米国防総省は、米国史上最大の兵器調達に関する最終合意を発表する席で、F-35のミッション達成率が従来の55%から73%に上昇したことを明らかにした。
参考:F-35 Readiness Rates Soar, From 55% To 73%; Price Drops 12.8%
昨年55%だったF-35のミッション達成率が73%まで急上昇
米国防総省は総額340億ドル(約3兆7,000億円)で、F-35を478機購入する契約をロッキード・マーティンと正式に結んだと発表した。
この契約により、空軍向けのF-35Aの最終価格(ロット14)は8,000万ドルを下回る7,790万ドル(約84億円)となり、ロット11に比べて1,000万ドル以上も安くなり、海兵隊向けのF-35B(ロット14:1億130万ドル)も、海軍向けのF-35C(ロット14:9,440万ドル)も同様に価格が引き下げられた。
今回の発表内容は、6月に国防総省とロッキード・マーティンが合意していた内容とほぼ一致(多少価格のブレがある)し、大きな驚きはなかったが、合わせて発表されたF-35のミッション達成率の数値には、非常に「びっくり」することになる。
前国防長官のジェームズ・マティス氏は2018年、空軍と海軍に対しF-16、F/A-18、F-22、F-35のミッション達成率を2019年9月末までに「80%」まで引き上げるよう命じたが、次期国防長官に指名されたマイク・エスパー氏は7月、期限までにF-35のミッション達成率を80%まで引き上げることは、F-35を構成する部品供給問題が原因で「期待できない」と語っていた。
スペア部品の供給不足問題の中でも特に、ミッション達成率引き上げの足を引っ張っているのは、F-35のキャノピー(天蓋:コックピットを覆う透明なカバー)の供給不足で、コックピット内部へのレーダー波進入を防ぎ、ステルス性を維持するために、F-35のキャノピーには「特別なコーティング」が施されているが、この「特別なコーティング」処理工程が安定せず、必要な量のキャノピー供給が困難な状況だと言う。
このキャノピーを製造しているロッキード・マーティンによれば、コーティング処理の失敗率は予想を超える多さで、同社だけの製造では、キャノピーの供給量を満たすのは難しいと明らかにし、米国会計検査院(GAO)はキャノピー製造企業を新たに増やすか、キャノピーの設計変更を検討しけなければならないと指摘していた。
それにも関わらず国防総省は、昨年の10月に記録した55%から、73%までF-35のミッション達成率を引き上げることに成功したと語った。
この数字はマティス氏が設定した80%には届いていないが、今回の結果は、ロッキード・マーティンがF-35の部品を製造するサプライチェーンの管理を大幅に改善したという証だと受け取る事ができ、これはF-35が本領を発揮できる体制が整いつつあることを示していると言える。
※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air National Guard photo by Tech. Sgt. Ryan Campbell
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