでいるような層だけかと

      実際のところ、韓国軍の対北朝鮮訓練に対して北朝鮮が中止を求めたり怒りを表明するのはいつものことであったためオオカミ少年状態で、実際の攻撃を想定していなかったのは訓練の決定権を持つ政治家の責任であり、反撃に関しても当初対砲兵レーダーが不調だった(後に韓国は北朝鮮の電子妨害によるものと発表)中では対処に大きな不備は見られず、まして実際に良くも悪くも想定スペック通りの反撃した韓国側の火砲を嘲笑する理由はありませんでしたし

      40
      • 台湾大好き
      • 2022年 1月 05日

      ありゃK-9というより韓国軍への嘲笑かと思ってたけど。K-9が名品かはおいといて、戦時体制の軍が応射したら畑耕しましたじゃ褒められんだろ

      17
    • pja
    • 2022年 1月 05日

    K9自走砲をこき下ろす人達には「現実を見ろ」という回答で十分ですな。
    K9自走砲に限らない話だけど。

    46
    • あかんたれ
    • 2022年 1月 05日

    要するに性能はいいのに値段が安く、しかもある程度自国に合わせてくれる上に雇用まで創出できるってわけね
    そら売れますわ
    韓国の家電とか車も海外ではこんな感じで成功してるからな

    45
      • 戦略眼
      • 2022年 1月 05日

      パッケージングが上手だからね。
      日本は、これが苦手。
      例外は、トヨタとスズキくらいかな。

      18
        • やれやれ…
        • 2022年 1月 05日

        所詮は鵜飼の鵜じゃないか。

        6
          • 無無
          • 2022年 1月 06日

          うーん、それは日本製兵器のことだね
          痛いとこつくね

          11
            • 匿名希望
            • 2022年 1月 07日

            「痛いところ突く」という趣旨がわからないのだけども、日本製兵器は、誰の「鵜」なんだい?

            投稿主へのツッコミとしては、ちょっと意味不明だね。

            9
    • 匿名
    • 2022年 1月 05日

    韓国のコミュニティを見ると、やはり彼らの中でも防衛名産品K9は非常に誇らしい様だ
    そのK9と比較して、輸出に成功している防衛名産品が無い日本製兵器は嘲笑されまくっている

    7
      • やれやれ…
      • 2022年 1月 05日

      韓国が兵器産業に力を入れてくれると、日本が儲かるんだよ。
      素材や技術、精密工作機器では日本や海外製の方が上。
      鵜飼の鵜から脱却出来ないのは韓国がそれに頼ってるからだよ。

      5
        • 伝説のハムスター☆☆☆
        • 2022年 1月 05日

        韓国の兵器が売れると日本が儲かるとか初耳なんですけど‥
        なんかソースあるんですか?それ

        33
          • やれやれ…
          • 2022年 1月 05日

          自分が書いたコメントを頼りにネットで探してはいかがですか。
          朝鮮日報や中央日報でも度々記事になってますよ。

          7
            • 伝説のハムスター☆☆☆
            • 2022年 1月 06日

            ネットで調べても出てこないからデマなんじゃないか?と思って聞いているんですけど‥🙄

            改めて聞きますけど、兵器が売れると日本が儲かるって脳内ソース以外にあるんですか?

            28
            • 無無
            • 2022年 1月 06日

            防衛産業の課題とは、儲かる儲からないだけじゃないって、さんざんこのスレで語られてるんだがな
            子供は稚拙を語る前に勉強してきなさい

            10
      • 匿名
      • 2022年 1月 05日

      んで実際儲かってんのかね?名品兵器

      2
        • NHG
        • 2022年 1月 06日

        具体的な数字も大雑把な数字も分からないけど、ここまで広範囲の国に売れて赤字ってことは100%ないと思う
        あえて否定的な意見をかけば気前のいい技術移転がのちのちボディブローのように響いてくるかもしれないけど、それまでに自国産業が存続できないと意味ないから難しいところではある

        17
    • minerva
    • 2022年 1月 05日

    K9の性能がいいというよりもパラディンの性能が低すぎる
    正規戦に投入したら撃ち負けて壊滅する

    16
      • 2022年 1月 05日

      米軍は重爆にロケットが大量にあるから、自走砲は正直いらないように思う。
      不発弾とかあるからまだいるのかな?

