ウクライナ戦況

ウクライナ侵攻362日目の戦況、ロシア軍がバフムート包囲に向けて前進

ロシア軍が猛攻を仕掛けるバフムートの状況は悪化しており、幹線道路を越えたロシア軍はバフムートの後方に回り込み始め、バフムート北地区に侵入したロシア軍もじわじわと市内中心部に向けて南下している。

ロシア軍はクピャンスクとバフムートで優勢、クレミンナは一進一退、ウクライナ軍はヴーレダーで優勢

クピャンスク方面のロシア軍はオスキル川東岸=ドヴォリチナの対岸地域に足場を築こうとしており、ロシア国防省はフリャニキフカを制圧を正式に発表した。

出典:GoogleMap クピャンスク周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

ロシア軍はマシュティフカとシンキフカの制圧を目指している可能性が高く、オスキル川東岸に沿ってクピャンスク市東岸地域を目指しているが、まだ足場を築く前哨戦に過ぎないので戦闘規模はそこまで激しくないと思われる。

クレミンナ方面はクレミンナとリマンの間の地域を互いに奪い合いながらフィールドポジョンを改善する戦いが続いており、ウクライナ軍にもロシア軍にも決定的な動きはない。

出典:GoogleMap クレミンナ周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

強いて言うならテルニーやネフスキーに接近していたロシア軍をウクライナ軍が追い払い、ディブロバ周辺の森林地帯に潜むウクライナ軍をロシア軍が追い払いつつあり、クレミンナ解放を目指すウクライナ軍は目標からさらに遠ざかったと言える。

バフムート方面はロシア軍がヤヒドネに侵入、ベルヒフカを守るウクライナ軍は包囲される可能性があるので拠点を放棄して後退する可能性があり、バフムート北地区に侵入したロシア軍もじわじわと市内中心部に向けて南下、ウクライナ軍に押し返されたチャシブ・ヤール方面に動きがないためロシア軍の攻勢の主力はバフムートの北にあるのだろう。

出典:GoogleMap バフムート周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

このまま行けばⒷルートの遮断も時間の問題なので「バフムートの運命はⒸルートを維持できるかどうか」に掛かっており、2月24日までロシア軍がⒸに到達しても不思議ではないが、ウクライナ軍も侵攻1周年を迎える日に軍事的成果を献上したくはないので「死にものぐるい」で抵抗するはずだ。

ヴーレダー方面はウクライナ軍が反撃、ヴーレダーに伸びていた突出部を正面から押し返した格好だが、この地域をウクライナ軍が現在でも保持しているのか、それとも一時的にロシア軍を追い払っただけでグレーゾーンになっているのかは分かってない。

出典:EO Browser ヴーレダー周辺の戦況/管理人加工(クリックで拡大可能)

この地域のロシア軍は被った損害を回復させるため再編成中だという話もあるが、ヴーレダーに対する砲撃だけは止まっておらず再び地上戦が再開するかもしれない。

以上がウクライナ侵攻362日目の状況でロシア軍はクピャンスクとバフムートで優勢、クレミンナは一進一退、ウクライナ軍はヴーレダーで優勢だと言える。

関連記事:露ワグナーがロシア軍上層部を非難、我々への弾薬供給を妨害するな
関連記事:ウクライナ侵攻359日目の戦況、バフムートでウクライナ軍が反撃

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

    • ななし
    • 2023年 2月 21日

    バフムートにおいてロシア軍はT0504の橋を爆破したので使えないようですし、最低限の仕事はしたので無理に南側からチャシブヤールの陣地に向けて攻めるよりは突破できた北側から高台道路を占拠しようという動きでしょうか
    しかしパラスコヴィーフカの陣地も相当固かったんですがやはり三方を包囲されると撤退せざるを得ないんだなと…
    ワグナーは弾薬不足という話ですがここで止められるかどうか

    3
      • TKT
      • 2023年 2月 21日

      T0504号線道路の橋が破壊されているということは、もしもウクライナ軍がいざという時に、イワニフスキーを経由して、バフムト中心市街からチャシブヤールに退却しようとしても、戦車や自走砲、装甲車などの退却は難しいということになります。

