ウクライナ戦況

ウクライナ軍兵士788人がクリンキーで行方不明、埋葬できた戦死者は262人

政府の汚職や重大犯罪の調査を行うウクライナの独立機関=Слідство.Інфоは17日「クリンキーの作戦で788人の兵士が行方不明になっている」「クリンキーから連れ出され埋葬された戦死者の数は262人しかいない」と明かした。

参考:«Я БАЧИВ ПЕКЛО, І НАЗВА ЙОМУ «КРИНКИ», — БІЙЦІ, ЯКІ УТРИМУВАЛИ СЕЛО НА ЛІВОМУ БЕРЕЗІ. І ЗНИКЛИ ТАМ БЕЗВІСТИ

恐らく行方不明者の大部分は死亡している可能性が高く、支払った代償に見合うものを手に入れたとは到底考えにくい

ウクライナメディアのLIGA.netは参謀本部関係者の話として「ウクライナ軍がドネツク州ウロジャインとヘルソン州クリンキーから撤退した」「両拠点とも大規模な破壊によって陣地を維持する意味が無くなった」と報じ、国営放送のSuspilneもLIGA.netの報道を引用して「ウクライナ軍がドニエプル川左岸のクリンキーから撤退した」と報じているが、現在LIGA.netの元記事は消えている。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

Ukrainska Pravda、RBC-Ukraine、kyiv Independentなども「クリンキーからの撤退」を取り上げておらず、参謀本部の公式発表もウロジャインとクリンキーからの撤退に触れておらず、DEEP STATEは17日「我々はクリンキーの状況について公式の報告を待っている。当局者の沈黙が生み出す隙間は他の誰かによって埋められる。今回の場合はウクライナメディアの匿名のスッタフだ」と述べていたが、政府の汚職や重大犯罪の調査を行う独立機関は「クリンキーの作戦で788人の兵士が行方不明になっている」と明かした。

Слідство.Інфоは17日「この作戦に参加した兵士の中にはクリンキーを確保し、ドニエプル川左岸での橋頭堡を広げることが出来たが、集落の建造物が破壊されて何も残らなくなると『陣地を保持する任務は一方通行になった』と信じる者もいる」「我々はクリンキーの作戦で何人の兵士が行方不明になったのか警察から聞き出すことに成功した」「2023年10月~2024年6月末までに788人の兵士が行方不明になったと登録されており、クリンキーから連れ出され埋葬された戦死者の数は262人しかいない」と報じており、具体的な数字が出てきたのは今回が初めてだろう。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

他にも「72日間もクリンキーで戦い生還した兵士の証言」「沢山の戦死者がクリンキーに置き去りにされている現実」「何百人もの家族が夫、息子、父親、兄弟がクリンキーで行方不明になったと通知された話」などに触れているが、タブリア作戦軍のリホワ報道官はСлідство.Інфоの取材に「クリンキーを含むドニエプル川左岸での作戦を続けている」と主張した。

恐らく行方不明者の大部分は死亡している可能性が高く、小型ボートで小グループを送り込む作戦としては破格の人的損失で、支払った代償に見合うものをウクライナが手に入れたとは到底考えにくい。

関連記事:ウクライナ軍兵士、とっくの昔にドニエプル川左岸での主導権を失っている
関連記事:ウクライナメディアもドニエプル川左岸の作戦を批判、作戦状況は絶望的
関連記事:ドニエプル川左岸で戦うウクライナ人兵士、これは自殺行為で無意味だと訴える
関連記事:ドニエプル川の戦い、クリンキー上陸から約2ヶ月が経過しても変化なし
関連記事:ドニエプル川の戦い、左岸で前進すればロシア軍の大砲を遠ざけられる

 

※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

ウクライナ軍がチャシブ・ヤール、トレツク、ニューヨークで失敗した原因前のページ

ロシア軍がカリーニン東地区を占領、チャシブ・ヤールの東正面を完全に確保次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍、スバトボとクレミンナを結ぶ幹線道路に迫っている可能性

