米国関連

潜水艦をUUV母艦化したい米海軍、水中発射・回収に対応したMUUVを開発中

米海軍は攻撃型原潜の魚雷発射管から発射・回収可能な新型UUV=MUUVを開発中で、モートン少将は「要件・機能レビューの段階まで進んでいる」と明かしており、潜水艦をUUV母艦にするというアイデアは本当に実現するかもしれない。

参考:What’s ahead for Navy unmanned underwater vehicle programs

MUUVの最終デモンストレーションも遠くなく、近い将来に(潜航中の攻撃型原潜から)何かを運用できるようになると考えている

潜水艦に求められる性能や機能は運用国の戦略や戦術に左右されるため「絶対的な答え」は存在しないが、現時点で多くの国が支持しているのは伝統的な対潜水艦戦(ハンターキラー)に特化したタイプではなく、多用途性を備えているタイプの潜水艦で、対潜水艦戦の他に長距離哨戒任務、対地攻撃任務、特殊部隊の運搬・回収任務、機雷の敷設任務などへの対応が要求されることが多い。

さらに最近では水中発射方型UAVやUUVの運用能力が追加されており、米国やフランスは潜水艦自体をUUV母艦に変更したいとまで考えている。

具体的には長距離哨戒任務、対地攻撃任務、特殊部隊の運搬・回収任務、機雷の敷設任務など挙げられるが、最近では水中発射方型UAVやUUVとの連携能力が要求されているので潜水艦に求められる多用途性は増える一方で、米国やフランスは潜水艦自体をUUV母艦に変更したいとまで考えており、米海軍は魚雷発射管から回収可能なMUUVの開発が進んでいるらしい。

出典:Public Domain REMUS600ベースのMk.18 Mod 2

米海軍は攻撃型原潜のセンサー拡張向けに水中発射が可能なUUV=Razorback(REMUS600ベース)を実用化したものの、米海軍のモートン少将は「ダイバーによる面倒な回収作業が必要なため予想していたより実用性が低い。任務を終えたUUVは移動している潜水艦の魚雷発射管に自力で帰還する能力が必要だ。この機能が実装されれば全てのSSNはUUVの母艦として機能する能力を持つ」と述べていたが、自律的な回収に対応した新型UUV=MUUVの開発は要件・機能レビューの段階まで進んでいると明かした。

MUUVはRazorbackやREMUS600の機能を統合したものになり、モジュールを交換することで対機雷のセンサーや攻撃原潜のセンサー拡張といった任務に使用でき、従来のUUVよりも深い海域で長時間の任務(Razorbackのスペックを上回ると解釈すれば連続運用時間は24時間以上)を行える上、魚雷発射管からの発射・回収に対応するため海軍作戦部のペリー少将も「計200基の魚雷発射管(攻撃型原潜が備える魚雷発射管の総数らしい)がUUVの発射と回収に使えるようになる」と述べている。

出典:U.S. Navy photo courtesy of General Dynamics Electric Boat

潜水艦部隊のヒューストン司令官も「魚雷発射管を使用したUUVの発射・回収能力は我々にとって最も重要な機能で最大の関心事」と述べており、MUUVの最終デモンストレーションも遠くなく「近い将来に(潜航中の攻撃型原潜から)何かを運用できるようになると考えている」と述べているのが興味深い。

NavalGroupが披露した潜水艦のUUV母艦化に登場するUUVの開発状況は情報がないので謎だが、米海軍のMUUVは開発が進んでいるので「魚雷発射管を使用したUUVの発射・回収」は近い将来に実用される可能性があり、潜水艦をUUV母艦にするというアイデアは本当に実現するかもしれない。

追記:米海軍が魚雷サイズのMUUVを使い捨て型ではなく回収型=再利用を目指しているのかは潜水艦の弾庫容量(ロサンゼルス級/弾庫容量26発、シーウルフ級/弾庫容量52発、バージニア級/弾庫容量38発)に起因している。

関連記事:潜水艦に求められる多用途性、米仏は潜水艦をUUV母艦に変更したい
関連記事:潜水艦と無人機の連携、米海軍が原潜で使用する水中発射型UAVを120機導入
関連記事:米海軍が導入中の潜水艦から発射可能なUAV、インドも自国軍向けに開発を発表
関連記事:イスラエル、潜航中の潜水艦から発射可能なUAV「Ninox103UW」を披露

 

※アイキャッチ画像の出典:Public Domain

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コメント

    • ido
    • 2022年 11月 30日

    日本の潜水艦はどうするんだろうね。日本の潜水艦はどちらかと言うとハンターキラー型だし。UUV母艦化自体は素晴らしいことだと思うけどその国によるよなぁ。日本が特殊すぎるだけかも知れんけど。

