ゼレンスキー大統領は内閣改造に合わせてフェドロフ国防相を解任したが、この決定に怒った市民による抗議デモが現在も続いており、Financial Timesは「国防相解任に対する抗議が拡大したことを受け、ゼレンスキー大統領はシルスキー総司令官の解任を検討中だ」と報じている。
参考:Ukraine’s reforming defence minister is under fire
参考:Zelenskyy considers sacking commander-in-chief as protests swell
参考:‘Changes are definitely coming’ — Ukrainians take to streets for 3rd day of protests over military leadership crisis
参考:Зеленский: говорил с Федоровым и Сырским, решения по армии будут
フェドロフとシルスキーの対立の本質的な要因は柔軟性の欠如だろう
ゼレンスキー大統領は内閣改造に合わせてフェドロフ国防相を解任し、首都キーウの大統領府やイヴァン・フランコ広場では市民による抗議デモが行われ、この動きはウクライナ各地に飛び火して抗議デモは3日目に突入しており、ウクライナ軍の中からも「フェドロフの解任は理解不能だ」「国防相として在職中、職務や国防省の効率性に問題があったのなら今回の内閣改造は理解できるものの、そういった問題は一切ない」とフェドロフを擁護する主張も登場したが、同時にフェドロフ国防相に批判的な主張もある。
今回の解任劇を旧ソ連の軍事文化を色濃く残す軍改革を軸にした「善の改革者=フェドロフ国防相」VS「悪の抵抗者=シルスキー総司令官」と描くパターンが多く、多くの市民も善の改革者を擁護するため抗議デモに参加しているが、この問題は多面的で改革という1面だけで見ていくのは非常に危険だ。
フェドロフは国防相解任を伝える声明の中で「在職中に22の成果を上げた」と主張し、ロシア軍が使用していたスターリンクのアクセス無効化、給与予算の資金を再分配して中距離打撃能力、光ファイバー制御のFPVドローン、低コスト偵察機、地上無人車両、迎撃ドローン、長距離攻撃ドローンに効果的な投資を行ったこと、敵の兵站遮断作戦を開始してクリミア孤立化に着手したこと、前線維持の大部分をドローンで行うドローン・ライン計画に資金供給を続けたこと、調達システムを抜本的に見直して一部の調達に公開入札を導入したこと、不人気ではあるものの極めて重要な軍の改革に着手したことなどを紹介した。
It has been a great honor to serve the Ukrainian people as the Minister of Defense.
Here is what our team managed to achieve:
1. Disabled Starlink access for Russian forces.
2. Took over a Ministry of Defense with zero budget, took a risk, reallocated funds from payroll from… pic.twitter.com/18B5QQaeqL
— Mykhailo Fedorov (@FedorovMykhailo) July 15, 2026
フェドロフ国防相に批判的なウクライナ軍関係者も「フェドロフが実施したドローン調達とデジタル化の改善に対する功績」は認めているものの、最も同情的な批判者でさえ「彼が実行した主要改革は国防相就任以前から進んでいたものをアピール用に再パッケージしたに過ぎない」と、別の批判者も「サッカーに例えるならフェドロフはゴール前で待ち伏せするフォワードのようなもので、本来は集団による努力の賜物であるにもかかわらず他人のアイデアや手柄を横取りしている」と述べ、フェドロフをロバート・マクナマラに例える者までいる。
特にフェドロフが推進したゲーミフィケーション改革については「重要な道路の監視といった地味な任務も重要なのに戦場でのキル(敵の撃破)だけを奨励するものだ」と批判し、別の批判者は「何かを改革するには、その仕組みを理解していなければならない」「もしパイロットがただの店主だと知って本当にその飛行機に乗るだろうか?」と述べ、フェドロフとシルスキーの対立は「善の改革者」VS「悪の抵抗者」ではなく「デジタル技術とコスパを信条にしたシリコンバレー風の戦場を知らない35歳の若者」VS「戦場で作戦を実行する苦労を主張する最新のデジタル技術に疎い50代~60代の軍人」という輪郭が正しいのかもしれない。