    ルハンシク州のガイダイ知事は8日「ロシア軍がウクライナ東部戦線に大量の…

  2. ウクライナ戦況

    ウクライナで防空アプリが登場、ロシア軍の攻撃を防ぐ戦いに市民も参加

    ウクライナではロシア軍の巡航ミサイルや無人航空機の位置を軍に通報できる…

  3. ウクライナ戦況

    ドネツク西郊外の戦い、ウクライナ軍はノヴォミハイリフカを失う寸前

    DEEP STATEは21日「ロシア軍がノヴォミハイリフカ西郊外に到達…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア軍がチャシブ・ヤール、トレツク、ポクロウシクで重要な成功を収める

    ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは12日夜…

  5. ウクライナ戦況

    ショルツ独首相、ウクライナが要請したマルダー歩兵戦闘車の提供に難色

    ウクライナ政府はマルダー歩兵戦闘車×100輌を提供して欲しいとドイツに…

  6. ウクライナ戦況

    クルスク方面の危機的な状況、ロシア軍が全方位からスジャに迫る格好

    ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは9日「引…

コメント

    • もへもへ
    • 2024年 7月 18日

    逆に言えばたった800人弱の損害でドニエプル川左岸を確保、追い落とそうと攻撃してくるロシア軍に大損害を与えたとプロパガンダに利用できるので、広報のための犠牲と割り切れば元は取れてるのでは。

    9
      • ヤギ
      • 2024年 7月 18日

      788人が行方不明で埋葬できた戦死者は262人なので1050名ではないでしょうか?

      43
        • もへもへ
        • 2024年 7月 18日

        ご指摘ありがとうございます。
        >788人が行方不明で埋葬できた戦死者は262人なので1050名ではないでしょうか?

        その通りです。
        私がちゃんと読んでいませんでした。

        8
      • にほんへ
      • 2024年 7月 18日

      囚人兵1000人ならともかく訓練を積んだ海兵隊1000人の損害で割に合いますかね•••

      55
        • まる
        • 2024年 7月 18日

        過去の戦訓による一般論で言えば、戦死1に対して重傷者3と言われています。現代では過去の戦争より個人防護用品が充実しており、救護もしかりなので重傷者比率はまだ増えると思われます。つまり戦死1000人と重傷者3000人は最低ラインです。ヘルソン方面に投入されていた4個海兵旅団8000人の半数に当たります。しかしながらクリンキには重装備の渡河が出来なかったことで投入されたのは歩兵が主と考えられます。ウクライナ海兵旅団は2個海兵大隊とその他からなり推定歩兵数は800☓2の1600と思います。それが4個で6400です。で、そのうち4000を失ったとしたら、損耗6割超えで壊滅判定です。逆に言えば重装備部隊は残存してるので東部戦線に転進させることが出来たということでもあります。

        22
          • FAB
          • 2024年 7月 18日

          対岸から火力支援していた重装備部隊の損失は計上されてないから、それを含めたら文字通りの壊滅かも。
          ロシア軍は対岸に激しく砲撃、滑空爆弾、ミサイルによる攻撃を続けてたので。

          29
          • jimama
          • 2024年 7月 18日

          ここに限って言えば重傷者はもっと減らしていいと思いますよ
          ほぼほぼ片道切符で渡ってる最中に攻撃=死、あの川幅で武装してるとボートひっくり返ったら間違いなく死にます、渡った後、不十分な支援体制なので攻撃=緩慢な死、そして撤退(ほぼ不可能)している最中に攻撃される=死ですし
          けが人でいるためにはわたる前に攻撃食らうしかないんじゃないかなと思いますので

          29
            •     
            • 2024年 7月 19日

            行方不明が多いというのもそういうことなんでしょうね。
            ロシア側のドローン操縦者が1人で大量にボートを沈めていたという話もありましたし(そして後にドローンで爆殺されかえされた…)。

            1
      • ろみ
      • 2024年 7月 18日

      冷酷に数字としてだけ見るなら100人/日の損害と比べれば大したものではないと考える事も出来ます
      ただ個人的には、この作戦の為に長期間、海兵四個旅団が拘束されていなければ他戦線の惨状は防げたのではないかと思えば好意的に受け取る事は出来ませんね

      16
      • nachteule
      • 2024年 7月 18日

       流石に「たった800人弱~広報のための犠牲と割り切れば」とかそんな事言われて遺族が納得するんかね?人の命を何と思っているの?

