DEEP STATEは21日夜「ロシア軍がポクロウシク・ディミトロフ方面、ヒルニク・クラホヴォ方面、ヴフレダル方面で前進した」と報告、ロシア軍はヒルニク・クラヒフカに対する囲みを狭め、クラホヴォまで1.5kmの位置に迫り、ヴフレダル方面でも前進を繰り返しボホヤヴレンカに迫っている。
参考:Мапу оновлено!
参考:Донецкое направление: бои у Максимильяновки и в Зоряном, освобождение Желанного Второго обстановка к исходу дня 21 октября 2024 года
参考:Цель — Курахово, удары украинских БЛА по России, наступление в ДНР — сводка за 20 октября
ロシア軍を押し戻すための反撃がなければヴフレダルと同じ運命に行き着くだろう
DEEP STATEはポクロウシク・ディミトロフ方面について「ロシア軍がリシフカ集落内に侵入した」と報告、RYBARはセリダブ北市内まで伸びていたロシア軍支配範囲を10月2日に下方修正し「ロシア軍はコロチェンカ炭鉱のテリコンを占領していない」と評価を変更していたが、再び下方修正して「ロシア軍支配地域はソロナ川沿いにセリダブ市内へ到達しない」と評価を変更した。
視覚的にもウクライナ軍がコロチェンカ炭鉱のテリコン付近=ⒶⒷでロシア軍を攻撃する様子が登場しており、DEEP STATEとRYBARのセリダブ方向に関する評価は南郊外を除きほぼ一致した格好だ。
Kyiv Independentの9月18日付の記事に登場していたカラダグ旅団の兵士は「我々の任務は敵部隊が動き出す前に砲弾の雨を降らすことだ」「敵はミハイリフカに集結してセリダブへの攻撃を試みているが、ここ2週間は全く前進できておらず、ミハイリフカ集落は敵兵士の死体でいっぱいだ」と述べていたが、視覚的にもロシア軍の前進は全てセリダブとミハイリフカの間のダーチャで阻止されており、この方向でウクライナ軍が優勢に戦えているのはコロチェンカ炭鉱のテリコン=高さの優位性を維持しているからかもしれない。
戦場における高さの優位性は視覚的な認識力だけでなく、FPVドローンやEWシステムの運用範囲を拡張することができ、ヴフレダルがロシア軍の大規模攻勢を2度も退けることができたのは「数的優位のみを頼りにパヴリフカからヴフレダルに突破するという単純な戦術」に加え、ヴフレダル市内のアパート群、ピヴデンノドンバスカ第1炭鉱・第3炭鉱のテリコンが比較的平坦な地形の中で「突出した高さの優位性」をウクライナ軍にもたらしていたためだ。
ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏はヴフレダルについて「ウクライナ軍が南ドネツクを制圧する上で有利な位置にあり、圧倒的な高さ、密集した建造物、無人機運用にとって最高の電波到達範囲、あらゆる兵器の射撃位置を提供する極めて重要な場所だった」と指摘したことがあり、ロシア軍がセリダブを攻略するにはヴフレダルと同じにように両翼から圧力を加える必要がある。
ウクライナ軍は敵両翼の動きを抑え続ければセリダブを保持し続けられるものの、消耗した戦力や弾薬を補充し続けなければ均衡が崩れるため、ロシア軍を押し戻すための反撃がなければヴフレダルと同じ運命に行き着くだろう。
DEEP STATEはヒルニク・クラホヴォ方面について「ロシア軍がマクシミヤ二フカからクラホヴォ方向に前進した」「ロシア軍が刑務所の南郊外まで前進した」と、RYBARも「ロシア軍がゾリアン集落内や周辺で支配地域を広げた」「ロシア軍がマクシミヤ二フカ南郊外で支配地域を広げた」と報告。
視覚的にもロシア軍兵士がゾリアン集落内=Ⓐで国旗を掲げる様子、ロシア軍兵士がマクシミヤ二フカとクラホヴォの川沿いにあるダーチャ=Ⓑで国旗を掲げる様子が登場、前者はRYBARの報告を、後者はDEEP STATEの報告が事実であると裏付けている。
ヒルニクへのアプローチは正面と側面から行われているためセリダブよりも状況が悪く、西郊外の開口部を閉じる動きが出てくればヒルニクとクラヒフカの陥落も現実味を帯びてくるが、クラヒフカ西郊外には圧倒的な高さ(100m級)をもつテリコンが複数あるため、ロシア軍もヒルニク西郊外からカホフカ貯水池まで南下するのは難しいかもしれない。
