DEEP STATEとRYBARは4日夜「ロシア軍が東部戦線の複数方向で前進した」と報告したが、DEEP STATEはヴェリカノボシルカ方面、RYBARはチャシブ・ヤール方向におけるウクライナ軍の反撃も報告しており、ウクライナ軍はノヴィ・コマールをロシア軍から奪還した。
参考:DEEP STATE
参考:Ситуація навколо Покровська
参考:Бійці 48 ОШБ витіснили ворога з Нового Комара
参考:Продвижение ВС РФ на Кураховском направлении, бои на Времьевском участке — итоги 4 декабря
ノヴィ・コマール奪還はヴェリカノボシルカを防衛する上で非常に価値が高く、緊迫した状況が幾らか緩和されるだろう
DEEP STATEはコンスタンチノフカ方面チャシブ・ヤール方向について「ロシア軍がチャシブ・ヤール市内中心部の耐火物まで前進した」「グレーゾーンがチャシブ・ヤール市内のピヴ二チェ二地区まで広がった」と、RYBARは「ロシア軍はウクライナ軍の反撃でチャシブ・ヤール南の採石場付近から後退した」と報告。
視覚的にもウクライナ軍がチャソヴォヤルスキー耐火物工場敷地内のロシア軍陣地=Ⓐを攻撃する様子、ロシア軍がT-0504沿いのウクライナ軍陣地=Ⓑを攻撃する様子が登場し、前者はDEEP STATEの主張、後者はRYBARの主張の根拠と思われるが、DEEP STATEは元々「ロシア軍がチャシブ・ヤール南の採石場付近を支配している」と認めておらず、ロシア軍は採石場に旗を立てただけで同一帯を支配していなかった可能性もある。
どちらしても南からチャシブ・ヤール市内にアプローチする試みは失敗に終わったように、逆に正面から市内中心部に迫るアプローチは成功しているように見え、両軍が一進一退の攻防を繰り広げているのだろう。
DEEP STATEはポクロウシク・クラホヴェ方面について「ロシア軍がノヴォプスチンカ集落の大半を支配している」「ロシア軍がシェフチェンコ郊外に足場を築いた」「ロシア軍がプーシキンの南で前進した」「ロシア軍がスターリ・テルニーをほぼ占領した」「ロシア軍がエリザベティフカ集落内で前進した」「ロシア軍がコンスティアンティノポルスケ集落内で前進した」「ロシア軍がスキ・ヤリ集落内で前進した」と、RYBARは「ロシア軍がロマニフカの北で支配地域を広げた」「ロシア軍がロマニフカを占領した」と報告し、DEEP STATEは前線全体の評価について以下のように述べている。
“ロシア軍はセリダブ占領後も成功を積み重ね(前進規模は)相当大きなものになっている。敵の絶え間ない攻撃が続いているのはスッヒ・ヤル~リシフカ~ダチェンスケとペトリフカ~ジョフテ~ノヴォプスチンカの区間で、前者は敵の攻勢を抑えることに成功しているものの後者については危機的な状況だ。敵は占領したジョフテからノヴォプスチンカやノボトロイツケ方向に攻撃を続けている。さらに不愉快な状況はシェフチェンコ郊外にロシア軍の存在が確認されたことだ”
“敵にとってシェフチェンコ占領は重要な目標で、ここを確保するとポクロウシク方向に進むためのスペースが生まれるだろう。ロシア軍は将来的なポクロウシク占領ため積極的に兵站ルートを遮断してくると予想される。残念ながら敵は多くの装備と歩兵を毎日投入することで成功し続けており、我々が数的優位の敵に「量」で対抗するのは無意味だ。質の高い兵力と適切な組織防衛のみが敵を阻止できる。もしシェフチェンコを失えばロシア軍は他戦線から戦力を持ってくる可能性があり、特にクラホヴェとヴェリカノボシルカが落ちればロシア軍の大群がここに集中するかもしれない”
DEEP STATEはヴェリカノボシルカ方面について「ウクライナ軍がノヴィ・コマールをロシア軍から奪還した」「ロシア軍がプラホダトネ集落と周辺地域を占領した」と、RYBARも「ロシア軍がプラホダトネ集落と周辺地域を占領した」と報告、視覚的にも第48独立突撃大隊の兵士がノヴィ・コマール集落内で軍旗を掲げる様子、ロシア軍兵士がプラホダトネ集落内=Ⓑで国旗を掲げる様子が登場したが、ウクライナ軍兵士がノヴィ・コマール集落内のどこで軍旗を掲げたのは不明だ。
