中々、知る機会の少ない米国製防衛装備品の単価が最近公開された国防権限法(NDAA)から読み取れ非常に興味深い。
参考:WILLIAM M. (MAC) THORNBERRY NATIONAL DEFENSE AUTHORIZATION ACT FOR FISCAL YEAR 2021
議会に報告したF-15EXの調達コストはやはり操作されたもので、実際のF-15EX調達単価は1億ドル超え
通常、防衛装備品のコストは関連費用が含まれている場合が多く純粋な単価が良くわからない仕組みになっているが、米国の国防予算に関する大枠を定めた国防権限法(NDAA)の内容が公表されたため米軍が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかが判明した。
今回は米空軍が2021会計年度に何を、幾つ、幾らで調達しているのかを見ていくことにする。
航空機 | 調達コスト | 調達単価 |
F-35A(60機) | 52.9億ドル/5,500億円 | 8,810万ドル/92億円 |
F-15EX(12機) | 12.4億ドル/1,290億円 | 1.03億ドル/107億円 |
KC-46(15機) | 27億ドル/2,800億円 | 1.8億ドル/187億円 |
MC–130J(4機) | 3.5億ドル/364億円 | 8,750万ドル/91億円 |
UH–1N(8機) | 1.9億ドル/198億円 | 2,370万ドル/25億円 |
HH-60W(16機) | 9.7億ドル/1,000億円 | 6,060万ドル/63億円 |
MQ-9(16機) | 7.9億ドル/820億円 | 4,940万ドル/51億円 |
航空機 | アップグレード費用 |
A-10(主翼の交換) | 1.4億ドル/146億円 |
F-15(APG–82への交換) | 3.3億ドル/343億円 |
F-16(APG–83への交換) | 5.8億ドル/603億円 |
F-35A(Block4/TR3への更新) | 3.2億ドル/333億円 |
F-35Aの調達単価が9,000万ドルを切っているのに対して、新たに調達を開始したF-15EXの調達単価は1億ドルを超えている。
当初空軍とボーイングは議会に対してF-15EXの調達価格を8,770万ドル(約94億円)と議会に報告していたが、後に米メディアはF-15EXの調達単価は安価に見せかけるための意図的な操作が行われており、F-35Aと同じ条件で再計算すればF-15EXの調達コストは1億ドルを越えると指摘していた。

出典:ボーイングF-15EX
F-15EXの調達価格は8,770万ドル(約94億円)にはF-15向けに提供されている内蔵式の電子戦システム「EPAWSS(1,220万ドル )」が含まれておらず、マルチロール機化したF-15EXに必要になるターゲットポッド「AN/AAQ-33」も後付なので完全に戦闘状態のF-15EXを1機構築するには1億200万ドル(約109億円)が必要だが、F-35Aは機体単価に全て必要機器が含まれているためF-15EXの調達コストは最初からF-35Aよりも高価になると指摘されていたが、やはり米メディアの主張は正しかったようだ。
関連記事:実際の調達コストは1億ドル超え、米議会はF-15EX調達を中止すべきか
あと今回は主要な航空機のアップグレード費用について抜き出してみたが、2021会計年度に計上されたアップグレード費用が何機分なのかについては不明なので単価は不明だ。
弾薬 | 調達コスト | 調達単価 |
AIM-120D(414発) | 4.5億ドル/468億円 | 109万ドル/1.1億円 |
AIM-9X(331発) | 1.6億ドル/166億円 | 48万ドル/5,000万円 |
JASSM(376発) | 4.8億ドル/500億円 | 128万ドル/1.3億円 |
LRASM(5発) | 1,980万ドル/21億円 | 396万ドル/4.1億円 |
ヘルファイア(548発) | 4,010万ドル/42億円 | 7.3万ドル/760万円 |
GBU-53/B(1,179発) | 4,550万ドル/47億円 | 3.9万ドル/410万円 |
GBU-53/BⅡ(1,133発) | 2.7億ドル/280億円 | 24万ドル/2,490万円 |
JDAM(1万分/種類不明) | 2.1億ドル/218億円 | 2.1万ドル/220万円 |
攻撃用の弾薬類で注目すべきは日本も導入を検討している長射程の対地ミサイル「JASSM」の調達単価が1.3億円に対して、JASSMの派生型で対艦仕様「LRASM」の調達単価が4.1億円もしている点だ。LRASMは海上の艦艇も攻撃するためシーカーがJASSMも複雑でコストがかかると言われているが構成の違いで3倍以上の価格差がつくとは思えないので、単純に量産規模の違いが調達単価に大きく影響しているのだろう。
あと目につくのはJDAMキットの調達単価の安さだ。
無誘導爆弾のMk.82なら4,000ドル(44万円)、無誘導爆弾のMk.84 なら1.6万ドル(180万円)程度なので1発あたり260万円~400万円で精密誘導兵器が手に入ると思えば、航空機搭載の攻撃兵器の中で最もコストフォーマンスが優れていると言われるのも頷ける。

