ウクライナ戦況

侵攻978日目、オスキル川に到達したロシア軍が南北に前進を開始

DEEP STATEとRYBARは28日夜「ロシア軍がクピャンスク方面、トレツク市内、ポクロウシク方面、ヴフレダル方面で前進した」と報告、オスキル川に到達したロシア軍は南北に前進を開始し始めており、ヴフレダル方面ではボホヤヴレンカとシャフタールが陥落寸前だ。

参考:Мапу оновлено!
参考:Александро-Калиновское направление: бои в Дзержинске и взлом линии обороны ВСУ к западу от Новгородского обстановка по состоянию на 18:00 28 октября 2024 года 
参考:Купянско-Сватовское направление: освобождение большей части Кругляковки и бои в районе Песчаного обстановка по состоянию на 14:00 28 октября 2024 года 

トレツク市内のザバルカ地区に関する状況は謎に包まれている

RYBARはクピャンスク方面オスキル川沿いについて「ロシア軍がピシャナ川を渡ってコリズ二キフカに侵入した」「ロシア軍がザフリゾヴェ方向に前進した」と報告、視覚的にもウクライナ軍がコリズ二キフカ=に侵入したロシア軍を攻撃する様子、ウクライナ軍がP-79への合流ポイント付近=でロシア軍を攻撃する様子が登場。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

オスキル川に到達したロシア軍は川沿いに南北へ前進し始めており、まだクピャンスク市(のオスキル川東岸にある地区)を脅かすほどではないものの、この事態を好転させるような明るい話題もない。

RYBARはトレツク市内について「ロシア軍がトレツク市内で支配地域を広げた」と報告、さらに「ザバルカ地区では緊張状態が続いている」「敵はシャフタリブ通りの北で反撃を開始した」と説明してザバルカ地区のロシア軍支配地域を縮小し、この反撃を撃退する攻撃例としてロシア軍がザバルカ地区=でウクライナ軍のM113を破壊する様子を挙げ、少ないない観測者が「ウクライナ軍の反撃でザバルカ地区の前線位置が後退した」と報告しているが、これを鵜呑みにしていいかどうかは本当に謎だ。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

この戦争の戦況マップを提供する観測者は大まかに公式発表と視覚的証拠を組み合わせる立場、視覚的証拠が登場した地点を繋ぐだけの立場、現地の部隊や兵士から提供される情報と視覚的証拠を組み合わせる立場の3つに分けられ、戦争初期に多くの人から支持されたMilitaryLandは1番目の立場で「最も手堅い評価方法」と言えるが、公式発表が前線の動きについていけなくなり、他の立場の戦況マップとのギャップが大きいという欠点がある。

現在は2番目と3番目の立場の戦況マップが主流で、視覚的証拠のみをリンクさせた戦況マップは前線の動きがダイナミックだが、この立場は「交戦が発生したことを示す視覚的証拠の登場地点を繋ぐだけ」「その地点を安定的に保持しているかどうかを考慮なしに繋ぐだけ」という手法なので前線位置が過剰評価になりやすく、この立場の進化系が「登場した視覚的証拠」と「あらゆるミルブロガーの主張」を直ぐ反映する立場の戦況マップで、この立場の「◯◯が反撃した」は「過剰評価した前線位置」を修正するため方便である場合が多い。

出典:DEEP STATE/RYBAR

現地の部隊や兵士から提供される情報と視覚的証拠を組み合わせる立場も「交戦国の人間(もしくは組織)が運営しているため何らかの意図が介入する」という欠点があるものの、2番目の立場に比べれば「なぜそうなったのか」について具体的な説明や根拠を挙げるため、ウクライナ側とロシア側のものを比較すれば「一致した部分が最も信憑性が高い」「大きく食い違う部分には何か問題がある」と確認でき、現在の航空万能論では「DEEP STATEのRYBARの報告」と「裏付けるとなる視覚的証拠(管理人が見つけられる範囲)」を組み合わせを採用している。