DEEP STATEはノヴィ・コマール奪還について「第48独立突撃大隊、第31機械化旅団、第23機械化旅団による共同作戦で、集落解放に十分な量のドローンも投入され、この攻撃で多数のロシア軍兵士が死亡し、残りは幹線道路の方向に逃げ出し、第40独立親衛海軍歩兵旅団の兵士が捕虜になった」と報告しており、O-0509によるヴェリカノボシルカへのアクセスを回復した。
但し、モクリ・ヤリー川東岸ではロシア軍が一気に距離を詰めてプラホダトネを占領しており、ヴェリカノボシルカは南=プラホダトネからの圧力に晒される格好だが、それでもノヴィ・コマール奪還はヴェリカノボシルカを防衛する上で非常に価値が高く、緊迫した状況が幾らか緩和されるだろう。
追記:過去にも紹介しましたが、ウクライナ軍は旅団を丸ごと作戦地域に投入することは殆どなく「旅団を構成する大隊単位」「大隊を構成する中隊単位」「中隊を構成する小隊単位」で戦場に派遣するため、今回の作戦に投入された戦力も「2個旅団と1個大隊」ではなく「第48独立突撃大隊」「第31機械化旅団に所属する戦車3輌」「第23機械化旅団に所属する戦車1輌とKozak」「無人機を運用する241部隊」です。
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※アイキャッチ画像の出典:DEEP STATE
オスキル川の渡河に対する対応といい、ノヴィ・コマールの奪還といい、要所要所ではちゃんと増援入れて反撃できてるんですよね
ただ、それが本当に要所でしか行われていないので全体から見れば焼け石に水というかなんというか
増援も複数部隊をむりくり動かして来て対応させてるようなので、いずれ息切れしてしまうでしょうし、他戦線が順次片付いていくとその分だけ余裕ができたロシア軍がより多数の部隊で押し寄せてくるので時間の問題にしか思えないです
予備部隊(クルスク侵攻部隊など)がいればという点に、仰る点は行き着いていしまいますよね…
もしクルスク侵攻部隊がウクライナ本土にいた場合、5万人前後の大兵力とされるクルスク奪還用のロシア軍部隊と北朝鮮部隊も
当然クルスクではなくウクライナに回っていたでしょうから、結局戦力比は同じですけれどね
これがなかなか難しい所で…。
第3次世界大戦になりかねないので、北朝鮮部隊はロシア本土内までの可能性が高いんですよね。
ウクライナ軍、野戦防空を随伴しているため、他地域の防空が手薄になる効果がでたり。
攻撃側の方が被害が出やすいため、戦車・装甲車輛・各種兵器に、クルスク侵攻で大きな被害がでているんですよね。
攻防の立場、地形の面から大きく変わったかなと考えています。
一部で善戦できていても他で突破され続けている典型じゃない?
「一部の善戦」だけを抽出して取り上げ、他の不具合を隠すのが大本営発表を行う組織の悪癖ですからね。根本問題である兵力不足にキエフの政権が対処するとは思えません。キルレートの誇張問題もそうでしたが、「最大戦果」だけを取り上げ続けることは全体への危機感と改善への必要性の認識を低下させます。やがて、気付けば善戦すら出来なくなる末期状態に陥ってしまう。
全面で押されてるよりはマシだからセーフ(支離滅裂な発言、思考)
ヴェリカノボシルカ方面、北のノヴィ・コマールを慌てて奪還に向かって、その間に南のプラホダトネが奪われてる。両方を維持する戦力がないなら、逃げ道になる北を優先するのは正しいと思うが、砲撃射程のままであるから補給路としては厳しいまま。
緩和にはなっても、改善には繋がらないとなれば、どこかで(12月中の可能性もある)放棄して撤退の判断が迫られるわけだが、どこを次の防衛ラインにするかは決まっているのだろうか? アウディーイウカやウブレダルの二の舞にならねばよいが。
戦力が限られた状況での苦肉の策、という感じはします
良く決断出来たな、と
ウスペニフカ方面でもそういう動きが出て来るかもです
ウクライナ軍はむしろバフムトやブフレダル撤退時の反省をして、ヴェリカノボシルカ方面はアウディーウカ撤退時のような撤退のための増援ではないでしょうか?
まるでタコみたいだな、ロシア軍……
強力な吸盤をお持ちのようで!
