米国関連

米国、ドイツへのタイフォンシステムとトマホーク売却を承認すると約束

トランプ大統領はメルツ首相の対イラン作戦に対する批判に激怒して「駐留米軍の削減」や「長距離火力大隊の配備」を取り消したものの、NATO首脳会談でドイツと米国の間で合意が成立し、8月までにドイツへのタイフォンシステムとトマホークの売却を承認すると約束した。

参考:Germany to buy US Tomahawks in shift toward own long-range capability

ドイツは欧州独自の長距離攻撃能力を開発して配備するまでの空白期間を埋めることに成功したようだ。

バイデン大統領とショルツ首相は2024年のNATO首脳会議で「ドイツに長距離攻撃能力を恒久的に配備する計画の一環として多領域任務部隊の一時配備を2026年に行う」「ここにはSM-6、Tomahawk、開発中の極超音速兵器が含まれ、欧州に陸上配備されている長距離攻撃能力の射程を大幅に拡張するだろう」と、ピストリウス国防相も2025年7月「欧州独自の長距離攻撃ミサイルは実用化まで7年~10年かかるため、地上発射型長距離攻撃システム=タイフォンシステム購入を米国に要請した」と発表。

出典:Lockheed Martin

POLITICO Europeも2025年10月「メルツ首相はドイツ軍を欧州最強の通常軍に育てると、そのために必要な資金の全てを与えると約束し、39ページにわたるリストには3,770億ユーロ相当=約70兆円もの兵器購入希望額が記載され、これは2026年度予算に計上される兵器調達の概要を示すものだ。ドイツはひとまず2026年度に320件もの新兵器開発や装備調達計画を開始する予定で、この中にはタイフォンシステム×3基(2.2億ユーロ)とトマホークVb×400発(11.5億ユーロ)を調達するための投資13.7億ユーロも含まれている」と報じたが、トランプ政権と欧州は対イラン作戦=エピック・フューリー作戦で決定的に対立してしまう。

英国はエピック・フューリー作戦への参加要請を拒否、スペインとフランスはエピック・フューリー作戦に関与する米軍機に対して領空を閉鎖、イタリアも中東に向かうP-8Aのシチリア島基地立ち寄りを拒否し、エピック・フューリー作戦にシゴネラ基地を使用できなくなって軍事作戦上の柔軟性を大きく損なってしまい、さらに米国出身のレオ14世教皇まで「神はどんな紛争も祝福しない」「平和の君たるキリストの徒であれば、かつて剣を振るい、現代において爆弾を投下する者たちの側に立つことは決してない」とトランプ政権を批判。

出典:Truth Social

イタリアのメローニ首相もトランプ大統領のレオ教皇批判や対イラン作戦への協力拒否批判を受けて「2006年に承認されたイスラエルとの防衛協力合意を自動更新しない」と発表し、ドイツのメルツ首相も「今の米国はどのような戦略的出口を選択しているのか分からない」「イランの交渉担当者が非常に巧妙に、あるいは実際には交渉しないように事態を進めている」「その結果、米国という国家全体がイラン指導部や革命防衛隊によって屈辱を受けている」と批判。

トランプ大統領は特にメルツ首相の批判に怒り心頭で、Reutersのフィル・スチュワート記者は2026年5月「ヘグセス国防長官がドイツに駐留する米軍約5,000人を撤退させるよう命じた」と報じ、国防総省のショーン・パーネル報道官も「この決定は欧州における部隊配置の徹底的な見直しを経て下されたものであり、戦域の要件や現地の状況を踏まえたものだ」「撤退は今後6か月から12か月の間に完了する見込みだ」と声明を発表。

出典:Photo by Darrell Ames

Defense Newsも「匿名を条件に語った国防総省高官は最近のドイツの発言について『不適切で何の役にも立たない』『大統領はこうした逆効果な発言に対して正当な対応を取っている』と述べた」「今回の決定に伴いバイデン政権が約束していた長距離火力大隊の配備も取り消しになった」と報じ、ドイツのタイフォンシステムとトマホークVb購入要請も危ぶまれたが、NATO首脳会談でドイツと米国の間で合意が成立し、米国は8月までにドイツへのタイフォンシステムとトマホークVbの売却を承認すると約束した。

Defense Newsも「この購入計画は自国の安全保障に投資する一環として米国製システムを購入するというトランプ大統領の望みに合致するようだ」と報じ、ドイツは欧州独自の長距離攻撃能力を開発して配備するまでの空白期間を埋めることに成功したようだ。

