ロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「クルスク方面は依然として緊張状態で敵は4つの拠点を維持し、森林地帯に新たな陣地も構築している。ロシア軍のバシフカ攻撃も成功していない」と報告、ベルゴロド西部方面についても「敵が国境沿いの森林地帯に足場を築くことに成功した」と報告した。
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参考:Белгородское направление, обстановка под конец суток
ウクライナ軍にとっては「クルスク占領地からの撤退」よりも「占領地での戦い継続」を選択する方が合理的
RYBARはクルスク方面スジャ方向について18日「国境に近づくほどロシア軍の攻勢ぺースは著しく低下している」「ウクライナ軍はゴゴレフカ付近で状況を安定させることに成功した」「グエボとゴナルの解放に関する一部の報道は現地のデータによって確認がとれていない」と報告。
さらに20日「ベルゴロド西部での攻撃に関連してクルスク方面は依然として緊張状態だ。ロシア軍はスジャ解放に成功したにも関わらず、ウクライナ軍はゴゴレフカ、オレシュニャ、グエボ、ゴナルを維持している。さらに森林地帯に新たな陣地や拠点を築いた。さらにロシア軍のバシフカ攻撃も成功していない。この集落の北側はグレーゾーンで両軍とも足場を築くことが出来ない状態で砲撃を受けている。プーチン大統領が自身をもって『まもなくクルスクは完全に解放されるだろう』と述べたため、敵はクルスク占領地を維持することに集中している」と言及。
RYBARは「ウクライナ軍がクルスク占領地を保持する理由はプーチン大統領の発言を毀損させるため」と考えているようだが、ゲラシモフ参謀総長からスジャ解放の報告を受けたプーチン大統領は「安全地帯の創設検討」を指示したため、ロシア軍は国境で止まらずスームィ州に侵攻してくる可能性が高く、ウクライナ軍にとっては「クルスク占領地からの撤退」よりも「占領地での戦い継続」を選択する方が合理的だ。
RYBARはベルゴロド西部方面について19日「ウクライナ軍がデミドフカ方向とプリレセ方向への攻撃を継続しているが成功していない」「ウクライナ軍の侵入路は特定され組織的な反撃が行われている」と報告したが、20日「ウクライナ軍は国境を突破する試みを続けており、戦術も攻撃方向も変わっていない。敵はプロホディとマリンからデミドフカ方向への突破を試みたがロシア軍によって阻止された。しかしウクライナ軍は国境沿いの森林地帯に足場を築くことに成功した」と報告。
さらに「この地域のロシア軍を孤立させるためウクライナ空軍がグラフォフカの橋を破壊したが、敵はグラフォフカ自体には前進せず国境付近の作戦に集中した」「プリレセ方向の状況はさらに困難で非常に激しい戦闘が続いており、敵はプリレセへのアクセスルート=リプツィ渓谷とカチャニフ・ヤル渓谷を占領した」「ウクライナ軍は攻撃のペースを加速させてグラフォフカのダム到達を目指している」「ロシア軍は敵の攻撃に激しく抵抗しているが戦闘は続いている」「このことは国境地帯に侵入した敵を壊滅させ緩衝地帯を作る必要性を示している」と指摘。
RYBARに匹敵する登録者数を誇るАРХАНГЕЛ СПЕЦНАЗАも「敵はプロホディとマリンからデミドフカ方向への突破を試みたがロシア軍によって阻止されたが、国境付近の森林地帯に兵士を送り込むことに成功し、作戦方針を『デミドフカ方向への突破』ではなく『確保した森林地帯の足場強化』に変更した」と述べており、依然としてベルゴロド西部方面の状況は複雑だ。
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※アイキャッチ画像の出典:93-тя ОМБр Холодний Яр
ワンちゃんがきたということはロシア有利か?
