RYBARはボルチャンスクとクラスノホリフカの状況を報告、ウクライナメディアのLIGA.netとSuspilneは「ウクライナ軍のクリンキー撤退」を、Ukrainska PravdaとRBC-Ukraineは「ギリシャが32機のF-16をウクライナに移転する計画」と報じた。
参考:Военная сводка за 15-16 июля: зона СВО
参考:ЗСУ відійшли з Кринок на Херсонщині — джерела
参考:ЗМІ: Греція планує передати 32 винищувачі F-16 для України
参考:Греція продасть США десятки винищувачів для України, – Al Jazeera
参考:Russian anger builds as Greece prepares a military deal with Ukraine
耐久性の高い建築物が失われるとロシア軍の前進テンポが早くなると予想されるため、クラスノホリフカの中心部が失われるのも時間の問題
RYBARはハルキウ州ボルチャンスクについて7日「ウクライナ軍が北市内の病院付近で領土を奪還した」「ウクライナ軍が北市内の部品工場付近で領土を奪還した」「ロシア軍がアパート地区の一角を占領した」と、10日夜「ウクライナ軍がリプシ方向とボルチャンスク方向で反撃を実施している」「ロシア軍がヴォブチャ川を渡河して南市内に足場を築いたという誤った情報がネット上で拡散している」と報告。
さらに11日夜「ウクライナ軍がライボケで反撃を開始し、ロシア軍はボルチャンスクの東(市内の東ではなく街の東)で前進している」と報告したが、15日「ロシア軍が部品工場に隣接する公園を占領した」「ロシア軍が部品工場付近の支配地域を広げた」「ウクライナ軍が病院付近の区画を奪還した」「ウクライナ軍が部品工場に隣接した区画を奪還した」と報告。
DEEP STATEのボルチャンスク市内に関する評価は12日から変更はなく、部品工場を取り巻く状況は混沌としている。
RYBARの評価では「部品工場に隣接した区画」を失った代わりに「部品工場に隣接した公園」を確保したことになっているため、部品工場へのアクセスは物理的に遮断されていないものの、幅200m足らずのアクセスルートはウクライナ軍の複数方向からの射線に晒されているため安定的な移動や補給は到底望めないだろう。
RYBARはドネツク州クラスノホリフカについて「ロシア軍が市内の住宅地で前進した」「ロシア軍がグランド付近を制圧した」「ロシア軍が公園の東で前進した」と報告、DEEP STATEのクラスノホリフカ市内に関する評価は11日から変更(市内中心部の大半がグレーゾーン)はない。
ウクライナ軍は市内の高台にある耐火物工場を失ったため、木々が生い茂る公園や大通り沿いのコンクリート製建築物に抵抗拠点を移したものの、ジリジリと区画を失い続けており、DEEP STATEは中央病院付近を占領されていないと主張しているが、もしRYBARの主張が正しいなら市内の抵抗拠点は低層の民家のみになっている。
耐久性の高い建築物が失われるとロシア軍の前進テンポが早くなると予想されるため、大きな火力支援でも無ければ市内中心部が失われるのも時間の問題だろう。
ウクライナメディアのLIGA.netは参謀本部関係者の話として「ウクライナ軍がドネツク州ウロジャインとヘルソン州クリンキーから撤退した」「両拠点とも大規模な破壊によって陣地を維持する意味が無くなった」と報じ、国営放送のSuspilneもLIGA.netの報道を引用して「ウクライナ軍がドニエプル川左岸のクリンキーから撤退した」と報じているが、LIGA.netの元記事は消えてしまった。
さらにUkrainska Pravda、RBC-Ukraine、kyiv Independentなどは同話題を取り上げておらず、参謀本部の公式発表もウロジャインとクリンキーからの撤退に触れておらず、DEEP STATEは17日「我々はクリンキーの状況について公式の報告を待っている。当局者の沈黙が生み出す隙間は他の誰かによって埋められる。今回の場合はウクライナメディアの匿名のスッタフだ」と述べており、まだクリンキー撤退の報道に飛びつくのは危険だ。

出典:U.S. Air National Guard photo by Master Sgt. Becky Vanshur
追記:Al Jazeeraの報道を引用してUkrainska Pravdaは「ギリシャが32機のF-16をウクライナに移転する計画」と、RBC-Ukraineも「ギリシャがウクライナ向け戦闘機を米国に売却」と報じているが、Al Jazeeraの元記事は「ギリシャがウクライナとの安全保障協定を準備する中でロシアの怒りが高まっている」というタイトルでギリシャが実施してきた支援の内容、これに対する世論の反応、ロシアの対応などを紹介している。
