ウクライナ戦況

将来の停戦ラインを巡る戦い、ロシア軍が東部戦線の複数方面で前進

ウクライナ人が運営する情報分析グループ=DEEP STATEはは23日「ロシア軍がリマン方面ゼレベツ川西岸とトレツク方面で前進した」と、ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「ロシア軍がクラホヴェ方面で大きく前進した」と報告した。

参考:Мапу оновлено
参考:Рывок к границе Обстановка на Новопавловском направлении по состоянию на 21.00 30 марта
参考:Бои за Разлив Обстановка на Андреевском направлении на 20.00 30 марта 

ロシア軍は一方向のみによるトレツク攻略に失敗したためH-20沿いの前線を押し上げたいのかもしれない

DEEP STATEはリマン方面ゼレベツ川沿いについて「カテリ二フカ方向の突出部が大きくなった」「ロシア軍がノーヴェ方向に前進した」と報告。

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RYBARはトレツク方面について25日「既にオレクサンドロピルとパンテレイモニフカの解放に関する情報が出回っているが事実ではない」「ロシア軍はトレツク攻略で行き詰まったため作戦方針を転換してより広い範囲で前線を活発化させた」「これによりトレツクの単独攻略よりも意義深い成功を達成できる可能性がある」「何故ならロシア軍はトレツク市内に侵入出来ても周辺の荒野や集落を確保しなかったため、トレツクを占領して完全支配することが出来なかったからだ」と言及。

DEEP STATEも「オレクサンドロピルとパンテレイモニフカにグレーゾーンが広がった」と報告していたが、30日夜までに「ロシア軍がパンテレイモニフカをほぼ占領した」「ロシア軍支配地域がオレクサンドロピル郊外まで広がった」と報告。

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この方面のロシア軍はニューヨークからシュチェルビニフカ方向への突破に行き詰まり、一方向の攻撃のみでトレツクを制圧するのにも失敗し、セベロドネツク、リシチャンシク、ソレダル、バフムート、アウディーイウカ、クラスノホリフカ、セリダブ、ヴフレダル、クラホヴェ、ヴェリカノボシルカで実行したような大きな迂回=トレツクの背後に回り込むための動きを活発化させている。

RYBARはドゥルジバ方向からの迂回を報告していたが、この方向のロシア軍前進についてDEEP STATEは認めておらず、逆にオレクサンドロピル・パンテレイモニフカ方向への動きについては両者の評価が概ね一致しており、恐らくロシア軍はH-20沿いの前線を押し上げたいのかもしれない。

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DEEP STATEはクラホヴェ・ヴェリカノボシルカ方面について「ロズリヴ集落内にグレーゾーンが伸びてロシア軍の足場が登場した」「ロシア軍がドニプロエネルヒヤ集落の大部分を支配している」と、RYBARは「ロシア軍がナディイフカ郊外の植林地を再度占領した」「ロシア軍がプレオブラジェンカを支配している」「トロイツケとボダ二フカを巡る戦いが続いている」「ロシア軍はザポリージャの南郊外で前進した」「ロシア軍はロズリヴ方向に支配地域を広げた」「ロシア軍がロズリヴ集落の2/3を支配しているものの集落東部への前進は阻止された」と報告。

視覚的にもウクライナ軍がロズリヴ集落の入口=に到達したロシア軍を攻撃する様子が登場したが、DEEP STATEとRYBARのロズリヴに対する評価は大きく食い違っている。

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未だにアンドリイフカとコスティアンティノピルの評価も一致しておらず、クラホヴェ方面は何も断言できない状況だ。

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※アイキャッチ画像の出典:92 ОШБр ім. кошового отамана Івана Сірка, Офіційна сторінка

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コメント

  • コメント (13)

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    • たむごん
    • 2025年 3月 31日

    ブフレダル・クラホヴェ・ヴェリカノボシルカの陥落は、やはり痛かったことを感じますね…

    クラホヴェ・ヴェリカノボシルカ方面は、ポクロウシク周辺のように厳重に固められていませんから、どうなるのか注目したいと思います。

    泥濘期かと思いますが、ロシア軍がどのように前進しているのか、今までの停滞が再編・ローテーションしていただけなのか結果がでそうですね。

    12
      • たむごん
      • 2025年 3月 31日

      追記です。
      クラホヴェ・ヴェリカノボシルカ方面。

      ヴェセレ~フェドリフカ(南北道路沿い)に、攻撃映像が複数出ているため、今後の動向が気になりますね。

      10
        • ろみ
        • 2025年 3月 31日

        ロシア軍は今までの泥濘期でもゆっくりとですが前進していたのでトレツク市街、ポクロウシク方面での反撃、トレツク近郊、リマン、ザポリージャでのロシア軍の活発化からするに再編を終えて地が固まった後の主導権を握ろうとしているのではないでしょうかね?
        特にトレツク近郊とザポリージャは今まで動きがほとんど無い不活性化な戦線だった為、ロシア軍が本格的に兵力を投じればウクライナ軍も兵力増強をせざる得ません
        多方面での同時攻勢で強固に守られた戦線(今回はポクロウシクとトレツク市街?)からの戦力引き抜きを強要し最初に崩れた箇所から突破を伺うロシア軍恒例の作戦なのだと思います

