米国関連

今年こそ実現するか? 米海軍が再びF/A-18E/Fの新規調達中止を提案

米海軍は議会に阻止されたF/A-18E/Fの調達中止を今年も提案しており、再びボーイングの利益を代弁する議員との熱い戦いが始まるのだろう。

参考:US Navy budget would pay for 9 ships, decommission 24 amid readiness drive

必要としていない航空機の調達を議会に働きかけるを止めてほしいという願いは叶うのだろうか?

米海軍は昨年、次期戦闘機の開発資金を捻出するためF/A-18E/F BlockIII新規調達(BlockII→BlockIIIへのアップグレードは継続)を2022年度に中止する方針を発表、しかし米航空産業界は軍事委員会や歳入委員会にF/A-18E/Fの新規調達を継続するよう働きかけた結果、国防権限法(毎年の国防予算の大枠を決める法律)にF/A-18E/Fの新規調達が復活(0機→12機)してしまう。

出典:DoD photo by Lisa Ferdinando

この異常な事態に米海軍のギルディ作戦部長は「海軍が必要としていない航空機の調達を議会に働きかけるを止めてほしい=中国海軍とのギャップを埋めるための予算が限られているので本当に邪魔しないでくれ」と訴えていたが、新規調達が復活した国防権限法はそのまま成立してしまい米海軍は2022年に必要がないBlockIIIを新たに12機発注しなければならない。

そこで米海軍は2023会計年度予算で再びBlockIIIの新規調達数を「0機」に設定すると主張しており、今年もボーイングの利益を代弁する議員との間で熱い戦いが始まるのだろう。

出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Nick Bauer

因みに米海軍は2023会計年度予算でフリーダム級沿海域戦闘艦×9隻、タイコンデロガ級巡洋艦×5隻を含む24隻の艦艇を退役させたいと提案しており、これが実現すれば海軍の保有艦艇数は298隻→280隻に減少すると指摘されているが、米海軍は「脅威(中国)と戦うことができない艦艇をいくら維持しても意味がない」と主張している。

関連記事:必要ないと米海軍が訴えていたF/A-18E/F新規調達、継続決定でボーイング大勝利
関連記事:米海軍のギルディ作戦部長が防衛産業界を批判、ロビー活動で必要ない航空機を売りつけるな

 

※アイキャッチ画像の出典:Photo by Petty Officer 2nd Class James Evans

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コメント

    • K(大文字)
    • 2022年 4月 06日

    >米海軍は「脅威(中国)と戦うことができない艦艇をいくら維持しても意味がない」と主張している

    LCSくんはまぁアレだけど、タイコンデロガもダメなのかな?老朽化でコストが…というなら分かるけど、もともとはバーク級より高級品でしょ。バークの初期フライト以上には戦闘力ありそうだけどなぁ。

    2
      • 名無しさん
      • 2022年 4月 06日

      Wikipediaを確認するに、近代化改修されていないのがまだ5隻いるから、
      こいつらの改修に大金と時間をかけるぐらいならとっとと退役させたほうがマシって判断なんでしょう。

      33
    • 猫鉈
    • 2022年 4月 06日

    FA18のコンフォーマルフューエルタンクは結局どうなったんでしょう
    海軍が新規調達を渋るということは解決してないのでしょうか?

    14
    • えっくす
    • 2022年 4月 06日

    ロシアみたいに実は大したことないという可能性もあるけど、軍事費はロシアの4倍だからなあ…。

    3
      • 名無し
      • 2022年 4月 06日

      人材育成、設備投資、どれもロシアとは桁違いでしょう
      しかもアジア人的勤勉さとでも言うか、万事大雑把な
      スラブ民族とは民族的な性格がだいぶ違いますからね
      ロシアと中国ではコロナ対策一つ見ても天地ぐらい違います
      10年前と今を見比べてロシア軍と中国軍では進化の度合いがどうでしょうか
      同類に見ない方が良いでしょう

      36
        • tofu
        • 2022年 4月 06日

        人種(血統、文化、その他のいずれだとしても)でモノを語るのは簡単だけど
        その文脈でまさにロシアはウクライナ侵攻したことを忘れないで欲しい

        優秀な民族とそうでない民族、という考えから
        劣った民族を優秀な民族で支配してやるべきだ、となり、その結果ウイグルもウクライナも起きてると言って過言ではないし
        かつてドイツはユダヤ人に対して「最終的解決」をはかり、日本は他のアジア諸国を「解放」したし、アメリカは日系人を「隔離」したわけで
        ↑念のため言うけど、これは全部皮肉で言ってる

