ウクライナ戦況

ポクロウシク方面の戦い、ロシア軍が主要な防衛拠点2ヶ所をほぼ制圧

DEEP STATEは16日と17日に「ロシア軍がクピャンスク方面、スバトボ・リマン方面、ポクロウシク方面で前進した」と、特にポクロウシク・クラホヴェ方面では「ロシア軍がフロディフカとウクライナスクの大部分を支配している」と報告した。

参考:Мапу оновлено!
参考:Мапу оновлено!
参考:Хроника специальной военной операции за 17 сентября 2024 года 

クピャンスク方面

DEEP STATEはクピャンスク方面について16日夜「ロシア軍がピシュチャネ郊外の突出部を西に広げた」と、17日夜「ロシア軍がステルマキフカ方向に前進した」と報告、ピシュチャネ郊外の突出部からオスキル川到達まで約3km、クルフリャフカ付近を通るO-211942遮断まで約2kmになり、ステルマキフカ一帯を守るウクライナ軍への圧力も高まっている。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ロシア軍がO-211942を物理的に遮断するとオスキル川東岸地域への補給が複雑化=舟橋輸送に依存することになるが、RYBARは9日段階で「ロシア軍がオスキル川に設置された舟橋を破壊し続けているが敵も修復し続けている」と報告しているため、既にオスキル川東岸地域への輸送は以前よりも困難になっているはずだ。

この状況で攻勢を仕掛けれられ消耗が発生すると補給が追いつかなくる可能性が高く、オスキル川東岸地域を守るウクライナ軍の状況は厳しいというしかない。

スバトボ・リマン方面

DEEP STATEはスバトボ・リマン方面について16日夜「ウクライナ軍がトルスケ方向で領土を奪還した」「ロシア軍がネフスケ方向に支配地域を広げた」と報告、ウクライナ軍はトルスケ方向でロシア軍を押し戻すことに成功したため同集落の状況は改善したものの、逆にマキエフカの南に位置するネフスケの状況が急速に悪化した。

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ゼレベツ川沿いの集落(トルスケ、ヤンポレフカ、テルニー、ノボサドベ、ネフスケ、マキエフカ)の中でネフスケは最も状況が安定=ロシア軍から距離があったのだが、今回の前進で最もロシア軍が接近している集落になり、これはマキエフカをほぼ制圧したことに関係しているのかもしれない。

どちらにしても押したり引いたりが続いたゼレベツ川沿いの戦いにとって今回の報告内容=前進距離は異例で、m単位の争いが続く同方面で「なぜ3km以上の前進が可能になったのか」は今のところ謎だ。

ポクロウシク方面

DEEP STATEはポクロウシク方面について16日夜と17日夜「ロシア軍がノヴォホロディフカ北東にあるテリコンを占領した」「ロシア軍がフロディフカ中心部を制圧して集落の大部分を支配している」「ロシア軍がウクライナスクで支配地域を広げ市内の大半を支配している」「ロシア軍がゼランヌ・ペルシェ方向に前進した」と、RYBARも「ロシア軍がフロディフカ中心部を制圧して集落の大部分を支配している」「ロシア軍がウクライナスクを完全に占領した」と報告。

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ロシア軍はフロディフカ集落内を流れる川の対岸=高台にある住宅地区まで占領しており、もうフロディフカ一帯の防衛ラインは破られたと解釈するのが妥当かもしれない。ウクライナスクを巡る戦いも郊外のテリコンが陥落すれば終焉を迎えるため、この方向のロシア軍が次に襲いかかるのはヒルニクだろう。

因みに戦況マップの見やすさを優先するため「2024年2月24日以前のロシア支配地域」と「2024年2月24日以降のロシア支配地域」の区別を廃止、各色の意味と説明文も変更しました。

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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

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コメント

    • 2024年 9月 18日

    ロシア軍の砲撃量が減ってきているので供給が追い付かなくなってきているとか言ってたけど、街を瓦礫にしなくても進めるくらいウクライナ軍の抵抗が弱ってるだけだと思う。

    69
      • 2024年 9月 18日

      砲撃量が減ったところで進撃が加速して生産量は減ってないので貯蓄された分次の砲撃が苛烈になる可能性が増えたわけでむしろウクライナにとっては悲報でしかないのでは

      23
    • 2024年 9月 18日

    トロペツの弾薬庫爆破でロシア軍の攻勢に影響が出るかどうかが気になっています。
    ミサイル類が多かったようなので影響が出るならどちらかというとキエフなどへの空爆のほうですかね?

