ウクライナ戦況

約1万人のウクライナ軍がクルスク方面で包囲の危機、今直ぐ撤退すべき

ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は「もうクルスク方面で優位性が失われているため撤退を今直ぐ決断すべきだ」と訴え、Telegraphも「約1万人のウクライナ軍は包囲の危機に瀕している」「さらなる損失を避けるためクルスクからの撤退が検討されている」と報じた。

参考:ВАЖКА БИТВА НА КУРЩИНІ. РОСІЯНИ ВИКОРИСТАЛИ ТРУБУ ГАЗОПРОВОДУ ДЛЯ АТАКИ
参考:10,000 Ukrainian troops at risk of encirclement
参考:ЗСУ не відходять з Курської області, оточення військ немає, – джерела
参考:Біля сотні росіян пройшли газопроводом до позицій Сил оборони в районі Суджі

複数のチャンネルから伝えられるクルスク方面の状況は断末魔の叫びに近いものがある

ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEは6日夜「ロシア軍がクリロフカ西の渓谷をスームィ州方向に前進した」「グレーゾーンの先端が38H-609に到達した」と報告、Ukrainska Pravdaの取材に応じたウクライナ軍関係者も「我々の防衛ラインが破られた」「我々の部隊は部分的もしくは完全な包囲を避けるためこの地域で戦っている」「この突破は突然生じたものではなく計画的なものだった」「ロシア軍は昨年末にクリロフカへ侵入して旅団のある部隊が陣地を放棄して撤退した」「敵は集落に戦力を集結させて組織的な突撃作戦を開始し、3月5日~6日に決定的な突破口を開いた」と証言。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

クルスク方面で戦うウクライナ軍兵士もkyivIndependentの取材に「状況は危機的で包囲の危機に直面してる」「クルスク方面に駐留するウクライナ軍兵士らは撤退を望んでいる」と訴え、同じくクルスク方面で活動する衛生兵も「ロシア軍の突破は3月4日頃に発生して全道路が制圧されてしまった」と語り、ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏もクルスク方面の窮状を以下のように訴えた。

“敵はクルスク方面の全方位で大規模な攻撃を続けている。ウクライナ軍は英雄的精神と粘り強さを発揮して抵抗を試みているものの、ここではロシア軍と北朝鮮軍を合わせた数的優位が顕著で、損害を物ともせず前進してくる上、敵は側面からの厳重な火力管制で我々の兵站を脅かしており前線保持が困難になっている。さらにロシア軍兵士(約100人)はガス輸送のパイプラインを利用してスジャに侵入したことが確認された。現在はパイプラインを厳重な監視下に置き、発見された敵の排除が進められている”

出典:Сухопутні війська ЗС України

“クルスク方面の作戦は当初「少ない損失で敵に何倍もの被害を与えることができる」という軍事的結果で正当化できたが、もう占領地の保持にこだわる戦術的意義が見当たらず、作戦継続が政治的動機で行われているのは誰の目にも明らかだ。戦争における成功とは戦術的、作戦的、戦略的に有利なポジションを獲得し、自軍の損失より何倍も大きな損害を敵に与えることで、ウクライナ軍は戦術的にも作戦的にもクルスク方面での有利なポジションを失っているため司令部は(撤退を)今直ぐ決断すべきだ”

Telegraphも7日「ロシア軍が防衛ラインを突破して二方向からスジャに通じる主要道路に迫っているため、約1万人のウクライナ軍は包囲の危機に瀕している」「ロシア軍は主要道路の遮断に相当数のドローンと北朝鮮を投入している」「取材に応じたウクライナ軍兵士は『さらなる損失を避けるためクルスクからの撤退が検討されている』『包囲される恐怖は現実のものだ』と述べた」と報じ、複数のチャンネルから伝えられるクルスク方面の状況は断末魔の叫びに近いものがある。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

因みにRBC-Ukraineの取材に応じたウクライナ軍関係者は「現時点でクルスク方面から部隊を撤退させる予定はない」「状況を安定化させるための措置が講じられている」「さらにロシア軍に対抗するための措置も計画されている」と述べており、ウクライナ軍が馬鹿正直に「クルスクで包囲されるかもしれない」と認める方が異常で、こうしたポジショントークは「クルスク撤退」が完了するまで続くのが正常な反応だ。

追記:Ukrainska Pravdaの取材に応じたウクライナ軍関係者は「スジャ侵入に使用されたパイプラインを事前に爆破しなかったのか?」という質問に「限られた兵站能力の中でパイプラインを爆破するのは不可能だ」と回答した。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • 通りすがれ
    • 2025年 3月 08日

    地下のパイプライン壊してなかったんですね…
    ガスを止めているのならそりゃ使われます

    19
      • らっく
      • 2025年 3月 09日

      前線で構築物を造るのが得意な上に前線の構築物を利用するのも得意だね。
      アウディウカに酷似してきた。

      25
    • たむごん
    • 2025年 3月 08日

    ゼレンスキー大統領だけの面子が、かかっているわけではないので決断できますかね?

