ウクライナ戦況

ハルキウ州ボルチャンスクの戦い、ウクライナ軍が市内の工場一帯を奪還

ウクライナ国防省情報総局はハルキウ州ボルチャンスク市内の部品工場について24日「GURの特殊部隊が完全に解放して部品工場をウクライナ軍支配下に戻した」と発表、DEEP STATEも「ウクライナ軍が部品工場一帯を奪還した」と報告した。

参考:Підрозділи ГУР звільнили від окупантів Вовчанський агрегатний завод

GURの特殊部隊は30の建物全てから敵を排除して部品工場をウクライナ軍の支配下に戻した

Forbesのデビッド・アックス氏は6月17日「ウクライナ軍の素早い攻撃で400人のロシア軍兵士がボルチャンスク市内の工場で孤立した」「今度はロシア人がコンクリートに埋もれる番だ」と報じたが、Ukrainska Pravdaの取材にハリコフ作戦・戦術グループのポフフ報道官は「ボルチャンスク市内の工場付近でロシア軍部隊が包囲されているのは事実だが、この特定地域で包囲されているロシア人の数は数百人ではなく数十人だ」「ロシア軍が数百人規模で行動することはない」「400人という数字は存在しないため確認するのは不可能だ」と述べて「Forbesの記事内容は事実ではない」と否定したことがある。

それでもウクライナ軍は公式に「ロシア軍部隊が部品工場で包囲されている」と認め、DEEP STATEも「ロシア軍は部品工場に隣接する地域を支配していない」と評価したものの、RYBARは「ロシア軍は部品工場に隣接する地域を支配している」「ロシア軍が部品工場の占領状態を維持している」と反論し、この部品工場で何が起こっているのか良くわからなかったが、ウクライナ国防省情報総局は24日「GURの特殊部隊が部品工場を完全に解放した」と発表。

情報総局は「ロシア軍が第45特殊任務旅団の兵士を含む士気の高い部隊を投入して部品工場を要塞化した」「GURの特殊部隊は組織的に工場を掃討し、常に密集した建物の中で敵と交戦した」「時には敵と白兵戦になることもあった」「敵は部品工場を守るため大量の大砲、FPVドローン、無人機、ブラチーノを使用してきたが、GURの特殊部隊は30の建物全てから敵を排除して部品工場をウクライナ軍の支配下に戻した」と述べ、DEEP STATEも「ウクライナ軍が部品工場一帯を奪還した」と報告した。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

公開された映像にはウクライナ軍兵士がGURの旗を掲げている様子も含まれているため「ロシア軍から部品工場を奪還したのは事実」と思うが、包囲された建築物の掃討に3ヶ月間もかかっているため「ロシア軍は安定的でないにしても部品工場への限定的なアクセスは可能だった」と解釈したほうが自然な気がする。

関連記事:Forbesの大げさな報道、ウクライナ軍がロシア軍兵士400人の孤立を否定
関連記事:ロシア軍のハルキウ攻勢は絶望的な状況、補給ルートが寸断され水や食料が不足
関連記事:ボルチャンスクを巡る戦い、ウクライナ軍がロシア軍を押し戻した可能性

 

※アイキャッチ画像の出典:ГУР МО України

チェコ大統領、ウクライナは目標と支援について現実的になるべきだ前のページ

ロシア軍がクラホヴェ方面で大きな前進を遂げ、ウクライナスクも陥落次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    侵攻541日目、ウクライナ軍はザポリージャ、南ドネツク、バフムートで優勢

    ロシア軍の侵攻開始から541日目が経過、ザポリージャ、南ドネツク、バフ…

  2. ウクライナ戦況

    変化のないドニエプル川の戦い、クリンキー集落内はグレーゾーン扱いが妥当

    ウクライナ軍のダチ上陸から約8ヶ月、クリンキー上陸から約4ヶ月が経過し…

  3. ウクライナ戦況

    バフムート方面の戦い、ロシア軍がイワニフスキー中心部に到達した可能性

    ウクライナ軍は「チャシブ・ヤールで要塞建設が行われている」「この要塞は…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア軍がソロヴィオーヴェを占領、ノボバフムティフカで隊旗を掲げる

    ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは25日「ロシア軍がソロヴィオ…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ、ベルギーが民間企業に払い下げたM109A4の入手に成功

    ベルギーのデドンダー国防相は2日、出席した下院の委員会で「ウクライナは…

コメント

    • こr
    • 2024年 9月 25日

    特殊部隊を投入しても数十人のロシア兵を排除するのに3ヶ月もかかるんですね
    ドローンを使った現代戦だと要塞陣地に立てこもる守備隊が圧倒的に有利ってことなんだろうか

    それはそれとして、ウクライナ側が今更北部戦線に陣地構えて何をしたいんだろうね…複雑怪奇だなぁ…

    35
      • 2024年 9月 25日

      ウクライナ軍を拘束するという意味での主戦場がクルスクに移ったので維持する価値が無くなったから捨てたのでしょう。
      ウクライナ軍の奪還動画を見てもウクライナ兵は無人の建物と戦ってました。

      14
    • たむごん
    • 2024年 9月 25日

    ボルチャンスクの部品工場、いろいろと言われていましたが、掃討作戦かなり時間がかかりましたね。
    3カ月ともなれば、水・食糧がないと生きていけませんから、何らかの補給が続いていたのでしょう。

    クルスク侵攻に、注力してきましたが、ハリコフはここからどうするのでしょうね。
    クピャンスク方面、管理人様が危機的状況(オスキル川到達からの分断リスク)を、何度かまとめられています。

    ウクライナ軍は、取捨選択を迫られていますが、どういった選択をするのか見守りたいと思います。

    (2024.09.22 ロシア軍が全方位で前進、特にクピャンスクとクラホヴェが危機的状況 航空万能論)

    12
    • paxai
    • 2024年 9月 25日

    この方面のロシア軍は動きが微妙というか。指揮が悪いって話は以前あったけども。

    5
    • マダコ
    • 2024年 9月 25日

    もう随分と前の話なので忘れていましたが、ウクライナ軍が奪還したのですね。
    しかし、相手に時間を与えすぎな気もします。後方の陣地を固められてなければ良いのですが。

    16
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 9月 25日

    随分と長い間、両軍共に動きがなかったので、膠着状態かと思っていましたが、遂に結果が出始めたんですかね
    これが局地戦の結果で終わるのか、ハルキウ方面での何かのきっかけになるのか

    8
    • 2024年 9月 25日

    戦術的にはそれほど意義はないですが、もうすぐゼレンスキーとバイデンとの会談ですし、少しでもポジティブな話題が必要だったのでしょうか。忙しい米大統領がいちいち地図で確認する暇もないですし、工業地帯に築かれた大要塞を占領した、とでも盛って報告するかもしれません

    30
    • 58式素人
    • 2024年 9月 25日

    仮にハルキウ地区のロシア軍を国境外へ押し出せたら。
    クルスク地区のウクライナ軍はどうするかな?。
    積極的に攻めることはしなくなるのかな?。
    ゼレンスキー大統領が言うように、
    バッファーゾーンとして残すのかな?。

    1
  1. この記事へのトラックバックはありません。

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 中国関連

    中国、量産中の052DL型駆逐艦が進水間近、055型駆逐艦7番艦が初期作戦能力を…
  2. 中国関連

    中国は3つの新型エンジン開発を完了、サプライチェーン問題を解決すれば量産開始
  3. 欧州関連

    BAYKAR、TB2に搭載可能なジェットエンジン駆動の徘徊型弾薬を発表
  4. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  5. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
PAGE TOP