ウクライナ戦況

ロシア軍がクルスク方面で前進、東部・南部戦線を含めた動きは非常に低調

ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは28日「クルスク方面でロシア軍がスジャ検問所を占領した」と報告、ウクライナ人が運営するDEEP STATEも29日「ロシア軍がスジャ検問所方向に前進した」と報告したものの、ウクライナ東部・南部を含めた前線の動きは非常に低調だ。

参考:Мапу оновлено

DEEP STATEとRYBARの報告を合わせても東部戦線の目立った変化は毎日から数日に1回へ減少

ロシア人ミルブロガーらはクルスク方面について「スジャ検問所の解放」を主張していたが、RYBARは28日「ロシア軍はスジャ検問所を占領した」「ロシア軍はゴゴレフカを占領した」「ロシア軍はグエボ集落の北地域を占領した」と報告、視覚的にもロシア軍兵士がスジャ検問所の建物=で国旗を掲げる様子が登場。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEも29日「ロシア軍が38K-004の北側地域で支配地域を広げた」「ロシア軍がルバンシチナを占領した」「ロシア軍がメロボイの東で前進した」「ロシア軍がグエボ北の森林地帯で前進した」「ガス測定施設までグレーゾーンが伸びた」「ゴゴレフカの大部分がグレーゾーンに入った」「グエボ北郊外までグレーゾーンが伸びた」と報告。

両者の評価には食い違いがあるものの「ロシア軍支配地域」か「グレーゾーン」の差でしかなく、両者に共通するのは「スジャ検問所方向でウクライナ軍支配地域が後退した」という点だろう。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

スジャ検問所に隣接するガス測定施設の破壊・炎上について双方が「相手の仕業」と主張しているものの、この主張を裏付ける明確な証拠はなく、どちら側にもガス測定施設を破壊して相手の仕業することで得られる政治的利益があるため、どちらかの主張を一方的に信じるのは危険だ。

因みにDEEP STATEはクラホヴェ・ヴェリカノボシルカ方面でもロシア軍の前進を報告しているが、上記に比べればかすり傷程度で、DEEP STATEとRYBARの報告を合わせても東部戦線の動きは「非常に低調=目立った変化は毎日から数日に1回へ減少」と表現するのが妥当だろう。

さらに言えば「前線の変化」が少なくなると「自軍にとって都合のいい部分を切り取った映像による情報戦」が活発化するため、この種の主張(特に相手の損害に関する数字)と付き合うのはほどほどにした方がいい。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ

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コメント

  • コメント (23)

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    • たむごん
    • 2025年 3月 29日

    38K-004沿いに、攻撃映像が大量に出ていますから、ウクライナ軍が維持するのは厳しかったでしょうね。

    ゴゴレフカ~オレシュニャ衛星写真を見ても、村の規模が小さいですから、ウクライナ軍の守備に適したと土地にも見えないですし。

    戦線が長く・泥濘期ですから、4月中旬頃・4月20日(トランプ大統領が言及したイースター停戦)以降どうなっているのかに注目でしょうか。

    22
      • hoge
      • 2025年 3月 29日

      > 38K-004沿いに、攻撃映像が大量に出ていますから、ウクライナ軍が維持するのは厳しかったでしょうね。

      昨日ロシアとウクライナの間で戦死者の遺体交換が行われましたが
      ロシア兵43に対してウクライナ兵は909で
      交換比率は1:21.1となり、遂に20倍の大台を突破しました

      なお、2022年2月以降の紛争全期間を通じての比率は1:6.3
      22年2月から24年8月クルスク侵攻前の期間は1:3.7でしたから、急激に悪化しています
      なおクルスク前の2年半の間に返還された遺体の総数よりも
      クルスク後の直近8ヶ月に返還された遺体は170%多いです
      (同指標でロシアは40%減少)

      太平洋戦争末期の帝国軍と同じ傾向を示している可能性がありますね

      31
        • たむごん
        • 2025年 3月 30日

        情報ありがとうございます、勉強になります。
        攻撃側は、遺体を収容するという見方もありますが、そうだとしても絶対数の拡大・比率の格差は気になる数字ですね。

        自分が別件で気になっているのは、外国人義勇兵も過酷な前線に送られているという指摘ですね。
        外国人義勇兵から待遇についての情報がでていましたが、かなり余裕なく過酷な戦場であると感じています。

        外国人義勇兵=ウクライナ兵、どちらも過酷な環境で戦っていると仮定すれば、前線の雰囲気として参考になるかなと感じています(下記指摘の半年間が、大体クルスク侵攻開始8月頃になります)。

        >キーウ(CNN) ウクライナの前線では、20人を超える米国人が作戦行動中に行方不明となっている。過去6カ月間で戦闘による死傷者は急増。自国の防衛に苦慮するウクライナの人員不足を外国人が緊急的に埋めている構図が、CNNによる調査で明らかになった。

        >CNNが調べたところ、ウクライナ軍に加入した米国人義勇兵少なくとも5人の遺体が戦場から収容できていないことが分かった。5人はこの6カ月間の戦闘で死亡した。このうち2人は先月24日、長い交渉の後でロシアの占領地域からウクライナの領土へと送還された。

        (2025.02.01 ウクライナで死亡する米国人戦闘員が増加、遺体の帰還は複雑な作業に CNN)

        14
      • たむごん
      • 2025年 3月 30日

      追記です。
      クルスク侵攻における、ウクライナ軍の戦略目標成否、両軍の損害についてまとめた分析がありましたので、ご興味のある方がいらっしゃれば。

      (10:20~)武器の損失比較、戦車・装甲車両・対空ミサイルシステム・指揮車輛・MLRS自走砲の損失比較が、興味深かったです。

      (16:20~)ウクライナ軍全体の人的損失のうち、クルスクが占める割合について推定しており、大体毎月20%前後(1月24%、2月25%)と推定。
      (20:24~)全体損失140000人の推定×毎月平均損失23%を換算して、22000~34000の損失と推定しているのも、興味深く感じました。

