前線に前向きな変化をもたらしてきたドラパティ陸軍司令官は6月1日の責任をとって「辞任する」と表明、ゼレンスキー大統領は「ドラパティ少将を統合軍司令官に任命した」「彼は今後も前線問題に専念していく」と発表し、引き続きホルティツィア作戦・戦略グループの司令官も兼任していく。
参考:Драпатий, який раніше подав рапорт про відставку, залишається у війську
参考:Михайло Драпатий став командувачем обʼєднаних сил
参考:Президент України озвучив нові кадрові призначення у Збройних Силах України
前線に前向きな変化をもたらす契機となったホルティツィア作戦・戦略グループの指揮権は今後もドラパティ少将が保有する格好
長距離攻撃兵器は座標が判明している静止目標の攻撃に適したシステムで、前線から遠く離れた地域の動く目標を攻撃するのに不向きだが、ドローンの登場によって認識力が拡張されるとリアルタイムで動く目標の観測が可能になり、特に分散している攻撃目標が一箇所に長時間留まると酷い目にある確率が高く、これを理解するまでロシア軍は散々な目(特にヘルソン国際空港での大損害)にあったものの、ウクライナ軍も同様のミスを犯して不必要な損害を何度も被ってきた。

出典:Воин DV
2023年11月には前線から約30km後方のザポリージャ州ザリッチネで第128山岳強襲旅団の式典が、2024年9月にもスームィ近郊のベズドリクで部隊が集結したところを、今年3月にはドニプロペトロフスク地域の訓練施設を攻撃され、この3つのミスだけで数百人レベルの死傷者を出ており、ドラパティ陸軍司令官は今年3月の攻撃について「訓練施設での悲劇は敵の攻撃による悲惨な結果だ」「素早い決断、責任、新しい安全基準が欠ければ得るものより失うものの方が大きい」「当事者らは真実を官僚主義の霧の中に隠そうするだろうが私は許さない」「徹底的に調査して責任を取るべき人間の氏名を公表し逃げられないようにする」と述べていた。
それでも6月1日に3月の攻撃とほぼ同じ場所でIskander-Mが着弾して死亡者12人を含む72人以上が死傷者し、ドラパティ陸軍司令官は「訓練の問題を根絶しようと努めたが、まだ悲劇が繰り返されるなら私の取り組みは不十分だったことを意味する」「指揮官が兵士の命に責任を負う軍隊は生き残ることができ、損失に誰も責任を負わない軍隊は内部から滅びるだけだ」「今回の攻撃で犠牲になった若者たちは死ぬではなく、必要な知識を学び、生きて敵と戦うはずだった」と述べて「辞任する」と発表。
ゼレンスキー大統領は「今回のような事件は初めてではない」「イスタンブールから戻った後で軍上層部と協議し必要な措置を講じる」と約束し、前線に前向きな変化をもたらしてきたドラパティ陸軍司令官の処遇に注目が集まっていたが、イスタンブールから戻ってきたゼレンスキー大統領と会談したドラパティ少将は3日「私は大統領に辞任の理由を直接説明して支持された」「大統領は私に戦争全体、前線問題、そして戦いに勝利するという問題に集中するよう提案してきた」「そのため私は最前線に留まり、私が最も力を発揮できる場所に留まる」と発言。
ゼレンスキー大統領も「ドラパティ少将を統合軍司令官に任命した」「彼は今後も前線の問題や戦い方に関する問題に専念していく」「陸軍問題、特に訓練に関する仕事は別の人間が担当することになるだろう」と発表し、多くの将兵から支持されているドラパティ少将が前線の問題から離れないことを約束した。

出典:Сухопутні війська ЗС України
DEEP STATEも「ゼレンスキー大統領が新しい軍の人事を発表した。ドラパティ少将は統合軍司令官に任命され、引き続きホルティツィア作戦・戦略グループの司令官を兼任する」と報告しているため、前線に前向きな変化をもたらす契機となったホルティツィア作戦・戦略グループの指揮権は今後もドラパティ少将が保有する格好で、ウクライナメディアもドラパティ少将が軍を去らないこと、前線の問題に関与し続けること、統合軍司令官に任命されたことを大きく報じている。
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※アイキャッチ画像の出典:Михайло Драпатий
←辞任=予備役編入とか思っていた人
まぁこの有事に有能な人が軍から離れないのは良かった
AMK Mappingだと5月のウクライナの領土喪失(ロシア領のクルスク、ベルゴロド除く)は719.84km²
Deepstateだと439.93km²
いずれにせよ昨年の12月以来の悪い数値ですから、人事変更でテコ入れしたい思惑もあるのかも。
後任の陸軍総司令官や訓練に関する人事にも注目したいです。
そういえば、ロシアも最近アンドレイ・モルドビチョフに陸軍総司令官を変更しました。(こちらの理由は前任の年齢っぽいですが)
二国間の交渉がイスタンブルで再開される中、前線に携わる将軍の人事と戦略は両軍共に今後も変化していくかもしれません。
責任取って辞めるのに別の司令官になるとかもやっとする話。理由が理由だけに納得出来る面はあるが、これじゃやらかした奴が出世するのを批判出来なくなるんじゃないかね?
それだけ評価されていて代わりが効かない人材なのでしょうけど、信賞必罰の観点からはモヤッとする話ではありますね
軍司令が少将って階級低くない?と思って調べたのですが、シルスキー以前は全員大将以上なんですよね。
管区司令も少将みたいですし、やたら将官の階級が細分化されてる東側の軍にしては、違和感を覚えます。
ゼレンスキーとシルスキーの対立を踏まえ、階級を上げないように調整してるんでしょうかね?
ウクライナ式・年功序列じゃないの
まだ44歳でシルスキーやザルジニーより下の世代だし
x44→o42
細分化って欧米も同じ様なものじゃないの?
日本だけが何のトラウマか知らないけど、将と将補にまとめているだけでしょう。
ポクロウシク周辺、特に東方。
クラホヴェからの西進、ヴェルカノボシルカからの北進・西進の動きが少し気になっています。
今回の人事・戦略爆撃機の破壊などにより、何らかの変化が生まれてくるのか注目したいと思います。
航空基地に負担を増やしたり、後方に下げる効果があるとすれば、滑空誘導爆弾・空対地ミサイルの投下数に変化が生じるのかは、1つ分かりやすい指標になるかもしれませんね。
そうですね。
ポクロウシクやコンスタンチノフカが大きく包囲される方向にあります。ロシア軍はゆっくりだけと着実ですね。包囲と補給線の遮断です。それとおっしゃるようにポクロウシクや方面やクラホヴェ方面からの西進ですね。新たな州へ向かうのか?
ウクライナ軍は頑張っているが、兵士不足が最大の問題で動員を強化しているけど兵士の確保が改善できていないですね。現有の兵士のやりくりや転用は戦術的に上手くやっているのですけどね。
ほんと仰る通り、地道にやってるのを感じまして。
主要都市を包み込むような動きと、南部防衛線の後方に向かって西進しているようにも見えますが、どうなるのでしょうかね。
ウクライナ前線歩兵は、自分も奮闘していると思うわけですが、継戦のためにさらなる負担を求めていけるのか難しい課題だなと感じます。