本当なら両者の技術と経験が合わさることで効果や改革が最大化されるところだが、両者とも自身の正しさばかりで「適切さ」が欠けており、Financial Timesは「ゼレンスキー大統領がフェドロフを解任したのはシルスキーとの間の溝が深まり収拾がつかなくなったためで、シルスキーだけが現在の地位に留まって軍を指揮していることが抗議活動の標的になっている」「ゼレンスキー大統領は軍の指揮官を招集してシルスキーの代わりとなる候補者と面談する予定だ」「もし全軍の指揮を問題なく引き継げる指揮官が見つかればシルスキーの更迭に応じる構えだ」と報じている。
“ゼレンスキー大統領は記者団に「フェドロフとシルスキーの関係は極度に悪化し、私がいなければ彼らは一緒に座って話し合うこともしない」「私はフェドロフとシルスキーの結束を強く望んでいたが、それは達成できなかった」と語った。フェドロフは木曜日に異例の記者会見を開き、ハルキウやヘルソンでの反転攻勢におけるシルスキーの手腕を評価したものの「シルスキーが国防省改革に向けた取り組みを妨害し、汚職を助長している」「最小限の損失で非対称的に敵を打ち破りたいのであれば、総司令官や参謀総長を交代させる必要がある」「戦争の性質は変化しているのにシルスキーは適応できていない」と批判した”

出典:Helsing
“フェドロフとシルスキーは「いかにして戦争を戦うべきか」について根本的に異なる見解を持っており、フェドロフはドローンや無人化こそが戦争の未来であると考え、シルスキーは歩兵と砲兵を中心とした伝統的な戦術に固執し続けていた。西側パートナーやNATO当局者はフェドロフと緊密に連携し、不透明なウクライナ国防省における彼の改革案を支持していた”
これはフェドロフとシルスキーのどちらが正しいのかではなく、ドローンや無人化技術は伝統的な歩兵や砲兵と競合関係ではなく補完関係にあり、国防省改革がどれだけ正しくても現実的な適切さが欠けていれば対立を激化させるだけで、今回の対立の本質的な要因は柔軟性の欠如だろう。そしてゼレンスキー大統領は国民の怒りを鎮めるためにシルスキーを解任する可能性が高く、この決断も軍事的合理性からではなく政治的要求によるものであり軍事的実益に乏しい。

出典:Генеральний штаб ЗСУ
ちなみに「シルスキーは歩兵と砲兵を中心とした伝統的な戦術に固執し続けていた」と書かれるのは、フェドロフが率いた国防省がドローン調達に多くの資金を割り当てるため、軍がミサイルと弾薬の調達に不満を述べたためで、シルスキーが「ドローンや無人化技術中心の戦い方から歩兵と砲兵を中心とした伝統的な戦い方に戻そうした」という話ではない。
追記:ゼレンスキー大統領は18日「フェドロフと長時間話し合った。シルスキーとも話をした。もちろん人々の意見は耳に届いている。軍に関する決定は今後下される」と述べ、シルスキーの解任は避けられないだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:President of Ukraine





















この問題はどっちに転んでもウクライナに取ってマイナスになりそうですね
Kyiv Independentの最新の記事によれば軍内部にはシルスキーの解任を求める指揮官がいる一方で海軍や空挺強襲軍の司令官はシルスキーを支持、本当に解任してしまうと下手をすれば軍が内部分裂する可能性すらありますね。
とはいえ解任を撤回すればフェドロフ支持に傾いているウクライナの世論が納得するとは思えません。
シルスキーが残留したら軍事面では良くても国民感情や組織統制にはだいぶマイナスになりそうだから現状では最悪は回避した判断だと思う。
ここまで拗れた以上双方とも続投は困難だろうし、2人抜きでどう建て直すかが肝。
喧嘩両成敗は両者(の派閥)の遺恨をトータルで最小限にする方法ですからね。
まあ、この種のマイナスは戦争を続けている国においては有りがち且つ不可避なものだから、
戦局に与える影響としてはマイナスの存否より、どちらがそのマイナスを抑えていき続けるかでしょうなあ。
軍の下の方で燻ってる、軍内の事情を承知しつつそれでも軍の近代化を訴えてる層が上に上がってくるならプラスにはなるんじゃないかね。
残る問題はあと半年で動員解除を含む兵士の待遇改善が本当に可能かというところですね。
他の改革も重要ですが、兵士を含む有権者からの注目度や、議会や有権者に対して譲歩せざるを得ない(加えて政治的立場を補強するために民族主義や政敵への攻撃に頼る)場面が徐々に増えている政権の現状を考慮すると、かつての動員法改正時のようなことが起きた際に生じる政治的混乱の規模は計り知れないでしょうから。
順調な組織も、逆境の組織も人事問題が定期的に足を引っ張るのは世の常。ゼレンスキーは傷だらけになりながらも、よく運営できていると思います
シルスキーもここまで長期でやれば替え時かなと
ザルジニー世代やその下も育ってるだろうし
この戦争におけるウクライナの最大の強みはドローンでもなく欧州からの支援でもなく、この4年間折れなかった民意ですからね。これに綻びが出るようだと戦争そのものの行方を左右しかねないので、この処置は致し方ないですかね。
ロシアは責任者変わりすぎてて
今は誰?
