ロシア国防省は31日「チャシブ・ヤールを解放した」と発表したが、ゼレンスキー大統領やウクライナ軍は「ロシアの主張は嘘だ」と反論し、モニター越しに見守る人間にはチャシブ・ヤール解放が事実なのか、情報戦に過ぎないのか、それとも成功の前借りなのかは判断がつかない。
参考:По Часов Яру
参考:Ворог не окупував Часів Яр, а лише провів чергову акцію “флаговтику” в тилу Сил Оборони
参考:Russia ‘lying again’ about capture of Chasiv Yar, Ukraine claims
参考:Зеленський назвав інформацію про нібито окупацію Часового Яру “російським вкидом”
もしロシア軍の旗立て作戦が事実と証明されると「ロシア軍兵士が国旗や軍旗を掲げたため拠点が占領された」という認識が崩れる
ロシア国防省は31日「チャシブ・ヤールを解放した」「ベロウソフ国防相はチャシブ・ヤールを解放した空挺軍の親衛隊部隊を祝福した」と発表、さらに「チャシブ・ヤール市内の各地で国旗や軍旗を掲げるセレモニー映像」も公開し、視覚的にもロシア軍兵士がチャシブ・ヤール市内ツェーフ2地区のⒶ、ユージネ地区のⒷⒸⒹ、シェフチェンコ地区のⒺⒻで国旗や軍旗を掲げる様子が確認されている。
RYBARを含むロシア人ミルブロガーらも「ロシア軍がチャシブ・ヤールを占領した」と報告したが、ロシア人戦争特派員のアレクサンダー・シモノフ氏は「正確な状況は戦争の霧に包まれている。敵はチャシブ・ヤールから駆逐された可能性が高いものの街全体の支配も確立できていない。敵が市内のグレーゾーンを砲撃と空爆で激しく攻撃しているからで、これを物理的に支配することが出来ない以上「チャシブ・ヤールを解放した」という表現は適切なものだろう。仮に街全体の支配が未完了でもチャシブ・ヤールの奪取はロシア軍によって重要な勝利だ」と指摘。
DEEP STATEも「ロシアが公開したシェフチェンコ地区やツェーフ2地区で旗を掲げる様子は「旗立て作戦」に過ぎない」「この出来事は暗闇の中、雨合羽を着て接触線の後方に侵入し、昼に旗を掲げるという単純な作戦だ」「そのため敵は旗を掲げた地域を制圧していない」「過去2ヶ月間にロシア軍はシェフチェンコ地区へ少しだけ前進した」「それ以上の進展は確認されていない」と報告。

出典:Сухопутні війська ЗС України
ホルティツァ作戦・戦略グループの報道官も「ロシアが再び嘘をついた」「チャシブ・ヤールの状況に大きな変化はない」「これは反論を通じてロシアの嘘を広めるための策略だ」と、ルハンシク作戦・戦術グループの報道官も「ロシア軍兵士が市内で旗を掲げたのは国内向けのパフォーマンスだ」と、ゼレンスキー大統領も「ロシアがチャシブ・ヤールに関する偽情報を流した」と述べている。
ここまでの話を要約すると「ウクライナ軍はチャシブ・ヤール市内の足場を失っている可能性があるものの、ロシア軍もチャシブ・ヤール市内のグレーゾーンを物理的に支配しておらず、ここへ一時的に侵入し旗を掲げチャシブ・ヤール全体を支配しているように見せかけた可能性もあり、これに反論することで『ロシア軍がチャシブ・ヤールを解放した』という情報を広く拡散させようとしている」という意味になり、モニター越しに見守る人間にはチャシブ・ヤール解放が事実なのか、情報戦に過ぎないのか、それとも成功の前借りなのかは判断がつかない。

出典:Минобороны России
ロシア軍がチャシブ・ヤールを支配しているのなら接触線やグレーゾーンがミコライウカ、シェルヴォーン、スタポチキーに向けて移動するだろうし、逆にシェフチェンコ地区、ユージネ地区、ツェーフ2地区で交戦を示す視覚的証拠が登場すれば市内の支配を確立していないことになるため、新たな視覚的証拠を提示できるかどうかが情報空間での戦いを左右しそうだ。