    7
      • kitty
      • 2022年 11月 30日

      VLSまでは要らんにしても、UUV母艦には大型化つまりは原子力推進化が必要になってきますよねえ。
      3000t、4000tではお話にならない。

      4
      • 774rr
      • 2022年 11月 30日

      似たようなの作るかアメリカから導入するんじゃない?
      探知能力の強化は何をするにも必要だし

      3
      • 名無し
      • 2022年 11月 30日

      むしろハンターキラーにこそ必要な装備じゃない?とも思う
      従来の潜水艦同士が索敵しあって魚雷を刺し合う戦闘から、無数のUUVが積極的に索敵しつつ本命の潜水艦はパッシブで敵を炙り出すような戦い方に変化するかもしれない

      10
    • 折口
    • 2022年 11月 30日

    魚雷自体かなり高度なドローンみたいなものだし、UUVと呼べるような高い巡航能力や自立判断を魚雷に付与するというのは必然の流れだと思います。魚雷管から発射できる=長魚雷と同じサイズ(UUVにしては小さい)なので、短時間使い捨ての徘徊弾薬的な性質のものになるのかな。それだって実装できれば対潜戦能力を飛躍的に上げると思いますが。勝手に敵艦を探して海域をうろつく魚雷、潜水艦が撃てても強いですけど水上艦が装備し始めたら海の治安は急激に悪くなっていきそうですね。

    7
      • HY
      • 2022年 12月 01日

      「魚雷発射管から発射・回収するUUV」という記事の内容から逸れたコメントだけど同意見。
      徘徊型自爆ドローンが一定の注目を集めているように、徘徊型の魚雷が注目される可能性が高い。
      グレムリンの時も思ったけどドローン回収なんて「訓練の時にゴミを出さないSDGs」程度の効果しか得られないと思う。

      1
    • 下僕
    • 2022年 11月 30日

    水中では電波が使えないけど母艦との連絡はどうすんでしょうか。クジラみたく音波?

    4
      • もり
      • 2022年 11月 30日

      まぁメインは有線でしょうね
      母艦を深いシャドーゾーンに収めたまま水面にUUV出して電波収集したり先行させて敵水上艦や潜水艦の音波収集したりと曳航ソナーの進化版として運用するだけでやれる事大幅に広がるしね
      潜水艦発射型SAMと併用すりゃ安全に哨戒機狩りすら出来ちゃうぶっ壊れ装備、そら米仏も関心示すよね

      5
      • 58式素人
      • 2022年 11月 30日

      近距離になると思いますが。
      沖縄に、光通信機を作っている会社があります。
      ダイバー同士の意思疎通に使っているそうですが。

      2
    • 58式素人
    • 2022年 11月 30日

    米海軍潜水艦の魚雷発射艦は昔から21インチです。
    運用する魚雷は、現用のMK48は21インチですが、
    以前のMk37は19インチでした。上下左右に1インチの余裕があります。
    ドイツなどでは、このMk37をスイムアウト式で運用しています。
    ですから、MK37を基にすれば、まあ、できるのではないでしょうか。
    収容の時は、後進は無理でしょうから、頭から発射管内へ戻る形で。
    誘導方法は画像による自己誘導でしょうか。
    米海軍は、機雷敷設のために、弾頭を機雷にしたMK37を使っていると思います。

    • もり
    • 2022年 11月 30日

    海自潜はキラーハンター特化型だからなぁ
    UUV研究はUUV先進国のフランスと組んで水上艦運用掃海型の研究したりしたけど潜水艦運用型の偵察型はまだ構想止まり
    既に黎明期潜水艦運用型を開発してる国には1歩出遅れか

    3
    • 無無
    • 2022年 11月 30日

    どうやって回収するのかが気になって夜も眠れないよ
    発射管から発射管へとかどういうアイデアと技術があるんだろ

    • 航空太郎
    • 2022年 11月 30日

    子機を放出して運用、その子機も使い捨てではなく回収できる、母艦自体にも戦闘力があり単なる補給母艦ではないとなるというシステムは、ガンダム世代の琴線に響くモノがありますね。いずれは同時射出した多数の子機を操り、母艦も合わせた連携戦闘なんてのもできるようになるんでしょうか。母艦側の制御機構だけで、イージスシステムのように高額とかなりそう。
    水中高速通信は海洋研究開発機構が2017年に水深700~800m、距離120mに対してレーザーによる光通信で20Mbpsの速度を達成しているので、音波Onlyの状況は打破されつつあるようです。

    4
    • けい2020
    • 2022年 12月 01日

    潜水艦をUUV母艦にすると、潜水艦・UUVともに制限が多くなる上に、価格高くなってしまうなら
    発想を転換してUUV専用母艦を用意したら、全体のコストは下がるのではないでしょうか?

    UUV母艦に戦闘能力は不要だし、深い深度に潜る必要もない、探知能力も高い必要はない
    これなら最低限の乗員数で済むわけだし
    むしろなんで戦闘用潜水艦に兼用させようとしてるのかの合理性が見いだせない

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