DEEP STATEはヴフレダル方面について「ロシア軍がカテリ二フカ南郊外で支配地域を広げた」と、RYBARも「ロシア軍が第3炭鉱換気用立坑付近からボホヤヴレンカ方向に前進した」「ロシア軍がヴフレダル付近からボホヤヴレンカ方向に前進した」と報告、視覚的にはウクライナ軍がカテリ二フカ集落内=ⒶⒷでロシア軍を攻撃する様子が登場。
RYBARの報告が事実ならロシア軍はボホヤヴレンカ郊外から約2km離れた地点に到達しており、カテリ二フカとヴォディアンの間をどんどん西に前進してエリザベティフカにも手が届く位置までやって来ている。
現地で泥濘期が到来しているのかどうかは不明だが、昨年のアウディーイウカに対する攻勢も10月中旬に始まって陥落まで止まることが無かったため、泥濘期になれば攻勢が止まると期待するのは間違っているのかもしれない。
関連記事:侵攻970日目、ロシア軍は数的有利を活かして複数方面で攻勢を維持
関連記事:クルスク州の戦い、ウクライナ軍の占領地喪失に歯止めがかからない
関連記事:ロシア軍がオスキル川に肉薄、ポクロウシク方面でもヒルニク市内に侵入
関連記事:ウクライナ軍はクピャンスク方面で反撃、ロシア軍はバイク攻撃が成功
関連記事:侵攻967日目、ロシア軍が前進してクラホヴェの一部がグレーゾーンに入る
関連記事:ロシア軍の決定的な成功、チャシブ・ヤール南郊外の防衛ラインを突破
※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України
セリダブが、初めからロシア軍の進入を許してなかったのか、進入されたのを押し戻したのかはわかりませんが、最近ではウクライナに前向きな報告ですね。
クラヒフカ周辺は防衛には有利な地形ですから、包囲さえされなければ長く持ちこたえる事ができるでしょうが、開口部を閉じる動きが激しくなれば、マリウポリみたいな包囲されても降伏するまで戦うか、ブフレダルみたいに完全包囲の前に撤退するか、決断を迫られるでしょう。
問題は、動員も進まず、予備兵力がクルスクでにらめっこしている状況では、“長く持ちこたえること”が弾薬と人的資源の消耗という悪化にしかならないことですね。
2023年の4月頃、バフムートが陥落寸前で粘っているころは、【反転攻勢まで時間を稼ぐことに意味がある】とされていましたが、アウディーイウカやウブレダルは長く持ちこたえたものの、その間にやったことがクルスク作戦では意味がなかった。そもそも「勝利計画」があの曖昧な内容では、何のために戦っているかも意味不明ですし。ここで粘ることの戦略的な価値も曖昧のままです。
クルスクでは包囲されつつある箇所の増援として第47旅団が再投入されたという話もでています
ウクライナ軍はまだクルスクに戦力を投入しようとしており、ドンパスの優先度はクルクスよりも下扱いなのでしょう
いずれにせよ、セリダブ近郊もやがて損耗して撤退する事になるとは思いますが、ご指摘の通り「何のために粘るのか」が曖昧ですね。いついつまでにどれだけの増援が送られて、反撃を行うのでいついつまで防衛せよという話なら理解できるのですが、現状では増援が望めないので
ヒルニクとクラヒフカの状況が、アウディーイウカ陥落時の包囲状態とよく似ている気がする。
高いテリコンがあったり、川があったりで地形的には守りやすいが、既に北・東・南をロシア軍に抑えられ、西側からクラホヴェだけが補給路になるが、こちらもじわじわと削られてる。ウブレダルにしても補給路を完全遮断されてからは1週間も持たずに陥落してしまった。ロシア軍が「都市を落とすノウハウ」をどんどん積んでいってるのに対し、ウクライナ軍は陣地構築が一向に進まず毎回同じような負け方をしている。
ウクライナは、西側諸国からの支援兵器を最大限に活用し、戦況を逆転させるための総合的な反撃作戦を展開する必要があります。まず、HIMARSや長距離砲を使用してロシア軍の補給拠点や指揮所を精密攻撃し、敵の補給線を断つことで前線の進撃を鈍化させます。これにより、ロシア軍の進軍を遅滞させつつ、クラホヴォやヒルニク周辺の高地を防御するウクライナ軍の砲兵部隊が圧倒的な火力を発揮できるようになります。
また、F-16戦闘機やUAVを用いた空中優勢の確保は、地上部隊の動きを支援するために不可欠です。これにより、敵の補給車両や機甲部隊を上空から攻撃し、ロシア軍の兵站をさらに圧迫します。更にNASAMS防空システムなどの最新防空システムの配備によって、ロシア軍のミサイルや航空攻撃から重要拠点を防御し、前線でのウクライナ軍の自由な作戦行動を確保します。
