米国関連

バイデン政権の予算案を上院が拒否、新たに7,403億ドルに増額された国防予算を承認

2022年度の国防予算を審議していた米国の上院軍事委員会は最終的にバイデン政権が提示した7,150億ドルの予算案を拒否、253億ドル/約2.8兆円を追加した7,403億ドル/81.6兆円の国防予算案(国防権限法:毎年の国防予算の大枠を決める法律)を圧倒的多数で承認した。

参考:What was wrong with Biden’s $715 billion Pentagon budget
参考:DoD would see a big budget boost, military justice overhaul under Senate proposal

果たして米軍はインフレ率を相殺するのに十分な追加資金(253億ドル)を手に入れることは出来るだろうか?

バイデン大統領は2022会計年度の予算教書(連邦政府予算案)を5月末に正式発表、これを受けて国防総省は前年度よりも100億ドル増の「7,150億ドル/約78.5兆円」で編成された国防予算案を議会に提出したのだが、この100億ドル増という数字は米国のインフレ率(仮に2.5%なら約180億ドルほど予算を増額しないと前年度レベルの購買力が維持できない)を相殺するのに十分な数字ではない上、国防総省の裏金と呼ばれていた「海外緊急事態対応基金/OCO」を廃止して国防予算に一本化したため国防総省が執行できる資金の総額は500億ドル/約5.5兆円以上減ってしまった。

中国やロシアとの対立が先鋭化している中で実質的な国防予算の削減に動いたバイデン政権や7,150億ドルで予算をまとめた国防総省は「脅威に十分対応できる」と主張しているが、新たに示された「レガシープラットフォーム(古いという意味ではなく大国間の争いに適さない装備品という意味)を処分して捻出した資金を新しいテクノロジーに投資する」というコンセプトは短期的な戦力減少を意味するため「力によって中国との衝突を抑止するのではなく力不足による衝突を招こうとしている」という批判も多い。

出典:U.S. Air Force photo/Samuel King Jr. F-15EX

特に対立する中国との戦いで重要になる空軍は2026年度までに老朽化した421機(F-15C/D×234機、F-16C/D×124機、A-10×63機)の戦闘機を処分して、新たにF-15EX×84機とF-35A×220機調達すると主張しているが処分数と調達数が釣り合っておらず、海軍は新しく建造する艦艇よりも退役する艦艇の方が多いため355隻体制からどんどん離れていっており、現行のコンセプトで戦力を再構築すれば空軍も海軍も2020年後半にならないと戦力の規模が上向きにならないという意味だ。

つまり一部の米軍上層部が10年以内に中国が台湾の武力統一に動くと警告しているにも関わらず「米国は自ら中国に有利な状況を作り出そうとしている」と上院軍事委員会は危機感を募らせ、バイデン政権が提示した7,150億ドルの国防予算案を拒否、253億ドル/約2.8兆円を追加した7,403億ドル/81.6兆円の国防予算案を圧倒的多数(23対3)で承認したのだが本会議での採決はまだ行われておらず、下院との兼ね合いや増額された国防権限法にバイデン大統領が署名するのかという問題もあるため7,403億ドルという予算が実現するどうかは蓋を開けてみるまで分からない。

果たして米軍はインフレ率を相殺するのに十分な追加資金(253億ドル)を手に入れることは出来るだろうか?

関連記事:国防予算から見た米海軍の方針、装備調達を削減して艦艇の整備に1.5兆円を投資
関連記事:バイデン政権が国防予算案を発表、レガシーウェポン大量処分やF/A-18E/F調達中止を予告
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関連記事:国防予算から見た米陸軍の方針、研究・開発や装備調達の削減に手を付けざるをえない台所事情

 

※アイキャッチ画像の出典:public domain アーレイ・バーク級駆逐艦 デルバートD.ブラック

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    問題は、増えた予算が成立したあとの執行される内容ね、企業救済的な無駄遣いになるのでは大して意味がない

    14
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    A-10はとっとと引退させてやってくれ……って思ったけど代わりの近接航空支援F-35に任せるんだっけ
    若干心もとない

    7
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      実際のところはイラクシリアのように近接支援でF15EやB1が多用されると思われ
      攻撃回数や滞空時間重視なんだよね

      戦争当初はF35も使うだろうが、貴重なステルス機だし阻止攻撃や侵攻爆撃に回したいところ
      海兵隊のF35Bは近接支援やるしかないだろうが、戦局落ち着いたらお役御免だと思う

      8
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      神格化しすぎ
      A-10なんて残飯処理するだけじゃん
      陸軍空軍の政治問題と新型を用意する金がもったいないから使われてるだけ

      10
        • 匿名
        • 2021年 7月 23日

        退役話が出る度に実戦の活躍で覆してきたんだが
        何も知らないようだ

        10
          • 匿名
          • 2021年 7月 23日

          今までは退役を検討する度に新たな活躍の場が現れたけど、
          アフガニスタンから撤退して中東もある程度落ち着いてくると居場所がなくなると思う。
          中国相手では肝心の制空権を確保する機材が足りない。

          5
          • 匿名
          • 2021年 7月 23日

          その言葉こそ何も知らない証拠だよ
          A-10が活躍していた戦場というのはガチガチの防空体制が整って防空戦闘機が常に徘徊して回ってる戦場じゃないでしょうが
          ゲリライジメしか出来ないのが実情だしなんなら現状ですら30mmによる対地掃射を減らして遠距離からヘルファイアを投げる仕事に切り替わってるぞ

          7
            • 匿名
            • 2021年 7月 23日

            湾岸戦争ではイラクの防空体制は非常に強力だった
            フランス製の防空システムに各種西側製とソ連製ミサイル、各種対空砲

            他の機種が損害恐れて高空からの爆撃に切り替えたのに対してA10は低空で掃討を続けた

            1
              • 匿名
              • 2021年 7月 23日

              あのね・・・湾岸戦争は30年前の戦争なのよ。
              なんで30年間で技術が向上しないと思うの?

              7
            • 匿名
            • 2021年 7月 24日

            だから敵に防空能力ある場所では対地ミサイルや誘導爆弾(A-10である必要性のない兵装)を使ったり、F-16等を先行させて露払いさせた上でA-10出したり(二度手間)していて金がかかるようになっていたよ

            加えて言うなら敵が防空手段を持っていない場合やすでに潰した後なら、対戦車でもない限り30mmにこだわる必要がないからF-16やF/A-18の機銃掃射で十分(実際にしている)だしA-10である必要性がない
            滞空可能時間も武装ドローンに負けている

            個人的には好きな機種ではあるけど、もうA-10ならではというものがほぼ皆無になっていて無駄のほうが多いのが現状

            5
        • 匿名
        • 2021年 7月 23日

        そんな残飯処理をF-35にやらすのか?って話でしょ。

        5
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      むしろA-10の方が中露軍掻い潜って支援に飛んできてくれるのか心許ない

      2
        •  
        • 2021年 7月 23日

        近接支援て前線部隊の支援だからそんなかいくぐる必要ないよ
        湾岸で損失大きく出たのは敵地に侵入する阻止攻撃という間違った任務を割り当てられたから
        A10とは別にSEAD機がSAMレーダー潰しやってもくれるだろうし
        相手の戦闘機は高空でこちらの戦闘機と潰し合い
        低空のA10叩きにくるのは高空の戦闘機に対して不利になるので中々難しいところでも

        3
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      CASやらせたら互角に渡り合えるのってSu-25くらいだからな

      1
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      恐らくは、将来の大国間の戦争では常続的航空優勢の確保は困難で、対地支援もネットワーク環境下の無人機とスタンドオフ精密誘導兵器が主役になるでしょ。

      というか、台湾を戦場とするなら航空優勢確保は作戦距離と縦深策源地の有利さで質差が縮小すれば中国が優越する。
      質的に大きく優越できなければ必要な時に必要なだけ航空優勢を確保するのが困難になる。
      だから台湾防衛戦ではF-22もF-35も役に立たないというシミュレーション結果が出たんでしょう。
      ましてや航空優勢確保が前提のA-10などは使い所が無い、になるのかと。

      2
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    もっと予算をつけろと言われるとは羨ましい。

    14
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      政権に、代わりにどこを削れだの財源も示さずに増額のみ求めても無茶振りに見える
      これからのバトルが見所なんだろうけど

    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    “F-15C/D×234機”
    これって確かゴールデンイーグル改修した奴で空自F-15MJより積んでる機材上ですよね?