プーチン
国防相はショイグ→ベロウソフ
参謀総長は相変わらずゲラシモフ
別に変わりすぎとも思えませんがね。
眼前の脅威である中国軍トップの消息より
シルスキーに興味とか
荒,らしはコメントすんな
ザルジニーの解任劇の時もザルジニーの功績を下ろしてシルスキーが指揮したキエフ防衛とハリコフ反攻ばかり持ち上げる様子が見られたと思いますがその逆の事が起きてますね。
そして純粋な問題としてザルジニーもシルスキーもロシア侵攻前からウクライナ全軍を率いた唯一無二の経験者だったとされているのに両方とも解任されてしまうとなると後任は、全軍を率いるのが初めてとなる人物しかありえなくなってしまうのですが本当にどうするんでしょうか?
>シルスキーが「ドローンや無人化技術中心の戦い方から歩兵と砲兵を中心とした伝統的な戦い方に戻そうした」という話ではない。
記事からも重要な部分引用しましたが、シルスキー司令官はキエフ防衛やハルキウ奪還の貢献だけでなく、戦場へのドローンの適用も柔軟な印象があったのでかなり驚いてます。
秋冬にかけてロシアの更なる動員が予測される中で、旧来の軍構造にも精通しており、問題となっている兵役逃れへの対応するのはシルスキー司令官かなと思ってました。
ゼレンスキー大統領が軍司令官達と会談を持ってるのも今後の展望含め調整が難しくなりそうです。
ドローン活用の上手いドラパティ司令官が挙げられていますが、今後のロシアへの攻勢に対する体制作りもあるのでまだ確定はしてないですね。、
政治からいろいろ聞こえるのが民主国家の証よね
中国はどれだけ将軍消えても一切不明であり
そんな中国に必死に投資して
ミサイル向けられてる日本
所詮は民主国家での争いだから外に見えてて
外野のこちらもアレコレ言える
外からはまったく争いの形跡は見えず
大量の将官や高官が消えていくだけの中国ほど怖いものは無い
しつこい
いい加減にしろ
関係ない話題から強引に自分のお気持ち表明に持っていく、その厚顔無恥な態度やめろ
本土決戦、総力戦の最中なのになあと…。
巨大組織あるあるですが、何のメリットもないので、早く終わればいいですね。
追記です。
ロシアの通販大手、ワイルドベリーズの倉庫に、無人機攻撃がヒットしたようです。
売上高1兆円以上の会社ですから、今後も攻撃され続ければ、ロシア人の生活に直接的な影響がでそうですね。
民意を無視すれば戦闘の継続すら出来ないから仕方ないんですけど、ポーランド人虐殺したUPAの件で一部の民族主義者向けなのやってポーランドと関係悪化したりしたし、抗議が拡大したからとこうなってるの考えたらポピュリストって印象が強いですが。
ポーランドに関しては、(他の話題を含めて)ほんと余計な事でしたよね。
ウクライナ戦争前から、ポーランド=ウクライナ外交関係・国民感情が悪い中で、ポーランドが大人の対応で寛大な支援したわけですからね。
ウクライナが、(大恩のある)ポーランドにどういった対応をしているのかは、日本を含めて他国は見ているでしょうし。
ポーランドは過去の歴史やら色々あってウクライナ嫌いだけどそれを棚上げし軍事支援して百万以上のウクライナ難民も受け入れ、国際社会でもかなりの面でウクライナを支えてきたのに恩を仇で返すような仕打ちですからね。
ウクライナでのUPA英雄化はポーランドは受け入れられないし、国民も反ウクライナ感情が高まったりポーランドでの民族主義者も暴れる切っ掛けになるでしょうし。
まあ、ウクライナも今更撤回したら民族主義者が暴れるだろうから難しそうなんですよね。
他国支援の事例として、非常に興味深いですよね。
戦時中の極限状態で、人道的・物的支援をしたところで、国民感情の改善は別問題だなあと学べました。
日本目線で言えば、日本の他国支援はATM(何れ見返りが得られる)の考えは捨てて、『見返りをさっさと要求する』これが大事だなと感じています。
違う国なんだからそう同じ見解を求めること自体に問題があるのでは