これらの作戦を成功させ、ウクライナ軍の作戦遂行能力をさらに高めるためには、西側諸国の継続的かつ強力な支援が不可欠です。追加の兵器供給や訓練、戦略的な協力体制を強化することで、ウクライナはロシア軍の攻勢を効果的に撃退し、領土を防衛するための決定的な一歩を踏み出すことができます。
それらが2年8か月ほど出来ていないため、現状の悲惨な劣勢となっています。
高校受験に例えれば、3年生の11月まで真面目に勉強せず、テストは悉く赤点の生徒に「こういう風に勉強すれば東大に受かる!」と宣伝しているようなもの。アメリカというあしながおじさんが働かなくても生きていける膨大な小遣いをくれるため、この生徒が真面目に勉強するようになる日は来ないでしょう。
べき論が好きな日本人らしいけど、べき論は戦場では尽く裏切られて来たのに何でww2から学んで無いのだろ。
AIは進歩の過程なので過信するなという注意喚起
Air superiorityを「空中優勢」って翻訳する文章って見たことないんだけど、どういう教師データなんだろう。
翻訳ソフト噛ましてむりやり英文を日本語にしたのかな。
あと「航空優勢」に寄与するようなUAVは未だどこの国でも開発中。UAVで航空優勢を確保するなんて将来の話を現在の話と誤認して学習したのだろうね。
中身を理解してコメントしてるのか?賢くない利用方法の典型みたいなやつだな
両翼包囲しつつ退路に圧力をかけられて、砲爆撃・FPVドローンによる攻撃が続けば、どうしてもジワジワ削られてしまいますからね。
ウクライナ前線歩兵が粘り続けているため、精鋭予備を使って(局地的でも)押し返したい局面ですが、クルスク侵攻で消耗・貼り付けになっているのが手痛く感じます。
紀元前の戦いから、「高所を取った方が有利」はありましたが21世紀になっても、理由の要素は変わっても、原則は変わりませんね。
しかし、写真のドローンの手作り感がものすごくFallout味…。
ただ、補給路を確保しないと確実に負けるという点も同じ
街亭戦いの教訓は深いなぁ……
欧州の軍拡って結局のところ上手くいってるのか?
予算ベースでの相当の増額は認めるけど、持続性と実態はどうなってんの?
英仏独あたりは安全圏だから
軍拡したい人とビジネスはしても
自国の軍拡はやらんと思うけどね
結局、西ウクライナやポーランド
バルト三国あたりが壁役なので
直接火の粉が降りかかるリスクは低いし
平時の軍備は正直、無駄ですから
金持ちケンカせずは普遍の真理
増産はしてますが、戦時経済にはなってないですかね。
西欧・東欧で、対ロシアでは地政学的に差もありすから、仕方ないかなあと。
欧州が荒らした国の移民だらけの現状で出来るとはとても思えんね
現場猫のヨシ!の例えが、私には物凄くしっくりきました。
セリダブに直接攻め込むのが難しいからリシフカ方面からE50と鉄道を使った兵站に圧力かけるのかな
先日ムイコラフカを落としたのもディミトロフのウクライナ軍の意識をそっちに引っ張る布石だったのかも
まあ当面はヒルニクへのアプローチが最優先になりそうだけど
判り易くウィットに富んでいる良い文章だと思います
内容自体にも強く同意
ドネツク方面は、まずクラホヴェが落ちたら、次はポクロウシクで、最後はスラビャンスクですね。
ドネツク方面もそうですが、今、ウクライナ軍はあちこちで包囲されていますね。あちこちで。逆を言えば、ウクライナ軍は早めの戦略的撤退を許していないということです。
例えば、ウグレダールの第72旅団もギリギリで脱出できたというのだが本当だろうか、どれくらいの戦力が残っているのだろうか。脱出を支援したと言われる防衛旅団はどうなったのだろうか。
ウクライナ軍側に兵士の数の優勢は失くなったと思うのですが、まだウクライナ軍は、兵士の数と命に頼った戦い方を続けていますね。
そして、ウクライナ軍のベテランの将校や兵士たちは今となっても、かなり粘り強く戦っています。この軍隊文化は、さすがウクライナ陸軍てすね。陸軍大国ですね。
日本のメディアは全く報道しないけど、今ロシアのカザンでBRICSの首脳会談かあり、約20カ国の首脳が参加してる。オースティン国務長官のキエフ訪問は、国際的地位を回復しつつあるロシアへの牽制という意味合いがあると思う。首脳会談では、米ドルに依存しない国際決裁システムの交渉とか、中印国境紛争の停戦とか、パレスチナの招待とか、盛りだくさんだからね。
テリコンって木が沢山生えた自然の丘を想像してましたがボタ山みたいな物なんですね
塹壕とかを掘ったら崩れ、トンネルは夢のまた夢みたいな地質っぽい