トランプ大統領がサウジアラビアを訪問してムハンマド皇太子と会談し、両者は「総額6,000億ドル=約88兆円の対米投資」と「約1,420億ドル=約20兆円の武器販売」に関する覚書に署名、Reutersやイスラエルメディアは「両国がF-35売却の可能性について協議した」と報じている。
参考:Fact Sheet: President Donald J. Trump Secures Historic $600 Billion Investment Commitment in Saudi Arabia
参考:Trump speaking on stage in Riyadh as US and Saudi Arabia sign $142bn arms deal
参考:US agrees to sell Saudi Arabia $142 billion arms package
参考:US and Saudi Arabia sign historic $142 billion arms deal
参考:Trump Touts New Saudi Deals as He Kicks Off Middle East Swing
参考:Here’s what Trump said about the Abraham Accords
これだけの調達資金があればF-15EXの200機購入など余裕で、これにF-35Aの調達が含まれていたとしても何の不思議もない
米国のBreaking Defenseは1月「英伊日がサウジ参加を検討すべき理由は幾つかあるものの参加を望む理由は少ない」「サウジはトランプ政権誕生に向けてF-35売却のためのロビー活動を強化している」「もし米国がF-35を売ると言い出し、サウジも自国の防衛改革=Saudi Vision 2030と結びついたアプローチを満足させることができ、市場シェアや戦略的見地で優位性が確保できると確信できれば喜んでGCAPと別れを告げるだろう」「まもなく誕生するトランプ政権は外交政策の一環として武器売却を優先するはずで、GCAP参加をブラフと判断するかどうかは今後4年間のサウジ関係を占う兆候になるだろう」と指摘。

出典:The White House
CNNやBBCなどの海外メディアも「今週予定されている中東訪問でトランプ大統領は豊富な資金をもつ湾岸諸国が大規模な対米投資を引き出す見込みだ」「新しい米大統領の海外訪問は伝統的に英国、カナダ、メキシコから始まるが、トランプ大統領は最初の訪問国にサウジアラビアを選んだ」「ムハンマド皇太子は今後数年間で6,000億ドルを米国に投資すると公言している」「トランプ大統領は新たな防衛装備品の売却と合わせて対米投資額を1兆ドルに引き上げたい考えだ」と報じていたが、両国は総額6,000億ドルの対米投資で合意した。
トランプ大統領とムハンマド皇太子が署名したのは「総額6,000億ドルの対米投資」と「約1,420億ドルの武器販売(6,000億ドルに含まれる)」に関する覚書で、外交用語における覚書には国家間の拘束力は生じないものの、ホワイトハウスは武器販売の規模について「史上最大規模の合意」と説明しており、Reutersは「ホワイトハウスの説明にF-35売却に関する情報は含まれていないものの、この協議に詳しい関係者は両国がF-35売却の可能性について協議した」と、イスラエルメディアも「米国とサウジが歴史的な武器取引に署名した」「両国の協議にはF-35売却の可能性も含まれている」と報じている。

出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis
まだ1,420億ドル=21兆円の中身について詳しい発表(空軍力、宇宙能力、防空能力、海上及び沿岸防衛、陸軍近代化、情報・通信システム)がないものの、これだけの調達資金があれば「噂されていたF-15EXの200機購入=1機1億ドルでも200億ドル」など余裕で、これにF-35Aの調達が含まれていたとしても何の不思議もないが、Reutersの取材に応じた関係者は「イスラエルと同じF-35Aのサウジ売却を米国が承認するかどうか不明」「イスラエルに保証している質的軍事優位性=Qualitative Military Edgeが問題になる」と指摘しており、恐らくサウジにF-35Aを売却するにはイスラエルとの調整が必要だ。
因みに1期目のトランプ政権はQME問題をクリアしてアラブ首長国連邦へのF-35A売却を承認(バイデン政権がこれを反故)していたため、サウジへのF-35A売却は「実現が困難」というほどの難題には見えない。