RYBARは10月上旬に登場した視覚的証拠=ウクライナ軍がザバルカ地区=ⓐⓑでロシア軍を攻撃する様子に基づき「ロシア軍がザバルカ地区の西部分に足場を築いている」「その先端はジェルジンスキー鉱山のテリコンに迫っている」と主張しているが、この地点に侵入してきたロシア軍が南方向から来たのか、ナハリフカ地区から来たのか不明で、新たな視覚的証拠も登場しないため「現在もロシア軍がⓐⓑを保持しているのか」という点には疑問が生じるしかない。

DEEP STATEとRYBARは「ロシア軍がナハリフカ地区を支配している」という評価で一致しているため、仮にロシア軍がⓐⓑを保持してザバルカ地区の西部分を支配しているなら、残りのザバルカ地区や郊外の森林地帯からウクライナ軍が撤退しても不思議ではないのに、ザバルカ地区の東部分ではウクライナ軍の存在を示す視覚的証拠=が出回り始めている。

そもそもDEEP STATEはRYBARが主張するザバルカ地区の評価を認めておらず、ここまで食い違う状況が長く続くのも珍しく、管理人は「ウクライナ軍の反撃でザバルカ地区の前線位置が後退したのではなく、元からロシア軍が支配的ではなかっただけ」と予想しているが、戦場を直接見てきた訳では無いので断言は出来ない。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

DEEP STATEはポクロウシク・ヒルニク・クラホヴォ方面について「ヴィシュネヴェがグレーゾーンに収まった」「ロシア軍がノヴォセリディフカに侵入した」「ロシア軍がゾリアン近郊で前進した」「ロシア軍がオレクサンドロピル近郊で前進した」「ロシア軍がホレストを占領した」と報告。

DEEP STATEはクラホヴォ・ヴフレダル方面について「ロシア軍がカテリ二フカ集落と周辺で前進した」「ロシア軍がボホヤヴレンカ集落の大半を占領した」「ロシア軍がO-0510に到達した」「ロシア軍がノボウクラインカ集落内で支配地域を広げた」と報告、視覚的にもウクライナ軍がカテリ二フカ郊外=でロシア軍を攻撃する様子、ロシア軍兵士がシャフタール周辺からO-0510=を支配していることを示す様子が登場。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

もうボホヤヴレンカ、ノボウクラインカ、シャフタールのうち2拠点は失われている可能性が高いものの、ウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は「ここにロシア軍を長く拘束するのは不可能だ」「敵がヴフレダルを支配している以上、この戦場における高さの優位性はロシア軍にある」「敵の方がドローンを使用した作戦で優位なためウクライナ軍は採算が合わない」「そのため当該地域から撤退するのは正当だ」と述べている。

関連記事:ウクライナ人ジャーナリスト、政府の防衛ライン建設に関する説明は全て嘘
関連記事:ロシア軍がポクロウシク方面でヒルニクを占領、セリダブも陥落寸前
関連記事:ヴフレダル方面の戦い、ロシア軍はボホヤヴレンカ集落を2日で制圧か
関連記事:侵攻977日目、ロシア軍が南からクラホヴォ方向に大きな前進を遂げる
関連記事:ロシア国防省がセレブリャンカ解放を発表、RYBARは到底不可能と指摘
関連記事:ポクロウシク方面の戦い、ロシア軍兵士がヒルニク中心部で軍旗を掲げる

 

※アイキャッチ画像の出典:24 ОМБр імені короля Данила

ウクライナ人ジャーナリスト、政府の防衛ライン建設に関する説明は全て嘘前のページ

クロアチアとドイツ、ウクライナへの装備移転とLeopard2A8値引きで合意次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍によるHIMARSの攻撃、ヘルソン郊外の弾薬庫が大爆発

    ウクライナ軍のHIMARSを使用した攻撃が連日続いており、ヘルソン州で…

  2. ウクライナ戦況

    リシチャンシク接近を阻んできた防衛ラインをロシア軍が突破?

