ウクライナ戦況

ロシア軍はポクロフスクまであと10km、住民避難の余裕は最大2週間

ロシアは占領地の部隊をクルスクに移動し始めたものの「ポクロフスクに向う動き」は止まっておらず、同市のドブリャク軍政長官は「ロシア軍の前進速度を加味すると住民避難に1~2週間の猶予しかない」「来週から街の機能が縮小し始める」と述べて住民に避難を呼びかけた。

参考:У жителів Покровська є максимум два тижні на евакуацію – начальник МВА
参考:Верещук закликала евакуюватися з Покровська, Мирнограда і Селидового

ドブリャク軍政長官の想定ならディミトロフ市はあと1週間程度で住民避難が困難になるほどロシア軍が接近してくる

ロシア軍は8月上旬に始まったクルスク侵攻に対応するため占領地からも部隊を呼び戻し始め、Economistの取材に応じたウクライナ政府関係者も「ドンバスにおけるロシア軍の活動は8月16日から大幅に減少した」と述べたものの「1つだけ例外がある」と指摘しており、それがドネツク州西部方面における物流拠点=ポクロフスク地区に向う動きだ。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

ポクロウシク(人口約7万人)はドニプロペトロウシク州に隣接するポクロウシク地区(人口約38万人)の中心都市で、ロシアが目標に掲げているドネツク州制圧はスラビャンスク地区とポクロウシク地区の占領を意味し、アウディーイウカからポクロウシクまでは40kmほど距離があったのだが、ポクロウシク市のセルヒー・ドブリャク軍政長官は15日「敵が急速にポクロウシクへ近づいている」「ロシア軍は市郊外から約10kmの位置にいる」「状況が今よりも良くなることはないので住民は荷造りをして避難しろ=避難を拒否して街に残っている住民に『諦めて逃げろ』という意味」と呼びかけた。

さらに19日のRadio Libertyの放送で「我々はロシア軍の前進速度を加味して住民避難に1週間~2週間の猶予があると想定している」「ポクロウシク市内では全てのサービス(水道、電気、ガス、公共交通機関、店舗、市場、銀行、裁判所、病院、政府機関など)が機能しているが、来週から徐々に機能停止に向うと考えられている」「2022年に本格的な戦争が始まるまで13,700人もの子供たちがいたが、現在も4,788人の子供たちが残っている」「来週中には子供の強制避難を決定する段階に達すると思う」と述べ、早ければ8月中にも住民避難が困難になるほどロシア軍が街に接近すると示唆した格好だ。

出典:Покровськ Online / Покровська МВА

因みに政府が用意する列車で避難する人々は僅かで、大半の住民は自家用車などの自己手段で避難しており、ドブリャク軍政長官は「1日に1,000人位を街から連れ出すのは簡単だ」「そのためのリソースも十分ある」「住民はただ避難すると決意するだけだ」と指摘。

ヴェレシチューク副首相(一時的被占領地再統合相を兼任)も「ポクロウシク地区の状況は非常に困難だ」「戦いに関与していない住民はポクロウシク、ディミトロフ、セリダブから避難すべきだ」「街からの避難は仕事、家、財産を手放すことだと理解しているが命に変えられるものではない」「見知らぬ土地での避難生活に困難が伴っても敵の砲火に晒されるよりマシだ」と呼びかけ、避難を拒む住民の存在は軍の活動の妨げにもなっていると付け加えている。

出典:管理人作成(クリックで拡大可能)

追記:ディミトロフ市の軍政長官は16日「前線は街から6km離れた地点にある」「8月末までに全住民を避難させる」と明かしていたが、20日までにロシア軍はディミトロフ市から約4kmの位置に到達しており、ドブリャク軍政長官の想定なら「ディミトロフ市はあと1週間程度で住民避難が困難になるほどロシア軍が接近してくる」ということになる。

関連記事:ロシア軍が迫るポクロウシク地区、人々が前線の街や集落に留まる理由
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関連記事:ロシア軍がポクロウシク市に急速接近、軍政長官が住民に避難を呼びかける

 

※アイキャッチ画像の出典:Покровськ Online/Покровська МВА

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コメント

  • コメント (38)

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    • たむごん
    • 2024年 8月 20日

    ロシア軍、ディミトロフ=ポクロウシクへの前進速度が落ちないですね。

    都市前面、防衛ライン構築により防ぐのか、そのまま都市郊外に辿り着かれるのか注目したいと思います。

    都市防衛に、ウクライナ正規軍=弾薬をどの程度準備しているのか少し気になりますね。

    17
      • .
      • 2024年 8月 21日

      クルスク攻勢宣伝活動に兵を全振りしてるようなのでまともな防衛ラインなど作れずそのまま市街戦になだれ込むんじゃないでしょうかね

      16
        • たむごん
        • 2024年 8月 21日

        自分も仰る点を感じています。

        これまでの時間で作れていないのであれば、今から急増では難しい気がします。

        FPVドローン・ランセットなどが、飛び交う交戦距離になりつつありますから、重機も破壊されるだろうなと…

        1
      • 犬の〆
      • 2024年 8月 21日

      (出所はファイナンシャルタイムスですが)東部戦線では砲弾が配給制に戻ったとのこと。
      今回は相当厳しいのではないでしょうか。
      ところで、こんなに大きく避難の呼びかけをしているのって今までデフォでしたっけ?

