米国関連

米空軍の旧型RQ-4退役を決意させた張本人、新型無人偵察機「RQ-180」とは?

米空軍は以前から開発が噂されていたステルス無人偵察機「RQ-180」をカリフォルニア州ビール空軍基地に配備、実戦的な運用を始めていると報じられている。

※本記事は2019年10月28日に公開した記事に加筆したものです。

参考:The U.S. Air Force’s Secretive New Drone Is a B-2 Lookalike

F-22よりも優れたステルス性能を持つ無人偵察機「RQ-180」が運用状態に入る

米空軍は1999年まで敵の厳重な防空網をマッハ3.0で貫通できる「SR-71 ブラックバード」を運用していたが後継機の開発を行うことなく退役したため、同様の任務を遂行する事が出来なくなった。

補足:一応、SR-71を開発したロッキード・マーティン社がマッハ6.0で飛行する極超音速偵察機「SR-72」を開発(2025年頃に初飛行予定)していると言われているが、あまりに情報が漏れ過ぎで本当に開発しているのか怪しいと管理人は感じている。

出典:public domain SR-71B(NASA機)

そこで米空軍は敵の厳重な防空網をSR-71のように「スピード」ではなく、B-2のような「ステルス」で貫通できるノースロップ・グラマンが提案した無人偵察機「RQ-180」の開発を極秘裏に進め、2009年から実機によるテストが始まったと言われている。

ノースロップ・グラマン社の「RQ-180」は高度なステルス性能を獲得するため「B-2 スピリット」や「B-21 レイダー」によく似た全翼機スタイルを採用、RQ-180のレーダー反射断面積(RCS)は全方位において既存のF-117、F-22、F-35を凌駕していると言われており、ロッキード・マーティン社が開発した「RQ-170」よりも高度なステルス性能を備えているらしい。

出典:FOX 52 / CC BY-SA 4.0 ロッキード・マーティン社のステルス無人偵察機「RQ-170」

さらに「RQ-180」は18,000mの高高度を24時間飛行するため全長約10mの機体に全幅約40mもある主翼を備えており、ここに各種センサー、電子機器、エンジン、膨大な燃料を全て詰め込んでいる。

同機は2017年に最終テスト(北極上空の飛行)に合格、カリフォルニア州ビール空軍基地にRQ-180を運用するための実践的な部隊が設立され、現在では完全な運用状態を確立していると言われており、今のとろこRQ-180が実戦に投入されたという報道を見かけたことは無いが、活動自体が極秘事項なので中東方面で実戦デビューしていても不思議ではない。

結局、世界がRQ-180の活躍(?)を知るにはイランに鹵獲された「RQ-170」にようにミスを犯すか、後継機が開発されたときだけだろう。

補足:イランによる無人偵察機「RQ-170」鹵獲事件は2011年12月に発生した。イランの領空に侵入した米空軍の「RQ-170(最終的にCAI所属機だったことが判明する)」は、イラン軍によってGPS信号を書き換えられ、所定の基地へ帰投したと誤認し、無傷のままイランの基地へ着陸し鹵獲されてしまった。

因みに、米空軍がRQ-4グローバルホークの旧型(Block20/Block30)を退役させても問題ないと決断した一因には、RQ-180の運用開始が関係しているとも言われている。

関連記事:非常に賢い判断、日本がグローバルホーク導入を再検討する理由

 

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo/Senior Airman Tristin English

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コメント

    • 匿名
    • 2019年 10月 28日

    「イラン軍によってGPS信号を書き換えられ、所定の基地へ帰投したと誤認し、無傷のままイランの基地へ着陸し鹵獲されてしまった。」

    これには驚きました。自分がまだ軍事に関心がなかった頃で知りませんでした。有人機では先ず無いだろう大失敗ですね。着陸の時だけオペレーターが管制と連絡して確認すれば防げそうな気がしますが、当時はまさかこんな手段を使われるとは思っていなかったのでしょうか。

    こうした外部からの言わばハッキングに弱いのが無人機の難点なのでしょう。

    • 匿名
    • 2019年 10月 28日

    今では一般人でもGoogleで衛星写真を見られるというのに、偵察機がそこまでして必要なのかな?

    1
      • 匿名
      • 2019年 10月 28日

      相手の動向をリアルタイムに把握するには人工衛星だけでは足りないんですよね。グーグルの衛星写真はそもそも長い年月をかけて作られたものなので比較するのもどうかと思います。

      2
        • 匿名
        • 2019年 10月 29日

        偵察機を開発するお金で、衛星を大量生産する方法も無しでしょうか

        1
          • 匿名
          • 2020年 8月 23日

          偵察衛星の事についてまず自分で調べた方が良いよ。
          貴方の為だけに親切な人に無償で膨大な情報をここに書かせる気なの?