    ウクライナ軍とロシア軍がセベロドネツクを巡って激しい戦いを演じているが…

  3. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍司令官、泥濘期が訪れても歩兵中心の攻勢に大きな影響はない

    ゼレンスキー大統領は「反攻作戦の手を緩めるつもりはない」と述べて冬季攻…

  4. ウクライナ戦況

    ロシア軍に包囲されつつあるリシチャンシク、補給路維持も限界か

    ロシア軍はウクライナ軍が抵抗を続けるリシチャンシクを側面から包囲しつつ…

  5. ウクライナ戦況

    ウクライナ軍がオスキル川を渡河したと認め、東岸地域を制圧中と主張

    ゼレンスキー大統領は現在の状況について「次の反撃に向けた準備段階だ」と…

  6. ウクライナ戦況

    ロシア軍がクルスクとクラホヴェで拠点を占領、クラホヴェ包囲への動き

    DEEP STATEは19日夜「ロシア軍がクルスク方面とクラホヴェ方面…

コメント

    • たむごん
    • 2024年 10月 29日

    クピャンスク方面オスキル川から南北に進んでいけば、ロシア軍は東から西へ、前線を押し上げやすくなります。

    ロシア軍が、クルリャフカから南北に前線を押し上げていますが、兵力・武器弾薬の補給を確保できているのが前線の動きに現れている事が重要でしょうね。

    ウクライナ軍は、ヴフレダル陥落後の南ドネツクただひたすらに苦しいため損耗を押さえたいところですが…。今のやり方では、削られすぎて今後に支障がでないのか懸念しています。

    23
    •  
    • 2024年 10月 29日

    ブフレダールを落としてから堰を切ったように南方から進撃してますね。よっぽど機能してる要塞だったんでしょうな。撤退する時「ブフレダールは実は大して戦略的価値ないんだよねw」みたいな捨て台詞はいて逃げましたけど。

    62
    • 理想はこの翼では届かない
    • 2024年 10月 29日

    オスキル川に沿った街にいるウクライナ軍はクピャンスク方面に撤退するか徹底抗戦するしか無いでしょうけど、クピャンスクを圧迫されたら逃げ道が無くなってしまいます
    最悪、川を泳いで人は逃げれますが兵器・物資は全て破棄する事になりますね
    増援入れて押し返すか、全面撤退するか早めに決断しないとどえらい事になりそう

    27
      • かぼ
      • 2024年 10月 29日

      冬季に川を背にして文字通りの背水の陣なんて自殺行為ですもんね
      しかも補給も無ければ負傷者すら後方に送れない
      歩いて撤退していくウクライナ兵には同情してしまいます
      いや、置いていかれるウクライナ負傷兵の方が悲惨かな・・・?

      25
        •     
        • 2024年 10月 29日

        川が凍るまで耐えるんだ。そうすれば逃げやすくなる。

        冗談は置いておいて、どうもウクライナ軍はロシア軍を南北から挟んでいるようだ。
        一歩間違えれば、背水の陣だけど。問題はオスキル川の西側のウクライナ軍が異常に少ない点。
        オスキル川を渡られたら、大ピンチ間違いなし。

        9
    • Easy
    • 2024年 10月 29日

    これはロシア軍が押してるというより、ウクライナ軍が撤退を開始してるんでしょう。このままだと厳冬期に川を背にして孤立して、ロシア軍に殺されたくなければ川に飛び込んで凍死するしかない状況に追い込まれます。
    逆に言うと、ウクライナ対岸からの支援砲撃や支援ドローンの質量が少な過ぎて前線の兵士が頑張れない、ということですね。ヘルソンやハリコフではこんな状態でもかなり頑張りましたから。ここでは頑張るだけの元気が出ない、ということでしょう。

    27
      • 匿名
      • 2024年 10月 29日

      もう単純にヘルソンやハリコフほどの頭数がウクライナ側にいない。

      18
    • 愛国戦線
    • 2024年 10月 29日

    (フェイズA)ロシア軍が要衝に接近すると攻城戦、時には市街地戦に進展し、やがてその要衝は陥落する。
    (フェイズB)拠点を失ったウクライナ軍が撤退することで周辺一帯のポケットをロシア軍が回収し、キロ単位で前線が進む。そして次の要衝が射程圏内に入る···
    昨年夏頃からこのサイクルの繰り返しである。
    この程度の構図も見通せず、フェイズBからAに切り替わる度に「ロシア軍の進軍速度が落ちた!」「息切れ!攻勢限界!」と吹き上がるようでは戦況分析はおぼつかない。