       クリンキー最前線に居座る事で発生したロシアの損害なんて本当にそこに居座る事で達成出来た物なのか分からない。ここで大活躍していたドローン部隊はハルキウ方面に転戦してかなりの活躍していたと思うけどドローンの航続距離を考えると右岸にいても射程距離圏内にロシア軍は板だろうし、敵情監視して砲撃支援も出来ただろう。

       とてもじゃないがクリミア半島への足がかりの役割すら果たせずにUSVや長距離攻撃でクリミアを攻撃するのになるなら危険を冒して橋頭堡確保した犠牲に見合った何かがあったとは思えない。
       あるウクライナ人兵士が榴弾砲が直撃すれば何も残らないとか言っていたけど、ミンチになって原形留めずに体の一部でも家族の元に戻れない兵士がどれ位いるんだろうな。
       

      30
      • 2024年 7月 20日

      最精鋭であり反転攻勢の要といえる兵が消滅した痛手は囚人兵の10倍は固いわけで。それ失って得られた戦果がプロパガンダ広告一枚では論外でしょうね。
      むしろロシア側の戦果として利用されつくして血涙流す羽目にならなかっただけでも有情でしょう。

      3
    • 何が目的だったんだろうね
    • 2024年 7月 18日

    引き際を誤った感があるが、その理由が責任を取りたくないからか、別の理由なのかは戦後にわかるのだろう。

    34
      • kitty
      • 2024年 7月 18日

      遺骨収集団がアップを始めていますな。

      9
    • アンゴラ
    • 2024年 7月 18日

    何回も言いますけどこの作戦立案したのキーウ政府軍じゃなくて英国陸軍将校ですよね?

    26
      • 名無し
      • 2024年 7月 18日

      そうなんですか?

      6
      • TKT
      • 2024年 7月 18日

      その話がもしも本当だとすると、作戦中止命令が出たのは、イギリス保守党が総選挙で歴史的な大敗を喫して、国防相がイギリス労働党の人になったからかもしれませんね。

      ウクライナ軍にはイギリス軍の軍事顧問が作戦参謀として派遣されてても全然おかしくないので、そういうこともあり得ます。

      27
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 7月 18日

      2023年の反攻作戦もそうですが、米英軍は作戦立案に口出しはしても最終的な決定権はウクライナ軍・政府にあります
      立案された作戦の実行・継続・中止のいずれも判断の責務はウクライナ軍・政府が負うものですよ

      24
        •  
        • 2024年 7月 18日

        ほんこれ。責任押し付けは見苦しい

        3
      • 朴秀
      • 2024年 7月 19日

      反抗作戦で
      白昼堂々と地雷原に航空優勢なしで縦列突撃かけて
      虎の子の西側戦車群を爆発炎上させたのも英国の作戦でしたね
      NATOの作戦指揮能力は本当に大丈夫なんですかね…?

      7
    • タチコマァ
    • 2024年 7月 18日

    8ヶ月で戦死行方不明合わせて1000人、負傷三倍として3000人の計4000人
    一月当たりで計算すると戦死行方不明130人に負傷400人前後、この損失をどのように認識するかですね
    ロシア側の損害がどの程度なのか、キルレシオが不明瞭なので何とも言えませんがロシアのミルブロガーも彼方は彼方でクリンキーのロシア軍口汚く批判してますので少なくとも一方的な戦闘にはなってはなさそうですし
    お互いにとって泥沼状態だったのが実際問題の所でしょうか?