      6
        • たむごん
        • 2024年 8月 21日

        情報ありがとうございます。
        近々だけの記憶ですが、(慌てた)大々的な避難呼びかけは記憶にない気がします。

        ウクライナ政府・軍当局・州政府の想定よりも、ロシア軍の進軍スピードが速そうですね。

        ウクライナ側が、想定していた防衛ライン・ロシア軍の進軍スピードが、どの程度だったのか少し気になっています。

        2
          • 犬の〆
          • 2024年 8月 21日

          お返事ありがとうございます。
          避難勧告について、ざっと検索してみましたがこれほど大きく避難を呼びかけていることは今までなかったように思います。
          今までは「侵略された俺たちは撤退しない」がウ軍のコンセプトだったと思いますが、それが今回から大きく変わったように思います。
          東部地区についてのウクライナの評価が変わったんですかね。
          状況を見守りたいと思います。

          3
        • 犬の〆
        • 2024年 8月 21日

        あ、既に後発の記事で共有済のようでしたね>弾薬の配給制
        失礼しました。

        2
    • ざる
    • 2024年 8月 20日

    逃げても地獄、残っても地獄なので本当に難しい選択だと思います。
    命があってなんぼとは思いますが自分も資産とか全て投げ出して逃げれるかと言うと悩むと思います。

    31
      • T.T
      • 2024年 8月 20日

      戦闘が始まると動くのが難しくなりますから、早く避難して欲しいものです。
      さっさと前線が通過してくれるならまだ良いのですが、大体都市で暫く粘ることになりますからね。
      とは言っても、避難先と生活の当てが無いことにはってのも有りますよね。

      8
    • 匿名
    • 2024年 8月 20日

    クルスクではしゃいでる場合か?ウクライナ軍は快進撃どころかクルスクで釘付けにされたままどんどん削ぎ落とされてない?

    49
      • aburo
      • 2024年 8月 20日

      まぁ…少なくとも、ロシアよりは酷いでしょうなぁ。

      どの戦争でも、局所的な勝利に喜んでる国ほど負けてますし…

      53
      • Easy
      • 2024年 8月 20日

      削ぎ落とされてるだけならまだマシで。
      高性能で繊細()な西側装備は走らせてるだけで故障してメンテが必要なので、戦闘もしてないのにどんどん戦力外になっていくという罠があり。
      そして故障した車両を後送する工作車両は真っ先にランセットに狩られてしまい。
      泥濘期までに機甲戦力の半分が「自然損耗」をおこし、戦ってもいないのに機構部隊が壊滅するのではないかとの悲観的な予測までありますよ。

      50
        • たむごん
        • 2024年 8月 21日

        60t70tになるような戦車は、特殊な牽引車輛がなければ運べないですからね…

        そもそもが、ロシア=ウクライナの大地で戦闘する設計ではないですし、移動・戦闘によりどの程度消耗するのか個人的には興味があります。
        100km走行単位で、自然損耗の累積がどのように変化していくのか興味があります。

        ウクライナが、西側戦車の交換パーツ・現場修理のノウハウを獲得できたのか、少し気になっています。

        (2023.10.03 ウクライナ、修理終えた戦車の第1陣を受け取り ポーランドから CNN)
        (2024.01.24 ウクライナ軍のレオパルト2戦車が「絶滅」の危機 部品不足で修理進まず Forbes)

        17
      •       
      • 2024年 8月 20日

      クルスクで、今、はしゃがなかったら。いつ、どこで、はしゃげば良いんだ。
      去年の6月の反抗作戦だって、4カ月か5カ月、はしゃげたじゃないか。
      現場は最初の1週間か2週間で、ダメだと思ったらしいけと。

