ウクライナ戦況

ザポリージャ州で防衛ラインが崩壊、ロシア軍は勢いに乗ってフリアイポレに迫る

DEEP STATEとRYBARはフリアイポレ方面について10日「ロシア軍がウスペニフカを越えて前進している」と報告し、ヤンチャー川沿いに設定されていたフリアイポレ東側面を守る防衛ラインは完全に崩壊した格好で、フリアイポレに向うロシア軍の勢いが止まらない。

参考:Мапу оновлено
参考:Остались без Сладкого Обстановка на Восточно-Запорожском направлении

どれだけ強固な防衛拠点も消耗と補充の均衡が崩れれば崩壊のカウントダウンが始まる

南ドネツク防衛の要=ヴフレダルの密集した建造物は無人機運用にとって最高の電波到達範囲を提供し、この立地はドネツク~ヴォルノヴァーハ経由でザポリージャ方面に伸びる鉄道を火力管制下に収め、さらに多数の陣地と地雷原で構成された要塞群に守られ、ロシア軍が送り込んでくる機械化部隊を何度も壊滅させてきたが、2024年にマリンカ~ノヴォミハイイリフカの防衛ラインが破られると状況が一気に悪化。

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それまでのロシア軍はヴフレダルの南に位置するパヴリフカやミキルスケからの攻撃に依存してきたが、ノヴォミハイイリフカを確保して広大な荒野を東から西にじわじわと制圧していき、この時期は丁度「FPVドローンに支援された少人数部隊による分散攻撃」「バイクやバギーによる分散と集合」「ドローン攻撃に対するEWシステムの保護」といった要素が登場し、さらに言えば2024年は戦場の火力支援が「偵察ドローンと大砲の組み合わせ」から「偵察ドローンとFPVドローンの組み合わせ」に移行したタイミングだ。

しかし、南ドネツク防衛を担当していた作戦司令部や作戦・戦術グループの司令官らはFPVドローンやEWシステムへの理解度が低く、偵察ドローンとFPVドローンを組み合わせた作戦を強化しなかった上、適切な戦力補充や増援派遣も行わず、ヴフレダルは2024年9月中旬までに3方から包囲され9月末に陥落してしまう。

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これまでヴフレダルがロシア軍の前進を食い止めてきたため、ヴフレダル以降の南ドネツクやザポリージャ州の防衛ラインは「南からの押し上げ」のみに集中できたが、ヴフレダルが陥落したことで「準備していた南からの攻撃」ではなく「想定していない西からの攻撃」を受けて防衛ラインが崩壊し、ロシア軍は2024年10月1日~2025年9月31日までの1年間で80kmも西に前進している。

フリアイポレ東側面の防衛ラインはヤンチャー川沿いのウスペニフカ~ポルタフカ~マリニフカで構成され、ロシア軍は7月上旬に南からマリニフカをほぼ制圧、9月までにドネツク州境を越えてドニプロペトロウシク州南東やザポリージャ州北東部に進出し、この時点で「ロシア軍はポルタフカやウスペニフカに前進してフリアイポレ南の防衛ラインを迂回するだろう」と予想されていた。

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ロシア軍は10月中旬までにポルタフカを、11月上旬までウスペニフカを占領してヤンチャー川沿いの防衛ラインが崩壊し、DEEP STATEはフリアイポレ方面について10日「ロシア軍がクラスノヒルスケ東郊外で前進した」「ノヴォスペニフスケ、ズラホダ、リブネがグレーゾーンに移行した」「オレストピルとヴィシュネヴェの大部分がグレーゾーンに移行した」「ソロドケ南郊外、リヴノピリヤ郊外、ヤブルコヴェ郊外までグレーゾーンが伸びた」と報告。

RYBARも「ロシア軍がリブネ、ソロドケ、ノヴェを占領した」「ロシア軍がウスペニフカ西郊外で支配地域を広げた」「ロシア軍がリヴノピリヤ、ノヴォスペニフスケ、ヴェセレ、ゼレンイ・ハイに向けて前進している」と報告し、視覚的にもロシア軍兵士がソロドケ集落=ⒶⒷで国旗を掲げる様子、ロシア軍兵士がノヴェ集落=ⒸⒹで国旗を掲げる様子が登場。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

RYBARは「第127自動車化狙撃旅団の第394連隊がソロドケを、第114連隊がノヴェを解放して国旗を掲げた。ロシア軍の攻勢は現在も続いており、ウクライナ軍は防衛ライン上の領土をどんどん失っている」「ロシア軍はイェホリフカ方向の防衛ラインに対しても攻撃を試みている」「この攻撃で成功を収めているという情報もあるが具体的な成果は戦場の霧に包まれている」「ロシア軍がヴェリコミハイリフカ方向で動き出し航空機が活発に作戦を行っている」「以上のことからフリアイポレ方面の全方位で敵の状況が悪化している」と述べた。

もうロシア軍はフリアイポレまで8km~10kmの位置に迫っており、ヴィシュネヴェとイェホリフカを抜かれるとポクロフスケとフリアイポレを結ぶ主要ルートも物理的に遮断され、どれだけ強固な防衛拠点も消耗と補充の均衡が崩れれば崩壊のカウントダウンが始まる。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

仮に現在の前進ペースが続けばフリアイポレは2026年春まで保たない可能性が高く、ここを突破されるとオレホボの東側面が怪しくなり、個人的に「オレホボを失うとザポリージャ戦線の形自体が根本的に変わってしまう」と思っている。