          4
          • 匿名
          • 2021年 9月 24日

          軍事偵察衛星は低軌道なので、搭載燃料=寿命、偵察する場合は高度を下げるからね。 普通は3年~5年
          どんな軌道であっても特定の地域、例えばアフガンを監視できるのは例えば4時間とかになる・・・

      • 匿名
      • 2019年 10月 29日

      原口先生…こんなとこまで出張していただかなくても結構です

      2
      • 匿名
      • 2020年 8月 23日

      なんか原口議員みたいな事言ってますね。。。
      Googleのアレって更新頻度どの程度か知っていれば、そんな発言は出ないと思うんですが。

      1
    • 匿名
    • 2019年 10月 28日

    やっぱ天測航法とセットがいいね
    GPS妨害にも耐えるし精度もそこまで悪くない
    アメリカもバカじゃないからもう対策してるだろうけど

    1
    • 匿名
    • 2019年 10月 28日

    衛星写真ではリアルタイム性がないので、偵察機は必要ですね。

    1
    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    今思えばB-21 レイダーの開発に遅延や問題発生が聞かれないのは、RQ-180と共有してる部分がかなりあるからかもしれませんね。

      • 匿名
      • 2020年 8月 23日

      B-21も遅れそうとの話も時々聞きますが…
      まあ確定情報じゃないし遅れるにしてもどの程度かというのは本当に聞いたことがない気がしますね

    • パエム
    • 2020年 8月 23日

    匿名 :
    今では一般人でもGoogleで衛星写真を見られるというのに、偵察機がそこまでして必要なのかな?

    どうも、闇の勢力と戦う光の戦士グーグル原口です。中共は民主国家!

      • 匿名
      • 2020年 8月 23日

      CIA以外にCAIって組織があるのか

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    これでミサイル誘導出来たら最強
    海上のターゲットも捕捉できたら言うことなし

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    >イランの領空に侵入した米空軍の「RQ-170(最終的にCAI所属機だったことが判明する)」

    CIA以外にCAIって組織があるのか

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    >イランの領空に侵入した米空軍の「RQ-170(最終的にCAI所属機だったことが判明する)」

    CAIって何の略称なんだろう

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    あれ?再投稿?

      • 匿名
      • 2020年 8月 23日

      あ、加筆って書いてあったのに見落としてました…失礼しました

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    今の飛行機は高度18000m当たりを普通に飛んでて驚く
    そのうち高度3万メートル以上が主戦場になるんじゃないかね
    そうなりゃレーザーが普通に使えそう

      • 匿名
      • 2020年 8月 23日

      「今の飛行機は高度18000m当たりを普通に飛んでて驚く」

      50年代に開発されたU2が高度20000mを飛行したり、DC8が16000mを飛行して旅客機の高度記録つくってるのに、今更過ぎないですか。
      それとも半世紀以上前の初期のジェット機であるDC8やU2を指して「今の飛行機」と言ってるんですかね。

        • 匿名
        • 2020年 8月 23日

        ジェット機は1万あたりを飛ぶイメージが強くてさ
        2万あたりはごく一部の機体が飛ぶものだと思ってました

        レーザーは非実用的だと思ってる方は多いんですが、当然高度によって空気の密度は変わるから高空であればあるほど射程は伸びる。なのでレーザー否定派は自分と同じく航空機の高高度飛行の認識が甘いのかなと思ったり

    • 匿名
    • 2020年 8月 23日

    匿名 :
    やっぱ天測航法とセットがいいね
    GPS妨害にも耐えるし精度もそこまで悪くない
    アメリカもバカじゃないからもう対策してるだろうけど

    匿名 :
    やっぱ天測航法とセットがいいね
    GPS妨害にも耐えるし精度もそこまで悪くない
    アメリカもバカじゃないからもう対策してるだろうけど

    別にそこまでしなくても指向性アンテナで妨害電波を除外すれば済む話なんだがな…
    本物のGPS電波は宇宙からしか来ないわけで
    ホントRQ-170は無様な大失敗だった
    敵をナメすぎたんだ

      • 匿名
      • 2020年 8月 24日

      もうちょっと電波とGPSの仕組みを勉強してから
      発言したほうが良いかと

        • ぬるぽ
        • 2023年 4月 12日

        はいソース
        中部大学、妨害に強いGPS受信システムをJAXAらと共同研究|関連ニュース|みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト – 内閣府 地上からの妨害電波を検知した場合その方向には感度を持たない(無視する)ような設定が可能となります。

        お前こそちゃんとGPSの仕組み勉強しような

    • 匿名
    • 2020年 8月 24日

    Google mapの航空写真は、半年~1年で更新されます(ストリートビューは1~3年で更新されるそうです)。

    なので、Google mapでは、地上の直近の動きを見ることはできないんですね。

    偵察機なら、必要な時に必要な場所に行って撮影できるので、衛星に代替はできないでしょう。

      • 匿名
      • 2020年 8月 24日

      そもそも使用できる電力に差があり過ぎる気がしますね
      方や太陽光オンリー、方やジェットエンジンによる発電ですから

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