ウクライナ戦況

ウクライナとロシアが和平交渉を開始、トルコ外相は両国の幸運を祈る

トルコのイスタンブールでウクライナ代表団とロシア代表団による和平交渉が始まった。トルコのフィダン外相は交渉に先立ち「今回は2022年3月以来初の直接接触で、この機会に平和への道を前進させなければならない」と述べて両代表団の幸運を祈った。

参考:Russia and Ukraine officials set to meet for peace talks in Turkey
参考:BREAKING: Ukraine, Russia start peace talks in Istanbul for first time since 2022

どれだけ互いを非難し合っても停戦に向けた合意が形作られるはずで、その第一歩は戦場の現実を認めるところから始まるだろう

トルコのイスタンブールで予定されていたウクライナとロシアの和平交渉は「プーチン大統領が自ら参加するかどうか」で混乱し、最終的にロシアは前回協議で代表団を率いたメジンスキー大統領補佐官を派遣し「3年前に中断された和平プロセスの継続」という政治的メッセージを演出してきたため、トルコで待機していたゼレンスキー大統領は和平交渉への参加を見送り、イェルマーク大統領府長官率いるウクライナ代表団とメジンスキー大統領補佐官が率いるロシア代表団の間で和平交渉が始まった。

出典:Президент України

イェルマーク長官は今回の交渉について「ロシア側は2022年協議との関連性を維持したいと考えているようだが、前回と今回の交渉で一緒なのは協議の場所がイスタンブールということだけだ」「今日を2022年に結びつけようとする試みは全て失敗するだろう」と述べ、トルコのフィダン外相も「今回の交渉はゼレンスキー大統領とプーチン大統領が直接会談するための土台を築く協議」と位置づけている。

この交渉は第3国の立ち会いなしで行われており、フィダン外相は交渉に先立ち「今回の交渉は2022年3月以来初の直接接触となる」「この機会に平和への道を前進させなければならない」と発言して両代表団の幸運を祈ったが、トランプ大統領はプーチン大統領が和平交渉に出てこないことを知るとトルコ訪問をキャンセルし、ルビオ国務長官も「今回の交渉に大きな期待を抱いていない」と不満を述べ、ゼレンスキー大統領も「交渉に真の意思決定者を派遣しなかった」と批判し、欧州諸国も「プーチン大統領が交渉を引き延ばそうとしている」と指摘して制裁強化を検討中だ。

出典:Сухопутні війська ЗС України

それでも両国の交渉が始まったのは事実であり、どれだけ互いを非難し合っても停戦に向けた合意が形作られるはずで、その第一歩は戦場の現実を認めるところから始まるだろう。

ウクライナは「ロシア軍に占領された地域を武力で取り戻すことができない現実」を、ロシアは「割譲を要求している4州を完全に実行支配できていない現実」を認める必要があり、戦場の現実に従うなら現在の前線を停戦ラインとして採用すべきで、ウクライナは占領地返還に対する期待を、ロシアは完全占領出来ていないヘルソン州、ザポリージャ州、ドネツク州、ルハンシク州からウクライナ軍に出ていけという要求を捨てるべきだ。

関連記事:ウクライナと米国が公平な復興基金協定に署名、ロシア経済は失速の可能性

 

※アイキャッチ画像の出典:Президент України

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コメント

  • コメント (22)

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    • 2025年 5月 16日

    ウクライナの全土奪還の断念と現在の前線での停戦ラインはウクライナはもとより欧州が認めないでしょうし、ロシア側の4州併合断念はロシア国内の強硬派は認めないでしょう。

    なの長期間の停戦と和平は難しいんじゃないかなと。
    一時的停戦でお互い力を蓄えて再戦って流れが自然と思われる。

    18
      • nachteule
      • 2025年 5月 17日

       そもそも主権はウクライナに有るので欧州が現在の停戦ラインを認めないと言うなら、長期的な支援の増加と自らも血を流す覚悟を見せるべき話。
       侵略された側が泣きを見るのは問題だが、長期の戦争で厭戦気分もある中で国土に拘って戦争継続とかウクライナ自身がそれを自信を持って押し進める事が出来るのだろうか?
       それこそ妥協出来る範囲での停戦のチャンスを蹴ってまで継戦するなら、継戦賛成派が責任持って任務を遂行すべきじゃないだろうか。