出典:public domain GBU-53/B
仮にJDAMキットを取付けたMk.82よりも遠距離から攻撃可能な滑空爆弾「GBU-53/B」で目標を攻撃すると410万円もするため、目標の状態によって使い分けないと攻撃コストで跳ね上がり直ぐに弾薬の在庫が尽きてしまうだろう。
ただ防空網が整った中国やロシア、さらに高度な防空システムの低コスト化に伴う拡散によって安価なJDAMキット+Mk.80シリーズの組み合わせによる攻撃リスクが上昇しており、米軍は精密誘導兵器の長射程化を進めている。
そのため将来的には戦闘コストが現在よりも高騰するかもしれない。
これで空軍と海軍(海兵隊を含む)が調達する装備のコストのまとめが済んだので、近い内に陸軍の装備調達に関するコストも記事にするつもりだ。こういった数字とFMS方式(対外有償軍事援助)を通じて購入する数字を比較すれば、どの程度の関連費用がプラスされているのか判断する材料になるかもしれない。
※飽くまで2021会計年度の調達コストなので今後も同じ価格で調達出来るわけではない。
関連記事:米海軍の装備調達コストは?SM-6は3.3億円、F-35Cは107億円、イージス艦は1,560億円
※アイキャッチ画像の出典:ボーイングF-15EX
前にも書いたけど、”日本がF35を「爆買い」のウラで米軍はF15の大量購入 やはり騙されているのか”とか書き殴ってた、トンキン新聞出身のハーフ田んぼ滋さんよ…
アメリカにナメられ続けた日本の「悲しすぎる末路」
リンク
またケチ付けたいだけのしょーもない記事を書いております…
つーか爆買いってフレーズ好きすぎだろ…金払ったのに武器が未納とか印象操作が過ぎる
納品が開発終わってからとかいろんな理由が考えられるのに。
F15EXのほうがやっぱり高いんだなぁ。
需要が違うのはわかるけど、前世代の戦闘機が高くなるのは不思議だなぁ。
あと、こういうまとめ方は嬉しいです。
人民解放軍の表とかも作ってくれませんか。
スマホでもPCでも古いのを我慢して使うより新機種に変えた方が安くて高性能でいろんなことができて、旧機種で同じことしようと思ったらパーツの交換や新機能に対応した外付け機器が必要になって返って高くつくのと同じでしょ
まあこれは使われてる機能のコモデティティ化が前提だけど、その意味じゃもうF-35のステルスもAI化も「枯れた」技術になってきてる証拠だね
どこまで変えるかによるね。
必要な部分を必要な時に変えるのは、効果的だよ。
F-15からF-35だと世代が違い過ぎるから問題になるだけ。
因みに、家の自作PCは、グラフィックカード加えてwindows10で運用中。
追記です。
12年前に組んだPCです。
使い捨てられる枯れた技術(Aー10とか)はそれはそれで使いでがあるんだよね。ロカクされても惜しくないってのはラクだよね。
西側のアメリカや日本なら公開されてるけど、東側のロシアや中国、韓国は嘘の情報を公開してるから当てにならない。
あぁ、そうかぁ。
政府が公開してる情報すら信用ならないかぁ。
>人民解放軍の表
信頼できるまともなソースってあるの?
人民解放軍はそもそもこんなん公開してないでしょ
中国は独裁国だから、税金の使い道なんてモノを正確に公開しない。
よって人民解放軍が購入する武器の価格なんて闇に葬られてる。
やっぱりF-15EXを配備するよりも、F-35をビーストモードにした方がコスパが良さそう。
単純に考えると、そうだよね。
F-35は、AEWの代わりも出来そうだし、F-15EXを新造する意味は、ボーイング救済位だね。
しかも、JSIみたいに高騰するかもだし。
どうみてもボーイング救済ですね…
維持費についても、ステルス性が不要ならば、塗装やコーティングを省略するとか、いくらでもやりようはありそうだし…
F-15EXの最大の不幸はF-35の存在なんだなと、単価、性能共に優れてるステルス機とかどうすればいいんだ
まだ米軍がUH-1Nを買ってるんだね
米軍納入価格だから比較するのもなんだけど、川崎製のXUH-2の量産化した時の価格差が気になる所。
空自はF15の改修は止めてF35Aを追加購入したほうがいいよ。どう考えても総費用は置き換えたほうが安く済む。
以前、F15とF2が飛行停止になってF4だけの状態になった事がある。
2機種に絞るのは危険。
アメリカのように、自己原因が出る前から飛行再開できれば別だが。
それはそうだけど、C/Dベースの日本のイーグルをマルチロール化するのはキツい気がするんだよなぁ
既に事前の見積もりより高騰することはほぼ確定してるし
海兵隊が流したF-35Bを買うかな。
本当は、F-3にボーイング咬まして、F-3用の機材をF-15に載せられたら良かったのだが。
アメリカにF15Eをリース頼めないかな……
F35はステルスコーティングのメンテナンスコストがかかってくると思うから、トータルコストが安いと言うには、もう少し情報が必要かと。
F-15の改修予算見送りってニュースあったからどうなるのかねぇ
余りに酷いので、海兵隊が流したF-35Bの追加購入になるのでは?