      32
        • 匿名
        • 2024年 8月 20日

        日本のマスコミもネット界隈もドンバスの劣勢ガン無視でお祭り騒ぎしてますよね

        44
          • 2024年 8月 20日

          ロシアカウントダウンらしい

          26
            • たむごん
            • 2024年 8月 21日

            あれ、もう分かっててやってますよね…

            収益稼げて、登録者数+いいね(Youtubeアルゴリズムに影響)稼げるので、日本人チョロいなあくらいなのかなあと。

            18
          • クル
          • 2024年 8月 20日

          今回ばかりはマスコミも評価割れてますよ
          読売系を中心に辛辣な評価をしているメディアもあります
          勝った勝ったとはしゃいでるのはフジサンケイと朝日ですね
          評価保留してるメディアも珍しくないですし日本の大手でここまで評価割れるの初めて見ました
          経済以外は原稿書くやつと読み上げるやつが違うだけで同じ事言ってるのが日本のメディアだと思ってましたし

          44
    • nk
    • 2024年 8月 20日

    東部の要衝ポクロウシクを巡る戦い間近という所ですか、ロシアはポクロウシク周辺都市攻略後にポクロウシクを半包囲の形で攻略に望むと思うが侵攻速度が速く止まる気配まるで無しなのでもうウクライナに残された時間もわずかのようですね。チャシブヤール、トレツクはすでに市街戦に突入しておりトルスケも市街戦間近で陥落すればコンスタンチノフカ〜リマンのドネツク主要都市群へ手がかかる状況でもウクライナはクルスクに兵員物資大量ベットでロシア領を占拠することを最優先したようだけど、政治的には理解出来るけど軍事的には釣り合いが取れないと思うが、もう東部は捨てたので時間を稼いでくれれば良しクルスクでどうにかなるの判断ということなのでしょうね。

    25
      • 匿名
      • 2024年 8月 20日

      地図見れば分かるけど、ポクロフスク市はコンスタンチノフカやクラマトルスク、クラホヴェなどの残るドネツク州の主要都市と幹線道路で繋がっている要衝なので。街または周辺の幹線道路がロシアの砲撃圏内に入るだけでウクライナ側はそれらの拠点への補給が断たれる。

      28
    • gepard
    • 2024年 8月 20日

    リシチャンシク陥落後の状況に似ている。
    突出部から背後の補給路を切断する動きで要塞地帯に残るウ軍が撤退を余儀なくされ、更に多くの領土を失う結果に直面している。
    この過程で敗走する部隊の補充も援軍も当面クルスクにて拘束されることが確定していることは現場の士気を下げているはずだ。

    ポクロフスクへ直行する動きはこれまでの露軍のパターンから考えにくく、恐らく南進してE-50道路を補給路とし、南側面を確保した上で攻めかかるだろう。今のペースを考えれば早ければ9月初めにフロディフカからセリダブのラインの集落群を占領し、ポクロフスクの戦いの前哨戦が始まる可能性がある。
    E-50道路が確保されて露軍の補給路が安定すれば、砲弾を撃ち込まれ補給ハブとしてこの都市は機能しなくなる。そうなれば南ドネツク戦線全体で補給が悪化しドミノのように倒れていく。

    28
    • NIVEA万能論
    • 2024年 8月 20日

    大丈夫だ、昨日もポクロウシクまであと10㎞だったからロシア軍は前進していない!

    15
    • 暇な人
    • 2024年 8月 20日

    ロシアとしても住民は避難してもらったほうが容赦なく都市を廃墟にして市街戦をやらずに済むから助かるので批難するまで待ってといえば案外待ってくれるかもしれない。

    16
      • 理想はこの翼では届かない
      • 2024年 8月 20日

      事の是非やそもそもの侵略の是非は置いておいて、市街地に軍が立て籠もらなければ都市を廃墟にする必要はないんですけどね
      昔のような城塞都市という概念は大砲の出現で廃れましたが、鉄筋コンクリの普及によって都市の陣地化が有効になってしまいました
      有効であるがゆえに使わざるを得なく、使わざるを得ないがゆえに都市が廃墟になる
      どうにかならんもんですかねぇ

      32
        • 暇な人
        • 2024年 8月 20日

        野外で決戦しようぜ!
        といえばロシアものってくるかもしれませんが、ウクライナが鉄筋コンクリの団地群という要塞を放棄する必要がないですからねえ。
        あのあたりは平地だらけなので籠る場所は都市しかありませんし。
        日本みたいに七割山、一割田んぼ、一割河川と湖沼とかいう地形ならまた別なんでしょうが

        19
    • いそきち丸
    • 2024年 8月 20日

    クルスク州でのロシア住民の避難はすぐに「強制避難」が行われ、ホテルの部屋の提供協力が呼びかけられたのに、ドネツク州でのウクライナ住民の避難は「呼びかけ」で来週から子供の強制避難を決定するって、行政府の対応が遅くないか?それとも避難民に住居や食料を提供する財政的余裕がウクライナにはないのか?もしそうならNGOとかボランティア、他国の支援に頼りすぎるのは政府の怠慢だと思う。

