クルスク侵攻に対する国内外の風当たりは強く、ウクライナメディアも「クルスク州のウクライナ軍は完全に劣勢だ」と報じる中、シルスキー総司令官は6日「ロシア軍によるスームィ侵攻計画が5月に判明し、ロシア領クルスク州内での作戦実施が決定された」と説明して「クルスク侵攻は有用だった」と強調した。
参考:Головнокомандувач ЗС України
参考:Втрати Росії у Курській області вже перевищили 20 тисяч військових, – Сирський
戦場での結果が伴わないウクライナ軍の発表には説得力が著しく欠けている
ウクライナ軍はクルスク侵攻によってスジャを含む多数の拠点と土地を確保、海外の主要メディアは「東部戦線からクルスクへの戦力転用を狙ったもの」「ロシアとの交渉材料を手に入れるためのもの」と予想したものの、ロシアは逆に東部戦線の攻勢を強化したため前進スピードが増し「クルスク侵攻の主要目的は達成できなかった(もしくはアテが外れた)」という見方が多いものの、ゼレンスキー大統領は「全てを話すことは出来ない」と前置きした上で「敵のスームィ侵攻阻止」「緩衝地帯の創設」「捕虜交換のための金貨補充」「交渉材料の獲得目的ではない」となどと主張。

出典:President of Ukraine
さらに8月末のUkraine 2024 Independence forumでシルスキー総司令官は「クルスク侵攻はポクロウシク地区とクラホヴォ地区から相当数の敵戦力を他戦線に誘導することが含まれていたが、ロシア軍は逆にポクロウシク地区の攻勢を活発化させてきた。さらに最も準備が整った部隊をポクロウシク地区に投入した」と言及し「東部戦線からクルスクへの戦力転用が作戦目的に含まれていた」と示唆したが、ゼレンスキー大統領は同じイベントで「(クルスク侵攻前のポクロウシク方面における)ロシア軍の前進スピードはもっと早かった」と強調。
その後に登場した勝利計画の中でも「クルスク侵攻は計画の重要要素だ」と説明し、対ロシア戦においてクルスク侵攻は不可欠な要素だったと主張し続けたが、ロシア軍の反撃で確保した拠点や土地の多くを奪い返され、勝利計画に対する欧米の評価や支持も冷ややかなものに留まり、New York Timesには「ゼレンスキー大統領が欧米で繰り広げた6週間に及ぶ(勝利計画)ロビー活動は失敗だった」と報じられる始末で、国内メディアからも「クルスク州のウクライナ軍は完全に劣勢だ」「(東部戦線におけるロシア軍の前進を止められない中)占領地を守るため最強部隊の投入を余儀なくされている」と批判されている。
この様な評価を気にしたかどうかは不明なものの、シルスキー総司令官は6日「ロシア軍がハルキウ侵攻の後続作戦としてスームィ侵攻を計画していると5月に判明した」「そのためロシア領クルスク州内での作戦実施が決定された」「この作戦期間中(11月5日時点)に敵に与えた人的損害は戦死者7,905名、負傷者12,220名、捕虜717名、武器や装備の損害は戦車54輌、装甲車輌1,101輌、大砲及び迫撃砲107門、各種車輌659輌だ」と発表したが、この内容はPoliticoが9月に報じた内容と矛盾する。
Politicoはウクライナ軍高官への取材に基づき「ゼレンスキー大統領が今年初めにロシア領攻撃を提案したがザルジニーは反対した」「その理由は国境突破後の第2段階作戦が明確に用意されていなかったためだ」「ザルジニーは大統領に『橋頭堡を確保した後どうするのか?』と尋ねたが明確な回答は得られなかった」「ザルジニーはクルスク侵攻がギャンブルだと感じてた」と報じており、作戦の立案、戦力の移動、弾薬や物資の事前集積等をたった3ヶ月間で準備したとは考えにくく、ザルジニー解任前にクルスク侵攻の検討・準備が始まっていたなら「今回の話」はカバーストーリーに過ぎないのだろう。

