ウクライナ戦況

シルスキー総司令官は包囲されていないと、現地の兵士は事実上の包囲だと主張

kyiv Independentは10日「ウクライナ軍がディミトロフで包囲されているのか、部隊を安全に交代させ、必要な物資を街に運び込めているのかについて情報が錯綜している」と指摘し、シルスキー総司令官は「包囲されていない」と、現地で戦う兵士らは「事実上の包囲だ」と主張する。

参考:Все пути выхода из Мирнограда в “серой зоне”, россияне расползаются по городу – УП
参考:Ukraine war latest live: Troops in Myrnohrad rely on perilous ‘gray zone’ corridor for rotation, supplies
参考:«Котел» сжимается

ポクロウシクやディミトロフの戦況は口先と現実の間に大きな開きが生じて整合性が取れなくなっているのだろう

DEEP STATEはポクロウシク方面について9日「ディミトロフに通じる範囲が全てグレーゾーン化した」と報告、RYBARは10日「ロシア軍がディミトロフ市内で支配地域を広げた」「ウクライナ軍は絶え間ない空から攻撃と補給ルートの遮断によって家屋を失い続けている」「ウクライナ軍はディミトロフ北西市内とスヴィトレのみを維持しており、既に街全体の完全な支配は失われている」「この中に取り残されたウクライナ軍の小さな部隊はグレーゾーンに移動して包囲網からの脱出を試みている」と報告。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

Ukrainska Pravdaの取材に応じた海兵旅団(恐らく第38海兵旅団)の兵士2人も「DEEP STATEが9日に報告したディミトロフを取り囲むようなグレーゾーンは事実上何週間も続いている」「我々の部隊が最後にローテーションを実施したのは11月中旬だ」「12月初旬に数人の兵士が徒歩でディミトロフから脱出できた」「11月にはロディンスケ経由によるローテーションの試みがあったが、我々と隣接する部隊の参加車輌(計3輌)全てが破壊されただけだった」と証言し、以下のように述べている。

“今なら「どうしてポクロウシクがこんなに早く陥落してしまったのか」を理解できる。なぜならポクロウシクで起きたことがディミトロフでも起こっているからだ。敵は市内に兵力を蓄積していって決定的な瞬間が訪れれる。それでお終いだ。ロシア人は街の至るところに存在し、これを止めるのは不可能だ。なぜならこうなる前に兵站の遮断、ドローンによる攻撃、大砲による砲撃が行われるからだ”

出典:Генеральний штаб ЗСУ ウクライナ軍参謀本部が10日発表した公式戦況図

kyiv Independentも「ウクライナ軍がディミトロフで包囲されているのか、ここで戦う部隊を安全に交代させ、必要な物資を街に運び込めているのかについて情報が錯綜している」「hromadskeの取材に応じた第38海兵旅団の兵士も『ディミトロフは事実上包囲されている』『最後のローテーションが成功したのは11月12日だ』と証言した」「Ukrainska Pravdaの取材に応じた海兵旅団も『ディミトロフに対するローテーションと補給で損失を出している』『全てのルートがロシア軍の絶え間ない砲火にさらされている』と語った」と言及。

そして「シルスキー総司令官は9日の会見でディミトロフに対する補給が困難は困難をきたしているものの街自体はロシア軍に包囲されていない、ウクライナ軍は11月中旬以降、ポクロウシク市の約13平方キロメートル(ポクロウシク市の面積は約29平方キロメートル)を奪還したと言う」と指摘した。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

ウクライナ参謀本部が発表する公式戦況図はDeltaの複製物ではなく、実際の前線ラインもぼかしている表現しているが、それでも公式戦況図においてロシア軍支配地域がポクロウシク市に食い込んだことなど一度もないのに「ポクロウシク市の約13平方キロメートルを奪還した」と言っているので、もはやポクロウシクやディミトロフの戦況は口先と現実の間に大きな開きが生じて整合性が取れなくなっているのだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

  • コメント (27)

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    • ラボーチキン
    • 2025年 12月 10日

    香ばしいフェイクニュースがウクライナ側から漂ってくるようになったらもう終わりですな
    西側ぶってた彼らも所詮はソ連残滓の東側国家だってこってす。

    33
      • Null
      • 2025年 12月 11日

      すごい掌返しを見た。どこかのコメントで予想されてた正にそのままでは。

      45
    • たむごん
    • 2025年 12月 10日

    シルスキー総司令官や軍上層部が、ディミトロフ市内が包囲されていないと主張するのであれば。

    近くの街でもいいので、『堂々と入っていく雄姿』を見せれば、納得感を得られるでしょう。

    危ないからやめといた方がいいですし、無理でしょうね。

    54
      • たむごん
      • 2025年 12月 11日

      追記です。

      『降伏させたくない』包囲を認めれば、ウクライナメディア・西側メディアなど降伏が議論になるため、包囲を認めないのでしょうね。

      19
      • Mr.R
      • 2025年 12月 11日

      むしろこのまま撤退を認めないスタイルを貫いてくれればウクライナ軍の兵力をゴリゴリ削れるので見逃されたりして···

      22
        • たむごん
        • 2025年 12月 11日

        ドローンが飛んでる上に、砲撃・FABもありましたが、今どんな感じなんでしょうかね?

        ポクロウシク南部が厳しい時点で、ディミトロフ防衛部隊も早めに下げると思っていましたが、まさか見捨てるとはなあと…。

        23
    •  
    • 2025年 12月 10日

    下部の各旅団がメディアを通じて包囲されてると言ってるのに、最高司令官が否定しても意味があるのか?シルスキ個人の面子で現状歪めても撤退の判断が遅れて潰走か殲滅される可能性が更に上がるだけなんでは?