攻め込まれるなら相手の土地で戦えってのは気持ちはわかるが不利な環境で戦うとそれだけ兵の消耗が激しくなると思うのですけどね。
ホットスポットのロシア領とウクライナ領の地形とか諸々検討した上でどちらが戦闘向きかは考えるべきだし、例えウクライナ領で戦うのが良いとしても最悪そこから押し込まれる事態を考えると前線を安易に後退させるべきかは悩ましい選択。
仮に損害低減する為にウクライナ領で戦いそこから後退したとして奪い返すのに兵を投入して結果大量に死にましたなら意味は無いと思うし単純な話ではないと思うけどな。
プーチンにもトランプにも信頼関係などという幻想は何も意味をなしません。ただ、ただ、力と金だけが意味をなします。ゼレンスキーとすれば、黙って従うのは最低の愚策ですので、足掻けるだけ足掻く今の方針は正しいでしょう。
ゼレンスキー個人の保身や政治環境にとっては、そうでしょうが、ウクライナ国民や前線の兵士にとっては正しいかは別の尺度になるでしょうね。日本でも首相の立場と国益は必ずしも一致しないように。
足掻いて死ぬのは兵士だからゼレンスキー的にノーダメですからね
その内、全国民玉砕をスローガンにして突撃して来ますよ
>ウクライナ軍にとっては「クルスク占領地からの撤退」よりも「占領地での戦い継続」を選択する方が合理的だ。
自国領内で防衛戦を実施すると勝てても土地が荒廃してしまうから、敵領土内で戦闘したいは確かに一面からみたら合理的だと思いますが、引き換えに自国領内でのしっかりと準備された防御陣地を捨てて敵地で簡易塹壕のみで火力に勝るロシア軍とやりあうわけだから、相応の損害とくにソフトターゲットたる歩兵の損害を覚悟しないといけないと思います。
今のウクライナ軍に開戦1年くらいにあった歩兵戦力の数の優勢は補充の枯渇からなくなりつつあると思うので、以前と同じ感覚で歩兵を消耗してると後悔する日がすぐやってくると考えますが、そんなことはウクライナ軍上層部も承知でしょうしきっと私のような凡人には理解できない高尚な戦略があるのでしょう。きっとそうだ。
東部戦線見てたら『自国内にしっかりと準備された防御陣地』なんてのが存在するかどうかなんて想像つくのでは?どうせ砲爆撃で焦土にされるなら敵国領土の方がよっぽどマシ
なおドニプロペトロウシク州はウクライナでもっとも汚職がひどく
莫大な予算割当に反して未完成の防御陣地だらけだそうです
ヴェリカノボルシカ方面の地図を見ればベルゴロドで遊んでる場合じゃないと思うのですが
何かしんぼー遠慮があるのでしょう(棒読み)
問題は、「敵国に兵を送って、兵士の損耗と引き換えに敵国の森を焦土にする」というゼレンスキー大統領の大作戦に、嫌がらせ以外の何の価値があるのだろうかと・・・
しかも御大は「動かせる全ての戦力をベルゴロド侵攻へ向けよ」と命じたらしいって噂が出ていて……
フェイクニュースでしょう。
と言いきれないのが何とも。
ゼレンスキーは我々凡人ならやろうと思わない作戦をいくつも実施してきましたからね(成功したとは言っていない)
現状の流れを想像も含めて整理すると、
①キエフ政権は精鋭をクルスクから引き抜き一部を東部へ増援、残る部隊は徐々に撤退し、ロシアが追撃すればグラフォフカにカウンターを食らわせる作戦を採用。
②ロシア側は敵の精鋭が東部に移った段階で、補給路への浸透を実施。クルスク残存部隊は補給と退路を失いかけ、総崩れ発生。
③米露の停戦交渉が進み、ロシア側にも政治的意図が絡まる。プーチン大統領が現場視察、クルスク解放を直接指示。スジャ解放。
④キエフ政権は「プーチンの面子を毀損」させるためにクルスク残留を決定、規定の計画も放棄は出来ず、クルスクの国境を維持したままグラフォフカにも侵攻する『中途半端な二面作戦』状態に。
というところですかね。確かに、大変複雑な状況で、双方の意図がなかなか分かりにくい。
追記です。
ロシアが実際に【越境しての緩衝地帯設置】を軍事的に行うならば、「占領地での戦い継続」はまだましな判断になるかもしれませんが、ウクライナが「占領地継続」に固執するなら、国境停戦外交に切り替えるだけになる。後の先が取れるロシアは後出しで、「不利な占領地継続に執着する意味なんてなかった」と国内から非難される方向へ転換できる。軍事と外交の両軸があり、大統領が最終決定権を握っているロシアは、方針転換できる複数の選択肢を有している。
また、ロシアがクルスクで「自領に引き込んでの敵の消耗させ、反撃」が有効なドクトリンであることを証明しました。ウクライナも同様の方策をスムィ州で取れるはずですがしないのは、ロシアのように「強固な防衛ライン」を構築する能力に欠けるため、今の戦場で死守させたほうがまだまし、という消極的判断ではないだろうか。アウディーイウカでの「幻の第二ライン」も、そのような顛末に終止したことからの考察ですが。あるはずのラインが無いことが多い。