ポクロウシク方面に関しては具体的な変化が乏しいものの、依然として状況の悪化にも歯止めはかかってない

DEEP STATEはポクロウシク方面について8日「ポクロウシクよりもディミトロフの方が問題だ」「この街と街を守るウクライナ軍は完全に物流ルートが破壊されるか、物理的に物流ルートが遮断される脅威に晒されている」と報告。

“敵は現在、ディミトロフの東郊外に足場を固め、ノヴォエコノミチネ~ミコライウカ~ミロリュビフカ~コザツケの間で突撃攻撃を繰り返している。現地で戦う兵士の話によればディミトロフに対する補給はほとんどなく、悪天候か運任せの移動が唯一の救いとなっている”

“ポクロウシクからディミトロフへの徒歩移動もほぼ不可能で、どこでも待ち伏せ攻撃、ドローン攻撃、地雷の脅威に遭遇する可能性がある。移動中の接近戦も日常的なものになりつつあり、敵が有刺鉄線のような障害物を事例も確認されている。ディミトロフへの重要な物流ルートの起点はリヴネで、その周辺でも敵の存在が確認され待ち伏せ攻撃を行っている”

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“ディミトロフにとって重要な課題は正常な物流が怪しくなっている状況で陣地を維持する方法、ローテーションを行う方法、そして危機的な状況に陥った際にどのように撤退するかだ。現地で戦う兵士らは司令部から「失った陣地を回復せよ」と、特に敵の支配下にある集落の奪還を命じられることが多いと訴えてくる。今のところディミトロフを守るウクライナ軍は東から攻撃を抑え込んでいるものの、物流が完全に機能しなくなればそれすら不可能になるだろう”

DEEP STATEは10日「ロシア軍が線路の樹林帯まで支配地域を広げた」「線路沿いでグレーゾーンが広がった」「ポクロウシク北郊外でグレーゾーンが広がった」「リヴネ方向にグレーゾーンが広がった」「ディミトロフ南郊外でグレーゾーンが広がった」「リシフカ北郊外でグレーゾーンが広がった」と報告し、ディミトロフへの重要な物流ルートの起点=リヴネ方向にグレーゾーンを伸ばしてきた。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

  • コメント (7)

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    • たむごん
    • 2025年 11月 11日

    独ソ戦の防衛側も、ザポリージャ州~ドニプロ州あたりは平原の真っ平なわけでで、、ドニエプル川・支流までは非常に苦労してるんですよね。

    ヴフレダル守備部隊も、信じられないような損害を与えながら長期間守っていたわけですが、地図だけみて上層部これが当たり前になってはいけないなと。

    『とにかくがんばれ!気合いだ!』上層部どの組織もこれだけやると『現場は消耗して使い捨てになる』だけで、特に政治家の役割は妥協して泥かぶるのも大事な仕事なわけです…

    34
    • まず
    • 2025年 11月 11日

    グリャイポレ方面は古典的な広正面攻撃が綺麗に成功しつつあり、イェホリフカ方向での突破の動きなどまさにその典型
    これが成功すればウスペニフカの突破口と連結されてグリャイポレ東の戦線は完全に破綻し20kmオーダーの広大な突破口が形成され対応が非常に難しくなるわけで、もはやグリャイポレは救い難くむしろこちらの方が正念場だろう

    ポクロフスクにしてもリヴネよりむしろ今の段階でフリシュネへの攻撃が行われたのが意義深い
    というのもポクロフスク都市圏陥落後に後退したウクライナ軍の当面の陣地になるのがロディンスケとフリシュネなわけで、既に両都市が戦場になってしまっている状態では撤退してきた部隊が満足に再編できないまま混乱が生じることになる
    これも古典的な縦深攻撃の適応だ
    ロシア軍は既に陥落後を見据えた攻撃を仕掛けてきており、方位を閉じる動き以外の方にむしろ正念場がある

    40
    • cosine
    • 2025年 11月 11日

    当地においてエポックメイキングもゲームチェンジも起こってなどおらず。
    ウクライナが起こせなかったという意味でも、ロシアは特別なことなんぞ何もしとらんという意味でも。
    ○○が陥ちたら次はこうなると言われ続けた通りのことそのまんまなだけなん「ですよね~」

    35
    • nk
    • 2025年 11月 11日

    ウクライナ側の状況が明確に悪化したという年になりそうですね。
    フリアイポレも取りつかれたら保たないでしょうし、ポクロウシク後の防衛ラインも存在するかどうか怪しいので今後も厳しい戦いが続きそうですね。

    19
      • あばばばば
      • 2025年 11月 11日

      ぶっちゃけ、21年の開戦以降、大体秋から冬にかけてアメリカ議会の停滞でウクライナの不利に傾くのは毎回の事と言えば毎回の事だし……

      14
        • cosine
        • 2025年 11月 11日

        そう考えると、イスラエルが対イランをおっ始めた時期も「実によく心得たうえ」だったんだなぁと。

        13
          • たむごん
          • 2025年 11月 11日

          『日本=イスラエルは競合している』アメリカ軍の支援・関心をどれだけ引っ張れるのか、こんな話しを見かけた記憶があります。

          イスラエル・ユダヤロビーが、アメリカ保守派を支援してきたのを含めて、仰る通りかなり深く研究しているのでしょうね。

          3

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