出典:СИРСЬКИЙ
あくまで結果論だが、仮にシルスキー総司令官の話が事実でも「東部戦線を犠牲にしてまで実施する価値があったのか」という疑問は残り続け、問題の東部戦線についても「我が軍の兵士が陣地を守っている」「敵の攻撃を撃退している」としか説明しないため、戦場での結果が伴わないウクライナ軍の発表には説得力が著しく欠けている。
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※アイキャッチ画像の出典:24 ОМБр імені короля Данила
クルスク侵攻・占領継続は、勝利計画に含まれているため、政治的に失敗とは100%認められません。
南ドネツクが、ズタズタになっている中で、クルスクに増援を送り続けているのはどうしようもないのでしょうね。
アメリカ大統領選挙・上院下院選挙が、トリプルレッドになった事で、どういった影響が出てくるのか注視したいと思います。
「クルスクに侵攻したウクライナ軍に対して西側諸国は拍手喝采で支援は爆増、長距離兵器によるロシア領内攻撃もなし崩し的に許可」
であれば政治的に成功だったと言えるでしょうが、現状はそれとは程遠いようです。
仰るような、希望的な観測だったのかもしれませんね…。
西側の関係者(外交・軍事・情報機関関係者)は、情報秘匿により面子を潰されてますから、現実は総スカンだったのかなと。
第3次世界大戦に繋がりかねない、非常に重要情報をとれなかったわけですから、関係者は無能扱いされても仕方のないレベルに感じています。
(2024.08.20 クルスク侵攻は本戦争の転換点、どちらが利益を上げるかは予測不可能 航空万能論)
うーん。この総統ムーブ。
「ハハハ、総統も相当ギャンブルがお好きなようで」
と言いたくもなります。
「我がウクライナに下品な男は不要だ」
という台詞が聞こえてきそうですが、総統役の人物が本家に比べて著しくカリスマ性に欠けますね。
失敗だと認めると責任追及されるから認められないだけでは?
狙いそのものは普通にアリだったと思いますよ。
問題は失敗に終わったことが明らかになっても方針を変えられない所ですよね。
元々はプーチンに対し政治的な意味合いを持たせるための作戦だったのに、逆にウクライナ側が政治のために撤退できなくなってしまったというのはなんとも皮肉な話。
原発を占領できればまだチャンスがあるかもしれないが、難しすぎる
世論の波だけではロシアの局面に大きな影響はなく、一般的な政治的要因はいくらあってもプーチンの戦争方針を変えることはない。有識者はロシア軍がハルコフなどから果敢に撤退した時に分かるはずだ
残念ながら、ゼレンスキーと多くの西側の指導者は2年ほど遅れても理解していないだろう
スームィ州侵攻計画が事実なら、ウクライナのクルスク侵攻をあっさり止めるぐらいの戦力が集まってないとおかしいでしょ?
ソビエト的な作文と言うか…
てかポリティコの報道通り、ザルジニ解任前からロシア領攻撃が議論されていて、しかもロシアが前から掴んでいたとしたら、
あの意味不明な時期に意味不明な政治マターで始まったロシアのハルキウ侵攻も見方が変わると言うか…
そりゃ同じロシア領なら遠いクルスクより近いベルゴロドのが狙われていると普通は予想するよね。それでロシアの過剰反応誘発してハルキウ侵攻に繋がったのなら更に残念と言いますか…
仮にロシア側であれ、ウクライナ側であれ前々から宇露国境北東部(クルスク~ハルキウ)で攻勢計画があったとしても、
それで両軍がこの一年間北東部に兵力を張り付かせざるを得なくなって、結果として主戦域に回す余力のあるロシアがチャシフヤール、トレツク、ポクロウシク、クラホヴェまでウクライナを追い詰めたのなら、それはロシアの戦略的な勝利以外の何物でもないんでは?