    欧州首脳・アメリカ民主党(前政権)・マスメディア関係者など、勝利計画の一環として、クルスク侵攻~クルスク占領の素晴らしを讃えてきたわけで…

    2.3日で続報、1週間後には何らかの結果がでてしまう可能性があるわけですが、このまま撤退を決断できないのか見守りたいと思います。

    44
      • たむごん
      • 2025年 3月 08日

      追記です。

      (仮に)合金製シームレスパイプを輸送に使っていたのであれば、パイプラインの事前破壊は簡単にできないと思います。

      20
        • らっく
        • 2025年 3月 09日

        そうかも知れないが、ベトンを流し込んておくか、それも無理なら汚水を貯めて置くだけで結構な効果があったはず。

        10
          • たむごん
          • 2025年 3月 09日

          東欧向け、ウクライナ経由のガス輸送契約、昨年末まではあったんですよね。

          今年に再開するのかどうかも、政治外交案件になっていたわけで、現場の独断では判断できないだろうなと。

          政治指導部は、アウディーイウカの事例もあったため早めに決断して、仰るような対処を何かしておくべきだったかもしれませんね…

          (2025年1月1日 ウクライナ経由のロシア産ガス輸送停止、契約延長されず ロイター)

          24
    • gepard
    • 2025年 3月 08日

    判断が遅い。

    47
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2025年 3月 09日

      脳裏にゼレンスキー大統領を平手打ちする鱗滝さんの絵がよぎった(n回目)
      ほんと何回目だよ……という感じ

      20
    • 名無し
    • 2025年 3月 08日

    15個旅団を投入したのに、突出部の根元に喰い込まれて包囲されたのが1万人とな?
    明らかにされる事は当分なさそうだけど、クルスクでウクライナ兵は何人死傷したんだろうか
    相当甚大な犠牲出してそうだけど、それでも結局維持できないとか本当に無意味な博打だったね

    53
      • とおりすがり
      • 2025年 3月 09日

      〇個旅団参加っていっても全部の戦力じゃなくその麾下部隊だからね
      それはさておき
      作戦目的がexchangefundとか敵を東部から引き付けるためとか色々言われてたが
      両立するには対処可能なレベルの敵が東部からやってきてかつ防衛継続と二律背反まではいかずとも相手が非常に中途半端な、ありていに言って都合よい対応してくれた時だけ実行可能になるわけで
      現実は良くて片方、下手したらどっちもダメで且つ投入した戦力を毀損という事になればウクライナにとってのバルジの戦いになりかねませんな。

      27
    • 名無し
    • 2025年 3月 09日

    >さらにロシア軍兵士(約100人)はガス輸送のパイプラインを利用してスジャに侵入したことが確認された。

    アウディーイウカでやられた作戦なのにまたやられたのか(呆れ)

    47
      • Easy
      • 2025年 3月 09日

      索敵がドローンと西側の衛星偵察に偏重してしまっているので、そのセンサーに引っかからない戦術を使われると弱いんですよ。
      歩兵、特に工兵をバフムト戦で湯水の如く消費してしまった影響が、こんなとこにも出ています。
      十分な工兵がいれば、爆破するなり途中に障害を作るなり,何か出来たかもしれませんね。

      37
        • 匿名
        • 2025年 3月 09日

        その上、米国の情報共有も停止されウクライナ側だけ戦場の霧が濃くなってしまった影響も考えられますね。
        欧州諸国の諜報機関にて、抜けた米国の穴埋めがどこまで可能かという事と、ウクライナ侵攻から3年以上の間に独自に強化していたのかが、試されている状況と個人的に見ています。

        22
      • hoge
      • 2025年 3月 09日

      いつでもコマンドを送り込める状態だったけどここまで温存してきたってことは
      ロシア目線だとクルスクはもう詰ませたからこそ切った手札ってことですよね
      奇跡の挽回はたぶんもうないのでしょうが
      スームィに戦力の再配置ができていればいいですね(お祈り)

      今クルスクにいる兵士は運良く命を落とさずに済んでも
      終戦までに再度戦力化される期待は非常に低いでしょうから
      文字通り1万人の戦力は全滅するという推定をしています