    40
      • tokisada999
      • 2025年 12月 11日

      ウクライナ側のニュースだと先週から政権内部で権力争いが表面化しているとの事。
      シルスキー総司令官とGURを率いるブダノフ長官の間で武力衝突も起きており、ブダノフ長官は、昨今ゼレンスキー辞任後の次期大統領候補としてEUが擁立するザルジニー大使に属するみたいです。
      ゼレンスキー側だと思っていた首相は、実は恩人イェルマークを議会から追放した側で政権内部でもゼレンスキーを過去の人扱いが出ているのだと思います。

      27
    • 通りすがれ
    • 2025年 12月 10日

    シルスキー総司令官の擁護を試みてみますと、浸透戦術主体で進んだ際の戦況図の引き方に適応できていないのではないかなと
    よく管理人さんが指摘なされている、自軍からの報告を直線で引いただけの戦況図しか描けないのではないかなと
    年齢層が高めになるほど、適応が難しいでしょうし

    29
      • 2025年 12月 11日

      もっと分かりやすく「グレーゾーンを全てウクライナ占領地域と見なす」してるだけでは

      10
    • むむ
    • 2025年 12月 10日

    シルスキー「包囲されてません!」
    ウクライナ兵「包囲されてます!」

    シルスキー「ディミトロフは包囲されてません!」
    ウクライナ兵「ディミトロフは包囲されてます!」

    50
      • 青島
      • 2025年 12月 11日

      「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだっ!!」

      9
    • 無名
    • 2025年 12月 10日

    マリウポリレベルの完全な包囲はされてないかもしれないけど、ディミトロフからポクロウシク方面に通じる道路が車輌や物資の残骸の山になってる映像が公開されてるので、行き来が命懸けなのは間違いないでしょう。

    37
    • 名無し
    • 2025年 12月 10日

    肉挽き機ことシルスキーさんの本領発揮かな
    しかし、部隊から上がってくる嘘報告がどうのこうのと言ってたくせにコレとは、ディミトロフで砲火に曝されてるウクライナ兵は気の毒ですね

    48
      • たむごん
      • 2025年 12月 11日

      仰る通りですね。

      『降伏を許すことになる』包囲を認めれば、降伏が議論になり許可せざるを得ないからだと推測しています。

      (空爆も凄いわけで)ディミトロフの前線歩兵は、ギリギリまで粘らされたうえに、本当に報われないなと感じてしまいます…。

    • ふむ
    • 2025年 12月 11日

    出るも入るもロシア側ドローン部隊の火線下を潜らないといけない時点で、ロシア歩兵部隊による「包囲」があろうが無かろうが言葉遊びの域を出ませんね…
    開口部が存在するとして、往還するのに損耗率いかほどですかと

    41
    •  
    • 2025年 12月 11日

    包囲なのかはともかく、ロディンスケからの補給線がもはや使い物にならないのは前線からの報告があるだろうし、包囲についての軍事学上の厳密な定義がそんなに大事なのか?

    32
    • 朴秀
    • 2025年 12月 11日

    政治的に包囲を認められないのは理解できますが
    それはそれとして救出は試みて欲しいところですね

    11
      • ラボーチキン
      • 2025年 12月 11日

      シルスキー直々に特殊部隊を動員しましたわよ。自称観戦武官の覆面NATO将校だけ救出して帰っていったけど

      32
    • Mr.R
    • 2025年 12月 11日

    実際この状況下からどうやったら兵士たちを脱出させられるんだろうか···
    日中はもちろん夜間もサーモカメラを搭載したドローンに襲われるなら日中は光学カメラのドローンが多いことに期待して死ぬほど煙幕炊くとかでしょうかね? 策とも呼べない完全な運頼みになりますが···

    7
      • 名無し
      • 2025年 12月 11日

      ここでキルゾーン形成してるの、超絶エリートドローン部隊のルビコンだから、中途半端な対策やっても、半日後には対策施されますね。。。

      25
      •  
      • 2025年 12月 11日

      日中も識別しやすいからサーマルで索敵したりするのでどこまで効果があるかな

      7
      • たむごん
      • 2025年 12月 11日

      五体満足で脱出すること、この状況ならば絶望的だろうなと。

      早めに降伏して、捕虜交換もあるわけですから、生き延びて欲しいですね。
      ウクライナ人が、戦後復興するしかないないわけで、生き延びて戦後の方が長いわけですから。

      1年4カ月以上、ポクロウシク方面ここまで存分に耐えたわけですから、彼等は充分に任務を果たしたと思うんですよね…。

      24
        • 無名
        • 2025年 12月 11日

        十分に戦いましたけど、ウクライナ(というか人間)は救出作戦とか反撃が成功すると、即座に撤退するなり停止して陣地構築に専念すべきなのに欲が出て、このまま一気に押し返そう。とか、まだまだここで頑張れる。ってなって、結局力尽きる。

        17
          • 名無し
          • 2025年 12月 11日

          まだだ第47独立機械化旅団の活躍により平穏を取り戻すだろう!

          2
          • たむごん
          • 2025年 12月 11日

          国力差があるため、仰るようなやり方だと、限界があるなあと…。

          当初から言われてますが、欧州諸国が派兵しないのであれば、ジリ貧ですからね。

          サッカーCL・W杯予選などが盛り上がってますから、欧州それどころではないのでしょう。

          1
    • ななしぃ
    • 2025年 12月 11日

    >「11月にはロディンスケ経由によるローテーションの試みがあったが、我々と隣接する部隊の参加車輌(計3輌)全てが破壊されただけだった」
    いや状況が悪くなった時点でローテーションを試みずに撤退戦に入りましょうよ・・・それやるとロシアにどんどん進まれてしまうからウクライナ、特に首相周辺と参謀本部は嫌がっているのでしょうが

    8

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