東部戦線のみで戦い続けてもジリ貧になるだけなのですからロシア領に打って出るという発想自体は妥当なものだと思います
しかし優良装備旅団の第47や第21を注ぎ込んでおきながらこれといった成果を挙げることができないばかりかロシア領に攻め込まなければ相手取る必要すらなかったロシア軍徴兵部隊や北朝鮮人部隊と戦うハメに陥っているのですから結果は明らかに失敗としか言えないんですよね…
防戦だけではジリ貧だからと言って無理に攻勢に出て、成功した例は戦史上あまりないですね。
失敗に終わり却って敗戦を早める結果となった例なら沢山ありますが。
北ベトナムくらいですかね成功したのは
やはりロシアが戦力に余裕があり戦略的にも見る目があったとしか言わざるを得ない。
当初からウクライナの戦力分散は疑問が呈されており、ロシアも東部からの戦力移動を最小限にしてあまり無理をせずに反撃をしている。
外交的にもゼレンスキーの援助された長距離兵器によるロシア領内攻撃も認められず、援助増強もほとんどなかった。
その上で結果は単に他の戦線の戦力不足を生み更なる動員の必要性を浮き上がらせただけで政治的にも自らの首を締めただけである。
勝利宣言に必要な援助もほぼなく焦りの発言などから要求された国から苦言を言われるかリップサービスでかわされるだけでこの冬はエネルギー不足とも戦わなくてはならない。
ゼレンスキーも政権維持の余力を減らしただけだし、ウクライナとしても停戦の条件を自ら落とした結果になっただけだと思う。
本当に北東部への攻勢自体は妥当だったんでしょうか?
東部で戦い続けてもジリ貧と言いましても、南部反転攻勢が終わった時点ではチャシフヤール~アウディウカ~ブフレダールの主防衛線は未だ未だ健在でしたし、そこに十分な兵力を投入していれば、押されたとは言え、ここまで酷くなったか?
南部反転にせよ、クルスクにせよ、ウクライナは攻勢に拘り過ぎなんです。ろくに陣地も守れてないのに攻勢なんて出来ると思う方がおかしい。北東部でロシアの攻勢があるかもしれないなら、最低限警戒しながら壕掘れば良いでしょ?南部のロシア人みたいに。何でそこで攻勢してしまうのか?
南部反転攻勢の前、ウクライナは散々南部で作戦を行うと言ってましたが、ロシアは南部で予備攻勢なんてやりましたか?
せいぜいブフレダールへの散発的な攻勢くらいで、ずっと塹壕掘って地雷ばら蒔いてましたし、それが常識的な軍隊の対応でしょうよ。何故攻勢に拘るのか?何故塹壕を掘らないのか?ウクライナ軍は不思議な軍隊です。
こんなことしてるからアメリカからの支援が遅れてるんじゃないの
クルスクに限らず、成功は事更に強調し失敗を頑なに認めない。その結果として無駄に犠牲・損害を拡大させてきた訳で、この「失敗を認めない」姿勢を根本的に修正しないとどうしようも無いのでは
失敗した原因・理由を分析して改善しなきゃいけないのに、失敗そのものを認めないから改善策が先延ばしにされたり中途半端になってしまって、結局はまた同じ失敗を繰り返してきたのですから
失敗を認めない
プロパガンダで誤魔化す
相手をバカにする
これは今のグローバリズムの西側指導層・エリート層に蔓延してる病気ですね
そりゃ優れた指導者は西側から距離を置いたりBRICSに加盟したりするわ
最優先はゼレンスキーへの映えた報告なのでしょう、国力差も酷いがゼレンスキーとプーチンの力量の差も余りに酷い。
挙げ句、最大の支援国家の大統領は痴呆気味の優柔不断なバイデン ⇒ 欧州嫌いのトランプ
つまり、勝ち目が全く無い。
軍事的には自殺行為だというのが当初からの大方の見解でこれはほぼ確定している。侵攻の動機は国内政治、支援国向け様々考えられる。侵攻は米国務省内のネオコンに露を攻めろと強制されたと予測される。国防総省は軍事的な自殺行為を勧めることはあるまい。クルスク侵攻を許したのはプーチン政権の失態との言説が当初一部に見られた。
先の大戦での日本のインパール作戦に似ている。インドに攻め込んだというのが唯一の成果、クルスク作戦はウクライナ正規軍が露に侵攻して橋頭保を築きかけたというのが唯一の成果。ヒトラー以来の快挙なわけだが攻勢はすぐに行き詰まり、攻勢部隊は拘束され一部は包囲されウクライナの敗戦を早めた。
写真の兵隊さんの銃器はなんという物なのかな?。
突撃銃より大きいし、バトルライフルよりも大きいような。
軽機関銃かな?。それにしては、弾帯らしき物を持っていないし。
ひょっとして、対物ライフルなのかな?。
多分おそらくメイビー、M110A2と呼ばれるAR-15ベースの7.62mm弾を使用する狙撃銃
ご教授ありがとうございます。
ウクライナのSBUのスナイパーが世界記録を塗り替えた時の.50口径ライフルはHorizon’s Lordという謎兵器だったので、対物ライフル規模では無いような。
AR系列のDMRに見えますね。
ご教授ありがとうございます。
失礼。離席している間に同定されていたようでw
クルスク侵攻は自爆ドローンの台頭と支援が薄くて持て余していた戦車などの戦力を東部から引き抜いて、特攻させただけでは?
