DEEP STATEは13日夜「ロシア軍がポクロウシクの兵站ルート=T-0409に到達して物理的に遮断した」と報告、Reutersも13日「ロシア軍がポクロウシク炭鉱から約2kmの地点に迫っており、ウクライナ鉄鋼産業の関係者も『ポクロウシク炭鉱が操業を停止した』と明かした」と報じた。
参考:Мапу оновлено
参考:Триває погіршення оперативної обстановки в Торецьку
参考:Exclusive: Ukraine halts production at Pokrovsk coal mine as Russia closes in, sources say
ポクロウシクでは懸念されていた事態が現実のものになった
DEEP STATEはトレツク市内について「ロシア軍が行政区画を占領した」「ロシア軍がザバルカ東地区の南で支配地域を広げた」と報告し、市内の状況について以下のように言及した。
“トレツク市内の状況は極めて残念なもので、敵は徐々に侵入して市内を制圧しつつある。特に高層建築物が立ち並ぶ市内中心部では活発な戦闘が続いており、残念ながら全てのビルが敵の支配下に置かれている。またトレツク北部と西郊外でもロシア人が頻繁に目撃されている。この地域の敵は建物に身を隠しながら前進し、さらに占領地域を広げるための足がかりを得ようとしている。近い将来、市内北西地域がロシア軍の支配下に入ったとしても話題にならないだろう。なぜなら建物に隠れて見つけることが困難な歩兵が無限に押し寄せてくるからだ”
“このような敵を攻撃するのは歩兵ではなくFPVドローンやMavicだ。このことは「どれだけウクライナ軍がドローンによる攻撃に依存しているか」を、如何に「最前線の兵士がドローンを必要としているか」を示しており、このニーズを満たすのにウクライナ社会が果たすべき役割り(寄付)の重要性を浮き彫りにしている。ザバルカ地区でも戦闘が続いているが、ほぼ全域がロシア軍が占領されている。シュチェルビニフカ方向に対する襲撃は阻止されている”

出典:DEEP STATE
DEEP STATEの独特なニュアンスを完全に理解するのは難しいものの、恐らく市内はロシア軍の兵士で飽和しており、グレーゾーンで続く戦闘も歩兵同士ではなく「ドローンを使用した攻撃」を意味し、いつ市内北西地域やザバルカ地区のグレーゾーンがロシア軍支配地域に置き換わっても「驚くようなことではない」と言いたいのだろう。
DEEP STATEはポクロウシク・ディミトロフ方面東方向について「ロシア軍がヴォズドヴィジェンカ北西で支配地域を広げた」「ロシア軍がゼレーネを占領した」と報告。
DEEP STATEはポクロウシク・ディミトロフ方面西方向について「ロシア軍がピシュチャネ集落内で前進した」「ロシア軍がT-0409に到達して物理的に遮断した」「ロシア軍がソローネ郊外で支配地域を広げた」「ロシア軍がウスペニフカ方向に支配地域を広げた」と報告、視覚的にもロシア軍がピシュチャネ集落内=Ⓐで国旗を掲げる様子が登場。
Reutersも13日「DEEP STATEはロシア軍がポクロウシク炭鉱から約2kmの地点に迫っていると報告し、ウクライナ鉄鋼産業の関係者も『ポクロウシク炭鉱が操業を停止した』と、別の関係者も『採掘作業は停止され地上作業のみ行われている』『炭鉱で働いていた従業員の避難が進められている』と述べた。今のところ炭鉱を運営するメティンベストはReutersのコメント要請に応じていない。同社は昨年12月にピシュチャネにあるポクロウシク炭鉱第3立坑の操業を中止した」と報じた。
さらに「国内のコークス供給が止まることでウクライナの鉄鋼生産は760万トンから200万~300万トンに低下し、コークスを輸入に切り替えるとコストが上昇して海外市場での競争力が低下するだろう。貿易データによると2024年の鉄鋼輸出額は44億ドルで、この外貨は戦争中のウクライナを存続させるために必要不可欠なものだ」と指摘し、遂に懸念されていた事態が現実のものになった格好だ。
DEEP STATEはクラホヴェ・ヴフレダル(南ドネツク)方面について「ロシア軍がヤセノベ方向に支配地域を広げた」「ロシア軍がペトロパヴリフカ郊外からT-0515方向に前進した」「ウクライナ軍がシェフチェンコ集落内と周辺地域でロシア軍を押し戻した」「ロシア軍がシェフチェンコ近郊からアンドリイフカ方向に前進した」と報告。