      ロシア軍がヤビドネから南西に進んで、00506号線道路の十字路を制圧すると、重装備のウクライナ軍部隊の退却は非常に難しくなり、完全包囲に近い状態になります。

      M03号線道路はすでに完全に遮断された状態であり、火消しのために投入されたウクライナ軍の機動予備の戦車旅団は、すでに戦力をほとんど失ってしまったのかもしれません。

      ワグネル社への弾薬補給が減らされても、第106赤旗親衛空挺師団もこの地区周辺に投入されていると言われており、そっちの方が十字路に突撃してくるかもしれません。

      12
        • nojigoo
        • 2023年 2月 21日

        今回は「かもしれません」が2回と比較的少ないかもしれません

        25
          • ブッコロリ―
          • 2023年 2月 21日

          ウクライナは >戦力をほとんど失ってしまったかもしれません
          ロシアが   >突撃してくるかもしれません

          自分の願望を「かもしれせん」で処理するタイプ。
          徹底的に見たいものしか見ないというか、軍事情報に触れるセンスが無い御仁。かもしれません。

          12
    • 3nkgt2
    • 2023年 2月 21日

    ヤヒドネに侵入したという情報はロシア筋のみの情報ですね(パラスコヴィフカでまだ戦闘中との情報もあり)。

    6
    • ため息
    • 2023年 2月 21日

    クピャンスクのオスキル川東部の制圧は、ロシアにとって停戦後の防衛ライン
    として最重要なので、長期的にここの攻勢は当然でしょう。今後もこの地域の
    ロシアの攻勢は徐々に強化されると思います。

    クレミンナ方面は、当分はとって取られたりの激しい戦闘が続くと思います。
    ウクライナもこの方面はシベルスクの防衛及び、リマンの最奪還の阻止の為に
    最重要なので、膠着状態が続くのではないでしょうか。

    バハムート北は、ウクライナにとって非常に厳しい状況にあり、ヤヒドネと
    ベルヒフカがロシアに制圧されれば、クピャンスク東全域とチャソブ・ヤール
    の北東が危機にさらされます。この地域は要塞化できるような都市がなく、
    バハムートは00506の補給ラインを断ち切られ、シベルスクへの補給ルート
    であるライ・オレクサンドリヴィカもロシアの制圧・砲撃射程に入ってきます。

    8
      • ため息
      • 2023年 2月 21日

      >クピャンスク東全域とチャソブ・ヤール
      の北東が危機にさらされます。

      訂正:クピャンスクではなくスリャビンスクです。すみません

      1
    • (=^・^=)
    • 2023年 2月 21日

    政治的動機で撤退をしないのか次の防衛線の準備が整ってないから時間稼ぎしてるのかよく分からんね。
    その両方の可能性もあるけど。

    3
      • 2023年 2月 21日

      クレバ外相だったか、パフムトを撤退しても
      別の場所で消耗戦がつづくだけで
      なにも変わらず解決にならないばかりか
      意味がないと言っていた。

      クラマトルスクやスラビャンスクには
      堅固な陣地があるらしいけど、そこまでさがるのか ?
      アメリカのアドバイスでは、どこに引く予定だったのか ?

      4
      • 匿名
      • 2023年 2月 21日

      素人がわかる情報で読めたら、ロシアにも作戦読まれまくりだから、まあ読めないのが当たり前ですね。
      ロシアの情報が以前は駄々漏れで戦艦沈められたりしたのがおかしかった。

      4
    • samo
    • 2023年 2月 21日

    クレミンナの早期奪還に失敗した以上、ウクライナ側は時間稼ぎのターンに入ってる。
    NATOの戦車提供でなんやかんやありつつも、春頃までには、西側戦車2個中隊を編入した機械化大隊が4~6個程度は、最低でも登場する見込みは立っているのだし、
    これが参戦するまでどこまで戦線を後退させずに維持できるのかが全て

    幸いにも雪解けが始まりはじめて春の泥濘期が始まっている模様なので、ロシア機甲戦力の侵入を阻んでいるらしいのはプラス要素だろう

    10
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