    23
      • 名無し
      • 2024年 8月 20日

      机上の綺麗事言ってますけど、そんな予算、あるわけないじゃないですか。

      16
    • とと
    • 2024年 8月 20日

    しかしウクライナの最低目的のロシア軍誘引は達成できてるんじゃないのかね
    強行軍で疲労困憊の救援軍を撃破できればロシアは痛打だし作戦通り進んでいる感じだよ
    ドンバス部隊を引き抜いたのならこれから東部戦線の進軍スピードも相当落ちると思うけどね
    ただの奇襲で終わらなかったのは事実だよ

    5
      • 匿名
      • 2024年 8月 20日

      なお、実際に疲労困憊で救援行こうにも大砲の飼料にされ続けているのはウクライナ側

      37
      • 夜分
      • 2024年 8月 20日

      そうであれば良いのですが、この侵攻ではSNS等での撃破動画もウクライナ側の被害が目立ち、特にSAMシステム系や機甲戦力等の貴重な武装映像も多く出ています
      勿論ロシアも被害を受けていますし動画も出てますが、今回はウクライナの損害動画比率がかなり高いように見えます

      ロシアの東部戦線からの兵力誘引もウクライナ当局側が「出来てる」と言っているだけで現在その証拠はなく、東部戦線ではウクライナが押され続けています
      記事の通りならばクルスクに20部隊も関わってる以上、その代償に見合うだけの「何か」はそろそろ欲しい所ではあります

      仰る通りに「ロシア軍の東部進撃速度が落ちる」「疲れ切ったクルスク救援ロシア軍を撃破」出来れば良いですが、現在の各報道ではその兆候も見られず苦しい見方しか出来ません。

      39
        • たむごん
        • 2024年 8月 21日

        SAM系は、最高価値の装備=目標ですからね。

        攻撃(クルスク攻勢)の野戦防空に使うのは、戦争長期化を考えれば非常にリスクが高いと感じています。

        滑空誘導爆弾(戦闘機)に、一定の抑止力=行動の制約をかけてきたわけですし…

        10
      • gepard
      • 2024年 8月 20日

      兵力誘因をしたいならわざわざ兵が地形に疎く、敵対的な環境のロシア領でやる意味が全くないんですよね。
      例えば先行するDRG部隊が道に迷ったとしたら、ウ領内で地元民が協力的なら匿ってくれたり道を教えてくれたりしますけど、敵対的だとロシア軍のテレグラムチャンネルに通報されてUMPKが降ってきます。

      敵本土で作戦行動するということは基本的にいいことは何もないです。

      8
    • housekeeper
    • 2024年 8月 21日

    疎開している様子の写真は、ポクロフスク駅のホーム西端ですね。特徴的な歩道橋が目印です。

    架線があるので電化区間のようですが、ちゃんと設備は生きてるんでしょうか?有事を考えると電車では頼りないな、という印象を改めて持ちました。徳島が最強ってコト!?(ディーゼル機関車しか走っていないため)

    7
      • たむごん
      • 2024年 8月 21日

      うずしお懐かしいですね。
      (別件ですが)東海道新幹線、整備車輛の事故・台風による運休で、大変な混乱が発生しました。

      日本のインフラも、結構ギリギリな面がありますから、戦争・テロによるインフラ破壊どの程度耐えられるのかシミュレーションは必要でしょうね。

      今のままだと、各人・各企業が努力で乗り切れくらいでしょうし…

      10
    • たら
    • 2024年 8月 21日

    ディミトロフ=ポクロウシクへ向かうロシア軍は軍事的に突出にはならないのでしょうか。側面から刈り取られてしまいそうな形に見えますが、そんなことは百も承知で対策が万全なのでしょうか?

    2
      • Easy
      • 2024年 8月 21日

      その刈り取るための戦力が全部クルスクに出張中ですから,ロシア側は安心して突出出来るわけです。
      これが戦略予備を枯渇させてしまうことの怖さですよ。味方側の選択肢がなくなるから、相手をフリーハンドにさせてしまうんですね。

      13
      • Zzz
      • 2024年 8月 21日

      機動経路の優位はウクライナ軍にありますのでコレが想定通りなら逆襲を狙っている可能性はあります。絶対にないと言い切るのは現実を見ていない輩ですね。無論戦力不足で本当に切り捨てているだけの可能性もありますがね。

      2
    • kitty
    • 2024年 8月 21日

    なるほど最初の列車で避難する老人の手荷物の少なさはそもそも自家用車に家財を積み込んで逃げられない持たざるもの故だったんですね。納得です。

    3

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