      ロシアは普通に考えればクルスクの後にスームィへ攻めてくるんでしょうが
      もしそこでウクライナ側が東部から戦力を引き抜いて手当するようだと
      クルスク侵攻の戦略目的を逆にロシアが達成することになるので悲惨すぎますわ

      41
        • 無名
        • 2025年 3月 09日

        次々とロシア軍を打ち破ったりし始めていたトレツクやポクロウシク周辺で、またウクライナ側の奪還情報が途絶えつつあるので、大攻勢の準備をしてるか、クルスク・スームイへの援軍に引き抜かれたんだと思います。
        前者であることを祈りますが、後者でしょうね。

        30
      • kitty
      • 2025年 3月 09日

      掘削作業がなければ瓶に水を溜めていても気が付かないでしょうねえ。

      3
    • 朴秀
    • 2025年 3月 09日

    包囲されているのが1万人なら
    投入した残りはどこに消えたんでしょうね
    西側装備で固めた最精鋭と聞いていたのですが…

    26
      • 名無し
      • 2025年 3月 09日

      程よく地面に埋まってて、そこから向日葵が生えてくるのでは?

      37
      • 匿名
      • 2025年 3月 09日

      ロシア側のFPVまたは光ファイバー誘導ドローンに標的されて、酷く損傷され道路上に放棄されている、という視覚情報付きで戦況解説している英語圏軍事チャンネルの動画を最近見かけました。
      比較的新しいMRAPも標的・損壊されている様で、IEDの上位互換として深刻な脅威と言っても過言ではなさそうですね。

      21
        • kitty
        • 2025年 3月 09日

        どうでもいいことですがFPVであることと光ファイバー誘導は両立するのでは。

        8
    • Mr.R
    • 2025年 3月 09日

    光ファイバードローンが怖すぎて夜も眠れない(午前2:30の書き込み)

    9
    • グロズヌイ
    • 2025年 3月 09日

    撤退などしなくて良い。無意味な突撃作戦を決行した挙句1万人が無様に包囲殲滅されるくらいのインパクトがないとウクライナ首脳部は学ばない。ウクライナ兵には気の毒だが、下手に脱出成功すると結果的にウクライナが不幸になるから、ここは血の教訓を残してもらおう。

    25
      •     
      • 2025年 3月 09日

      反抗作戦の失敗から何も学ばないで、クルスク進行した人たちだからな。他の戦線の失敗も学ばないし。
      血の教訓を、いくら残しても無駄のような。

      6
    • 匿名さん
    • 2025年 3月 09日

    このような無能集団を支えようとする欧州は、自らのプロパガンダに毒されているのかな。

    28
      • 通りすがりA
      • 2025年 3月 09日

      無能集団の西側軍隊教育を3年間受けた結果、ウクライナ軍も無能になった可能性もあるので、毒がどっちが先立ったかはなかなか難しい。

      25
      •     
      • 2025年 3月 09日

      フェイクニュースと共犯意識でしょうね。嘘を流して世論誘導やり過ぎたので、今更、嘘ですとは言えなくなってしまった。
      アメリカは共和党と民主党で意見が割れていたけど。欧州は多様性欠如して、反対意見を潰したからね。勝てば全部、誤魔化せたけど。戦後の暴露が怖すぎでしょ。

      8
    • うくらいだ
    • 2025年 3月 09日

    果たしてポジショントークなのか、ウクライナだけに分からない。
    公でクルスクを交渉のカードすると言ってた手前、撤退はカードを失うことになりますからね。
    もともと、戦術的優位性があったかも微妙で、損害をものともせず占領意地に拘ってるのはウクライナも同じ気がします。

    14
    • 山田
    • 2025年 3月 09日

    1万人もいればまだ何かできそうな気がしてしまう。
    素人のぜレンスキーも同じことを考えるだろうから、スジャで大惨劇起きちゃうかも

    13
    • トランプ、見殺しか
    • 2025年 3月 09日

    越境のウクライナ軍1万人包囲か 米の情報提供停止で窮地に

    5
      • クネヒト
      • 2025年 3月 11日

      マクサー・テクノロジーズの衛星画像を遮断したから、前線が突破されたみたいな報道には、違和感を感じる。
      スターリンクの衛星情報は、遮断されていないから、ますます違和感を覚える。
      仮に遮断されたとしても、ポーランドがスターリンクの情報をウクライナに提供すると、このニュースが流れる前に報道されていたから尚更。

    • ノーテイスト
    • 2025年 3月 09日

    トランプ、見殺しです。他の軍事大国も大概ですが、米英以上に悪辣なのは稀ではないでしょうか?“政権交代”とやらで頬っ被りしていますが、自分達でけしかけた挙げ句見捨てるなどと、外道の極みです!天道は何処に在る!

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