ゼレンスキー大統領やウクライナ軍は「チャシブ・ヤール解放は嘘だ」と発言したため、チャシブ・ヤール解放を裏付ける視覚的証拠、仮に成功の前借りだったとしても事実にしてしまえば「ウクライナが嘘をついている」と主張でき、逆にチャシブ・ヤール解放を否定する視覚的証拠が登場すれば「一時的にグレーゾーンへ侵入して旗を掲げただけ」「トレツクの二の舞い」と揶揄されるようになると思うが、現時点では何も断定的なことは言えない。
因みに「ロシア軍の旗立て作戦が事実」と証明されると「ロシア軍兵士が国旗や軍旗を掲げたため拠点が占領された」という認識が崩れるため、戦場の評価判断に大きな影響をもたらすのは確実だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ






















これまでの占領セレモニーとか見ても大きめの建物の屋上とか広場の真ん中とかでしたよね。
まぁどちらかが嘘を言っているにせよチャシウヤールの運命はもう決したと言って良いと思いますが……
単なる認識の違いでしょうね
ロシアは旗立てまでできるほど、市街地を制圧したが
まだ区画によっては敵兵が残存しており、郊外の敵が
空爆(FPVドローン)を飛ばしまくるし砲撃も加えてくる。
だがしかしこれは「事実上の」解放であると強弁
ウクライナは、まだ市内に我が軍の兵士が残存しており、
市内の敵に郊外から反撃をしている。従って敵は市内の
支配権を「完全」には確立していない、嘘を言っている
立場の違いから双方強弁しているだけで、おっしゃる通り
茶渋の運命は決したのはないでしょうか
約3年前の今頃はウクライナが東部戦線でロシアを崩してクピャンスクやリマン等を奪還し勢いが有りましたが、立て直しに成功したロシアとバフムトや南部攻勢、クルスクで消耗したウクライナ軍にあの頃の勢いをもう一度はもう金輪際無さそうですね。
またチャシブヤールの命運は決したのでウクライナ軍は少しでも戦力を後方に逃がすことに集中するべきではなかろうか。
これは無人地帯をどう解釈するのかという問題でしょうね。
チャシブ・ヤールの映像を見ましたが、長い激戦によりシェフチェンコ地区などでは建造物が完全に破壊しつくされており、廃墟を通り越して遺跡化してます。遮蔽物など全くなく、定着など不可能です。
ロシアから見れば、市の行政区画(周囲の森林地帯は含まれない)から完全にウクライナ兵を追い出したという点で勝利でしょうし、ウクライナから見ればロシア軍の完全な定着(自殺行為であり不可能)がない限り未占領と主張できます。
恐らく近隣の森林地帯の掃討がしばらく続くと思います。
掃討段階に入ればロシア側は制圧と主張し
ウクライナ側はまだ失っていないと主張するのは過去にも見た光景ですね。
自分もそう思います
重要なのはウクライナ軍が取り戻せるか?
だけと思いますので
バフムト、アウディーイウカ、トレツク(ここは何度もロシアが偽情報だしてましたが)、クルスク…いずれにおいてもそうでしたね
今回のチャシフヤールが同じかどうかを判断するのはまだ早いですが、過去の実績という点では全くもってご指摘のとおりかと
守備隊の司令部が市域内に存在しなくなった状態、壊滅するか外部へ撤退するかになれば、そこは制圧されて陥落したと言わざるを得ないでしょう。
組織的抗戦のできなくなった敗残兵がまだ残っていたとしても。
グアム島では、日本の第31軍司令部が1944年8月に壊滅しましたが、横井庄一氏は1972年までゲリラ戦を続けました。
大本営発表で「米軍がグアムを制圧したのは嘘だ」と言うようなものでしょう
ウクライナ大統領やホルティツァ・グループまで反応したんですか、これはウクライナ軍に反撃が命じられそうですね。
ゼレンスキー大統領は当然その様に発言するでしょうが、現地で戦闘中のウクライナ部隊が如何なる判断をしているかは気になります。司令部と兵士でも判断に格差はあるかも知れませんが、当地でのウクライナ軍の今後の行動や士気にどれ位影響があり、実際ウクライナ軍がどんな行動をとるかで、ロシア側の成功の度合いが記事中の三段階の何れかが見えて来そうです。
サムネイルの兵士が担いでる機関銃は何だろ?