        8
          • 名無し
          • 2022年 4月 06日

          自分はただ「侮るな」と言ってるだけなんですが・・・

          21
            • tofu
            • 2022年 4月 06日

            >アジア人的勤勉さとでも言うか、万事大雑把な
            >スラブ民族とは民族的な性格がだいぶ違いますからね
            ここの話をしてますが
            「民族」で括るその思考の延長にあるのがロシアのウクライナ侵攻であり、歴史にある沢山の愚行だという話です

            中国が脅威である、というのには同意しますが
            その根拠を民族や人種に求めるのは非論理的であり、危険な方向に行く可能性もあると歴史が証明してるので

            12
            • hiroさん
            • 2022年 4月 07日

            悪意しか感じないコメントは止めませんか?

            1
    • 名無し
    • 2022年 4月 06日

    スパホよりフリーダム級もう引退させるのか……ってほうが大きい。沿海域戦闘艦とか完全失敗した黒歴史になってしまった。
    ズムウォルトくんといいコンセプトだけはロマンあったんだけどなあ。

    14
      • けい2020
      • 2022年 4月 06日

      フリーダム級というかLCSが1-2番艦の段階で使い物にならないお荷物って
      あちこちから声が出てたのに、造船業界への利益誘導の為に議会が大量量産決めたなんて流れもあるし

      海軍はお荷物は全部処分して維持費を減らして、使えるのを新規調達したいって事なんだろう

      30
      • k.ziro
      • 2022年 4月 07日

      ロマン=迷惑

      4
    • 灰色の猫
    • 2022年 4月 06日

    空母もうまくいっていないし、心配になる。

    8
    • 台湾大好き
    • 2022年 4月 06日

    逆にボーイングの利益を代弁するとされている議員はブロックⅢを予算化することになんと言っているんでしょう。どっちが正しいかは分かりませんが、両方の意見を聞きたいですね。

    12
      • 戦略眼
      • 2022年 4月 06日

      まず、既存機の改修を優先すべきだ。
      新規生産はその後。
      ところで、ボーイングにF-35を生産させられないかな。
      ロシアの件もあり、バックオーダーがたまり過ぎ。

      4
      • 匿名希望
      • 2022年 4月 06日

      初期から中期ロットを退役させる流れになるかレガシーホーネットの残りを退役させそう。

        • 戦略眼
        • 2022年 4月 07日

        海兵隊に今更F-18E/Fをやってもなあ。
        海軍のF-35CをF-18E/Fで置換えて、海兵隊にまわすかな。

        1
    • 通りすがり
    • 2022年 4月 06日

    どうせボーイングが撤退したら撤退したで、競争原理が働かなくなって困るんだから
    死なない程度には餌与えておけばいいのに
    これはうちの国の防衛産業にも言えるな
    日本はもっと深刻で、国内企業で競争するほどのパイが無いのに、競争させて無駄に体力奪う
    先日、戦闘機の脱出シート作ってる唯一の国内メーカーが撤退したように、撤退されたら困るくせに
    目先の金勘定しか見えてない

    13
      • 戦略眼
      • 2022年 4月 06日

      財務省がばかだから。
      だから景気も良くならない。

      27
      • ザコ
      • 2022年 4月 06日

      先日の記事でもあったF-22の一部を早期退役させてF-15EXを買うってのもボーイング救済策の一環ですかなぁ。

      5
    • zerotester
    • 2022年 4月 06日

    Su-34がウクライナの防空システムにボコボコ落とされていしたが(特に初期)、F/A-18もS-300やS-400と対決したら同じことになりそうです。でももしウクライナ戦争にステルス機が投入されたら無双できる可能性があるわけで、いまさらF/A-18はいらないという気持ちも分かる気がします。

    10
      • tofu
      • 2022年 4月 06日

      単体で挑めば手もなくやられるのは確実でしょうね
      ただ、湾岸戦争やイラク戦争でも参戦してボコボコ落とされるほどではなかったのを見るに、アメリカが運用するならそれなりの防空システムを持つ国にも通用しそうではある
      特に湾岸戦争当時のイラク軍の防空能力は、今のウクライナと比較して劣るとはとても思えないし

      ただ、ここのサイトの別記事で「アメリカが運用するなら」のコストがF-35と比べて遥かに高くなると言う話もありましたし
      「今更いらない」のは動かないと思いますけど

