米国関連

海中を泳ぐマンタ? 米軍が開発に取り組むステルス機のような無人海中ドローン

米国の国防総省は全翼機のステルス機を海中に沈めたような無人海中ドローン(UUV)の開発を進めており、エネルギーハーベスティング技術を組みわせることで長期間の水中活動を可能することを目指している。

参考:DARPA Selects Performers to Advance Unmanned Underwater Vehicle Project

ステルス無人航空機? いいえ、これは国防総省が開発に取り組んでいる無人海中ドローンです

米国防総省内部の部局で軍事利用可能な最先端技術の開発を行っている国防高等研究計画局(DARPA)は今月5日、ペイロードに対応した無人海中ドローン(UUV)に関する革新的技術の実証が目的の「Manta Ray Project」に関する進捗具合を発表した。

DARPAが取り組んでいる「Manta Ray Project」は人間による操作やメンテンスを必要とせず、長期間水中で活動可能な無人海中ドローン(UUV)を実用化するのに必要な複数分野にまたがる技術的要素(自律的航行、水中障害物の回避、エネルギー管理、機体の腐食技術、バイオファウリング技術、メンテナスフリーで作動するUUVの信頼性など)を研究開発して実証するプロジェクトのことだ。

簡単に言えばセンサーや武器などの搭載物を格納するスペースを備え自律的な運用が可能なUUVを実際に開発してみるという意味だが、飽くまで技術的要素の実証が目的なので開発したUUVを兵器として実用化することは考えていない。

出典:DARPAManta Ray UUVのコンセプトイメージ

しかし「Manta Ray Project」で開発されているUUVは実用化済みのUUVが採用している一般的な魚雷型ではなく、プロジェクト名が示すように海中生物のマンタ(オニイトマキエイ)の形状を採用しており、全翼機のステルス機が海中を航行していると表現するのがピッタリだが、なぜマンタの形状を採用したのかなどは説明されていないため謎だ。

DARPAの説明によればManta Ray Projectは2021年初めまでにフィーズ1(予備設計のレビュー)が完了、現在は今年後半に予定されているフィーズ2(実機製造やフィールドテスト)のリスクを軽減するため設計の熟成度を確認する作業を行っておりノースロップ・グラマンとマーティン・ディフェンスがUUVの設計・製造を、メトロンが深海で作動するエネルギーハーベスティングシステム(密度の低い環境エネルギーを電気エネルギーに変換する技術のこと)の開発を担当している。

補足:エネルギーハーベスティング技術とは、周りの環境から微小なエネルギーをハーベスト(収穫)して電力に変換する技術で別名「環境発電技術」とも呼ばれている。

何度も言うがManta Ray Projectで開発されるUUVは直ぐに実用化可能な類のものではないが、エネルギーハーベスティングを組みわせることで「UUVの水中活動時間をどこまで長期化させることが出来るのか?」中々興味深い取り組みなので結果次第では大きな注目を集めるかもしれない。

 

アイキャッチ画像の出典:DARPAManta Ray UUVのコンセプトイメージ

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コメント

    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    こういう水中用ドローンが普及したら、潜水艦も時代遅れな兵器になるんやろうか?

    1
      • 匿名
      • 2021年 2月 06日

      潜水艦がドローン母艦になるんでしょ

      18
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    潜水艦に応用できそうなエネルギーハーベスティング……浸透圧温度差潮流太陽光(浮上時)あたりかね?

    なんか潜水艦に恋をした鯨の話思い出したわ

    4
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    マンボウ型で頼む

    10
      • 匿名
      • 2021年 2月 08日

      ペンギン型を提案します。

      5
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    環境からエネルギーを集める…ということは魚を捕食してエネルギー源にするに違いない(錯乱)
    この形状も魚を油断させるものだというなら納得がいく

    11
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    何年か経ったら、潜水艦の無人化が進むんだろうね。

    7
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    確か前これ絡みで防衛省とアメリカが燃料電池の共同研究やってたよな
    数多さんのブログに書かれてた

    9
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    何故、マンタなのか?
    これあたりが理由なのかな?
    CES(国際見本市)で初めて自律型のドローンが登場 
    (それまでは無かった ドローン単体で水中を自在に泳ぐのは技術的にまだ難しいかのようにみえた。)
    2018年 by 国立シンガポール大学
    リンク