      8
    • nk
    • 2025年 5月 16日

    取り敢えずの和平に一歩前進出来るのか期待したい所ではありますが、今回の様な会談を何回か重ねて小さい事から部分的に合意し一応は停戦という所で折り合えれば良いですが、戦況的にロシアが各方面で膠着を打破しつつある様なので交渉の前提としてまずは戦線を膠着させないとなかなか現状ラインでの停戦は難しいように思う所。

    22
    • たむごん
    • 2025年 5月 16日

    結果、内容はひとまず置いておくとして。
    両国ともに、あまりにも犠牲が多いですから、ウクライナ戦争の停戦交渉が始まったのは好ましい事実と思います。

    プーチン大統領=ゼレンスキー大統領=トランプ大統領が、出席しないことばかり話題にされていますが、事務方よりも上かなりの高官が出席しているわけですから突っ込んだ議論・第一歩の成果を期待しています。

    和平交渉再開が、そもそも非常に大きな成果とも言えます。

    19
      • hoge
      • 2025年 5月 16日

      ロシア「あのさぁ……そろそろ中断してたイスタンブールの協議、再開しない?」
      ウクライナ「嫌どす」
      トランプ「なんで協議しないんだ? ウクライナは平和を望むとか嘘だったのか?! 儂、激怒!」

      ウクライナ「ゼレンスキーがイスタンブールで待ってます、来いよプーチン(手のひらクルー」
      ロシア「交戦国との首脳会談がそんな簡単に設定できるわけないだろ」
      トランプ「プーチンが行くのか?! ほな儂も行くわ!! きっと歴史的な一日になるだろう(キリッ」

      ウクライナ「あのさぁ? こんな下っ端ばかりよこしてうちの国を舐めてるの? ロシアちゃんの和平に対する姿勢が偽物であることは確定的に明らか」
      ロシア「……えーと、とりあえずどんなレベルでもいいから協議しませんか(協議の開始を丸一日待ってた)」
      トランプ「(プーチンおらんのか、ほな儂も行かんわ……)この私がイスタンブールへ行かないのだから、プーチンも来るわけがないだろう(キメ顔」

      協議開始までの流れでトランプが終始オチ要員だった……
      これで台本なしとかマ?
      ところで今夜トランプとプーチンが電話会談するかもしれないそうです。
      そちらも併せて注目ですね。

      13
        • たむごん
        • 2025年 5月 17日

        交戦国同士の首脳会談は、事務方で調整してからでないと、さすがに難しいですよね…

        電話会談の情報、ありがとうございます。

        3
      • たむごん
      • 2025年 5月 17日

      追記です。

      会談の成果として、かなりの捕虜交換があったようですね。

      (2025年5月16日 ロシア・ウクライナ、過去最大規模の捕虜交換で合意 それぞれ1000人 ロイター)

      1
    • 774
    • 2025年 5月 16日

    イスラエルとハマスの停戦合意が一年以上かかってそれもすぐに破棄されたのでこちらも停戦までには長い時間とたくさんの障害があることでしょう
    しかし時間はロシアに味方すると思うのでなるべく早く停戦合意がまとまってほしいものです

    8
    • 停戦賛成派
    • 2025年 5月 16日

    戦場の現実のラインの位置についても更新いただけるとありがたい。1ヶ月前からどのくらい変わったかはあまり追っていなかったけど。あのゼレンスキー政権が強硬に反対していないってことは、時間が経つほどロシアに押し込まれる状況なのかな。