    7
      • NHG
      • 2024年 7月 18日

      30で割ると一日5人弱の戦死行方不明者で負傷者は13人
      ウクライナ軍全体で見れば微々たる損害と思ってそうだけど、宇・ロ双方の損得勘定はどんなもんなんだろう

      3
    • ポレ
    • 2024年 7月 18日

    行方不明のままにしておけば
    傷痍軍人年金の支払いや、補償をしなくて良いので
    キエフ政府が調査することは無さそう

    ボグダンによると、ウクライナ軍は
    死人の給与を横領する指揮官がいるようなので
    実際にはお亡くなりでも未報告のケースもありそう

    28
      • 名無し
      • 2024年 7月 18日

      どこの戦線でも基本的に、激戦の果てにロシア軍に奪られるっていうのを延々と繰り返してるからウクライナ側は遺体の回収なんてほとんど出来ていなさそう

      13
        • 名無し
        • 2024年 7月 18日

        双方激しい戦闘が行われ死者が積み重なると、それ以上の死体の損壊を防ぐ為一時的な休戦が双方の現場指揮官の同意の上成立することもあるようですね。

        また現実的な問題として、戦場の衛生環境が著しく悪化、腐敗から異臭に疫病までエスカレートするようで簡易的に埋葬する事もあるようです。

        ただ漏れ聞こえる限り両軍死体に対する敬意は無いっぽいんですよね・・・

        2
          • 伊怜
          • 2024年 7月 19日

          ロシア軍の遺体回収は専門部隊に通報して回収して貰う流れだと聞いたので落ち着いた状況でないと(そもそも通報する余裕が無いなどで)回収されないのだと思う

    • うくらいだ
    • 2024年 7月 18日

    多くの人は場所も忘れてるでしょう。
    私は覚えています。
    昨年などはこぞってニュース番組で取り上げられ専門家の方が橋頭堡の解説してくれたりと参考になりました。
    ゼレ大が反転攻勢は続いているとクリンキーの戦果を語り、橋頭堡を拡大させ、クリミアからの輸送を遮断、そしてメリトポリに至るその先駆けとして熱心に解説してくれてました。
    テレビの専門家も見ててつらいと思いましたね。立場や規制があるため本音では語れないのか、どうにかこの作戦に意味を持たせようと発言してたのを思い出します。なつかしい思い出です。
    失敗したのは残念でなりまてん。

    26
    • 名無し
    • 2024年 7月 18日

    もっと死んでないかな?
    作戦期間を考えると数千人はいくんじゃないかな?
    負傷兵もかえせないし、わたる途中で死ぬし

    14
    • 現実
    • 2024年 7月 18日

    多くの兵士やOBが語っていますが
    そもそもウクライナでは
    自軍の死者数を誰も把握してません
    砲撃で消滅した人は、そのまま幽霊に

    損耗1000人が正しい前提の議論に
    意味も価値もないと思います

    27
      • うくらいだ
      • 2024年 7月 18日

      ですねー
      たむごんさんという方ががたまに引用元で情報だすので私もたまにみるようになりましたが、それこそ、ウクライナYouTubeの方の動画で2-3日前にUPされてた、自主退役軍人の方の話は強烈でしたね。

      11
      • タチコマァ
      • 2024年 7月 18日

      何でしょうか、自分達が期待してたより大した数字でないからネガティブキャンペーンしてるように聞こえます

      4
        • 名無し
        • 2024年 7月 18日

        大した数字じゃないからウクライナは撤退なんかせずにもっと海兵旅団を送り込み続けるべきですよな
        なーにNATO域内で訓練受けたエリートとはいえ6000人のうち1000人が死亡しただけ
        まだ5000人どこかにはいるはずさ

        3
          • タチコマァ
          • 2024年 7月 18日

          捨て台詞っぽくて芸術的ですね

          1
            • 名無し
            • 2024年 7月 18日

            ウクライナ参謀本部によるとまだクリンキーでの戦闘は継続中みたいなのでよかったですな
            どんどん小型ゴムボートで対岸へ送り込むべきですな
            なんせまだ5000人はいる計算ですからね!

            3
    • たむごん
    • 2024年 7月 18日

    クリンキは、本当に無駄な作戦でした。
    誰が、立案・継続の判断をしたのか、失敗を検証して今後に生かすべきでしょう。

    剥き出しのボートで、広い川を渡っている動画がでていましたが、こんなので対岸から補給を支えていたのかと絶望感をかきたてます。
    上級司令部が無能だと、現場の兵士が存分に戦っても、血が無駄に流れ続けただけになってしまいますね。

    16
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  3. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  4. 日本関連

    防衛装備庁、日英が共同で進めていた新型空対空ミサイルの研究終了を発表
  5. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
PAGE TOP