    63
    • 名無し
    • 2024年 10月 29日

    今の高さが重要とはあまり変わらないもんだ

    5
    • 黒丸
    • 2024年 10月 29日

    管理人さんの分析手法についての丁寧な説明と解説、わかりやすいです。
    いつもありがとうございます。

    早く、カタログスペックやしょうもないネタで笑える日が来るといいのですが。

    18
    • ななし
    • 2024年 10月 29日

    クラホヴェ方面のシャフタールのロシア軍、猛烈な勢いで
    北進してますね。まだ距離はあるものの、クラホヴェの
    補給線であるN15幹線道路を背後から遮断するつもりですな

    泥濘期にこれだけ前進できるのは、もうウクライナの抵抗が
    この方面はほとんどないんでしょう。ブトゥソフ氏の言った
    通りウクライナは大幅に撤退していると。このままでは年内に
    クラホヴェは包囲陥落、いやもしかしたら11月中かも

    ロシアはウクライナに新たな防衛陣地を構築させまいと、
    アウディーイウカ同様に猛烈な追撃を行なっているんでしょう。
    ウクライナ軍は採算が合わないとしてズルズル撤退を続けても
    採算の目処はつかない、、どうするのこれ?

    17
    • ろみ
    • 2024年 10月 29日

    ザバルカ地区の状況は最新の視覚的証拠からすればDEEPSTATEの見解の方が現状に即している可能性が高そうです

    ただしDEEPSTATEとRybarの見解が大きく食い違う一方で今の今までロシア軍がザバルカ地区へ一度も進出に成功した事がないとするDEEPSTATEの見解も他の信頼度の高いOSINT複数と食い違っており疑問があります

    個人的にはナハリフカ地区から南西に進撃したロシア軍がザバルカ地区の視覚的証拠の位置に定着に成功したがウクライナ軍の増援により反撃され排除されたという両OSINT以外のOSINTの多数派意見がウクライナ軍の最近の戦力移動(クルスクとトレツクへの増援が多い)と合致してますし事実に近いのかと思います

    つまりザバルカ地区についてはDEEPSTATEとRybarどちらも事実から遠い主張をしている珍しい状況が発生しているのかと思います

    8
    • yamabuki
    • 2024年 10月 29日

    しかし、ロシア軍は決着を急ぐ様子を全く見せませんね…。もう東部を守るウクライナ軍はボロボロだと思いますが、それでも地道に拠点を潰す→ポケットを掃討→再編成して次の拠点を目指すの繰り返し。今までアメリカの戦争ばかり見てきたので「こんなに戦争のやり方が違うのか」というのが正直な感想です。

    51
      • なんとも
      • 2024年 10月 29日

      本当に急がないを徹底していますね。速さより、敵戦力の減滅を狙い、ジリジリと士気を下げてゆく。無理に突出するクルスクのような作戦は受け止めるだけで、防御しながら敵領内を徹底的に叩き、押しつぶす。なるほど、これが陸戦の王道かと思います。

      最近のNATOの口だけぶりはこの怖さを知ったからでしょうね。ポーランドやバルト三国はこれをやられると思ったら、参戦などできないと観念しても不思議ではない。

      4
      • かぼ
      • 2024年 10月 29日

      米軍がアフガンを制圧してたけど実態を見れば地図上では重要ポイントの点と線を押さえているだけで面では制圧出来てなかったですからね
      だから米軍は、イラクではISISを使って、アフガンでは北部同盟を使って支配を強めようとしましたが結局、どちらも失敗となりました

      25
  1. この記事へのトラックバックはありません。

  1. インド太平洋関連

    米英豪が豪州の原潜取得に関する合意を発表、米戦闘システムを採用するAUKUS級を…
  2. 欧州関連

    アルメニア首相、ナゴルノ・カラバフはアゼル領と認識しながら口を噤んだ
  3. 米国関連

    米空軍の2023年調達コスト、F-35Aは1.06億ドル、F-15EXは1.01…
  4. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP