ウクライナ戦況

ポクロウシクを巡る戦いは一進一退、ロシア人も前進に必要な犠牲の多さに言及

DEEP STATEとRYBARはポクロウシク方面について「ロシア軍の前進」と「ウクライナ軍の反撃」を報告し、特にヴォロディミリフカ攻撃についてはロシア人の間でも賛否が別れ、Fighterbomberは「ウクライナの全て解放するのにあとどれだけの犠牲が必要なのか」と疑問を投げかけた。

参考:Мапу оновлено
参考:Ворог провів механізовану атаку на Володимирівку
参考:Ворог вчора продовжив механізовані атаки на Володимирівку та зумів висадити великий десант
参考:Також окрім штурму на Володимирівку вчора, кацапи вирішили знову механізованою колоною атакувати в районі Новооленівки
参考:Атаки и наступление
参考:RAG&E – Razvedos Advanced Gear & Equipment
参考:Fighterbomber
参考:Два майора

ウクライナの全てをヴォロディミリフカのように解放するに、あとどれぐらい兵士、装備、資金、悪天候が必要になるのか?

DEEP STATEはドネツク州ポクロウシク方面について3日~13日までの間に「ウクライナ軍がクチェリヴ・ヤル東郊外と西郊外で領土を奪還した」「ウクライナ軍がシャコフ北西郊外で領土を奪還した」「ウクライナ軍がO-0520沿いで領土を奪還した」「ウクライナ軍がノヴェ・シャホヴェ集落と周辺地域を奪還した」「ウクライナ軍がドロジニェ郊外で領土を奪還した」「ロシア軍がクチェリヴ・ヤルを占領した」「ロシア軍がニカノリフカ周辺に支配地域を広げた」「ロシア軍がミロリュビフカ西郊外で支配地域を広げた」「ロシア軍がコトリーネ周辺で支配地域を広げて集落がグレーゾーンに移行した」と報告。

出典:管理人作成

RYBARも「ロシア軍がニカノリフカを占領した」「ロシア軍がヴォロディミリフカ集落に侵入した」「ロシア軍がシナ川沿いで支配地域を広げた」「ロシア軍がミロリュビフカ西郊外で支配地域を広げた」「ロシア軍がウダチネを占領した」「ロシア軍がポクロウシク炭鉱方向に前進した」「ウクライナ軍がフェドリフカ方向に反撃した」と報告。

視覚的にもウクライナ軍がゾロティ・コロディアズ南郊外=でロシア軍を攻撃する様子、ウクライナ軍がヴォロディミリフカ周辺=ⒷⒸでロシア軍の機械化部隊を攻撃する様子、ウクライナ軍がヴォロディミリフカ集落内=ⒹⒺで降車したロシア軍兵士を攻撃する様子、ウクライナ軍がノヴォレニフカ周辺=に集結したロシア軍の機械化部隊を攻撃する様子が登場し、DEEP STATEはヴォロディミリフカに対する攻撃について以下のように述べている。

“(9日)ロシア軍は悪天候を利用してヴォロディミリフカに攻撃を仕掛けた。最初はバイク6台で、昼には装甲車両3輌で攻撃を仕掛けたが全て破壊され、数人のロシア軍兵士が集落周辺の茂みや建物に隠れているかもしれないが、長くは生き延びられないだろう。(10日)残念ながらロシア軍によるヴォロディミリフカへの攻撃は続き、最低でもバイク6台、戦車2輌、装甲車両14輌が投入され50人~75人の兵士をヴォロディミリフカ集落内に送り込んだ”

RYBARも「ヴォロディミリフカは激しい衝突の中心地だ」「ロシアの装甲部隊は機械化攻撃の後に集落の大半を占領して空挺部隊を集落内に送り込んだ」と述べたが、この攻撃に投入したバイク、戦車、装甲車両の大部分はFPVドローンや大砲の攻撃で破壊もしくは損傷し、ロシア軍はヴォロディミリフカへの突撃と同時並行でノヴォレニフカ周辺に集結させた機械化部隊(装甲車両8輌前後)でも攻撃を試みたが、ここでも第93独立機械化旅団に発見されて装甲車両を3輌を失ってしまう。

出典:Фенікс

ヴォロディミリフカへの攻撃についてはロシア人の間でも賛否が別れ、ロシア人ミルブロガーのRazvedosは「敵が撮影した酷い映像を見た」「ヴォロディミリフカに突撃する我が軍の車列が焼き払われている」「それでも我々はヴォロディミリフカを解放することが出来た」「成功の決め手は兵力と装備の集中だったが確かに多くを失ってしまった」「この作戦が妥当無ものだったどうかは各自で判断してほしい」「私はこれ(ドローンが支配する戦場で戦力を集中運用すべきかどうか)を2年間語り続けて結論を下すことに疲れてしまった」と言及。

Razvedosの言及にFighterbomberも「ここには未解決の疑問が横たわっている」「ウクライナの全てをヴォロディミリフカのように解放するに、あとどれぐらい兵士、装備、資金、悪天候が必要になるのか?」「控えめに言っても敵の要塞や防御施設の中にはヴォロディミリフカよりも遥かに手強いものがある」と回答し、Razvedosも「その通りだ」「この疑問への答えは危ういどころか悲惨だ」と述べており、ロシア人ミルブロガーが損失の多さを嘆くのは非常に稀なケースだ。

出典:Минобороны России ロシア国防省が公開した高解像度の戦況マップ

ロシア人ミルブロガーのДва майора(Two Majors)もヴォロディミリフカの戦いについて「美しい報告書が激しい苦痛の中で修正されている」と指摘し、全体の動きについても「敵の消耗は特定地域の予備戦力不足や軍事・社会計画を遂行する資金不足に現れているものの、ロシアでも付加価値税や自動車関連の税金引き上げ行われ国民の不満に繋がっている」「特別軍事作戦には70万人の兵士が投入されているが精鋭部隊や突撃部隊の戦力低下が著しく、指揮官は高度な専門知識をもつ兵士の前線投入を余儀なくされている」と述べ、だんだんと問題点の指摘や長引く戦争への不満を口にすることが多くなっている。

因みにロシア国防省は8月30日の夏季攻勢総括で披露した戦況マップの高解像度データを公開しており、ロシア軍は「美しい報告書(特にクピャンスク方面とポクロウシク方面)」を現実にするため激しい苦痛を伴う現実の修正を強いられているのだろう。

ロシア人ですら「多くの誇張が含まれた戦況マップ」と呼ぶ「美しい報告書」に興味があるなら、是非ダウンロードして見るべきだ。

関連記事:フリアイポレ方面の戦い、ロシア軍は重要な2つの防衛拠点に侵入を開始
関連記事:ザポリージャ州フリアイポレ方面、ウクライナ軍が4集落からロシア軍を押し戻す
関連記事:フリアイポレ方面の戦い、ロシア軍の前進ペースが落ちない唯一の例外
関連記事:ロシアの攻勢ペースは9月に失速、前進コストが高価なのはポクロウシク方面
関連記事:ウクライナ軍は後退の連続、ポクロウシク方面以外で全く良いところがない
関連記事:フリアイポレ方面、ロシア軍が主要補給ルートの遮断まで10kmの位置に到達
関連記事:ロシア軍が存在しないはずのクピャンスク、行政長官は敵がいるので入れない
関連記事:ザポリージャ州フリアイポレ方面、ロシア軍が早いテンポで前進し続ける
関連記事:クピャンスクを巡る戦い、ロシア軍を止められず市内中心部がグレーゾーンに
関連記事:ロシア人、ドブロピリア方面に関する国防省の発表は美しい報告書だった
関連記事:ロシア軍が東部の複数方面で前進、ウクライナ軍はドブロピリア方面で反撃

 

※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України

ロシアの燃料不足、これが持続的な問題に発展するかどうかはウクライナ次第前のページ

燃え続けるクリミアの石油備蓄施設、ウクライナ軍が再びフェオドシヤを攻撃次のページ

関連記事

  1. ウクライナ戦況

    ロシア軍の反撃、ウクライナ軍部隊がクルスク方面で包囲された可能性

    RYBARはクルスク方面について11日昼「ロシア軍がスナゴストとアパナ…

  2. ウクライナ戦況

    英国がウクライナへM270MLRSを追加供給、HIMARSとMLRSの合計は25輌に

    英国のウォレス国防相は10日、ウクライナに追加の多連装ロケットシステム…

  3. ウクライナ戦況

    侵攻890日目、ロシア軍はポクロウシク方面で前進してヴェセレを占領

    DEEP STATEはポクロウシク方面について1日夜「ロシア軍がヴェセ…

  4. ウクライナ戦況

    反撃が順調なウクライナ軍、ミサイルでサキ空軍基地を攻撃したと認める

    ウクライナ軍は7日もヘルソン州とハルキウ州で利益を上げ続けており、ロシ…

コメント

  • コメント (20)