      ロシア側クルスク損失も、同数程度かもしれないが、火力優位も加味する必要があると言及しています。

      (2025/03/29 Was Ukraine’s Invasion of Russia Worth it? (How Many Losses?) Youtube)

      7
    • 2025年 3月 29日

    >さらに言えば「前線の変化」が少なくなると「自軍にとって都合のいい部分を切り取った映像による情報戦」が活発化するため

    それと面白いのは敵が攻勢を仕掛けるため兵力を増強してるとお互いに主張してるんだよな。
    今までの例からこういう主張の後には何もおきないことが多い。

    12
      • 2025年 3月 29日

      ウクライナがスムィに侵攻準備のロシア軍5万人って話題のあとにクルスク侵攻したよね?

      21
    • 匿名
    • 2025年 3月 29日

    ロシア側はいつものローテ・休息タイムっしょ。あとは現地がそろそろ泥濘の季節になった?

    29
      • Easy
      • 2025年 3月 29日

      出てくる戦果画像に雪がほとんど映らなくなりましたので。
      場所によるでしょうが、もうところどころぐちゃぐちゃの泥濘でしょうね。

      20
        • 頬骨
        • 2025年 3月 30日

        秋の泥濘期にかまわず前進しまくってたロシア軍はバケモンやで。流石にあのタイミングで休息するかと思いきや、春の泥濘期まで突っ走ることを辞めないとは主なんだ。

        8
    • ふむ
    • 2025年 3月 29日

    そういえば欧州人権裁判所が14年のオデッサ焼死事件でのウクライナの不作為に対して責任認定してました
    3/13に判決が出たようなんですけど、相変わらず日本のマスコミは第一報で印象付けした後の追跡報道が疎かというか全然報じてるの見ませんね

    47
      • 朴秀
      • 2025年 3月 29日

      欧州はウクライナのズッ友だと思ったのに…
      本邦のマスコミについては欧米のプロパガンダを垂れ流すだけですから特に何も

      それはそうと写真が格好良いですね
      宗教画っぽくて

      30
        •      
        • 2025年 3月 30日

        どうも、ロシアの行動・プロパガンダが原因で、事件が起きたとのストーリーみたい。
        ウクライナの警察などの不適際を認めたけど、不適切行動が起きた原因については言及せず。
        つまり、ネオナチとか民族主義に関しては、言及していない。

        5
        •    
        • 2025年 3月 30日

        判例を見ていませんが。
        どうも、事件が起きた原因は、ロシアの軍事活動・プロパガンダとしているようです。
        ウクライナの政府の不手際に関しても、不手際の原因には追究せず。

        相変わらず、欧州はウクライナとズッ友ですよ。

        10
        • イーロンマスク
        • 2025年 3月 30日

        親方!空からドローンが!!

        2
    • ゾドムを手に入れかけたゴモラ
    • 2025年 3月 29日

    雪解けで遅くなってるの?それともどちらも疲弊しているの?それともアメリカを立てる為にわざと緩めているの?不思議だな。

    8
      •  
      • 2025年 3月 29日

      報告がないってことは戦闘がないこととイコールではないし、攻撃がないってことも何もしてないこととイコールではないからね

      13
      • らっく
      • 2025年 3月 30日

      北朝鮮兵をシベルシク方面でも使えないか手回しをしているところではないかと想像。クルクスの結果から平地よりも起伏の大きな戦場で活躍することがわかったのであちらで使いたいのでは?チェチェンのアフマトも山岳兵ですが手に余っているようですからね。

      2
    • Mr.R
    • 2025年 3月 29日

    この記事のXを引用して昨日撮影されたスジャ近郊やボルチャンスクの衛星画像を貼りました。参考までにどうぞ。

    3
      • Mr.R
      • 2025年 3月 29日

      追記: ウクライナ軍の防衛ラインについて、@clement_molin氏が3/28に興味深い投稿をしている。衛星画像に基づいてかなり詳細に記載されているので一見の価値あり。

      3
        • たむごん
        • 2025年 3月 29日

        情報ありがとうございます、勉強になります。
        複数の竜の歯・対戦車壕・塹壕線が、非常に興味深い密度になっていますね。

        ポクロウシク周辺~コンスタンチンフカにかけては、特に分厚いように感じます。
        ヴェルカノボシルカ方向の不安定さ、防衛線突破についても指摘されており、この辺りから迂回されるのかも注目でしょうか。。

        防衛兵力・武器弾薬を、どの程度確保できるのかも、1つのポイントになりそうですね。

        7
    • ベルゴロド…
    • 2025年 3月 29日

    まだロシア領内に残ってるウクライナ兵を無事に後退させる為の戦力を全く無関係なベルゴロド方面に使ってしまう愚かさよ。誰とは言わないが、なんとか現地兵がロシア軍を食い止めて、少しばかりスジャ方面が安定しただけなのに、何故ベルゴロドを攻めようと言う話になるのか?

    25
      • 契約者さん
      • 2025年 3月 30日

      政治的にも力のある極右勢力が好き勝手しているだけかと。

      7
    • もへもへ
    • 2025年 3月 30日

    ポクロウシク方面でトラパティ総司令官の改革の成果で効果的な反撃を行い、集落を奪還して戦わず奪われた要塞地帯へのアプローチが可能となった話、結局どうなったのでしょうか。

    最近めっきり聞かなくなったなと思いまして。
    あのままいければポクロウシク方面の片方のロシア突出部を切断出来る可能性があったのに。

    3
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