米国関連

米当局、ロシア軍の攻撃でパトリオットシステムが損傷した可能性が高い

ロシア国防省は16日「キーウ周辺に配備されていたパトリオットシステムをキンジャールで破壊した」と発表したが、CNNも米当局者の話を引用して「ロシア軍の攻撃でパトリオットシステムが損傷した可能性が高い」と報じている。

参考:US assessing potential damage of Patriot missile defense system following Russian attack near Kyiv

ロシア国防省の主張は半分正解で、18発全てを撃ち落としたというウクライナ軍の主張は間違いだった可能性がある

ウクライナ軍は今月6日、プーチン大統領が「全ての防空システムを貫通できる」と豪語していたキンジャールを「4日夜にキーウ上空で迎撃した」と発表、米国防総省のライダー准将も9日「パトリオットによってキンジャールが撃ち落とされたのを確認した」と明かし、米CNNも「ロシア軍はキーウ郊外に配備されたパトリオットシステムの信号を傍受して位置を特定し、キンジャールで攻撃を仕掛けてきたが迎撃されて失敗した」と報じて注目を集めていたが、ウクライナ軍は16日に6発のキンジャールを全て撃ち落としたと発表。

出典:Головнокомандувач ЗСУ

ウクライナ軍のザルジニー総司令官は「ロシア軍が16日午前3時30頃、MiG-31Kからキンジャールを6発、黒海の艦艇からKalibrを9発、地上発射型ミサイルを3発(S-400の対地モードとイスカンデルM)発射したが、計18発のミサイルは全て空軍の防空部隊が撃ち落とした」と発表、これが事実ならパトリオットシステムによるキンジャール迎撃には信頼性がおけることになるのだが、ロシア国防省は「キーウ周辺に配備されていたパトリオットシステムをキンジャールで破壊した」と発表した。

CNNも米当局者の話を引用して「火曜日に行われたロシア軍の攻撃でパトリオットシステムは完全に破壊されていないものの損傷した可能性が高く、米当局も被害の程度を調査中で、この結果次第でシステムを完全に引き上げて修理するのか、現地でウクライナ人が修理するのかが決まる」と報じ、キンジャールがパトリオットを損傷させたのか、巡航ミサイルやイスカンデルMがパトリオットを損傷させたのかは不明だ。

出典:U.S. Army photo by Sgt. Alexandra Shea

標準的なパトリオットシステムはレーダー、管制システム、発電機、ランチャー車輌×6輌~8輌などで構成され、分散して展開するため、仮に1発か2発のキンジャールが命中してもパトリオットシステムを構成する要素が全滅するとは考えにくく、ランチャー車輌が損傷してもパトリオットシステム自体の機能は維持できる。

但し、レーダーや管制システムを搭載した車輌が損傷すると防空システムとしての機能が失われるため、ロシア軍のミサイルが何を損傷させたのかが重要だ。

因みにウクライナには米国が提供したパトリオットシステムと、ドイツとオランダが共同で提供したパトリオットシステムがあるので、どちらか一方のシステムだけが損傷したのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:kremlin.ru / CC BY 4.0 キンジャールを搭載したMiG-31K

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コメント

    •  
    • 2023年 5月 17日

    そもそも着弾なり迎撃なりされたとしてイスカンデルとキンジャールの見分けなんてつかないだろうに最初からプロパガンダっぽかったわな

    22
      • 77死
      • 2023年 5月 17日

      航空機から発射されたかどうかはさすがにわかるだろ

      35
        •  
        • 2023年 5月 17日

        地平線の向こうから発射される同じ弾道軌道のミサイルの識別は困難じゃねえかな

        7
    • 匿名
    • 2023年 5月 17日

    CNNの報道機関の話なので、米当局者の話も話半分の噂話レベルでしかない。
    米軍が核防御のためのシステムでロシアに正確な情報を報道して渡すとは思えない。

    7
    • 傍観者
    • 2023年 5月 17日

    露のミサイルでウクライナ全土で軍事倉庫が叩き壊されているようだ。劣化ウラン弾の倉庫も破壊された可能性が高く環境汚染はポーランドにも及んでいるとの情報も出ている。キエフのパトリオットは30発以上発射していながら配備直後に叩き壊されたとなると予想以上の大恥になりそうだ。アメリカ兵器の信頼性は大いに傷ついた。

    12
      • 傍観者
      • 2023年 5月 17日

      と言う夢を見た

      71
      • 2023年 5月 17日

      なけなしの虎の子キンジャールを全弾落とされてしまい大恥をかいてしまいましたので戦果を探すのが大変ですね。

      26
      • 牛丼チーズ
      • 2023年 5月 17日

      それどこ情報?ロシアに有利な話を必死にかき集めて擁護しているようにしか見えない。

      9
    • 灰色の猫
    • 2023年 5月 17日

    ロシア軍が意地になってる?