この中で「ギリシャはNATO加盟国の中でもGDPに占める国防支出の割合(2023年3.7%)が高いものの、自国の安全保障に対する懸念(対トルコ)から半数以上の国民はウクライナ支援増に反対している」「ギリシャはF-16をBlock70にアップグレードし、ラファールを購入し、F-35の調達を進め、旧式のBlock30×32機を退役させようとしている」「Al Jazeeraの取材に応じた情報筋によるとギリシャはBlock30をウクライナに譲渡する方法として米国が同機を購入することを望んでいる」と報じた。

出典:HAF Spokesman
中古のF-16を高価な最新鋭機に手が届かない国、入手性が悪化したスペアパーツを剥ぎ取りたいと考える国、演習等で顧客国に訓練サービスを提供する民間軍事会社が常に狙っているため資金化しやすく、この売却代金はギリシャ軍の近代化計画に組み込まれている可能性が高いため、これをウクライナに提供するなら「米国が適切な価格で引き取って提供してほしい」という意味だが、そもそもBlock30の今直ぐギリシャ空軍の運用から外れる訳では無い。
Al Jazeeraの取材に応じたギリシャのアナリストも「安全保障上の懸念から数十機の戦闘機をウクライナのため手放すのは難しい」と、ギリシャ空軍の関係者も「隣国の脅威のため我々は強力な戦力を持たざるを得ない」「32機のF-16を売却すれば空軍の能力に大きな穴が開く」「高価な新しい戦闘機だけで約200機の定数を満たす事はできない」と述べており、この流動的な状況で「ギリシャが32機のF-16をウクライナに移転する計画」「ギリシャがウクライナ向け戦闘機を米国に売却」と報じるのは先走りすぎだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
クリンキ、最近ようやく撤退の話しがでてますね。
クリンキ維持のために使った軍事資源が、アウディーイウカ陥落など、多方面にどのような影響があったのか得失の分析も必要になるでしょう。
ボルチャンスク・ハリコフ方面も同様で、ここに戦力を集めた結果を考える必要があります。
クラスノホリフカ・オチェレティネ周辺・ニューヨーク=トレツクが厳しくなった(予備隊を送れなくなった)とすれば、その得失がどうなのか今後を見守りたいと思います。
大規模な兵力を上陸できてるわけないので、大した損害はないと思う。
兵器の損害も、装甲兵器は揚陸できてないだろうし。
損害と言うよりも、東部方面の兵力不足・ローテーション失敗が指摘されているため、その問題が緩和された可能性があるという話しですね。
クリンキ(どうでもいい場所)に、砲兵戦力・対空ミサイルが貼り付けられたり、弾薬を浪費してきたことも問題と考えています。
クリンキーはどうでもいいけど、その南のヘルソンはそれなりの都市なので、住民を疎開することはできないだろう。
となれば、砲兵戦力も対空ミサイルも張り付くことになると思う。
クリンキー上陸部隊、『全滅』を『撤退』と言い換えているだけでは?
キーウ政府の感覚では『潰走』が『ローテーション』らしいので
あと散々話題になったハルキウの部品工場、確かに包囲はされていますが打通はしているみたいなので、もうロシア兵には逃げられたのでは?
本当にこの部品工場は何かと不明点が多い
わずか200mの幅しかないルートを通ってたどり着く部品工場自体、200m×200mも無いようなエリアだし
同じ無理するなら補給するより撤退した方がいいだろうし
逆に橋が落ちているのに北岸へ普通に補給を続けている?ウクライナ軍、それを見逃しているロシア軍もよく分からない
何かこのエリア独特の理由があるのだろうか?
まあ戦況図がおおむね正しいとすれば、この地区は局地的にどっちが優勢、劣勢とかいうよりも、ほぼ
「膠着状態」
というべきでしょう。
ヴォスチャ川の北岸に渡ったウクライナ軍もずっとコロレンカ通りより北には行けないままであり、一方でロシア軍の方も失地の奪回を急ぐ風でもなく、むしろ時間稼ぎを狙ってるようにさえも見えます。
3つほど両軍に共通点があるように思えます。1つ目は両軍ともに攻めの姿勢であること。2つ目は予備戦力に余裕がないこと。最後に突出部からの撤退がウクライナは地形的な制約から、ロシアは軍事的なプレッシャーから難しいという点です。
個人の見解ですが、お互いが兵站や補給による問題で攻勢限界を迎えているように思えます。
可能性としては、両軍の意図と事情が兵士にとって不幸な形で噛み合ってしまい。
ロシア側は、無能と名高い将軍が甚大な損害を出しつつもかろうじて確保した重要拠点ですから,損耗度外視で確保すべく兵士を次々に送り込み。
ウクライナ側は、橋を落とされて軽歩兵しか送り込めないのに、DavidAxeさんに全世界へ「ここがロシア軍が取り残されて包囲された、ウクライナ軍の大戦果の現場です!!」と宣伝されてしまったために、なんとしてでも攻略し続けねばならず。
お互いに兵士を対消滅させながら不毛な消耗戦をやってるのではないでしょうか。
この戦況図のように綺麗に線で区切った支配地域はなく部品工場以外は常に流動的だということでしょ。
中央公園なんか空爆に耐えられる構造物なんかないから、そこに生身の兵士が常駐して機関銃を撃ち続けることなど不可能だし。
