ロシア国防省は6日「クラホヴェを解放した」と、DEEP STATEも10日夜「ロシア軍がクラホヴェを占領した」と報告したが、ウクライナ軍は「火力発電所で陣地を確保しているためクラホヴェは占領されていない」と主張し、ウクライナ人にすら批判される「いつもの病気」が始まった。
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口先だけではなく「見込みのないクラホヴェ市内への戦力投入」が続いているなら、本当にソレダル、バフムート、アウディーイウカ、ヴフレダルの再現だ
DEEP STATEはクラホヴェ方面について5日「ロシア軍がクラホヴェ西郊外の機械工場に到達した」と報告、視覚的にもロシア軍兵士がクラホヴェ西郊外の機械工場西端で国旗を掲げる様子が登場し、ロシア国防省も6日「ウクライナが10年の歳月をかけて強力な要塞に作り変えたクラホヴェを解放した」と発表したが、ウクライナ軍は6日「まだ市内で戦闘は続いている」と、7日「我が軍は市内の発電所を含む西市内と西郊外を保持している」と発表し、これについてウクライナ人ジャーナリストのブトゥソフ氏は「なぜソレダル、バフムート、アウディーイウカ、ヴフレダルと同じ過ちを繰り返すのか?」と指摘。
DEEP STATEも「もうクラホヴェは敵にほぼ占領されている。幾つかの部隊が街の一角を保持しているのは政治的任務でしかない。急速に市内中心部が失われたため街を守っていた部隊の士気に大きな影響が出ているが、(まだ市内で戦闘は続いているという)軍報道官の発表は兵士の士気を更に下げるだけだ。この様な行動は戦場の現実ではなく『こうでなければならない』『そうあってほしい』という立場から生じている」と言及し、10日「ロシア軍がクラホヴェを占領した」と報告したためウクライナメディアも「敵がクラホヴェを占領した」と報じた。
まだ参謀本部は自国メディアに広まった「クラホヴェ陥落」について何も言及していないが、ホルティツィア作戦軍の報道官は11日「まだクラホヴェ周辺で戦闘が続いている。特に市内の火力発電所ではウクライナ軍が陣地を確保しているため、ロシア軍がクラホヴェを完全に占領したとは言えない。勿論、街の大部分が瓦礫化したことは認めざるを得ない」「ウクライナ軍が市内に駐留しているため撤退の話は出来ない」と述べ、ウクライナメディアも「軍はDEEP STATEの主張を否定した」と報じている。
ブトゥソフ氏が「なぜ同じ過ちを繰り返すのか?」と指摘するのは「著しく不利になったクラホヴェ市内にしがみついても無意味な損失が増えるだけ」という意味で、現場の指揮官も「部隊の全滅させるな」「戦えるうちに有利なところまで部隊を後退させよ」「先手を講じて損失を減らし敵の損失を増やせ」と訴えており、ブトゥソフ氏は「敵を押し返す見込みがないのに司令部は『持ちこたえろ』と命じ続ける。だから回復の見込みがある部隊が完全に失われ、前線を守る兵士が足りなくなり、もっと多くの後退を強いられるのだ」「きっとポクロウシクやヴェリカノボシルカでも同じことが起きるだろう」と指摘した。
ホルティツィア作戦軍の報道官が「ウクライナ軍陣地がある」と発言した火力発電所では昨年31日にロシア軍兵士が国旗を掲げており、どうやってここに陣地を確保しているのか検討もつかないが、この報道官も個人の判断で発言できないためポジショントークに過ぎないのかもしれない。
もはや「街を失っていない、敵のプロパガンダに騙されるな、ウクライナ軍を信じろ」から「全ての建造物が破壊され、守るべきものが無くなったため準備された陣地に後退した」というお決まりのパターンに誰もがうんざりしており、これが口先だけではなく「見込みのないクラホヴェ市内への戦力投入」が続いているなら、本当にソレダル、バフムート、アウディーイウカ、ヴフレダルの再現だ。
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※アイキャッチ画像の出典:Сухопутні війська ЗС України