    18
    • gepard
    • 2025年 5月 16日

    戦場の現実は二つある。一つはこの戦争がグローバル国際社会を巻き込んだ世界紛争であること。ロシアにはイラン・北朝鮮が支援を、ウクライナは西側主要諸国が支援している。二つ目は21世紀で初めての消耗戦であること。消耗戦ではクルスクやアウディーイウカの様に数日前まで膠着している戦線がある日崩壊し始めることは稀ではない。
    時間はロシアの味方である。米抜きの大規模軍事支援は不可能である。数日後に迫ったルーマニア大統領選の結果で極右候補が勝利すればハンガリー・スロバキアと歩調を共にするルーマニアが誕生する。ウクライナの外貨収入を支える穀物輸出はコンスタンツァ港経由が多い。

    22
    • 2025年 5月 16日

    ゼレンスキー大統領が「交渉に真の意思決定者を派遣しなかった」と言ったそうですけど、別に全権委任させた大使行かせればいいし大統領自身が行く必要あるんですかね?

    まあ、ロシア側はゼレンスキー大統領を交渉相手として認めないというスタンスですけど、前にゼレンスキー大統領が資源協定をアメリカにすぐに調印しろと迫られたときに「自分には権限がない。議会が決める」って拒否したってことあったんで、ゼレンスキー大統領全権とかあるのかが気になるとこですが。
    無いならゼレンスキー大統領と交渉する意味も必要も無いような…。

    32
    • SB
    • 2025年 5月 16日

    挑発されてバチクソにブチ切れてるロシア代表団が面白かった

    7
      • MQ31A
      • 2025年 5月 17日

      「トルコのスルタンへ手紙を書くザポリージャ・コサック」の絵の様な反骨精神こそウクライナ人の気質らしいですからね。
      ザハロワ報道官も見た事が無い位ブチ切れてて笑いました。

      8
    • Ard
    • 2025年 5月 16日

    合意は形成されないでしょう
    ロシアにとっては「平和を望む我々が手を差し伸べたのに愚かなウクライナに裏切られた」と演じる為の会談でしかない
    ウクライナが呑めない要求をして終わり

    13
      • akiyori
      • 2025年 5月 16日

      アメリカ大統領選直後にも書いたんだけど、トランプおじいちゃん、自分が何か言ったら万事うまく行くと思ってるので勝手にロシアに期待して勝手に裏切られて勝手にブチギレる人だから、プーチンが来なかった時点でウクライナ的には割と大勝利である

      17
        • Ard
        • 2025年 5月 17日

        それは間違いないね

        3
    • FAB
    • 2025年 5月 16日

    >>ウクライナは「ロシア軍に占領された地域を武力で取り戻すことができない現実」を、ロシアは「割譲を要求している4州を完全に実行支配できていない現実」を認める必要があり

    この戦争って領土紛争ではなくウクライナを屈服させることが目的。
    領土を獲るのはその手段でしかない。
    4州を渡したところで満足せず別の要求を乗せてくるだけ。

    17
    • SB
    • 2025年 5月 16日

    てかロシアはいい加減、建前すら無い民間人目標した攻撃やめろや
    本土への民間人攻撃が継戦意思を挫きにくいのはWWⅠ以降証明済みだし、何より東部で組織的に民間人虐殺してる連中に誰が武器下ろすんだよ

    19
    • 無学なソフィスト
    • 2025年 5月 16日

    ロシアはヘルソン州をヘニチェスク州、ザポリージャ州をメリトポリ州、
    ウクライナはドネツク州をクラマトルスク州、ルハンスク州をフレキフカ州に変更して未回収の土地はなかったことにすればいいのに(思考停止)

    3
    • Formula 750
    • 2025年 5月 16日

    次はアメリカ・EU共同の新たな経済制裁になりそうですね。
    お次の経済制裁は主に石油と金融でロシア経済を結構追い込むレベルだそうで。

    7
    • paxai
    • 2025年 5月 16日

    ロシアの反応を見るによほど戦況に自信があるようだな。軍事パレードも結構盛大だったし余力はある感じがする。

    9
    • お家芸
    • 2025年 5月 17日

    テレグラム見てると双方停戦のやる気ナシみたいに感じるね。
    どちらも完全な優勢を獲得できないからなぁ…ダラダラとドネツク州で激戦が続く…

    1

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