    8
    • ろみ
    • 2024年 9月 18日

    テルニで押し戻したのはロシア軍がテルニ攻略の試みを停止してから長期間動きが無かった突出部を奪回した形の為、以前行った反果が今、反映されたと解釈するのが妥当でしょうね
    そうなると全面的にkm単位で押し込まれ続けている事になる為、残念ながら戦況はウクライナに極めて厳しいと評価せざる得ません
    ゼレンスキーがザルジニーに戦略立案を全面的に委任していたら今も違ったかもしれませんが過ぎた話です

    31
    • ポンポコ
    • 2024年 9月 18日

    クピャンシク方面は、ウクライナ軍は確か空挺旅団を引き抜いてクルスク侵攻に使ったので影響が出ているかも。クルスク侵攻はそのために部隊を引き抜いているので、既存の戦線をやや弱体化しましたね。

    この方面のウクライナ軍はオスキル河東岸は部隊が追い詰められる前に早めに撤退して、オスキル河を防衛線にした方がいいと思うのだが。

    最も重用なポスロウシク方面ですが、この記事だとポクロウスクに向かった北側もロシア軍が少し進んでいるようですね。

    しかし、ポクロウスク方面は、ウクライナスクの陥落が大きいと思う。ロシア軍がこのまま西南のクラホヴエ方向に進んでいけばウクライナ軍が閉じ込められるポケットができてしまう。

    28
    • たむごん
    • 2024年 9月 18日

    ポクロウシク方面、km単位の動きが続いてますね。

    街の状況が、バフムトなどと比較して、綺麗な状況に見えます。

    ロシア軍が、あまり弾薬を消耗してないと考えるべきかもしれませんね。

    44
    • toto
    • 2024年 9月 18日

    ポクロフシク方面の北側のフロディフカ、南側のウクライナスクがほぼ同時期に制圧されたというのは厳しいですね。
    中央のセリダブとて重要なのでここの兵士は減らせませんし、北も南も防衛戦力が不足している。4倍近いロシア軍(砲火力、兵站でも上)に面で圧力を受ける形では、じりじりと押されてやがては制圧される以外の結末が想像できないです。
    ロシア側は奇をてらわず教本通りに実直に攻めているので、派手さはないですけどとにかく手堅い。

    51
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 9月 18日

      ウクライナスクが制圧されたので、セリダブはこれから半包囲されるでしょうね
      かといってセリダブから撤退するとポクロウシクまでほぼ何も無くなるので、撤退の決断は容易ではないでしょう
      おわた…というにはまだ早いですがだいぶ詰んでる感がありますね

      20
    • ざる
    • 2024年 9月 18日

    フロディフカも陥落しましたか…、冬を待たずにディミトロフ攻略戦が始まりそうな勢いですね。

    33
      • TKT
      • 2024年 9月 18日

      ディープステート氏の認識では、まだ南のセリダブにもウクライナ軍がいそうなことになっていますが、このへんもよくわかりません。すぐに退却するか、あるいはすでにしているかもしれません。

      そうなると次はいよいよディミトロフ、ポクロウシクの攻略にかかる、ということになるでしょう。

      しかし一時期は捕獲されると困るとか言っていたイギリスのチャレンジャー2戦車さえもすでにクルクスに投入してしまった今、後はウクライナ軍に何が残っているかさえもさっぱりわかりません。兵器の話も最近はめっきり少なくなりました。

      26
      •    
      • 2024年 9月 18日

      今までより格段に大きな街だけど。
      やっぱり市街戦をするのかな。それとも包囲を優先するのか?
      無血開城はないのかな。

      7
    • マダコ
    • 2024年 9月 18日

    ロシア軍の勢いが変わらない事を除いては、まだ重大局面には至っていないようではありますが、セリダブが陥落したあたりからポクロウシク周辺の都市群の攻略が本格化しそうな感じですね。
    今の全体の戦況を見てみると、チャシブヤールのような強固な要衝でロシア軍を削る事に注力しなかった事が悔やまれるところです。

    13
    • 名無し
    • 2024年 9月 18日

    一部分とはいえロシアが押し返されるとは塹壕掘ってなかったのかな?