  • トラックバックは利用できません。

    • たむごん
    • 2025年 10月 13日

    ヴォロディミリフカの衛星写真、村や集落といった規模で、高層建築のようなものが特に見当たらないのが分かります(塹壕などで強化されているのでしょうが…)。
    前線歩兵の被害を見ると、最前線は本当に過酷だなと感じるわけですが、どこまでの被害が妥当なのかなあと。

    ヴォロディミリフカだけを見れば、そこまで犠牲を出す価値があるのかなと。
    別方面の進軍は、こういった犠牲があるからこそ進んでいる面もあるのかなと考えたりもするわけですが…

    ポクロウシク=ディミトロフ一帯の攻防、両軍どの程度の余力があるのかは気になるところですね。

    18
    • paxai
    • 2025年 10月 13日

    ポクロウシクの東側はアカン将軍が率いてるからなあ。
    ウダチネ側は安定してるんやが。

    7
    • Mr.R
    • 2025年 10月 13日

    機械化部隊による攻撃って……まぁ確かに装甲車両であればドローンがよっぽど悪い場所に当たらない限り数発は耐えるけど……

    3
      • NHG
      • 2025年 10月 13日

      機甲部隊による都市部突入なんて数年ぶりな気がする

      4
    • iops
    • 2025年 10月 13日

    それでもウレダル攻撃に失敗していたときと比べると大した事ないと思えるレベルなのでは?

    19
    • kitty
    • 2025年 10月 13日

    Forbesがロシアは財政の壁に行き当たったとか最近、盛んに記事を上げていますね。
    兵士に払う高給、死亡時弔慰金がかなりの負担になってきているとか。
    低コストの第三世界からの傭兵採用も増えてきたとかも。

    3
    • 名無し
    • 2025年 10月 13日

    というか、最近はDeepStateの戦況マップが正確さの面で怪しくなってきた。
    で、今はISWとRYBERを見てる。

    ここの皆はどう思う?

    53
      • 無学なソフィスト
      • 2025年 10月 13日

      ここの人に聞いてもあんまり意味ない気もする
      それこそ前線の人にしか分からん問題でしょう

      12
      • クラスノヤルスク
      • 2025年 10月 13日

      最近はロシア側とウクライナ側の戦況図が乖離しすぎていますもんね。ロシア側の戦況図では既にポクロウシク西部と中心部を占領していますしコンスタンチノフカでもロシア軍部隊が市近郊に到達しています。シヴェルシクでもロシア軍がシヴェルシクの補給路を遮断していますしクピャンスクでもロシア軍は市の半分以上を占領し対岸地域も占領しています。ここまで戦況図に食い違いがあってはもう正直戦況は何が何だか分からなくなっていますね…

      58
      • ななしい
      • 2025年 10月 13日

      ポクロウシク北のクチェリブヤルを占領したとDeepStateは報告していますがその下の地域が分断されている点が個人的には不思議に思います
      グレーゾーンですら途切れているのにどうやってロシア軍は平坦を繋ぎ構成を継続しているのでしょうか?

      51
      • ブロンズおじさん
      • 2025年 10月 13日

      ウクライナはクルスク州の戦闘もいきなり戦況図が大きく動く事があったようだが、シルスキーら軍参謀本部が認めないと戦況図の更新が自由に出来ないようで、意に沿わないdeep state全員を動員するなどと圧力をかけた事もあったとの事。

      恣意的に戦況図の更新を妨害されてる可能性のあるdeep stateよりも、 ryberが更新する戦況図のほうがタイムラグが少なく実態に近いと思われる。

      52
        • 航空万能論GF管理人
        • 2025年 10月 13日

        侵攻初期のウクライナに不利な情報は認めないマンも酷かったかけど、現在の偏屈なロシア支持者も病気なのか、意図的なのか、何も調べる力がないのか、日頃の鬱憤のはけ口なのかしなかいけど、いい加減そのテンプレみたいな展開に飽きないの?

        >シルスキーら軍参謀本部が認めないと戦況図の更新が自由に出来ない、恣意的に戦況図の更新を妨害されてる可能性のあるdeep stateもryberが更新する戦況図のほうがタイムラグが少なく実態に近いと思われる。

        ウクライナメディアですら「DEEP STATEは参謀本部よりも早くロシア軍の前進を報告する」と言っているぐらいで、そもそもウクライナ軍が公式に発表している公式の戦況マップとDEEP STATEのマップがどれだけ乖離しているか確認したことがある?

        これまでryberの評価にどれだけ情報戦の要素や過剰評価が含まれていたか把握している?