それに人道的・物的な支援なんて見返りを求めることなく「自分の正しさ」のためにやってこそでしょ
だいたい見返り前提なんて、震災やらがあるたび支援を受けてる日本が言えた口じゃないでしょ
震災で韓国に支援されたら竹島諦めないといけない? 李承晩をあがめなければいけないのか?違うでしょ
「見返りが見込めるかどうか」で選別する、そんな世界は今よりまっくらじゃないか
もう日本に、過去の栄光(余裕)はありません。
OECD諸国で見ても、1人当たりGDP中位~下位にまで転落したのが現実です。
海外への低利支援(与信コスト負担)は、身の丈に合ったものに大幅縮小して。
自国の成長を、まず優先して考えて、再浮上してから海外支援を考えるのが現実的だと思いますよ。
まぁ、ウクライナ支援等は過去に支援したものが返済で返ってきたものを右から左へ回してるだけらしいから別にいいのでは
(過去の)ゼロ金利・低金利の時代ならば、それも理解できます。
アメリカ10年債金利4.5%(!)、リスクフリーレートでこれですから、あまりにも金利が大きいんですよね。
現実主義的に考えれば、そのような理想論的考えは綺麗事に見えます。
日本の仮想敵国の中国もロシアも北朝鮮も
参謀総長とか知らないのに
なぜかシルスキーは知ってる
やはり自分のこと忘れて他人事のウクライナを語るのは楽
どんな意見を書こうが自由ですが、誤送信でもないのに同じ内容を連投は荒らしのムーブとAIでも判定しますよ。
「この記事興味ない」で伝わります
で、興味ないならコメントすんな
ザルジニーを復職させてシルスキーを外交部に転出
フェドロフは情報相の類に任命して国防大臣の席はフェドロフの片腕を起用する感じになるのかな
今年軍功挙げて少将に昇進して軍司令官になった人がいるからその人にシルスキーの後釜になってもらうのも手か
他人事ながらゼレンスキーも大変だなぁ。よくまぁ体力とメンタルがもつよな
総司令官が代わるとなれば、後任はドラパティ氏とかあるでしょうか?
前線の叩き上げで戦線を安定化させたとウクライナ兵士、国民から高く知られていて、またフェドロフ氏解任に意義を申し立てた改革派寄りとも聞きました。
無論、最も大変だった時期に軍をまとめ上げ、ここまでウクライナ軍がドローン軍になる変革期に立ち会ったシルスキー総司令官のを支持する人々も少なくないでしょう。実際、現場知らずの改革派が散々荒らし回ってプロジェクトが止まる、ということはどこの世界でもありますし。
ゼレンスキー大統領の個人的な何々が、、、という本当かプロパガンダかという意見も無いわけではないですが、ここまで拗れた以上、決まった際には「なぜこの人が総司令官になるのか、今後の戦争にはこのような懸念や方針があり、この人ならこういう実績からそれに上手く対処できるだろう」としっかり国民に説明できることが、国民(と支援国)の戦意が重要な総力戦においては特に重要に思えました
これの最大問題って前線の兵士がどう思うかでしかないと思うが、そこら辺はどうする気なんだろ?
終わってみればだけど
改革派として名の知れたザルジニーはその実で西側軍学の導入に固執して部隊運用の非効率化を招き、それに対する抵抗勢力として槍玉に挙げられていたシルスキーは東側軍学への回帰を主導して今日の戦線安定を作ったように思う
有力旅団がリソースを独占して自己PRに明け暮れていた頃は細切れにされた大隊がOSUなりOTUなりの下に派遣されて戦うもので責任の所在が不明瞭になり度々連携ミスからの突破を招いたが、軍団制に移行してからは地区の軍団司令部が零下の旅団をしっかり管轄出来るようになってそのようなことがなくなった
なんというか…ゼレンスキーも大変だなぁと思う
早々に有能な後釜を据えて不要な争いを無くせればいいのだが
正しさより好ましさで判断するのが大衆ってもんだからね
政治家である以上、客観的にどう受け取られるかを意識しないと、戦時中みたいな極限の状況では支持を得られないんだろうね