    • cosine
    • 2024年 9月 18日

    3日で占領されたと言われているノヴォホロディフカのことでしょうかね?

    3
    • れんちゃ
    • 2024年 9月 18日

    不思議なのは最前線の一部先端でロシア側が優位に推移するのは全然不思議ではない話なのに何故かロシアが素晴らしい働きで打ち破ったみたいなムードになってる所かな。
    使いつぶせる大兵力に数倍する砲爆撃を延々と用いていて、それなのにまだこんなところにいる方が説明が必要な不思議な話なんだけども…そして今すぐにでも撃破されるぞみたいなノリで何カ月も。

    そのもうダメだあっという間に陥落だ今にも陥落ださあ陥落だ!らしい話がなぜこんなに時間かかってるのかの方が軍事的には興味深い話なんだけども。ロシア側もどうなってるんだろうねこれ。実際はどっちもやらかしてたり、奮戦もしてるからこうなってるんだよ。

    7
      • paxai
      • 2024年 9月 18日

      ロシア軍は初期に比べれば向上したもののやっぱり駄目な部分が多すぎるな。
      体格だけの関取みたいな・・・
      ロシア軍はロシア軍自身と戦ってるわ。

      2
    • もじ
    • 2024年 9月 18日

    国単位で物事を考えるとウクライナ西側連合vs中露イラン同盟みたいな単純な話になるのだろうが実際は国を跨いで軍閥・銀行・貿易などが暗躍しており訳が分からん世界だと思う。
    本当の悪人は表舞台には出てこないが必ずぼろ儲けしている。そいつがこの戦争の仕掛け人だろう。
    プーチンやバイデンやゼレンスキーなどはただのマリオネットで思惑通りに任務を遂行しているに過ぎない。
    真実は小説よりも奇なりなんだろう。

    7
    • 匿名11号
    • 2024年 9月 18日

    それにしては、8月20日の記事で「ポクロウスクまで残り10km」から早1カ月たとうとしているわけですからねえ。どこに向けて前進しているのやら。

    2
      • ぱあ
      • 2024年 9月 19日

      常にポクロフスク目掛けて突き進んでるわけじゃないので当たり前である

      22
        • 匿名11号
        • 2024年 9月 19日

        寄り道も1カ月を超えられますとねえ。
        無計画と場当たり的な対応の結果と疑われますな。

    • ふむ
    • 2024年 9月 18日

    ウクライナスクは民間人避難させてるウクライナ側ボランティアとロシア兵が遭遇した動画出回ってましたからね…
    前線構築されてたのかも疑わしいというか、掛けてる時間も殆どクリアリングだけなのでは?

    ここまでウクライナ側の抵抗が弱いと、兵力どこかに集めてそうですがクルスクで全部なのかポクロウシク方面でも粘る気で要塞構築してる場所があるのか

    14
      • 2024年 9月 19日

      その動画はどこで見られるのでしょうか?

        • ふむ
        • 2024年 9月 19日

        自分が見たのは旧Twitterの、恐らく転載動画ですね
        「Ukrainsk volunteer」あたりで検索掛けたら出てくると思います

        Danila Zakharchenkoってウクライナ側ボランティアの人が撮った動画のようなのですが、その人のウクライナ語表記Данила Захарченкоで出てくるのがインスタグラムなんでアカウント持って居ない私にはそこまで見られず
        転載元の一次ソースまで辿れなくて半端で申し訳ないですが

        6
          • 2024年 9月 19日

          いえいえ!詳しく教えていただきありがとうございます。

            • ふむ
            • 2024年 9月 19日

            動画見付かったなら何よりです

            1
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