目的は休戦・終戦交渉をさせない事が一番しっくりくる。
政治先行の作戦で軍事的目標がないのなら、何をすれば成功なのかという達成も何もないしな。
かといってクルスク侵攻の戦力を東部戦線に残していたとしても、現在と戦況はさほど変わってないだろうが。
素人の勝手な考えですが。
ロシアは、未だにハルキウとキーウを諦めていないと思います。
昨年末にスロヴィキンラインで成功した後、余裕の出たロシアは、
再びハルキウとキーウを目指したのでは?。
ハルキウの前面のロシア軍の集中をウクライナは察知していました。
しかし、現実に攻められるまで、そんなことは無いと言い続けました。
ウクライナは、その轍を踏まないように、キーウ前面で先制に出たのでは?。
ロシア側がクルスク地区で準備を進めている兆候があったのでは。
結果として、キーウへの攻勢発起点を後ろに下げることは出来ていますから、
ここの部分は成功では?、などと思います。
そう考えると、スロヴィキン将軍は、ロシアにとんでもなく貢献?しているのでは。
その結果、ロシア軍は本土のホームアドバンテージを前提にしたタワーディフェンスゲームをプレイすることができるようになった
苦労して前進する必要もなく、大量のカモネギが自発的に飛んできた
ウクライナ軍の精鋭が消耗されると、ロシア軍の攻撃自体も容易になる
防御目的なら、これ以上前進の必要はないでしょう。
損害を強いつつ下がるのでは。
あと、ロシアの鉄道にドローンで手の届く位置に
居るのでは、と想像したり。
言われていた中の1つには、ロシア領内に破壊工作者を紛れ込ませるのが目的だというのもありましたが…どうなんでしょうかね。
全く表に出てこない分野でしょう。
正直にわかりません。
ただ、両軍が向き合う形になったことで、
接触線の付近の警備は厳重になったものと想像します。
であれば、まだガバガバ(であろう)
場所を狙った方が良いような気がします。
>ロシア側がクルスク地区で準備を進めている兆候があったのでは。
その痕跡が今に至るも発見されていないのは謎ですね。
作ったばかりの地下司令部/他があった様です。
それも複数段あったようで、前線に近い部分は占領後に動画に撮られ、
奥のものはMig29から投下したAASMハンマーで破壊される
空撮映像があったと憶えています。
最初に捕虜となったロシア徴集兵約100人そこに居た人達でした。
クルスク侵攻は失敗ではないかという批判に対して釈明するのに存在したかどうかも分からない(おそらく存在しない)スームイ州侵攻阻止を挙げてみだり、どう見ても東部戦線のロシア軍の前進速度は上がっているのに「ロシア軍の前進が鈍化した」と言ってみたり、もう末期感が凄いですね。
かといってクルスクから撤退してしまうと失敗を認める事になり、責任を問う声が上がるのは確実なためゼレンスキーにはそれも出来なさそうです。政治的要求や自己保身のためにクルスクに兵力を投入し続ける限り、行き着く先は敗戦しかないと見受けられますが…
大日本帝国より守勢が苦手な国があるとは・・・。そんだけ攻勢やるんなら人口1.5倍は必要ですよ