        そもそもゲームや何かの試合じゃないんだから、DEEP STATEとRYBARの評価基準も統一されたものではないし、根本的な行動原理も「真実」ではなくて「祖国の利益」なんだから「どちらか一方がより正しい」なんてことは絶対に起こらないし、そう思っちゃうのは支持したい陣営に肩入れしすぎてる現れでしょ。

        支持したい陣営に肩入れするのが悪いと言わないけど、もう偏屈で極端な支持者の偏ったアレにはうんざりで、こうじゃない、そうじゃない、オレは真実を知っているんだと思うなら、ご自分が正しいと思う戦況マップを独自に作るなり、SNSやYouTubeで自分なりの情報を発信するなりしてはどうですか?

        98
          • 2025年 10月 13日

          なんでこの人記事のコメント欄開放してんの?

          59
          • ブロンズおじさん
          • 2025年 10月 13日

          コメント内容に認識の不足や間違いがあるならばそこを指摘すれば済むだろうに、自身が接した情報を元に「こういう情報を目にしたから、こう思う」と投稿しただけなのに随分と辛辣な物言いですね。
          私はロシア支持者でもないしryberを盲信もしない、戦況図に関してはどちらの発表が妥当と思われるかを述べただけで偏狭扱いとは心外です。

          もうここにコメントも閲覧もすることはないと思いますが、ご健勝をお祈りします。

          40
            • kitty
            • 2025年 10月 14日

            いやさ、ここの管理人が、DEEP STATEとRYBARの言い分がどれだけアレなのか相当気をつかって、記事を作成しているのにそれを土足で踏みにじるようなコメントしたら、そりゃあキレるでしょうw。
            人の心とかないんか?

            12
            • ほげ
            • 2025年 10月 14日

            結局どこまでいっても不完全な情報しかない状況から、それでも現実はどうなっているかを、なるべく正確に把握しようと試みているのが、ブログ主さんの記事です。そこを一方的にryberが信用できるなどといい、その根拠がタイムラグが少ないように思える。というのはあまりにも雑な論なので、おこられても仕方がないかもしれません…

            4
    • p-tra
    • 2025年 10月 13日

    全土開放はどれだけ失えば達成できるのか、全くその通りですね。
    ロシア人の主張を全面的に受け入れてロシアが正義でウがナチスで悪だ
    としても、ロシアは非常に要領の悪い正義の味方としか言えないでしょう。
    なんせ悪の帝王が支配する根拠地まであと数キロに迫りながら失敗し、
    結果ずるずると消耗戦を始めることになってしまったんだから。
    正義のための戦いで100万人死なせたんなら、どんな正義であっても
    捨てたほうが世のため人のためではないかと思いますがね。
    もちろんロシアが正義だと思って考えるなら、という話ですけど。

    17
      • nachteule
      • 2025年 10月 13日

       少なくとも現ロシア政権は自国陣営100万人を死亡はさせてないでしょうウクライナを含めたとしても届くかも怪しい。約100万人の死傷者が正しいと思う。

       少なくともウクライナのナチス扱いはプーチン政権の主張だと思うし、ロシア人と言う国民の大多数みたいな意味合いでの単語使用は不適だと思います。ここまでの犠牲を払ったなら歴史的に国を守る為に反撃したり領土拡大をしてきたのと同じ国防と言う正義と考えた方がまだ納得出来る。

       これだけの犠牲を払ってまで戦争を止めないんだからスターリンの時と変っていない国家なんだと思いますね。
      ナンシー・アスターは率直に尋ねた。「いつになったら人殺しをやめるのですか?」
      スターリンは答えた。「必要がなくなった時だ」「早くそうなることを願っています」

      24
        • kitty
        • 2025年 10月 14日

        ソ連・スターリンの時と変っているのは、兵士と戦死者に金を払っていることでしょう。

        「いつになったら戦争をやめるのですか?」
        プーチンは答えた。「戦費が無くなったときだ」「そうならないことを願っています」

        3
    • 足柄
    • 2025年 10月 13日

    ワロータ

    2

ポチって応援してくれると頑張れます!

にほんブログ村 その他趣味ブログ ミリタリーへ

最近の記事

関連コンテンツ

  1. 米国関連

    米陸軍の2023年調達コスト、AMPVは1,080万ドル、MPFは1,250万ド…
  2. 軍事的雑学

    サプライズ過ぎた? 仏戦闘機ラファールが民間人を空中に射出した事故の真相
  3. 米国関連

    F-35の設計は根本的に冷却要件を見誤り、エンジン寿命に問題を抱えている
  4. 欧州関連

    オーストリア空軍、お荷物状態だったタイフーンへのアップグレードを検討
  5. 中東アフリカ関連

    アラブ首長国連邦のEDGE、IDEX2023で無人戦闘機「Jeniah」を披露
PAGE TOP