      8
        • zerotester
        • 2022年 4月 07日

        湾岸戦争のときはまず巡航ミサイルやF-117でまずイラクの防空システムを攻撃して丸裸にしました。中国あたりはそれを戦訓にして防空システムの防護に気をつかってるだろうし、戦域も海上を含めてかなり広いかもしれず、完全に制空権を取るとは限らないという想定なのだと思えます。これから何十年も運用することを考えるとなおさら。

        2
          • ああああ
          • 2022年 4月 07日

          湾岸戦争の時の多国籍軍は開戦初頭でこそF-117でのバグダッド空襲・トマホーク・AH-64での攻撃を行っていますが、
          空爆初日からSEAD機・電子戦機・戦闘爆撃機で構成される従来型のストライクパッケージを編成して、大規模な防空網制圧を行っています。これをサウジアラビア上空の空中給油機・AWACSが支援していました。
          TALDを囮にレーダーを起動させて対レーダーミサイルで叩くという戦術だったそうです。
          それでも地下施設にあるイラクのフランス製防空式システムを完全に破壊することはできず、
          また防空コンプレックスで守られた共和国防衛隊には大した損害を与えることはできませんでした。
          航空偵察についても低高度の安全が得られなかったため、古い情報のまま地上戦に突入しました。

          3
      • くらうん
      • 2022年 4月 06日

      ウクライナ戦はSu-34そのものよりエスコートジャマーを含めたストライクパッケージ運用のノウハウの無さと、ウクライナーアメリカ間の情報連携の妙が効いているから一概には比較できないかと。
      とはいえF-35とSiAWの組み合わせの方がより効率的なSEADを出来ることは確実でしょうね。

      17
    • no war in UA
    • 2022年 4月 06日

    ボーイングくんを食い繋がせて、先は有るんだろうか?

    11
      • 2022年 4月 07日

      機体自体は良い物造るし、ロッキードのみになるのはそれはそれで問題なんでしょ。

      10
      • zerotester
      • 2022年 4月 07日

      ボーイングは737MAXの件でもでかい損失を出してるから大変でしょうなぁ

      3
    • 無無
    • 2022年 4月 06日

    熱い戦いね、
    管理人も野次馬根性まんまで見物に徹するご様子が楽しい
    議会がいちいちアレ買えコレ買えを指図して、軍が要るとか要らんとかごねまくる国って、日本とは違いすぎるよな

    5
    • くそうぜえやつ
    • 2022年 4月 06日

    くそどうでもいいけどトップ絵はレガホじゃん

      • くそうぜえやつ
      • 2022年 4月 06日

      間違いだった…

      1
    • 無印
    • 2022年 4月 06日

    >因みに米海軍は2023会計年度予算でフリーダム級沿海域戦闘艦×9隻
    今就役してるフリーダム級のほとんどですやん
    対艦ミサイルが積めない、速いだけの艦はもう要らない、って強い意志を感じるなぁ
    早く来い来いコンステレーション

    2
      • きっど
      • 2022年 4月 07日

      >速いだけの艦
      機関系統に重大な欠陥が存在するから、その自慢の速力すらも封印される運用を強いられている訳で……
      ヘリ甲板の面積もインディペンデンス級よりも小さいですし、もう完全な粗大ゴミですな

      5
    • kd4
    • 2022年 4月 07日

    米空軍機競争力としてはロッキードとノースロップに2極化してて
    この件でボーイングにどれだけ肩入れしても例えば第六世代F-XにしろFA/-XXにしろボーイングが受注できるとは思えないのが
    それどころか手をあげもしなそうと思っちゃうから

    • 名無し2
    • 2022年 4月 07日

    全力で一気に殴りかかって台湾に上陸したとしても
    中国経済が一瞬で崩壊して貧乏に逆戻りするだけだと思うんですが
    アメリカはじめ自由主義陣営にとってそれ以上の大勝利ってあるんでしょうか?
    ちょっと思いつかないです

    • 名無し2
    • 2022年 4月 07日

    スパホやタイコンデロガでは勝てないなんてとんでもないしアメリカ全体で見れば過剰なほど強く、もう少し手を緩め他の同盟国や自由主義圏に危機感を抱かせ軍事費を負担させた方が結果的に戦争を抑止し独裁陣営に対して優位を確保できるんじゃないでしょうか。余ったお金で米国内に病院でも刑務所でも建てたらいいと思います。その方が健全です。

    どうせアメリカがなんとかしてくれると思ってヨーロッパが甘え続けた結果がウクライナの惨事である面は否定できず日本も一向に軍事予算を増やそうとしません。アメリカだけ常に最新最強が当たり前でそうでなければ平和が維持できないなんて根拠の薄い思い込みなのでは

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