    7
    • 名無し
    • 2023年 5月 17日

    これがロシア流のSEADか。。。

    6
    • 匿名
    • 2023年 5月 17日

    飽和攻撃に対空火器が弱いのは以前から言われていたのでまあそうなる。
    米軍の防空が強いのは、1戦域にパトリオット数セットや戦闘機による重層的な防空なんだから
    飽和攻撃に飽和防衛が出来るのが米帝よ
    ウクライナに提供されたパトリオット1システムくらいじゃ数十発で一気に攻撃されたら限界が来る

    30
      • gobu
      • 2023年 5月 17日

      飽和攻撃に飽和防衛なんて響きだ
      確かに米帝のみ出来る芸当よ

      ロシアはともかく
      経済規模の大きいあの国なら
      自爆ドローン&ミサイルの飽和攻撃で千発単位で
      来そう…

      4
        • 名無し
        • 2023年 5月 17日

        >飽和攻撃に飽和防衛なんて響きだ
        >確かに米帝のみ出来る芸当よ

        イスラエルのアイアンドームではダメですか?(小声)

        1
          •  あ は
          • 2023年 5月 17日

          あれはランチャー内の弾を使い果たすと再装填(人力)まで撃てなくなるから、
          ゲリラ的な攻撃には強いけど、正規軍の本気の物量攻撃には弱いよ。
          ※ミサイルも高価だし

          ということでイスラエル国防軍は速やかに空爆で発射地点を制圧して対応してたりもする

          12
        • 2023年 5月 17日

        対空兵器の消耗を狙った飽和攻撃ならさほど精度も必要無いですし市街地にぶっ放しておけば良いという点では東側諸国の人海戦術と相性が良いですね。
        台湾有事の際には初弾で各基地に飽和攻撃が来る可能性があるでしょうから、ハード面としてのスタンドオフ能力強化と兵力の分散化、ソフト面としての敵基地攻撃と専守防衛の折り合いを急いで検討しなければいけないですね。ハード面は動き出しているように思いますが、ソフト面はなんとも・・・。サミット終了後に早く解散総選挙を終わらせて憲法改正から意識改革を進めなければいけません。

        8
          • 2023年 5月 17日

          >憲法改正から意識改革を進めなければいけません。
          これらを実現するための貴殿のアクションプランを拝聴したいものです。どうせ主張するならそこまで書きませんか?

          5
    • gepard
    • 2023年 5月 17日

    昨日の空襲では単一のSAM陣地から大量のミサイルが発射された映像があったが、PACランチャーが被弾した際の誘爆を防ぐ為迎撃弾を投棄していたという仮説が親露派テレグラムコミュニティでは議論されていた。
    CNNの報道が事実なら迎撃にすべて成功したというウクライナの主張には疑問符が着くことになり、キンジャールの使用があるとはいえ、パトリオット数個中隊規模かつ速成訓練のクルーではキエフ上空にすら充分な防空が構築出来ないと見るべきか。

    13
      • 名無し
      • 2023年 5月 17日

      それよか、パトリオットが損傷したとすると、次回以降のキエフ防空は以前に逆戻りじゃん。

      6
        • YJ93
        • 2023年 5月 17日

        アスターが間に合うといいですね。

        2
      • NHG
      • 2023年 5月 17日

      キンジャールは全部迎撃できたものの通常ミサイルやドローンによる攻撃を食らったとか
      囮でSAM起動させて後続のドローン(通常ミサイル)でSAM破壊はトレンドに乗ってはいる

      4
        • 名無し
        • 2023年 5月 17日

        ウクライナ側の2日前の撃墜戦果報告から逆算すると、ロシア側はパトリオット陣地(たぶんレーダー車両だろう)への、
        キンジャール(空対地弾道弾)、イスカンデル(地対地弾道弾)、カリブル(亜音速巡航ミサイル)の、3種類ミサイル同時着弾狙ってた気がするんだよなあ。

