米国関連

米ミサイル防衛局、SPY-7とイージスシステムの組み合わせが性能基準を満たしたと発表

米ミサイル防衛局は今月25日、米海軍の海洋システムコマンドと共同でAN/SPY-7とイージスシステムの統合実証テストを行い「期待された性能基準を満たしていることを確認した」と発表した。

参考:The SPY-7 Hybrid Defense Security Cooperation Project with Japan Completes Initial Engineering Demonstration of Capability

AN/SPY-7とイージスシステム・ベースラインJ7.Bの統合は期待された性能基準を満たしている

今回の統合実証テストは日本が導入を予定していた地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」のために計画されていたもので、通称「トウモロコシ畑の巡洋艦」と呼ばれるイージス戦闘システムの試験施設があるニュージャージー州ムーアズタウンで実施され、AN/SPY-7とイージスシステム・ベースラインJ7.B(まや型護衛艦に搭載されているベースラインJ7の派生型で米海軍が使用しているベースライン9に相当)の組み合わせが予定通りの性能基準を満たしているかを確認するためのものだ。

ミサイル防衛局の長官を務めるジョン・ヒル海軍中将は「今回の統合実証テストによってミサイル防衛局は日本が採用しているイージスアーキテクチャ(ベースラインJ7のこと)へのAN/SPY-7統合が順調に進んでおり、期待された性能基準を満たしていることを確認した」と述べており、現在日本政府が検討しているイージス・システム搭載艦への適用が予定されるとミサイル防衛局がプレスリリースの中で明かしている。

出典:海上自衛隊 護衛艦あたご

今回の発表の中で最も目を引くのはAN/SPY-7と組わせるイージスシステム・ベースラインJ7.Bについてへの言及だ。

ミサイル防衛局の説明によれば日本が採用しているイージスシステム・ベースラインJ7は米海軍が採用しているベースライン9に相当して、AN/SPY-7と組み合わせるベースラインJ7.Bはオープンアーキテクチャ化(Aegis Common Source Library)の恩恵を受けてベースライン9とベースライン10に実装された最新の機能を利用すると述べている点が目新しい。

日本の報道ではイージス・システム搭載艦に採用が予定されているAN/SPY-7はイージスシステム・ベースライン9という誰も採用していない組み合わせて運用するため両者を統合するための費用、実用化後に発生する問題やアップデートを日本が単独で負担する必要があると報じられているが、すでにイージスシステムはCSL(Aegis Common Source Library)と呼ばれるオープンアーキテクチャ化へと移行しているのでベースラインという垣根を超えてイージスシステムを構成する機能やバグフィックスの共通化や重複する試験プロセスの省略・合理化が進んでいる。

さらに日本がAN/SPY-7と組み合わせるイージスシステムは米海軍の採用しているベースライン9ではなく海自のイージス艦に採用しているベースラインJ7をベースにしたJ7.Bなので、システムの土台はJ7と共通化されているため保守やアップデートの面でも有利であり、米海軍が開発したベースライン9とベースライン10に実装された機能もCSLの仕組みを利用してJ7.Bに移植されるため費用面でも「日本が単独で負担する必要がある」と目くじらをたてるほどのものではない無いのかもしれない。

出典:カナダ海軍

そもそもAN/SPY-7とイージスシステムの組み合わせは日本よりも先にカナダ海軍やスペイン海軍が採用を発表しており、カナダ海軍はAN/SPY-7をイージスシステムの派生型「CMS 330 with AEGIS」と組み合わせて使用することを発表しているぐらいなので、イージスシステムとハードウェアの組み合わせやベースラインの違いは我々が思っているよりも影響が小さくなっている可能性がある。

関連記事:カナダ海軍がSPY-7供給契約を締結、トマホーク搭載の次期フリゲート発表

余談だが米ミサイル防衛局は今月24日、アラスカのクリアー空軍基地に建設中だったLRDR(Long Range Discrimination Radar:長距離識別レーダー)がほぼ完成して、2021年中の引き渡しと初期運用開始に向けて順調に計画が進捗していると発表した。

ミサイル防衛局によれば「LRDRは多弾頭化が進む弾道ミサイルの弾頭を識別して追跡することは勿論、本物の弾頭とダミー弾頭の区別も可能なので迎撃に必要なミサイルの数を削減することができる」と主張しており、LRDRは弾道ミサイルだけでなく極超音速ミサイルや野球ボールサイズの物体を24時間365日検出・追跡・識別することが出来ると説明している。

参考:LRDR Work Continues Through Covid-19 for Initial Fielding in 2021

 

※アイキャッチ画像の出典:海上自衛隊 護衛艦まや

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 2月 26日

    日本のマスコミ報道は基本的に軍事技術の素人が書いているので信用しない方がイイ、という事ですね。全て嘘です、妄想で文章を書いています・・SPY-7レーダーはBMD専用で(ウソ)SPY-6ならレーダーだけSPY-1と交換できる(大ウソ)違約金の話も出て来ないですし、オープンアーキテクチャの話なんて出てきた?それなら、SPY-7レーダーの船2隻とイージスアショア2基で整備計画立てたら良いのでは?1年の三分の一しか使えない船を補完するには陸上版と併用するべきですよ、位は書いて欲しいですね。

    19
    • 匿名
    • 2021年 2月 26日

    ロッキード・マーティンのゴリ押し活動の兵器か

    3
      • 匿名
      • 2021年 2月 26日

      ゴリ押しでもなんでもこちらの要求を全て満たしていて価格も適正ならいいよ

      31
      • 匿名
      • 2021年 2月 27日

      民間企業で自社製品を押さないとこってあるの?

      5
    • 匿名
    • 2021年 2月 26日

    爆買い君の主張がまた一つくずれたね。
    あ、最初からなりたってなかったか、ゴメンゴメン。

    8
      • 匿名
      • 2021年 2月 26日

      彼はこういう話は無視するか理解しない出来ないと思う。

      6
    • 匿名
    • 2021年 2月 27日

    鬼の首とったみたいに威張らないの。統合がうまくいく根拠を持ってた人がいたっけ?
    後だしじゃんけんでイキられてもな

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