ウクライナ軍がシェフチェンコ方向で反撃したものの、ロシア軍はアンドリイフカ方向に支配地域を伸ばしており、この突出部を切り落とせばダクネ方向の安全が確保出来るが、逆にロシア軍がアンドリイフカやウラクリーに前進するとダクネ方向のポケットを放棄しなければならなくなる。
DEEP STATEはヴェリカノボシルカ方面について「ネスクチネ集落内にロシア軍支配地域が出来た」と報告、視覚的にもロシア軍兵士がネスクチネ集落内=Ⓐで国旗を掲げる様子が登場。
ネスクチネ集落内で掲げられた国旗はドローンではなく兵士によって掲げられているため、ロシア軍が集落内に侵入したのは確実だ。問題は集落内に定着されたかどうかで、RYBARは何も報告していないため今にところネスクチネ集落内の状況は謎に包まれている。
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※アイキャッチ画像の出典:Бешеные псы
ネスクチネの飛び地は以前クラホヴェ方面で同じような飛び地が突然出てきて、最終的にそこまで塗りつぶされたので近い状況かも知れませんね。
先日のコメント欄でもポクロウシクの炭鉱について議論がありましたが、結局ロシア軍が接近するまで作業してたんですね…。
相変わらずロシアは堅実ですね
補給線を遮断しながらきっちりと包囲していく様は機械のようです
こういう指し手は相手にしたくないものです
ポクロウシク・ディミトロフ方面は、限られた兵力で、守るべき正面・要衝が多くなりすぎてます。
ウクライナ(守備側)が、限られた兵力でこれだけを守るのは、かなり難しいミッションでしょうね。
ポクロウシク・ディミトロフの都市防衛
東部の補給路
南部シェフチェンコ付近の要塞明け渡し後
西部の補給路
西部ドニプロ方面
北西E50の補給路ドニプロ~パブログラード
追記です。
鉄鋼業について、少し捕捉します。
中国不動産市況などが低迷しているため、巨大中国企業の鉄余りが凄まじいです。
ウクライナ鉄鋼業が、コークス輸入(追加コスト発生)などになれば、今の市況では国際競争力はないと考えた方が無難と思います(国内の復興需要はあると思います)。
>中国は世界最大の粗鋼生産国で5割強のシェアを占め、輸出分だけで日本の年間の粗鋼生産量(23年は約8700万トン)を上回る規模だ。
(2025年01月02日 ウクライナ鉄鋼業は2024年に回復も2025年には条件悪化 ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ)
(2025.1.10 中国「鉄余り」世界かく乱 不動産悪化で輸出最高水準 共同通信)
北西の補給線が幹線道路と鉄道が存在する為、ポクロウシク補給の命綱でしょうか。ロシアポクロウシクへの補給路遮断を当面は目指してる様に見え事実上残りは北西と北であり北は流石に問題無いという前提で北西のポクロウシク〜セルヒーフカの補給線死守出来るかどうかではと思ってますがお互いに当然理解していると思うのでセヒリーウカ〜ポクロウシクの補給線での攻防が激しくなるのではないでしょうか。
まさに仰る通りと思います。
管理人様が少し触れられていましたが、ウダチネ~ソローネにテリコン(48.223829, 37.035589)があります。
ウダチネ・コトリーネの北側は、平坦ですから、このテリコンが無人機運用などでどのくらいの効果があるのか注目しています。
テリコンの場所が良いと思うのでドローン運用が捗りそうですね、ウダチネ方向に攻勢掛けるロシア側の兵站もなかなか大変そうですが本来はウクライナは譲渡してしまった要塞エリアで粘る計画だったと思うのでウダチネ方面はウクライナ軍そんなに固めること出来て無いのではと思っています。
トレツクとチャシブヤールが一気に押されてるのも、もうポクロフスクからの補給線が機能してないようで。
トランプが停戦目標を6ヶ月後に設定したから
まだまだ戦線が西へ動きそうやね
どうせまた日和るっしょ
炭鉱の操業を今まで続けていたことの方に驚きがあります。
前線近くの都市住民の避難計画ってどうなっているんでしょうか。
たしかポクロウシクとその周辺の村落では、秋頃には”子供のいる家族”の強制疎開が行われました。
それ以外の人については強制的な避難指示はありません。