    リンク

    3
      • 匿名
      • 2021年 2月 07日

      ノースロップ・グラマン「なぜこの形状かだって?ハハハッ」

      7
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    いくら何でもこの形じゃ速度出ないだろ・・・・。
    狭くて海流の穏やかな海域でしか使えないんじゃないか。

    2
      • 匿名
      • 2021年 2月 06日

      下のコメントにも有るように「速度を出す気が無い」からこの形状なのでしょう
      極力省エネルギーで、数ケ月単位で海中に留まる為に

      14
      • 匿名
      • 2021年 2月 07日

      むしろ海流を利用して移動するのでは?
      バラスト注排水での昇降とそのエネルギーでの前への「滑水」で
      細かく移動して
      海流を乗り継いで大きく早く移動する。
      これならエネルギー消費も発生音も最小限だし、あの形状の合理性もある。

      9
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    これ、艦艇装備研究所航走技術研究部の「水中グライダーの航走特性に関する基礎的研究」の実験機と形と似てる。浮力と傾斜角を変えながら動くらしいが、この方式なら省電力なので「エネルギーハーベスティングシステム」でも十分ということかな。

    13
      • 匿名
      • 2021年 2月 07日

      将来潜水艦のコンセプトとしてやはりエイのような形状が発表されてたよね、20年くらい前だからまだ無人化構想はなかったが。
      自然界の生物特性を設計に取り入れることで、水中における合理的な運動性能を模索する動きは続いてたということか

      3
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    マンタ型なのはフラップ類の動翼使って浮上沈降のエネルギーを推進力に変えるのに横に広いのが効率いいからかな?
    航行速度は求めないんだろう
    移動できる沈底機雷とかソナーのノードって感じで長時間海中漂う感じの運用するなら良さそうと思うな

    6
      • 匿名
      • 2021年 2月 07日

      動翼じゃなくて機体の姿勢を変化させれば良いのでは。
      それでこその全翼機でしょう。

    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    アメリカが少しでも変わった兵器を開発しているというのを聞いたら
    また失敗するんじゃねと思ってしまう

    1
      • 匿名
      • 2021年 2月 06日

      今回は新技術の実証実験だから、失敗しても「これはダメ」と言うノウハウが残るので、別に無意味じゃないよ

      12
    • 匿名
    • 2021年 2月 06日

    マンタというよりホルテンHo229に似ている。
    Ho229はいろいろな意味で凄い機体だと思う。

    2
    • 匿名
    • 2021年 2月 07日

    実用化できるなら海洋観測ツールとして大いに役立つ
    海流に乗って超長期周回するセンシングプラットフォームは実に魅力的だ
    (当然窃盗を働こうとする輩との鼬ごっこもセットになるが)

    日本国内では軍事研究に転用可能というタグ付けしてあらゆる研究を片端から潰す動きがあるから
    こうしたドローン研究でも後塵を拝しているのは必然の結果だ
    国内の掃除から始めないとねぇ……

    4
      • 匿名
      • 2021年 2月 07日

      酷い話、「軍事研究に転用可能」ならコロナワクチン開発だって潰せるからねえ…今、ドローンどころかワクチン開発でも日本は世界の後塵を拝している状況になっている以上、国内は掃除どころか粛清が必要かもよ?

      4
        • 匿名
        • 2021年 2月 07日

        この書き込みの追記だけど、日本政府も対策を考え始めた様なので、この記事を紹介して置く
        記事を簡単に紹介すると、文科省は2021年度から日本学術振興会を通じて出している「科学研究費助成事業」について、申請者(大学や研究機関に属する研究者が対象)が外国の研究資金を受けている場合は申告するよう義務付け、既に2021年度分の審査が始まっているとの事

        【読売新聞オンライン・2021/1/25【独自】中国の「千人計画」念頭、外国の研究資金に申告義務…すでに審査開始】
        リンク

        3
    • 匿名
    • 2021年 2月 07日

    全翼形状ってのはステルスを連想するけど、そういう効果はあるのかね?
    相手が電波じゃなく音波になるけど

    2
      • 匿名
      • 2021年 2月 08日

      推進方法が浮上と降下を推進力に変換するグライダー方式だから滑空(水?)しやすいこの形状になったのでは?
      海上自衛隊でも似たような形状の水中ドローンを研究してますし。

      4
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