Kyiv Independentは13日、外交政策研究所のロブ・リー氏の見解を引用して「ハルキウ攻勢の成否を測る尺度はハルキウではなくドネツクにある」「ロシア軍はハルキウ方面への戦力誘引を活かせず仕舞いに終わった」「最悪のシナリオは起きなった」と報じている。
参考:Russia’s move on Kharkiv has bogged down. But was it a failure?
ロシア軍はハルキウ方面への戦力誘引を活かせず仕舞いに終わった
“ロシア軍は消耗したウクライナ軍の状況を利用するため、2022年後半に放棄したハルキウ北東部で新たな攻勢を開始した。リプシ方向とボルチャンスク方向で素早く占領地を広げたものの、ウクライナ軍が素早く増援を送り込んだためロシア軍の攻勢は約2週間で行き詰まった。ゼレンスキー大統領は8日「ハルキウ攻勢は失敗した」「ウクライナ軍は効果的に敵を抑え込んで殲滅している」と述べたが、ロシア軍が成功したか失敗したかを判断するには作戦の戦略的目標を理解しなければならない”

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“政府関係者やアナリストらは「ロシア軍がハルキウを包囲したり街自体に侵入する可能性は殆どなく、そもそもロシア軍はその様な作戦意図をもっていなかった」という見方で一致しており、どこまでの前進を意図していたか不明なものの「兵士不足に悩まされるウクライナ軍に広範囲な戦略的ジレンマを与える」という指摘が多い”
“外交政策研究所のロブ・リー氏も「早い段階で相当量の増援が送られたと分かっていたため、そこまでハルキウ方面の攻勢が進まなかったことは驚きではない。それもより(ハルキウ方面への戦力誘引を活かして)ロシア軍が他方面でどこまで前進できるかの方が問題だった。このチャンスを利用して他方面に戦力を投入するのは理に叶っていたが、私が予想していたほどロシア軍はそれを活用しなかったため、最悪のシナリオ(チャシブ・ヤール市内を貫く運河の突破など)は起きなった」と述べた”

出典:82 окрема десантно-штурмова бригада
“さらに「ハルキウ方面に増援を短時間で移動させ戦線を安定させたことは、この方面の防衛を容易にするだけでなく『より優先度が高い地域に部隊を戻すことが出来る』という意味で、ウクライナ軍は増援の一部を他方面に戻すことも、より効率的なローテーション方法を開発することもできる」と指摘したが、同時に「緊急時の火消しとして『旅団の大隊を異なる方向に断片的に配備している』という問題を抱えたままだ」と付け加えている”
“リー氏は「戦力誘引を意図した陽動作戦への戦力投入は無駄ではないものの、これに過剰な戦力を投入するのは(本来の戦略的目的からかけ離れていくため)意味がなく、ロシア軍はハルキウ方面で苦い経験を味わったため、新しい陽動作戦(スームィ方面など)を直ぐに始める可能性は低いだろう。ロシア軍の戦略的な優先順位はポクロウシクとドネツク州全体だ」と述べ、ロシア軍はハルキウ方面への戦力誘引を活かせず仕舞いに終わったと結論づけた”
ロブ・リー氏はロシア軍がクピャンスク方面、シヴェルシク方面、バフムート方面、アウディーイウカ方面、ドネツク西郊外方面、南ドネツク方面、ザポリージャ方面で前進したことを無視しているのではなく、ハルキウ方面で新戦線を開くという戦略的な決断が「戦略的な成功=チャシブ・ヤールでの決定的な突破などをもたらさなかった」と言いたいのだ。
ロシア軍がハルキウ攻勢に投入したリソースが他方面の成功(戦略的目標の達成)に見合うものなのかどうかは何とも言えないが、リー氏は「もっと多くの戦力を投入して決定的な突破をロシア軍は狙ってくる」と考えていたため「最悪のシナリオは回避された」と評価しているのだろう。
因みにロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは先月25日「敵は50個大隊以上(旅団換算で12個以上)の戦力を集結させて間もなく反撃を開始する」と報告したが、これはRYBARの報告であってウクライナ軍、ウクライナメディア、海外メディア、アナリストらが「ハルキウ北東部に50個大隊以上の戦力を集中させた」と言及した訳ではなく、ロシア陣営のRYBARが「戦力誘引の成果」を大きく見せるため「過剰な数字」を使用していても不思議ではない。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
陽動をかけてドネツクで突破を図るというのがロシアの目論見だったと言いたげだけど、本当にそういう作戦が立てられていたのかどうか
真実はロシア軍しか知りませんが、戦力誘因目的で本命は東部というのは立場問わず多くの意見が一致するところでしたし、このブログでもその見方が強かったので可能性はかなり高いとみていいでしょう。少なくとも最初から否定的に見るのはアンフェアだと思います。
問題は、引用元の言う最悪のシナリオつまり強度の高い攻勢をかけて突破する予定だったかどうかでは?