かなり古い機種だとは思うけど。
見た感じだけどチェコのVz59軽機関銃かもしれません
Vz.59精密機関銃。ちなみに写っているのは第72独立機械化旅団のウクライナ砲兵。2025年7月撮影。
皆さまがチャシュヴ ヤールと仰っている都市名は、ソビエト時代を通しチャソフ ヤールと発音します。
現地自治体の表記もЧасов Ярでした。
この名詞+名詞の地名で面白いのは、前半部分の名詞Часовが形容詞的な振る舞いをすることです。
例えば前置格だと в Часовом-Яре と変化します。
こういった細かいことが、ロシア語の記事は読めるけど話せない書けないといった現象を引き起こしているのかなと思います。
翻訳アプリもアプリ使ったんだな、ってすぐ分かっちゃう。
怪しいロシア語の記事に騙されないでね! 見分け方はこんなところだよ!
表記ゆれは歴史的にも珍しいことではありませんし、大手外信の日本語版を含む各メディアも今戦争中の人名・都市名等は(場合によっては社内でも記者単位で)様々です。チャシブ/チャシフ/チャソフなど。
学会のような極一部の場を除けば、意図が伝わることと、同じ表記を使うよう要求していないことを満たす限り、あまり気にしない方がよいのではないかと。
ウクライナ語だとЧасів Ярチャシウ・ヤルかな。
連語である事を強調するとチャシウィ・イァルてな感じ。正直好きなのを使えばいいと思う。
チャシウ・ヤル/チャシウ・ヤール/チャシフ・ヤル/チャシフ・ヤール/チャソフ・ヤル/チャソフ・ヤール/チャシブ・ヤル/チャシブ・ヤール/チャシヴ・ヤル/チャシヴ・ヤール/チャスィウ・ヤール/チャシウ・イァル/チャシヴ・イァル/チャソフ・イァル/チャシブ・ヤーリ/チャスィウ・ヤー/チャシュヴ・ヤール…どれでもどうぞ。
часовの発音はチソフを推したいところ…
時がчасチャスで、複数形часыでチスィー!?となり、複数系形容詞になってчасовチソフ?!?!となるのがロシア語
しかし本当はトゥルク語のЧай Су…「静かな水」が地名で、なまってЧасов Ярになったらしく、本来はЧасов自体が形容詞なので変化しないのが正しいらしいです。前置格だとЧасов Яреですね
(このあたりの地名は19世紀の産業革命史で出てくるので読みました。今は壊滅した冶金工場もかの英国出身・ドネツクの工場王ジョン・ヒューズの作ったものだったようです)
書いたつもりで抜けていたので追記
Ярはそのまま渓谷です。チャイスーと呼ばれていたヤールですね。
或いは単に形容詞だからではなく、Яр (названия “Чай Су”)だからЧасов部分が変化しないという説もあるとかなんとか。と調べてみたら議論されてました。
ここの大勢が決している以上
ウクライナが何を言っても、大本営発表にしかならんよ
その体質が自らの首を絞めると分からんのかね……
旗立てが、ウクライナ=ロシア両国民、両軍の士気(加えて、出世のための評価?)にものすごい影響を与えているのかなというのは少し気になります。
チャシブ・ヤール解放が事実ならば、アンテナを立てたり・コンスタンチノフカへの砲撃に影響出たりしそうですから、1週間程度見守りたいですね。
どちらにしても、ロシアが少しずつ前進しているという現状は、変わらないのかなと個人的には考えています。
ミリタリーとしては金城湯池であったクラマトルスク〜コンスタンチノフカの要塞地帯にいよいよ終わりが見えてきたところでありますが……
政治の動きとしては今年の4月にアメリカ-ロシア間での停戦案をまとめたウィトコフ特使が、再び訪露してプーチンと会談するそうです。
皆さんご存知でしょうがざっくり振り返るとウィトコフはトランプの信任篤い人物で、前述の停戦案でもロシアからザポリージャ原発やキンブルン砂州における譲歩を引き出しました。
なお、トランプがメディアへぶち上げた最後通牒を用いた外交ですが、こんなものがロシアに通用しないことは過去の事例を鑑みれば明らかであり、ウィトコフとプーチンの対談こそが停戦に向けた本命の動きと言えます。
記事の内容とは直接は関係ないんですけど、ロシア国旗を立てているところをドローンで撮影したと思われる写真、酷いですね
家は瓦礫の山と化しているのは勿論のこと、一番緑が深い季節なのに地面は黒焦げで雑草すら生えていない
我々がマリウポリでもバフムトでも見てきた「ウクライナの失敗の後送り」です
旗立作戦が出来るって事は雨の夜ならばドローンの監視を潜り抜けて接触線の後方に兵士を潜入させる事が出来るって事ですね
今はただの情報戦に使うだけですが他の使い道がその内見つかりそうですね
無人地帯はウクライナが失った地としてカウントするべきだと思う