ウ軍が増援を掻き集めて反撃、要所を奪還しても一定の消耗を伴うから、次に露軍が増援と支援の砲爆撃を集めて進撃してくると非常に苦しかろう。
最近、露軍がそこそこ苦労してたというトレツクの空撮?映像を見たが市内全域が砲爆撃を受け、どの建物にも火災と破壊の跡が見られた。かつてのように損耗を顧みず砲爆撃の後、繰り返しウ兵を送り込み続ければ一帯を支配し続けることができるが現役兵35万、予備役65万とあってはもう無理だ。
露軍の狙いが”敵野戦軍の撃滅””非ナチ化”にある以上、そのようなウ軍の戦術は露軍を喜ばせるだけだね。
ノヴィ・コマール奪還は喜ばしいことですが、重要箇所とはいえ、1集落の奪還に2個旅団と1個大隊が関与したことに若干違和感を覚えます。もちろん各部隊の全員ではなく、各部隊からの兵力抽出だとは思いますが、そこまでかき集めないといけないほどに予備戦力が摩耗しているのでしょうか。
またプラホダトネの占領も1日で完結していることも驚きです。これまではどんな小さな集落でも、集落の一部がグレーゾーン⇒一部占領&全体グレーゾーン⇒完全占領と数日、場合によっては数か月かかっているのに、プラホダトネは昨日までグレーゾーンにも達していなかった筈です。ここから兵力を抽出したため、一気に制圧されたのでしょうかね
充足率が低くて、2個旅団、1個大隊を合わせてやっと、町を占領して疲れてるロシア海軍歩兵1個旅団規模の人数しかいない。って事では?
ノヴィコマールは小さな集落とは言え川を挟んでいますので、大戦力が必要なのは致し方ないでしょう
この地方で(DSの報告に基づけばですが)複数旅団の連携を行う能力が証明されたのは、ウクライナにとっては朗報です
そういう有能な将官はみんなクルスクに送られたものかと思ってました
ブラホダトネは普通に前線整理で捨てたんじゃないですかね
以前より進歩した戦い方ができているようで良かった
現場の判断にさえ任せていれば普通に出来ていたことが、ゼレンスキー政権の求心力が落ちたため、無謀な死守命令に従う必要性が薄くなってきたという側面もあるんじゃないかと思ってます。
元々、政治アピール優先の中央からの指令がなければ、ウクライナ軍はかなり優秀に戦えてた気がするんですよね。セベロドネツクとかの頃は、割と撤退判断が早かった覚えがありますし。
いや逆にセベロドネツクは住民避難が間に合わなかったのに粘りすぎて、住民を巻き込んだ戦闘をしてしまいました。
その情報が伝わった隣町のリシチャンスクでは住民がウクライナ軍を拒絶して、住民に拒絶されて士気がダダ下がり&防衛部隊の主力はセベロドネツクから撤退してきた消耗した部隊って状態のために早々に撤退しました。
セベロドネツクとリシチャンスク、その後にやってきた例の無能将軍がどのような統治をしたのかも気になりますね
ちなみに2都市を結んでいた複数の橋の内2本が復旧され、その隣にも新しい橋が架かっているのが衛星画像で確認できます。合計としては4本ですね。また、どうやら渡れる浅瀬があるので仮にウクライナ軍が橋を攻撃してもセベロドネツクからの援軍を遮断、とまではいかないと思います。
ヴェリカノボシルカ周辺は、ウクライナは北側の集落を奪還・南は喪失、ロシアは北側は喪失・南は前進となっており、非常に興味深いですね。
ポクロウシク周辺は、ザポリージャ・ドニプロ=【ポクロウシク】=コンスタンチノフカ=チャシブヤールといった、補給・後方休養のための通過拠点です。
ポクロウシクを直接陥落させなくても、ポクロウシク西側の補給路を圧迫すれば、ドネツク州ウクライナ軍部隊は厳しくなります(南ドネツクは既に補給路が厳しそうです)。
北部の退路だけは全力で奪還して、味方が撤退する為の時間稼ぎだったりする?もちろんウクライナ軍の話ね。
改めてウ軍は極めて困難な状況下で善戦していますね。
それでも兵力が上の相手には一箇所塞いでも別の所から攻められると…
最激戦地のドネツクの現場は善戦してるのに、その穴を塞ぐための戦力が今もクルスクで立ち往生していることが、とことん悔やまれます。
激しく同意。あの作戦さえ無ければ、まあそれなりに消耗して後退は続けてたでしょうけど、それでもヴフレダルークラホヴェーポクロウシクの堅固なラインで抗戦出来ていたでしょうに。
アメリカの新政権の本格始動を前に
現状で出来る限りのことをやろうという積極性が両陣営にあるように見える
これでお互いに消耗すると停戦も近くなる
まぁ主導権を持っているプーチン大統領の考え次第でしょうけど
12/4にロシアと北朝鮮の軍事協定が発効したのでクルスク州で大規模な掃討作戦が
開始されると推定される
未だ北朝鮮軍の大規模な活動は確認されていない筈ですので大変興味深いですね。
クルスクに派遣されているウクライナ軍は相当に精強は部隊で構成されていますのでどのような闘いになるか気になります。
ミリオタ的にはクルスクに運ばれたと言われている長距離自走砲コクサン(主体砲)の活躍が楽しみです。
ミリオタニキが、チャシブヤール中心部にロシアが侵入した
ことに誰も言及していないのはなぜに?