氏はこれを前提に突破が出来なかったので有効活用できなかった。と結論付けているのですが、仰るとおり作戦意図はロシア軍しか知りえず前提が危うい論だと思います。現状が予定通りなのか妥協の産物なのか分からないでしょう。
挑発的な物言いとなってしまいますが、以前に使われていた”お人形遊び”という表現がしっくりきてしまいます。
とはいえ、予想された最悪のシナリオとポジショントークが絡み合った結果だと思いますので氏がデタラメだとも思っていません。
陽動では有るが可能であれば有利なポジションを得て、さらには直接ハリコフ市を砲撃出来るようになれば満点。
少なくとも、ウクライナの虎の子な予備戦力を穴から引っ張り出して消耗させられれば合格。
もちろんその隙に東部での前進は必須条件。
という事であればこのハリコフ攻勢でのロシア側の勝利条件は合格点はもう稼いでいるのではないでしょうかね?
どうですかね。
低速であっても東部で前進できれば良いというのであれば、そもそもハルキウに陽動をかける必要はないわけで。
内線の利が得られるウクライナに対してわざわざ戦線を長くして東部戦線ロシア側の兵站を逼迫させた。政治的にも警戒心が高まることで動員に対する抵抗感を下げ、米国製長射程兵器の使用制限を緩めてしまったということであれば、
結局突かんでもいい蜂の巣を突いただけという評価もできますね。
ロシア軍が大規模な予備兵力の投入を行ったという話や、戦線に対して集中的な火力投与を行ったという話が出てないことから、大規模な攻勢は行われていないのでは?とすると、まだ予断は許されない状況のようには思いますね。
というか、攻勢掛けるにしてもウクライナの山場は電力不足により社会インフラが困窮する来年以降で仕掛けるのが恐らく効果的ですから、今年に勝負を仕掛けるかもわかんないんですよね。
ある人が書いてたけど既にロシアの基本戦略はスロビキンラインを作った時から守備なのではないか?ということ。
現状の占領地を守るのが大前提で。ギャンブル的な攻勢はせず余力の範囲内での攻勢。
噂の夏季攻勢みたいなのも西側が勝手に言ってるだけでロシアはする気もないかもしれん。
ドネツク州全土掌握は必須条件だと思う
残りの2州はどうなんかな
あとキエフにNATO旗が揚げられるのはロシア国内世論的に不味いから、それ分の戦果は必要になりそうですね
一瞬、ソフトバンクの会長がそんなこと言ってたのかと思ったw
最悪の場合、全戦線でスターリンクが妨害されて通信不能になっていたのでしょうか?
そうなっていたら、もっとロシア軍が有利になっていた可能性もあるかと考えると
ウクライナは敵失に恵まれた幸運だったのかもしれません。
ハルキウ方面の攻勢は当初から言われていたとおり陽動でしたね
ただ、ウクライナ軍がロシア軍の想定していたよりも上手いこと防衛したので、陽動を活かせなかったと
より重要なのはウクライナ軍がどれだけ損害を受け、与えたかと思うんだけどなあ(特に宇側の損害)
擦り傷程度で済んだのか、ぶつけた程度か、それとも・・・
あとそれだけ上手いこといったならほかの戦線にも同じことが出来るはずなので、今集結させてる(はず)の戦力を他に転出できるかどうか
ロシア軍は、ハリコフ方面に5個大隊程度の歩兵中心、後方に本軍待機くらいの指摘だった記憶があります。
キーウインディペンデント、攻勢が手仕舞いなら、戦線膠着という見解なのでしょうかね?