      3
    • おわふ
    • 2022年 1月 05日

    アメリカは対地ロケットで済んじゃうからね
    真面目に自走砲作ってこなかった

    15
      • tarota
      • 2022年 1月 05日

      そもそも航空優勢を得ているのが前提だから空からの攻撃を重視した気がする

      13
      • 無印
      • 2022年 1月 05日

      クルセイダーとかFCSとか遠回りしすぎた…
      空輸にこだわって自走砲の命である砲身まで切り詰めて失敗
      その反動が58口径とか極端すぎる

      7
    • 折口
    • 2022年 1月 05日

    キャンセルされなければ00年代に後継機種が配備されていたはずのM109系列との性能比較が適切かはさておき、韓国が兵器輸出で成功している分野のうち自走砲・軽フリゲート/コルベット/・中型潜水艦あたりは米国そして時にはEUやロシアの兵器産業が後継機種を投入しなかったニッチにうまく入り込んだ感じですよね。
    同じく絶賛売出し中の戦車や軽攻撃機や駆逐艦について商談がまとまりにくいのは伝統的な競合が強いからで、最近の兵器産業好況をうけて韓国側もそのあたりの分析をしていると思うんです。次の展開としてニッチ戦略を深化させていくのか一線級兵器でも欧米露に対抗していくのかは分かりませんが、軍事大国への道を進む韓国の将来は注目ですね。

    31
      • 匿名11号
      • 2022年 1月 05日

      まあ、兵器輸出にあたっても国柄によって得意不得意な分野というものもあると思う。

      その意味では、軽フリゲート/コルベット・中型潜水艦を韓国が「兵器輸出で成功している分野」といってよいのかどうか。フィリピンに導入されたとして、むしろその結果が今後の試金石になると思う。

      正直、韓国製装備は同型品がある程度まとまった量で製造するのには向いていて、オーダーメイドに近いものはあんまり得意じゃなさそうな気がするんだが。

      2
      • ダヴー
      • 2022年 1月 05日

      クルセイダーが実用化されていたとしても、F22やシーウルフなどと同様に高価で既存装備を更新するほど数は揃えられなかったろうね。
      K9も製造が始まってから既に20年経過していて、ある意味枯れた技術となった事もあって現地製造・技術移転がやりやすくなっている部分もあるのかも。
      気になるのは欧州勢がこのまま装軌式の自走砲市場を放置したままでいるかどうか。PzH2000はちと高いし今のドイツの政局を見るに積極輸出という流れは無さそう。

      2
        • 折口
        • 2022年 1月 06日

        輸出市場もそうですが、そもそも兵器カテゴリとして装軌式で軽装甲されてるほうの自走榴弾砲について米国や西欧がどう考えてるのか正直分からないところありますよね。おっしゃる通り枯れた技術で成り立っている兵器である以上は英国よろしく輸入に置き換えてしまうのか、ドイツや米国みたいに性能向上を追求していくのかが別れてきている印象あります。
        某日米陸上演習だと、特科どうし打ち合う局面ではM777に対して99式がほぼ一方的に撃ち勝っていたそうで、誰しも必要性の認識では一致しているのだと思いますが…

        11
    • 匿名
    • 2022年 1月 06日

    自走砲に関していうと中国の5式のほうがカタログは上ぽいのが

    そろそろ次世代がいるんじゃあないかな?

    1
      • あばばばば
      • 2022年 1月 06日

      韓国に関してはA2アップデートのスケジュールが組まれているし、それが次世代装軌自走砲のマイルストーンの一つになるだろう。(あとアメリカの次期自走砲がどうなるか)

      日本に関してはわからない。共通装機車体が来たら砲塔移植版で新車両を生産するかもしれないが……

      4
    • 匿名
    • 2022年 1月 06日

    どうでもいいけど、写真の一斉射撃はかっこいい

    2
    • ポン
    • 2022年 1月 06日

    自走砲自体、競合機種が比較的少ないのもあるよなぁ

    4
    • ああああ
    • 2022年 1月 06日

    ドイツより安くアメリカより原型が新しく
    求められらる性能は有しており韓国が他国への採用に
    ライセンスや部品単位での輸出や技術移転に積極的で
    何より手頃なお値段
    そりゃ候補に上がる

    9
    • あお
    • 2022年 1月 08日

    台車だけで砲塔は買ってもらえなかった。
    これはむしろ屈辱だろ。
    クリスマスケーキでスポンジだけでデコレーションはいらないと言われているようなもの。
    しかもパワーパックはドイツの技術。

    2
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  2. 軍事的雑学

    4/28更新|西側諸国がウクライナに提供を約束した重装備のリスト
  3. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  4. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  5. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
PAGE TOP