1日30発くらい爆弾落としてるらしいし。
それなら撤退も出来るよね?って話
漸くクリンキから撤退したんですね
折角NATO式の訓練を十分に受けた筈の海兵隊員がどれだけドニプロ川に消えていったのかは分かりませんが不毛な攻勢を継続させられていた同部隊は肩の荷が下りた事でしょう
この兵力をアウディーイウカ、バフムト方面に向けていたらここまで押し込まれていなかったかも知れませんが仮定の話をしても詮無い事ですし
低地で無理な守勢に回るのではなく用意されているとされるゼレンスキーラインまで徐々に引きつつ露軍の漸減を狙うのが適切なのではと素人ながらに思います
ウクライナ軍に物資が供給され始めると人数に劣るロシア軍は厳しいですね
だいぶ勢いが落ちてきました
クリンキの橋頭堡がクリミア奪還の布石とか
夜のニュースで某自衛隊の幕僚OBが語ってたな
いま彼が何を語るか、非常に興味深い
そんな話ありましたね。
彼が、自衛隊『OB』でよかったと思います
我が国の将官経験者がバカだとバレるのは
国防にとって非常にマイナスでしたね…
もちろんバカ以外も居るでしょうが
>>我が国の将官経験者がバカだとバレる
それよりも曲がりなりにも士官学校卒業してあのレベルという教育程度と
そんなのでも将官にまで上り詰めてしまった人事システムのほうがヤバいと思います
大改革やったとかでもない限り今でもそのままということなので
あのクラスかアレより少しだけましなレベルがまだまだいる可能性大
そういうのは、日本らしく、軽い御輿がかつがれるとか、上官の肩を揉みながらへーこらしてたら出世したとか、仕事に行くたびに思いますね。優秀だったら上に潰されるとか。
コメント欄でも以前でも指摘されてましたが、ほんと皆様の仰る通りです。
給料も激安、退官後の待遇も悪いですから、そもそも人材は期待できない構造なんですよね。
防衛研究所の「見たいな。Aさんの胸」もそうですが、なんかテレビで能力がバレたなと思います。
マスコミに叩かれる官僚の天下りも安い人件費を民間に付け替えて優秀な人材を確保するシステムだったんですよねえ。
自衛隊では、ほぼ機能していなかった。
仰る通りですね。
民間企業オーナーの娘婿、このような形で経営参画までするケースもありますし。
自衛隊の上層部に、難しい事は特に期待してないんですよね。
まず隊員が、ご飯お腹いっぱい食べられるようにする事くらいから、始めて欲しいなと思っています。
クリンキーとウロジャインの撤退検討しているのは恐らく決定事項だと思うけど一応観測気球上げてどんな反応か見ているのか、全滅、壊滅、潰走したのですでにロシア占領下なのかはわかりかねるがクリンキーはまったくの意味不明だったので一応良い方向なのではないでしょうか。
ボルチャンスクはウクライナが攻勢かけて頑張ってる様ですがロシアと一進一退で川向こうにロシア進出の情報もあれば誤報の情報もあるしで忙しない緊迫した状況のようですがウクライナはボルチャンスクに全力ベットの様ですから結果は如何に出るか興味深い。
何となくクリンキー撤退したら第2のクリンキー出来たの予感はしてますがどうなりますかね。
ボルチャンスクにボートで補給するために、クリンキーから撤退して人員を回したとか?
ギリシャがF-16をアメリカに買い取ってもらってウクライナに(アメリカが)譲渡するとしても、状態の把握・権利関係の処理・輸送計画・輸送・受け入れまでを考えると、めちゃくちゃ上手く話が進んでも年内に数機を、2025年に10数機を、それ移行に残りをぐらいの話になるでしょう
まず代替となるF-35か他の機体の調達計画と部分的な受け入れ、運用体制の確立をギリシャ自身がしなければならず受け入れ中にトラブルが起きる事も考えなければいけません
代替機と玉突き的にF-16を手放すにしても、上述の通り段階的にならざるを得ないですから
F-35の調達・受け入れ・運用がすんなり行くとはとても思えない…ねぇ?
パイロットの問題もあるから元々短期で戦力化する意図は無いんじゃない?
>>F-35の調達・受け入れ・運用がすんなり行く
その3つが奇跡的に上手くいったとしてもF-35そのものが普段使いするにはお財布にやさしくない問題が残ってますし
なんか半分ぐらい入れ替えたところで「やっぱっ無理っす」とか言ってF16を結局残しそうな可能性もありそうな
クリンキやっとやめたのか、
あの斧先生がロシアの一人のドローンオペレーターに数百のボートが沈められたとか書いているくらいだから、渡河するだけでえげつない数が死んでるぞ、ウクライナに日本みたいなプール授業はないだろうし、着衣で武装してたらまず助からん、
しかも今みたいな夏じゃなくて氷が浮いている真冬にやっていたから基地外じみた作戦
クリンキーと言えば東欧のガダルカナルみたいなイメージありましたけど
ようやく転進の決断が出て前線の兵士が無意味に命を落とすこともなくなったので歓迎すべきことでしょうね
政治的な見栄をなくしたなら良い話。
見栄を張る余裕がなくなったら悪い話。どっちだろう。両方かな。
ヴァルチャ川でロシア軍が前進したという誤った情報
↑これを広めているのがISWという...