        22
          • たむごん
          • 2025年 3月 31日

          仰る可能性、充分ありますね。

          あまりにも戦線が長く、全ては頑強に守るのは難しいでしょうし。

          ウクライナが無理な攻勢作戦=政治的要請により、戦力が磨り減ってしまうと、ますます厳しくなるのではないかと心配しています。

          6
        • Panzer
        • 2025年 3月 31日

        ロシア政府がトランプ政権による停戦にいつ合意するつもりなのかが疑問なところです。プーチン大統領とトランプ大統領は親密な関係ですしもしロシアが停戦を拒んでも先日のように米国とウクライナが停戦条件について合意、ロシアの反応待ちにしてしまえばロシアは対応しなければ批判される立場になるわけですから報道のような1年も戦争を続けるといった選択は不可能ですしロシアが望むところでもないでしょう。となればロシアはいつ頃米国と合意して停戦するつもりなのでしょうね

        1
        • Panzer
        • 2025年 3月 31日

        ロシア政府がトランプ政権による停戦にいつ合意するつもりなのかが疑問なところです。プーチン大統領とトランプ大統領は親密な関係ですしもしロシアが停戦を拒んでも先日のように米国とウクライナが停戦条件について合意、ロシアの反応待ちにしてしまえばロシアは対応しなければ批判される立場になるわけですから報道のような1年も戦争を続けるといった選択は不可能ですしロシアが望むところでもないでしょう。となればロシアはいつ頃米国と合意して停戦するつもりなのでしょうね

        2
          • たむごん
          • 2025年 3月 31日

          人的関係を作ることが、本当に重要であると感じますね。
          仰るご指摘、プーチン大統領に直接聞ける人間が、トランプ大統領のように本当に限られているからです。

          名無しさんが紹介されている記事でも、アメリカ側は18歳~25歳の動員について言及しているんですよね。
          この少子化世代が消耗すれば、ウクライナの次世代を支える世代が、さらに凹む上にこの世代以外の動員はもう絶望的でしょう…

          条件次第というところなのでしょうが、ロシアはロシア農業銀行のSWIFT復帰という、高め豪送球を提示していてアメリカが議論中のようです。
          人的資源の削り合いが続けば、数年先に力尽きているのは間違いなく、とても悲惨なことですから着地点を早めに見つけて欲しいなと感じています…(今よりさらに、国際世論も関心が低下しているだろうなと)

          3
    • のー
    • 2025年 3月 31日

    キノコのような2つのアンテナが気になります。
    これが近未来の兵士の真の姿ですか。。。

    1
    • 名無し
    • 2025年 3月 31日

    ニューヨークタイムズのウクライナ絡みの暴露記事が中々興味深い物がありましたね。

    16
      • T.T
      • 2025年 3月 31日

      なかなか読み応えがありました。
      アメリカ側を正当化する誘導バイアスは差し引かないといけないとは言え、これまで断片的な情報から言われていたことが確認された感ありますね。NATOががっつり戦争に食い込んでいたことや、正直バイデン政権の戦争指導の中途半端具合、米英のインテリジェンスの果たした役割の圧倒的なこと。以前ロシア側のみ索敵有り設定のハンデ戦と書き込みましたが、やはりあながち間違いでは無かった。

      17
        • T.T
        • 2025年 3月 31日

        もう一言付け加えると、NYTみたいな主流メディアから今まで封殺されていたこういう内容の記事、しかもアメリカはこれだけ貢献したのにウクライナは勝つ気もないような連中で!みたいなニュアンスの物が流される政治的な意図を感じますね。実際どうかは戦後の研究を待ちたいですが、反攻作戦の失敗も完全にウクライナ側の責任として描いています。これやはり米国によるウクライナ切り捨てのメッセージっぽいなと。

        18
          • たむごん
          • 2025年 4月 01日

          まさに仰る通りです。
          マスコミ次第で、北朝鮮は地上の楽園になり、ポルポトはいい政府と宣伝されたこともあったわけで…

          ウクライナも、アメリカを変に突っぱね続けたりすれば、とんでもない事にならないか心配しています。

          8
      • たむごん
      • 2025年 3月 31日

      情報ありがとうございます、かなりのボリュームで勉強になりました。

      ザルジニー元総司令官=シルスキー総司令間の対立関係も、(誇張かもですが)以前から言われている出自経歴も絡めていて、なかなか興味深いなと。
      アメリカ=ロシアの関係の中で、アメリカが設定していたレッドラインを超えていきつつ、第三次世界大戦を危惧しているところが非常に生々しく感じています。

      アメリカが、ウクライナをグリップしているように言われることもありましたが、ウクライナは政治目標・アメリカは軍事目標を追求しており…
      バイデン政権は、ウクライナをグリップできないまま、レッドラインを探るようなレイズが続いてたように感じますね。

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