まともに見積もりすら出せないボーイングを間にかますのがアレなだけな気もするがね……
なんで、JASSMやLRASMのF-15Jへの搭載は諦めて、12式地対艦ミサイル改2の空自型を積む可能性が出てきた
ヒゲの隊長によれば射程1000km級との事だから、完全にJASSMやLRASMと被る。突然そんな物が出てきたのも、急遽代替する必要性が出てきたからだと考えれば辻褄が合う
調達が60機のF-35A(大量生産の一部)と12機のF-15EX(新規生産)及び単発と双発の違いを考慮するとこうなるのかなという気もします。
EXはサウジ向けSA、カタール向けQAと大部分が共通化されており
同じラインで生産中なので量産効果的にはあまり差は無いかと
不合理な面は全部ボーイング救済事業だから…で説明出来ちゃうのが歯痒いですね。
そうなったのはB社の責任でしょうに。
単純に考えると、そうだよね。
F-35は、AEWの代わりも出来そうだし、F-15EXを新造する意味は、ボーイング救済位だね。
しかも、JSIみたいに高騰するかもだし。
ここの諸賢の家庭生活でも、何か壊れたら買い換えるかリペアかで、買い換えのほうがいろいろな意味でお得な場合が多いでしょ
悲しいかな、モノはすべからく使い捨て意識に切り替えたほうが楽なんでしょうね
レトロ趣味には辛いよw
F35はみんなでカネ出して莫大な開発費を手当てして、海空のプラットフォーム共有化して、みんなで買って量産効果でお安くなる、今までの戦闘機開発の流れの最高の事例だと思う。
その結果がLM1社総取りで無敵化競合ほぼ無し、というのが、またアメリカらしいというか資本主義だよねえ
管理人さんの分析が光ってるね。後日、陸軍装備のほうもよろしくね。
F-35の80%くらいならバカ売れとはいかなくてもかなり売れると思うんですよね。
確かにF-22クラスの双発だからF-35より高いのは仕方ないのか・・・。
ボーイングが巻き返せる絵が全く見えないです。
ボーイングは本当に新型機の開発能力を失ってしまったようだな、トップレベルの航空機設計者の給料はとんでもなく高いから全員リストラしちゃったんじゃないかな。
おかげでB737MAXのような素人でも解決できそうな案件でさえ長期間にわたり生産再開できないことになった。
ボ-イングにはもう軍用機の新規開発はできないだろうし昔は数多く存在した軍用機メーカーも消えてしまった、デジタルセンチュリーシリーズをLMだけで行うのは悪い冗談でしかない。
日本が救済するってのも勘弁な話だもんね。
こっちも三菱潰すわけにはいかないからさ。
所がF-15JSIの初期費用が5倍に跳ね上がることが判明して初期費用がF-15JSIが中止されるかもしれない事態になってますね
共同通信英語版によれば電子部品が枯渇し製造ラインを新設する必要があるため初期費用が5倍になるとのこと
リンク
値下げ交渉してるものの上手く行っておらず最悪中止になるやも…
ミサイルの使用期限てどのくらいの期間なんでしょうね
もちろん必要かつ適切な整備を施して維持しての場合で
一般論として十数年から二十年越し、液体燃料のほうが短いがこれは昔話だよね、
誘導の電子部品を交換しても本体燃料の期限がある、セルビア爆撃のときに米軍がトマホークの期限切れを間際に消費できたと噂されたのも、あながち外れではないかもw
C-130Jの価格見ると、エンブラエルC-390って結構お得感ある輸送機だなっていう感想。
F35が優秀だとかチートだとか言っても、所詮旧式機に対し新鋭機が優れているのは当たり前のこと。あの空飛ぶポンコツで東側の第四世代戦闘機と渡り合えるのか疑問だわ。
特に日本の場合は海の向こうに核戦力とミサイル防衛網で要塞化された軍事拠点に隣接るしているので、運用の際に正面戦闘だけでなく情報中継や領空監視も並行せざる負えない。幾ら高価な作戦支援機が的に成りやすいとは言え、旧式化したF15JやF2と共に正面戦力の代替と成るとは思えない。
存在感を発揮できなければ秘境場や整備拠点が極超音速兵器の的になる。既に中国沿岸から1000㎞圏内は米空母が近づけない聖域と化している。数が少ない東側第五世代機よりも第四世代の方が航続距離も兵器搭載量も多い。ステルスなんて所詮商品に対する付加価値でしかないので、対象戦争では使い捨て運用を強いられる。
>UH–1N(8機)
記事内容とはやや外れたコメントですみません
F-35やF-15EXがある表の中になるということは新規製造機を調達だと思うのですが本当にUH-1Nを新規製造で調達しているのでしょうか?
確か引き渡しが始まったのは1970年くらいだったはずです
継続して新規生産機が納入されているのならば、50年も調達されていることになりますが正しいでしょうか?
既存運用機の近代化改修(再生)機とかではないのでしょうか?
とても気になりますので、blog主様、どうかご教示のほど、お願いいたします