出典:U.S. Air Force photo by Staff Sgt. Zachary Rufus
追記:米ディフェンスメディアは「F-35Aの売却には幾つかの政治的・技術的課題があるが、この件にトランプ大統領が絡んでいる以上、如何なる可能性も無視すべきではない」と指摘、Wall Street Journalも今回の中東歴訪で「トランプ大統領はカタールからF-15EXの契約を獲得する可能性が、アラブ首長国連邦に対しては1期目の任期末に承認したもののバイデン政権が阻止したF-35A売却を再開する可能性がある」「トランプ大統領にとって取引を成立させることは目標ではなく個人的なイデオロギーだ」「トランプ大統領の中では同盟国や敵国に関係なくあらゆる交流が取引につながる」と報じた。
追記:トランプ大統領は「サウジアラビアのアブラハム合意参加は私の希望であり、願いであり、夢ですらある」「(サウジはアブラハム合意への参加を)自分たちのタイミングでやるだろう」と述べており、アラブ首長国連邦へのF-35A売却の鍵となったアブラハム合意への言及は「F-35売却の可能性」を強く示唆している。
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※アイキャッチ画像の出典:The White House
こんだけの予算を軍事に注ぎ込んでれば今や米中に次ぐ軍事大国になっててもおかしくないのになんだってイエメン内戦にすら勝てない国なんだろうか。
軍事大国じゃなくて軍事費大国じゃないか。せっかくの最新兵器を砂漠の倉庫に死蔵してるのか。
サウジの環境では、F-35よりモリモリ爆弾載せられるF-15イーグルIIの方が合ってはいる。
フーシ派は、いくら対空装備は貧弱でも、空爆だけでは倒せないということの証明ですな。
空爆はあくまで敵拠点を破壊するだけで制圧・占領は出来ないからね。
次のトレンドは、陸軍の無人化ですかねえ。
装軌装輪UGVは、もうあるから歩兵代わりの二脚・多脚兵器とか。
逆に言えばアラブ諸国がイラン、イスラエル、トルコ並には積極的でないのがあの地域の唯一の救いでは?何なら荒々しい連中への抑止力が必要だから軍事費が増大してるだけなんじゃないのかと。
サウジアラビアが本気に成つてくれないとイスラエルを潰せない。困つたものだ。
金額だけですべてに片が付くなら誰も苦労はしません。陸軍なんて国土は日本の6倍ほど有るのに人員は半分、おまけに陸続きの国が幾つもある。そして人員全てが戦闘行為をする訳でもないから投入出来る兵力は更に減る。何でちょっと調べれば分かる事実を無視して、そんな話に持っていく必要があるんですか。
サウジアラビアの兵力でどうこうするなら外人部隊なりPMSCsで総員するか、質をもっと高めるしかなくて直接戦闘をする歩兵一人一人が米国レンジャー以上の戦闘力持ち各種戦闘車両も高火力で防御力に優れる物にしてようやく対応出来るかどうか。
ちょっと勿体ない気がする
これだけあれば他にもっとできることがある気がするけどね
アメリカとのコネの強化の価値はプライスレスで、他のすべての活動よりも優先度が高いのかなと。
今回の取引も、意味合いとしては軍事費というよりも外交費用なのかもしれないですな
防衛以外の安全保障分野に、かなり重要なものがある事が話題になってまして。
Nvidia・AMDなどとの提携、GPUサーバーの確保、クラウドインフラの強化、AI開発などが発表されてるんですよね。
アラビア語圏内・中東での、AI覇権を狙う目的もあると言われてるなと。
一見すると、アメリカ=トランプ大統領へのお土産だけに見えますが、国防力強化だけでなく産業競争力強化も獲得となれば、サウジアラビアなかなか強かなことをやっているんですよね。
アメリカ=サウジアラビアは、かなり強力な関係があるだけでなく、周辺諸国にも見せつけたと考えるべきかなと。
それも何か浮ついてる気がするけどね
nvidiaが工場を建てるにしても水は淡水化に頼ってるのにどうやるんだろうってのはおいといても自国の技術者がいないんじゃあんまり意味がないしAI開発企業を作るっていってもいきなりは無理でしょ
民族性なのかもしれないけどインドとかアラブの人ってなんか地に足着いてない
NEOMはまあ外国の技術者に作ってもらえばいいと思うけど本当に産業国家になりたいなら三足飛びじゃなくもっと初歩的なところから始めないと
原発使って、淡水化でもやるんでしょうかね?
日本目線で見れば、計算資源にあそこまで投資して確保しようとできるのは、羨ましい部分もあると思いますよ。
メガクラウドの業績を見ると、償却をこなしながら利益が増えいるわけですし。
ただまあ、ビジョン2030THE LINEなんかも壮大でしたが、仰る通りどうなりますかね…
というかアメリカに渡す金がこんなにあるならNEOMの予算削ってほしくなかったな
アルコロジーの夢が・・・
サウジアラビアは、MBSが設立した企業=エヌビディアの提携を発表、GPUチップの確保に成功した事がかなり話題になっています。
アメリカは、エヌビディアのGPUサーバーを安全保障に関わるとして輸出先に厳格な制限をかけており、サウジアラビアが外交的な歓心を買う事に成功したと言えるんですよね。
アメリカ=サウジアラビアの接近を見れば、F-35はNATO各国に見直し機運がでていたわけですが、サウジアラビアが巨大な買い手になる事は充分有り得ると思います。
(2025年5月13日 米エヌビディア、サウジ政府系ファンドのAI新興企業と提携 ロイター)
ただ当のサウジは「東エルサレムを首都とするパレスチナ国家の樹立がない限りイスラエルとの国交樹立はない」と明言してるんですよね。
このハードルは低くないし、また雑なことをすると新しい火種にしかならんのでどうなることやら…
>F-35が買えたらGCAPに別れを告げるだろう
何でリスクヘッジとして両方買うという発想に至らないんだろう?
「もし米国がF-35を売ると言い出し『サウジも自国の防衛改革=Saudi Vision 2030と結びついたアプローチを満足させることができ』『市場シェアや戦略的見地で優位性が確保できると確信できれば』喜んでGCAPと別れを告げるだろう」ですので。
開発参加上位tier国の英伊ですら戦略的見地で満足するリターンを得てないF-35の調達で、サウジが満足のいく優位性を確保できる可能性はほぼ皆無でしょう。