最後まで故郷に留まりたい、行く当てがない人もいるでしょうし、住民(民間部門)が残存してこそ兵站拠点として機能する面もありますので。
炭鉱についてもウクライナの経済上簡単には止めることができませんから、危険手当などを出しつつ粘っていました
想像ですが、この炭鉱の労働者は流石に徴兵されないでしょうから、その意味で人気の職場だったかもしれませんね
逃げても避難先で仕事も無ければロシアの手先と差別されて結局はロシアの占領地かロシア自体に行く人が多いって記事が少し前にありましたね
炭鉱閉まったかあ、じゃあすぐ塹壕行きね!とかならなきゃいいですけど。
アンドリエフカ東の反撃は痛いですね
たしかにそれがあっても距離的にはアンドリエフカに近接しましたが、比較的低所に追いやられた形になっています
ウクライナ軍の追加戦力があれば根本から切り落とされる可能性があるでしょう
>ウクライナ軍の追加戦力があれば
それをクルスクに投入し続けてるから、東部戦線で突出部を切り落とせず、押し込まれ続けてるんですよね。24年の夏頃から酷くなっていった。
本来ならばロシアにとって痛いはずの突出部への反撃、だが、切り落とすまでに至らないからかすり傷で終わってしまう。母数が大きいロシア軍は自己治癒力も高いから、かすり傷は化膿することなく塞がれ、1年以上もじわじわと前進が続く。
ポクロウシク真南のシェフチェンコでもありましたね
ロシア軍が突出部を作っていた時にウクライナ軍が反撃にでたけれども後が続かず、結局は現状のように完全に制圧されてしまう
他の地域でも露骨な突出部が形成されていくのをへし折ったり挟撃したりが出来ずに、ズルズルと足場を作られ続けて最終的には包囲されてしまい、出血を強いられた挙げ句に撤退
それもこれもクルスクで無駄に戦力を消耗しなければと思ってしまいますが、政治的・外交的に仕方ない事なのでしょう
シェフチェンコでは珍しくウクライナがきばってるではないか
他は滅多打ちだが……
頑張れ。としかかける言葉が無い。
戦うことを頑張るな、逃げて生き延びることを頑張ってくれ。と言葉をかけたくなってくるほど、戦況が酷い。
ウクライナ東部は基本的に垂直式の産業構造だから、基盤となる炭鉱業やコークス製造が止まると他の産業まで息の根が止まっていく構造なんだよな
下が停止すると上の息の根も止まっていく
そうすると企業は労働者をレイオフするか解雇する所まで追い込まれるから、単純に外貨稼げない以上のインパクトがある
ロシアが占領したら、すぐに稼働再開するでしょうし、心配ないのでは?
ドネツク単独では巨大な複合産業を維持するだけの力が無いから、自然ロシアの産業チェーンに組み込まれる事になるんだろうけども
ノウハウがある労働者達が逃げちゃってるので、本格的な稼働は大分先になるかなぁと
ただ炭鉱夫は仲間意識が強いので、誰かがロシア領に戻ってくればどんどん復活する気もします
当該企業は非常につらいだろうが、労働者の方はひどい労働者不足だから再就職口には困らないだろう。もちろん動員事務所も手ぐすねを引いているし。
ウクライナ東部は基本的に垂直式の産業構造だから、基盤となる炭鉱業やコークス製造が止まると他の産業まで息の根が止まっていく構造なんだよな
下が停止すると上も止まっていく
そうすると企業は労働者をレイオフするか解雇する所まで追い込まれるから、単純に外貨稼げない以上のインパクトがある
本題からはズレるが、シェフチェンコからアンドリイフカすぐ西まで3.7kmも前進したロシア軍の先端部分は、ちょうどEObroweserで確認できる(なんならGoogleマップの衛星画像にすら写ってる)ウクライナ軍の円周陣地だ。つまり、市街地手前の最終防衛ラインで何とか食い止めた格好だ。ここを抜かれたらアンドリイフカ市街戦が始まる。
そもそもGoogleの古い画像にすら写っているくらい昔から準備された陣地で、見た感じ2重の塹壕線や多数の戦車壕などかなり強固に作られているので、人員さえいればそれなりに守れるはず。友軍がダクネポケットから脱出して、ウクラリーまで後退する時間を何とか稼いでくれと祈る。
アンドリイフカは東からの攻撃には相当に耐えられると思います。ただ、ヴェリカノボシルカが陥落した後、南から背後へ回り込まれるのではないかと危惧してます。冬に入ってから、ロシアが市街戦で無理押しせずに、迂回して包囲する事例が増えてきているように思えて。