確かに南の採石場でウクライナ軍が押し返してますが、
トレツクと状況が同じで、ヤバ過ぎる状況です
市街地に取り憑いたロシア軍は容易に撃退できないので
(撃退はボルチャンスクぐらい)、トレツク・チャシブヤール
が取られたら、次は西のコンスタンチノフカで、その後は
ドンバス最後の拠点、スリャビンスク・クラマトルスクの
攻略が現実的な視界に入ってきます(来年後半くらい?)
昨日更新されたコントロールマップの紹介では11/29ごろから中心部で戦闘が起きているらしいですね。
ヴェリカノボシルカ方面、第48独立突撃大隊はもともと南側を守っていた部隊なので(だから南側でロシア軍が一気に進んだのかなと思料します)、ある意味では陣地よりも補給&撤退ルートを守ったとも言えるかもしれませんね。
第23機械化旅団は北のバハティル、第31機械化旅団はザポリージャのオレポポの辺りに布陣していたはずなのでまさか引き抜いたのかと思いましたが、捕捉で納得しました。
シヴェルスク方面、12/3にビロホリウカの工場(違っていたらすみません)に滑空爆弾3発が叩き込まれました。すなわち同地がまだウクライナ軍の支配下にあるというわけで、ロシア軍の無能将軍に助けられたとはいえ22年9月に奪還してから驚異の粘りを見せています。Googleマップの古い画像でも分かるほど同地は砲爆撃で穴だらけなのですが。
また、リシチャンスク近郊の要塞ラインでMT-LBがFPVドローンで撃破されたのですが、その場所上記の工場から4キロ以上離れています。通常FPVドローンの電波が届く距離は3キロ程度と言われているので、ウクライナ側も光ファイバードローン等何かしらの改善策を採っているかもしれません。
自己レス
ポクロウシク方面、ジョフテ北の鉄道の陸橋を68猟兵が落としたと思ったら方向をクルッと変えましたね。
本日投稿の動画で、クルスクで最低でも2発のクラスター弾頭が着弾したようです。1発はセイム川に架けられようとしていたポンツーンに、もう1発は近くの森に集まっていた20人程度の歩兵に当たっています。歩兵の方については森にトラックが乗り入れたりしていたので物資の集積なども考えられます。が、それでも言わせてほしい。
ハイマースの使いどころもう少し考えろや。
現在の戦場で使われているFPVドローンの射程は15kmはあるようですよ。最大で25kmとも言われています。
例を挙げると、アウディーイウカの北、オレクサンドロピルからカリノヴェあたりを第109領土防衛旅団が守っているのですが、この中のムラマサドローン部隊がオルリフカ、セメニフカを通るロシア軍の車両をFPVドローンで攻撃する視覚情報を出し続けています。
これが3~5km以内の射程を前提とするとロシア軍の支配領域に潜入してから攻撃を行っていることになり、それが何度も成功しているとはちょっと考えにくい。
それでカリノヴェあたりの陣地から飛ばしていると考えると、そこからオルリフカまでの距離が15kmになります。
(第72機械化旅団のトーテムドローン部隊がヴフレダル方面で出している視覚情報には、その時点での支配領域を考えると20km離れた目標に対する攻撃を成功させたことになるものもあります)
射程を伸ばした方法ですが、まずFPVドローンのバッテリー大型化と通信装置の改良が行われ、さらに中継器を載せたドローンを別に飛ばすことで到達範囲を増やしたようです。
現在では固定翼ドローンやマルチコプタードローンにFPVドローンを積んで射程を稼ぐ親子ドローン方式も研究開発されています。(これは親の方が中継器を兼ねているようです)
上記の方法、研究開発はウクライナ・ロシア両軍ともに行っています。
長々と書きましたが、とにかくFPVドローンの射程を伸ばす方法はいろいろとあるようで、今のところウクライナの戦場では15km程が実用上の射程と考えるのが良さそうです。
情報ありがとうございます。古い知識のままでしたね、危ない危ない。
FPVドローンの射程そんなに伸びてたんですか、それもう榴弾砲の射程くらいあるじゃないですか、怖ぁ