ただ、出来ないことを理解してるから、出来ない防衛はしないというのは正しいとも言えるのかどうか、だったらさっさと停戦しろよと思うのですが。
スームィに押し込まれるのを警戒してクルスクの辺縁でウクライナ軍が耐えている、という説明は腑に落ちる。
そのうえでウクライナ国内政治的にも、外交交渉的にも損にならないと判断しているのかな。
プーチンのメンツを潰す効果は停戦時期に影響を及ぼしそうだけど、それがウクライナとロシアどちらを利するのかは不確定な気がする。
スジャ陥落以降戦線のダイナミックさは少ないが、外交という戦線の動きは活発だ。
トランプはゼレンスキーとの電話会談でウクライナにある原発の”米国所有”を提案した。狙いは恐らく3つある。
①ロシアが懸念するウクライナの核開発計画を白紙にすること。
②原発職員や警備員などに米国人が関与することでウクライナが渇望する安全の保障を”部分的に”担保すること。
③ウクライナ支援によって生じた”赤字”を現物によって回収すること。(鉱物ディールでは恐らく不採算なのだろう。)
更に一部の親露チャンネルではザポリージャ原発とオデッサ港のロシア租借権の交換まで議論されたと報じた。
通常の発想力ではありえない極めて狡猾な提案である。ディールを作るトランプの能力は本当に侮れない。
プーチンの面子を毀損云々はよく聞くけど面子を気にしなきゃいけないような危うい支持率でも政治体制でもないだろ
仰る通りで、ロシアは二世へのポスト割り振りも始まってるくらいですからね。
日本もそうですが、英仏韓宇などの方が、首脳の支持率・政治見通しヤバいというのが現実かなあと感じてしまいます(ウクライナも大統領選挙を始めないと見通し分からないでしょうし)。
ベルゴロド方向への攻撃は政治的な意味はあっても戦略的には悪手なのは間違いないと思うので、少ししたらやはり難しいで撤退強いられて終わると思う。こういった軍事的には全く意味を持たないであろう作戦はやるせない気持ちになる。
ここまで来るとプーチンのメンツを潰すというよりは、ゼレンスキー大統領が自分のメンツを守りたいだけにしかみえないのですがねぇ…。
これ以上、徹底抗戦した先に何が得られるのか?それに尽きるでしょうね。
アメリカは、ウクライナ避難民強制帰国の可能性が取りざたされましたが、日本も風当たりが強くなっています。
彼等の中には、出国した時から成人男性・子供から成人になった人間もおり、帰国すれば徴兵の可能性が間違いなくあるでしょう。
英仏独が、ウクライナ派兵いろいろ声高に叫んだところで、アメリカに泣き付いたのが現実なんですよね。
日本を巻き込もうという話しも出ていますから、希薄な関係性なうえに、対中国で手一杯ですから勘弁してくれと思ってしまいます。
>英仏など6カ国が計3万人の派兵を検討しているとされるが、約1300キロにわたる前線で活動するには十分ではないとの見解を示した。
>平和維持部隊は、ロシアの再侵攻を防ぐ上で重要な役割を果たすとし、日本にも後方支援や偵察活動への関与を求めた。
(2025.3.20 ウクライナPKF、15万人必要 ゼレンスキー氏の最側近が見解 共同通信)
ロシア領に攻めてはいるのはあまりいい手だとは思えませんね
元々そうだったけれど、このタイミングあるいはこれ以降はなおさらです
ウクライナの歩兵ソースには自国のみという限界があるのに対し、
ロシア側は場合によってはクルスクで連携方法を実戦で経験した北朝鮮からの援軍をもらうことが出来る
クルスクを振り返ればウクライナの衝力は必ずどこかで止まることが分かってしまっており、
ロシアは遅滞戦術を取って国土の広さを生かすこともできる
攻勢に出て、一定期間が経った後にどちらの損害がよりクリティカルになるかといえば確実にウクライナです
スジャみたいにまだロシア人も残っているそれなりの規模の土地なら、まだ占領する意味もあったかと思いますが。
今回はほとんど無人の森の中に必死に陣地作ってるんですよね。
これ、毎日滑空爆弾の雨あられになると思いますよ。ロシア側は味方市民を気にしなくて良いですからね。
ウロイディ人口1800人程度の街ですが、3月19日攻撃映像とされる映像を拝見しました。
プレリセ(ロシア国境の村)までの直線距離が大体10kmくらいですので、補給拠点として攻撃されたのかなと(両軍前線から10km程度の補給は人力に頼る部分があると拝見しました)。
森の奥に陣地を仰るように作るとなると、戦時中の最前線ド田舎に機材もない・兵站線も微妙・特別な工場なども見当たらず、砲爆撃を食らうのは大丈夫なのか心配になります…
(Uhroidy wiki)
なんで! この期に及んで! こんな作戦がまかり通るんだよ!!!
>RYBARに匹敵する登録者数を誇るАРХАНГЕЛ СПЕЦНАЗА
こちらのブログでrusich_armyの名前が出るとは
ロシア側の発信の方が多くなっているという事なのでしょうか?
そういえば一時期やたらニュースで取り上げられていたISWやイギリス国防省は最近影が薄いですね