関連記事:トランプ大統領がドイツ駐留米軍の一部撤退を命令、長距離火力大隊も配備中止
関連記事:ドイツ、来年度予算でタイフォンシステム3基とトマホーク400発を購入予定
関連記事:ドイツ国防相、周回遅れの無人機調達を強化するため約1.7兆円を投資
関連記事:RTXがSPY-6初輸出を発表、SPY-7との競争を制して独海軍が採用
関連記事:ドイツは宇宙安全保障にも大規模投資、5年間で6.1兆円を投資すると発表
関連記事:独Helsingが独自の無人戦闘機を発表、2029年までに量産機の運用を開始
関連記事:欧産業界に圧倒的な利益、ドイツは1年間で14.4兆円相当の武器調達契約を予定
関連記事:ドイツのメルツ政権、義務的兵役制度の再導入もあり得る兵役制度法案を承認
関連記事:ドイツは2026年度に約8.2兆円、2041年までに約69兆円を防衛装備品調達に投資
関連記事:メルツ政権が取り組むドイツ軍強化、義務的徴兵制度を復活させるかが焦点
関連記事:ドイツの短距離防空システム再取得、Skyrangerに最大1.4兆円を投資
関連記事:欧州最強を目指すドイツ、ボクサー5,000輌とPatria3,500輌の調達を準備中
関連記事:メルツ政権が調達促進法を承認、ドイツ軍は資金に加え調達ルールの柔軟性も確保
関連記事:ドイツの圧倒的な再軍備資金力、米国に長距離攻撃システムの売却を要請

 

※アイキャッチ画像の出典:The White House

ウクライナでのパトリオットミサイル生産、実現には数年単位の時間が必要前のページ

ポーランドがPAC-3弾をウクライナに譲渡、NATOと米国が見返りを約束次のページ

関連記事

  1. 米国関連

    米陸軍のM777更新は装輪式自走砲に限定、HanwhaはK9MH提案を発表

    米陸軍はM777を置き換える機動戦術砲=Mobile Tactical…

  2. 米国関連

    米国が韓国から155mm砲弾を購入か、ウクライナ提供分の補充目的

    米国と韓国がウクライナに送るための155mm砲弾について協議を行ってい…

  3. 米国関連

    米空軍が低コスト巡航ミサイルに関する取り組みを開始、目標は1発15万ドル

    米空軍内のイノベーションを促進するAFWERXは「将来の低コスト巡航ミ…

  4. 米国関連

    日本の真珠湾攻撃に因んだ命名が続く米海軍、バージニア級原潜に続きフォード級空母まで

    米海軍はジェラルド・R・フォード級空母4番艦に「真珠湾の英雄」として有…

  5. 米国関連

    ボーイング、稼働率40%台のE-3を更新するため米空軍は2022年にE-7Aを発注する

    ドバイ航空ショーの開幕を控えた記者会見の席でボーイングのマナジール副社…

  6. 米国関連

    一体いつまでA-10を維持させるのか? 米上院が空軍のA-10処分要求を拒否

    米国の上院軍事委員会が承認した2022年度の国防権限法は再び空軍のA-…

コメント

  • コメント (11)

  • トラックバックは利用できません。

    • せい
    • 2026年 7月 10日

    まあイラン戦争に関することはどこから見ても逆ギレでしか無いからね
    それで契約潰されて困るのは米企業だし、その批判の矛先が向かうのは、トランプ大統領だってことを理解してるようで何より
    世界もトランプ大統領のやり方に熟れてきたし、前ほど欧米の離間に心配する必要はもう無いのかもね

    12
      • 名無し
      • 2026年 7月 10日

      欧米離間してアジアに戦力移動してほしい
      中国に対抗できない

      1
    • 戦車
    • 2026年 7月 10日

    確かイランに対して大量にトマホークを使用して、日本への納期も遅れてた筈ですけど、7〜10年以内でちゃんと納品されるのですかね?

    9
    • 名無し
    • 2026年 7月 10日

    提供せず独自開発促進されるより
    トマホークの使い勝手を宣伝するほうがいい
    ドイツもAFDになれば軍拡ブレーキかけるだろうし

    • かず
    • 2026年 7月 10日

    最近の米国の約束への信頼はどこぞの国並みに低下してるのが何とも

    3
      • 名無し
      • 2026年 7月 10日

      信頼低下しても米国投資は増える一方だよ
      中国市場は儲けさせてくれない
      日本の財界親中派も儲からないから消えてってる

      12
    • Ard
    • 2026年 7月 10日

    トマホークは良い兵器だけど調達いつになるやら…
    ウチの一緒に作らないか?

    •  
    • 2026年 7月 10日

    最近の米国製兵器のライセンス承認や売却ムーヴは、某パラドゲーの大戦期米国でモンロー主義ムーヴをしながら領土や物資を売買して戦線整理する手法と似てる。というかそれが出来る立地と資産を持ってる大国だったな、アメリカ

    2
      • 名無し
      • 2026年 7月 10日

      アメリカは全く直接侵略されないのに
      “覇権”て凡人にはよくわからない定義のために
      世界各地に軍隊展開させられてたわけで
      そりゃMAGAも民主党左派も勘弁してくれてムーヴ

      1
        • kitty
        • 2026年 7月 10日

        911でアナフィラキシーショック状態になったのをもうお忘れで?

        5
          • 名無し
          • 2026年 7月 11日

          マムダニ市長なら復讐なんかより謝罪だな
          とにかくアメリカが全部悪いと

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  2. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  3. 欧州関連

    トルコのBAYKAR、KızılelmaとAkinciによる編隊飛行を飛行を披露…
  4. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
  5. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
PAGE TOP