チャシウヤール周辺、アウディーイウカ方面を中心に、引き続き見守りたいと思います。
>ロシア軍の戦略的な優先順位はポクロウシクとドネツク州全体だ」と述べ、ロシア軍はハルキウ方面への戦力誘引を活かせず仕舞いに終わったと結論づけた”
ロシア軍の方針がウクライナの野戦軍の撃滅であるなら
今回のハルキウ攻勢は後方に引きこもってる予備戦力を新たな戦線を開くことで前線に引っ張り出して損耗を強要するためという推測も成り立ちます
ウクライナ側はキーウ防衛戦以降はキーウからずっと動かしていなかった国軍直轄の第101参謀本部警護旅団などをハルキウ派遣していますし
戦線の移動が落ち着いた今でもウクライナは新たな部隊をハルキウ方面に送り込み続けています
この状況なら他の戦線で大突破が行わていなくても(そもそもロシア軍には大突破を志向するような動き自体がない)
ハルキウ攻勢でのウクライナ軍の予備戦力の前線まで引っ張り出して戦闘に加入させるところまでは目的を達成してると言えるかもしれません
大突破志向が見られないことについて、素人目ですが勢力図の変化からT0504に向けた突出部を除いて広い範囲で浸透戦術のような事を行った結果のように見られます。勢いよく伸びる場所があったり大小ポケットが多く作られてるのはそのような理由かなと。
揚げ足を取るようで申し訳無いのですが、第101旅団はバフムート方面のホルリウカで戦闘行動を行っていたはずです。ただ参謀本部直轄の部隊が出てきたという事はそれ相応の精鋭部隊ですので部隊誘因には成功していると思います。
これについて調べたのですが
バハムート方面での戦闘についてはwikipediaの日本語版のみに記載されており
ウクライナ語版やロシア語版や英語版では記載されていません
ウクライナ版のバハムートの戦いの記事にも投入戦力に記載されてますが検証不能という注記になっており
別個にウクライナ語でニュースなども検索しましたが見つかりませんでした
日本語の101旅団のバハムートでの戦闘の根拠については元101旅団所属の予備役兵がバハムートで戦死したというニュースによるという間接的なものなので
根拠が薄いと判断して除外しました
成程。日本語版だけとは知りませんでした。貴重な情報ありがどうございます。しかし本当にそうであればウクライナ軍はかなり厳しい状況にあると思います。第101旅団は上にも書いた通り精鋭なはずなのでどのような動きをするか気になりますね。
この記事の指摘内容通り、確かに不安視されていたチャシブヤールの陥落は早々に達成されることもなく、むしろロシア軍の方がモタモタしてるイメージが強い
アウディーイウカ方面に関しては完全にロシア軍にとっての草刈り場になってやられたい放題状態だけど
ハリコフ戦線が終了して越境したロシア軍を国境付近か国境ソトまで叩き出したならともかく、今だに戦線が維持されており、ウクライナによる反撃が大成功してる兆しもないのです。であるからこそ、ウクライナ軍は次々に新しい戦力を投じてるのですが、勝ってるなら増援は必要なく東部や南部に送るのが本来の形です。つまりハリコフに投じた戦力が各戦線にリターンされるまでの期間が危機となるのです。そしてハリコフに投入された戦力は再編中や新編中に休養中の部隊も混雑しており、戦線がそのまま維持されるなら再編成や休養も出来ずウクライナ軍はジリ貧のままということです。
久しぶりにコメ
poulet volant氏のマップを見ると、ウクライナ軍のハリコフ増援は雑多な(本来正規軍同士の殴り合いに向かない小規模な部隊や特殊部隊)使える部隊を何もかも投入しており、尚且つ視覚的証拠で確認された砲撃の数がチャシブヤール方面と同じかそれ以上ある
つまり、ウクライナ軍は数の優位をいかし反撃、ロシア側は砲撃を集中させなんとか防衛
このように見える
市内では実際に親宇派OSINTが僅かな土地をウクライナが奪還したとも報告してて、反撃してるけどほぼ失敗って感じ
点数をつけるとしたらロシア6点、ウクライナ5.5点って感じじゃなかろーか
ロシアの目的にはより単純な話もある。
ロシア領内のすぐの場所に、ウクライナ軍の支配地域を砲撃や攻撃をするロシア軍の拠点が集積している。
これから西側の長射程の武器もウクライナに入ってくる。
今の状況だと、ロシア領内の拠点がウクライナ軍の様々な攻撃によって被害を容易に受けてしまう。
なのでロシアは自国国境迄の緩衝地帯をできるだけ広く作りたいのだろう。
なおこの今の状況は、ウクライナが2022年後半の反転攻勢で得た大きな成果でもあるのだけど。
ウクライナ側の残存予備戦力を測るために仕掛けた説も個人的にはあると思うんよな
ただの感覚なんだけど最近のロシア見てると大規模誘引からの別戦線の突破をわざわざ狙うと思えないんだよね