    2
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      アメリカ的にはC/DはEの下位互換だし新しい戦闘機で更新してしまいたいんだろう

      2
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      退役するならレーダーだけでも中古で売らないかな?
      空自の近代化はそれで安上がり!

      2
        • 匿名
        • 2021年 7月 23日

        イスラエルが丸ごと狙ってる模様。
        リンク
        争奪戦になるとかなり分が悪いね。

        1
        • 匿名
        • 2021年 7月 25日

        「例外的に機体やソフトウェアの改造が許可されているイスラエルだから出来る芸当なので日本が同じことを行うことは不可能だろう」

        ここだよね・・・

        1
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      一部の機体がアビをEにかえてても、F-15C/Dは、機体寿命が2020年~2030年で終了です。寿命です。

      2
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    これがシビリアンコントロールですのう
    AAV-7やらF-35やらイージス・アショアやら買えやあいうばっかで予算総額を増やさないアフォ政府アフォ議会とは違いますのう

    5
      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      他はともかく、AAV-7は何でそこで槍玉にあがってるの?

    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    >つまり一部の米軍上層部が10年以内に中国が台湾の武力統一に動くと警告しているにも関わらず「米国は自ら中国に有利な状況を作り出そうとしている」と上院軍事委員会は危機感を募らせ…(以下略)

    と言うか、バイデン政権は敢えてそうする事で、中国に台湾の武力統一をやらせようとしているんじゃないか?
    そうなれば米国は「台湾救援」と言う大義名分が出来るから、近隣の同盟国を引き連れて堂々と戦争する事が出来る
    戦略バランス的には中国も現状の戦力が最高の状態と言う訳じゃ無いし、管理人さんも「現行のコンセプトで戦力を再構築すれば空軍も海軍も2020年後半にならないと戦力の規模が上向きにならない」と書いているが、恐らくバイデン政権は2020年代後半のタイミングならば中国が台湾侵攻しても勝てると思っているんだろう

    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    7/23 20:28
    つーか 何この開会式 

    恥ずかしいから止めて欲しいんだけど

      • 匿名
      • 2021年 7月 23日

      あのー、此処は東京五輪の議論はやってないからね?

      24
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    F35はアレも出来るコレも出来るって、ボクの考えた最強の戦闘機を作ったまでは良いけど
    アップグレードやら整備やら、当初は予定もしてなかった維持費がべらぼうに高くて、まぁ金食い虫だよな

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 23日

    軍需産業は、全米に散らばっている。上院で軍予算が積み増しされたのは、
    どの上院議員も自分の選挙区(州)に予算を落としたいからにすぎない。
    B政権が予算額を減らしたので、増やそうという意識が高まっただけだろう。
    23対3がそれを証明している。

    2
    • 匿名
    • 2021年 7月 24日

    戦争はどちらが最後まで継続できるかの根競べのところもあるからね
    独ソ戦みたく何倍もの被害を出して、自国に攻め込まれても、自国民をなんとも思わなければ継続できるからね

    その点、独裁政権は強い。何せひっくり返す手段がクーデターか本当に何も出来なくなるほど資源がなくなるぐらいしかないんだから。
    米は4年もしたら大統領選があるからね。
    ってことは2024年にあわせて仕掛けてくるのかな?
    それまでに批判的人種理論が浸透して、猛烈に自虐史観が植えつけられれば、ハワイ当たりがすんなり占領されたときに、それを血を流してまで奪い返そうという気が起こるかだよな。

      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      ハワイには中華の入り込める歴史的根拠がない、単なる侵略にはアメリカは立ち向かう
      いわばハワイがアメリカの絶対防衛圏だから
      そのときに日本がどうなってあるかのほうが問題だよ

      • 匿名
      • 2021年 7月 24日

      >独ソ戦みたく何倍もの被害を出して、自国に攻め込まれても、自国民をなんとも思わなければ継続できるからね

      第二次大戦中のソ連の場合、そのせいで男子の人口ピラミッドが崩壊して長年成年男子の不足に喘いだ挙句、それが落ち着き掛けた1979年にアフガン侵攻をやったから成年男子の人口減少に歯止めが掛からなくなり、現在のロシアも人口減少が続いていると言う破目に陥っているからねえ……

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