        ランチャーごときなら換えが利くけど、対空ミサイルシステムの核心中の核心たるレーダー車両がやられると、キツイよね。

        5
    • AAA
    • 2023年 5月 17日

    パトリオットのシステムは大がかりで頻繁な陣地転換は大変な上に
    これまでのキエフ防空戦で盛大に電波だしてるから位置自体は標定済みなんだろうな
    あとはロシア側の手数とウクライナ側のPAC-3迎撃弾の在庫勝負だ

    6
      • 名無し
      • 2023年 5月 17日

      キーウにパトリオットが配備されて以降、ロシアが毎日ちょいちょいキーウにシャヘドを撃ち込んだり、いろいろやっていたのは、この作戦を実行するための情報収集だったのか。

      という、いつもの後付けでロシア人の謎行動の理由が判明するやつ。

      11
    • 58式素人
    • 2023年 5月 17日

    先日の漏洩情報とWIKIから考えてみると。
    米国提供の6個ランチャーの内、PAC3は4個、
    ドイツとオランダ提供の6個ランチャーは全てPAC3だったのでは。
    つまり、全てPAC3で対応してかつ斉射をしたとして、
    同時に対応できたのは目標10個までということでしょうか。
    PAC3は途中までTVM誘導だそうなので、そうなるような気がします。
    キンジャール、カリブル、イスカンデル、S400を合わせて18発ですから、
    2回の斉射が必要だったということでしょうか。
    その分、時間的に遅れを取った可能性はありそうな気がします。
    システム毎に8個のランチャーを同時制御できるそうだから、
    今回はランチャーの数に制限された形でしょうか。
    今ある3システムならランチャーは24台まで同時制御できたと思うので、
    ランチャーの数を増やす必要がありそうな気がします。あと12台。

    2
      • YJ93
      • 2023年 5月 17日

      シャヘドやカリブルみたいのはNASAMSやIRIS-T SLMで対処できるでしょうし、S-300Vも撃ってた(まだ残弾があったのかという…)みたいなので、統合運用できるならパトリオットだけで全部を片付けなくても良さそうですね。
      実戦でこのあたりが磨かれていくのではないでしょうか。

      4
    • lang
    • 2023年 5月 17日

    え、もう退場なの・・・

    まあ最近の米軍のガッカリぶりではしゃあないきもしますが。。。

    10
    • スナイパー
    • 2023年 5月 17日

    パトリオットの最大の弱点は高すぎること。一式数千億円とも言われるユニットで継戦能力を支えるのは厳しいね。
    神風ドローンを組み合わせた飽和攻撃なら数百万円のコストで数千億円の大戦果も夢じゃない。
    パトリオットに限らず西側兵器は高騰しすぎなんで、過剰に金融市場に組み込まれた防衛産業の弊害が出てきていますな。

    20
      • 航空太郎
      • 2023年 5月 17日

      PAC-3は極超音速で落下してくる弾道ミサイル防衛用ですからね。安価なドローン相手に使うと、牛刀をもって鶏を割く状態になるのは、如何ともし難いところかと。

      弾代の安いイスラエル製のレーザーウォール辺りと組み合わせることができれば、かなりマシな運用になるとは思いますが。

      ただ、イスラエルは情報漏洩や鹵獲を恐れて、アイアンドームの提供もしないとしてるので、難しいでしょうね。悩ましい話です。

      5
        • 匿名
        • 2023年 5月 17日

        イスラエルはロシアとの関係性を荒立てたりするつもりもないですし

        2
    • nachteule
    • 2023年 5月 17日

     18発のミサイルが全て集中したとして実際どんな感じでパトリオットが布陣していたか分からないけど、PAC-3MSEは無かったと言う話がある。30発以上発射したという話が真実ならランチャー1基の16発フル装填で2基分を発撃ち切った感じだろうか、それともリスク分散でランチャー1基に8発装填で4基展開もあるかもしれない。
     標的1発に対して2発はまでは行かないが脅威度が高い物に関しては2発撃つ対応している感じかな。

     それにしても価格で言うならPAC-3の方が上だろうし、ある程度効果があったのが判明してもどこまで西側の支援が続くんだろうか。

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